引っ越しと同時に発生する大量の手続き。病院にかかるときに使う保険証は、どのような手続きが必要なのでしょうか?
結論からお伝えすると、加入している保険の種類によって手続きが以下のように異なります。
- 社会保険加入者:所属する会社に住所変更を報告
- 国民健康保険加入者:市区町村の役所で手続き
この記事では、それぞれの手続きの流れや住所変更をしなかった場合のリスク、変更手続き中に発生する疑問などについて解説します。
加入している保険の種類によって手続きが異なる
国民健康保険や社会保険といった健康保険は、全ての国民が加入しなければならないものです。
住所が変わったときは届け出なければなりません。手続きをしなかったときに起こる問題や、届け出の注意点を確認しておきましょう。
加入内容で手続き方法が違う
個人事業主やフリーターが加入するのは、国民健康保険です。日本年金機構が管轄する健康保険と厚生年金が適用される会社に勤める人は、社会保険に加入します。
国民健康保険は個人で保険料を全て納めますが、社会保険の場合は雇い主と折半で保険料を納めるのが決まりです。どちらの保険に加入しているかによって、住所変更の手続き方法も変わります。
国民健康保険の場合は加入している本人が、自治体へ出向いて住所変更を届け出るのが基本です。社会保険の住所変更は雇い主(保険が適用されている事業所)が、日本年金機構に対して「健康保険・厚生年金の被保険者住所変更届」を出します。
【会社員】社会保険証の住所変更をする方法
社会保険の住所変更届は会社が本人に代わって、日本年金機構に提出します。ですが、引っ越す本人がしなければならない作業もあるので、必要な手続きを確認しておきましょう。
会社へ報告して住所欄を修正
勤務先で社会保険に加入している場合、基本的には会社に住所の変更を報告するだけで問題ありません。
従業員(被保険者本人)の住所が変わったら、会社(健康保険・厚生年金の適用事業所)は本人に代わって日本年金機構に「健康保険・厚生年金の被保険者住所変更届」を提出します。
扶養家族の社会保険証についても会社が手続きをしてくれます。
従業員の住所情報や社会保険について管理している部署は人事・総務部門であることが多いですが、会社によって報告先や方法が異なるので、必ず勤務先に確認しましょう。
保険証の裏にある住所欄は自分で書き換える
社会保険の保険証の表面には住所欄がなく、裏面に自分で記入する形式になっています。住所が変わった場合は、新住所を忘れずに書き込みましょう。
旧住所は二重線で消すか、スペースがない場合はシールを貼って新住所を上書きしてください。
社会保険の登録情報が自動的に変わるケースも?
マイナンバーと基礎年金番号がひも付いている従業員は、社会保険の住所変更のために会社への届け出をする必要がありません。住民票などの異動時に、社会保険の登録情報も自動で更新されるためです。
自分のマイナンバーが基礎年金番号とひも付いているかは、「ねんきんネット」のホームページから調べられるようになっています。
万が一自治体での転居届や、異なる自治体への転出・転入届が正しく処理されていないと、自動で住所変更されません。
ただし会社は社会保険手続きのためだけでなく、緊急連絡先の把握や郵便物の送付などさまざまな理由から従業員の住所を管理しています。社会保険の登録情報が自動的に変わる場合でも、結局会社への報告は必要な場合がほとんどです。
参考:ミツモアで引越しのプロに依頼する ※神奈川県のページに移動します。
【自営業・個人事業主・無職】国民健康保険証の住所変更方法
国民健康保険の住所変更は本人が市区町村の役所で行います。どのように手続きをすればよいのでしょうか?引っ越し先によって届け出の仕方が変わるため、それぞれの方法を覚えておきましょう。
【返却なし】同じ市区町村内で引っ越す場合
市区町村をまたがない引っ越しの場合は、役所で住所変更の手続きをするだけで保険証がそのまま使えます。
住民票の住所変更手続きである転居届の提出とあわせて国民健康保険の手続きも済ませると二度手間になりません。
手続き場所 | 住んでいる自治体の役所 |
手続き期限 | 転居日から14日以内 |
必要なもの | 【本人申請の場合】
【代理人申請の場合】
|
代理人申請 | 可能 |
郵送申請 | 不可(自治体によって異なる可能性あり) |
基本的には役所で案内された書類に記入・押印するだけで終わりますが、自治体によって変わる場合もあるため事前に確認しておきましょう。
代理人による申請も可能ですが、基本的に新しい保険証の交付は書留で本人の住所に郵送となります。
【返却あり】別の市区町村に引っ越す場合
異なる市区町村へ引っ越す場合、一度引越し前の自治体の保険から脱退して引っ越し先の自治体の保険へ加入する形になります。
つまり引越し前の自治体で保険証を返却する「資格喪失手続き」と、引っ越し先の自治体での「加入手続き」の2つが必要です。
旧居のある自治体で資格喪失手続き
住民票を別の自治体に移すための「転出届」を出すとき一緒に済ませておけば、効率的に引っ越しの準備が進みます。
手続き場所 | 引越し前に居住していた自治体の役所 |
手続き期限 | 転出日から14日以内(転出日前から手続き可能) |
必要なもの | 【本人申請の場合】
【代理人申請の場合】
|
代理人申請 | 可能 |
郵送申請 | 可能(自治体によって異なる可能性あり) |
新居のある自治体で加入手続き
引っ越し後は転居先の自治体で新しく国民健康保険に入り直します。転入届の手続きとあわせておこないましょう。
手続き場所 | 引っ越し先の自治体の役所 |
手続き期限 | 転入日から14日以内(転入日より前の手続きは不可能) |
必要なもの | 【本人申請の場合】
【代理人申請の場合】
|
代理人申請 | 可能 |
郵送申請 | 可能 |
必要なものや手続き方法をあらかじめ自治体のホームページ等でチェックして、窓口で不備が発覚しないようにしましょう。
国民健康保険の住所変更をしないとどうなる?
手続きの完了までは医療費が全額負担になる
保険証の住所変更が済んでいないと、ケガや病気で医療機関にかかったとき、支払う医療費に保険が適用されません。
実際に住んでいる場所と違う住所のままになっていると、保険証が無効になってