一口に畳といっても、素材やサイズのバリエーションは豊富です。安易に選んで後悔しないよう、畳の選び方について知識を深めておきましょう。畳を導入するメリット・デメリットやサイズ、さらには品質の高い畳を見抜くポイントも紹介します。
畳の基礎知識
畳は日本独自の伝統的な床材です。日本人にとってはなじみ深く、西欧化が進んでいる昨今でも「家に一間は畳の部屋がほしい」と考える人も少なくはありません。
どのような畳がよいか考える前に、まずはメリットやデメリット、サイズのバリエーションなどを確認しておきましょう。
以下の関連記事では、畳の張り替えにかかる費用を工法別にしょうかいしています。ぜひ参考にしてみてください。
畳を使うメリットとデメリット
畳の主なメリットは以下の通りです。
- 調湿機能がある
- 遮音性
- 断熱性
- くつろぎやすい
畳は環境に合わせて湿気を吸収・放出してくれるので、湿度の変化が激しい日本の四季にマッチしています。
また、内部には空気が含まれており、クッション性は高いといえます。遮音性が高く、断熱効果も期待できるでしょう。
加えて、い草の香りは心地よいものです、そのまま直に寝転べば、リラックスして過ごせます。
一方、主なデメリットは以下の通りです。
- メンテナンスの負担がある
- 褪色しやすい
畳は3~4年に1度裏返しや表替えする必要があります。また、10年も使用すれば交換が必要です。
さらに、時間がたつと黄色く褪色するのもデメリットに感じるかもしれません。この他、「汚れが染みこみやすい」「跡が付く」などが気になる人もいるようです。
畳のサイズ
畳の種類と1畳のサイズは、以下の通りです。
- 京間(主に西日本): 95.5×191cm(約1.82平方m)
- 中京間(東海地方):91×182cm(約1.66平方m)
- 江戸間(北海道から関東地域)::88×176cm(約1.55平方m)
- 団地間(公団住宅・アパート・マンションなど): 85×170cm(約1.45平方m)
その昔、畳の単位「一間(いっけん)」の長さは6尺5寸でした。しかし戦国時代から江戸時代までに、一間の長さは6尺3寸、6尺と変化しています。これが1畳サイズの多様化につながったようです。
この他、関東と関西で家の建て方が違ったことも、畳のサイズの多様化に関係があるといわれます。
その昔関西では、畳の寸法を基準に家を建てるのが一般的でした。一方、関東では柱の中心の距離を基準に家を建てていたといわれます。
そもそも家の寸法が異なっていたため、畳のサイズにも違いが生まれたというわけです。
畳に使われる素材の種類
畳の表面を「畳表」と呼び、ここに使われる素材にもさまざまな種類があります。
伝統的に素材として使われてきたのは「い草」です。しかし、い草も生産地によって性質が異なる上、近年はい草以外の素材も多く見られるようになってきました。
現在市場に流通している素材には、どのようなものがあるのでしょうか。
高品質な国産い草
古来より畳の素材として使われてきたのが国産のい草です。弾力性や耐久性に優れており、品質の高さには定評があります。色合い、光沢、香りがよく、見た目にも美しいのが特徴です。ただし、その分価格は高額です。
主な産地としては、熊本県・福岡県・広島県などがあります。中でも熊本県産のい草は国産の90%以上を占めており、全国一です。
近年、国産のい草は安価な中国産に押され気味でした。しかし現在は、品質に特化することで商品価値を高めています。最高級のブランド畳表が数多く登場し、安価ない草の畳表とは明確に差別化されています。
リーズナブルな中国産い草
国産のい草に代わり、国内市場のおよそ8割を占めるといわれるのが中国産い草です。国産と比較するととにかく安価なため、一般家庭の畳はほぼ中国産でしょう。主に、中国内の寧波・上海・蘇州・四川などの地域で栽培されます。
国産と比較すると、中国産は耐久性や弾力性に劣るといわれます。吸湿性も低めで、品質や色味にムラが多いのも特徴です。
品質が低いといわれる原因はさまざまですが、「未成熟のまま収穫すること」「カビが生えないよう短時間で強く乾燥させること」などが挙げられます。くわえて選別も日本ほど厳密ではないため、どうしてもムラが多くなってしまうようです。
和紙やポリプロピレンなどの化学表
近年は、天然素材を使わずに化学製品を使った畳表も登場しています。主な原材料は和紙やポリプロピレンです。天然のい草と同じような構造に作られており、自由に着色できます。化学表の畳のカラーバリエーションが豊富なのはこのためです。
化学表のメリットとしては、「褪色しにくい」「水に強い」「耐久性が高い」などがあります。カビやダニ・ノミなどを心配する必要もなく、品質にもムラがないのは大きな魅力です。
ただし、い草ならではの風合いや香りは感じられません。
畳床の種類と特徴
畳床は、畳表の下にある芯材です。どのような素材を選ぶかで、畳のクッション性や断熱性が大きく変わります。畳を選ぶときは畳表だけではなく、畳床もきちんとチェックしておきましょう。
畳床の種類は、主に3種類です。それぞれ、特徴と併せて紹介します。
弾力性の高い稲わら
畳床の素材として、伝統的に使われてきたのが稲わらです。天然素材なのでやや割高で、畳床としては高級素材の部類に入ります。特級から3級までの等級があります。
特徴としては、調湿機能、保温機能が期待できることです。
わら床は、わらを幾層にも重ねて作ります。わらの間には自然に空気の層ができ、これが湿気を吸収・放出したり熱を保ったりしてくれます。くわえて弾力性も高くなるため、畳を踏んだときの心地よさがあるでしょう。
ただし、わら床は重さがある上、通気性の高い環境で使わないとカビやダニが懸念されます。気密性が高く空気の循環が悪い場所では、小まめな掃除やお手入れが必須です。
湿気に強いサンドイッチ畳床
気密性が高く湿気がこもりやすい場所で使いやすいのが、サンドイッチ畳床です。
わら床の間には、断熱素材として多用される「ポリスチレンフォーム」が挟まれています。軽量かつ湿気に強い上、断熱性・耐久性にも優れています。踏み心地はわら床に近いため、使用感も良好です。
くわえて、価格はわら床よりも低コストです。「品質は譲れないけれど、価格は抑えたい」というときにおすすめできます。
防ダニ効果もある建材畳床
建材畳床は、木製繊維から作られた「インシュレンボード」と、ポリスチレンフォームが使われています。天然素材ではないため、ダニの心配が少ないのはメリットです。また、素材の性質上、断熱性や吸音性も高いといわれます。
他の畳床と比較して低コストなため、導入しやすい畳床です。実際のところ、現在市場に出回っている畳の7~8割はこのタイプなのだとか。
ただし「耐久性はさほどない」「踏み心地が固い」「調湿効果は低い」など、デメリットといわれる面もあります。
畳を選ぶポイント
畳の良し悪しは知識がないと分かりません。安易に選んで質の悪い畳を購入しないよう、「どのポイントをチェックすべきか」を理解しておきましょう。
畳選びでよく見ておきたいチェックポイントを紹介します。
い草の本数
畳表に使われるい草の本数は、畳の見た目に影響します。上質な畳は目が詰まっており均等です。畳を選ぶときは、使われているい草の本数にも注意したいところです。
い草の本数の目安としては、以下を参考にすると分かりやすいでしょう。
- 下級品・普及品:約4,000~5,000本
- 中級品・上級品:約5,000~6,000本
- 高級品:約6,000~7,000本
使われているい草の本数が多いと、畳表の地は厚く、重量も重くなります。
使われている経糸
畳表は、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)で織られます。
緯糸となるのはい草ですが、経糸として使われるものの種類はさまざまです。経糸も畳の品質を左右するため、きちんとチェックしておきましょう。
経糸の種類には次のようなものがあります。
- 綿二芯(糸引き表):綿糸。低・中級品
- 麻二芯(麻引き表):麻糸。国産の畳表に多い
- 綿麻四芯表(綿W表):麻と綿の両方を使用。低級品から高級品までさまざま
- 麻四芯表(麻W表):麻糸2本(計4本)。高級品
一般に、綿よりも麻の方が耐久性は高いといわれます。畳表に使うい草の本数が多い場合は、綿よりも麻を使用するのが一般的です。
ごく一般的な普及品のほとんどはい草の本数も少ないため、安価な綿糸が多用されます。
畳縁の柄
畳縁は、畳の角の磨耗を防いだり見栄えをよくしたりする役割があります。近年の畳では化学繊維を使ったものがほとんどです。このタイプは、耐久性がある上安価なのが魅力です。
一方、昔ながらの綿糸で作られたものもあります。高級感や質感は化学繊維より上ですが、一般家庭で使われることはまれでしょう。
畳縁も、部屋の印象を大きく左右します。伝統柄から現代的なものまでデザインのバリエーションは豊富です。部屋の色や印象にマッチするものを選びましょう。
近年人気のおしゃれな畳
洋式の家が増えた昨今では、洋風な要素を取り入れた畳が人気を博しています。「リラックスできる畳の部屋がほしいけれど、純和風はちょっと…」とためらっている人におすすめです。
モダンなデザインの部屋にも使いやすい、おしゃれな畳を紹介します。
七島イを使った琉球畳
琉球畳はい草ではなく、カヤツリグサ科の「七島イ(しちとうい)」を原材料とするものです。通常の畳とは異なり、畳縁がなく正方形をしています。使ううちに風合いが変わるため、経年変化を楽しめる点が魅力です。
メリットとしては、「耐久性が高い」「アレルギーを発症しにくい」などがあります。くわえて光の当たり方によって色が変わって見えます。畳み目の方向を変えて並べると、市松模様になっておしゃれです。
ただし琉球畳は手織りなので、一度にたくさん生産できません。原材料を栽培する農家も減っており、通常の畳よりは高額なのがネックです。
移動が簡単なユニット畳
「置き畳」ともいわれ、フローリング上で使えます。通常の畳よりも薄くて可動性に優れ、置き場所を選びません。必要に応じて敷いたり上げたりできるため、床面をフレキシブルに変えられます。
「基本的にはフローリングにしたいが、たまに畳の感触が恋しくなる」という人にはぴったりでしょう。
畳表の種類は、通常の畳とほぼ同じです。い草、樹脂、和紙などの他、琉球畳もあります。近年はホームセンターなどでさまざまなデザイン・大きさのものが販売されており、気軽に購入しやすいのも魅力です。
部屋に畳のある生活を
畳は、高温多湿な日本の風土に適した床材です。断熱性や防音姓が期待できる他、い草の香りにリラックスできると感じる人も少なくありません。畳ゼロの暮らしをしている人は、ぜひ畳の導入を検討してみてはいかがでしょうか。
ただし畳のサイズや仕様はさまざまです。導入前に、畳の種類やサイズについてじっくり吟味しましょう。
また、どうしても畳のテイストが部屋に合わない場合は、モダンな部屋にも併せやすい琉球畳やユニット畳を入れるのもおすすめです。
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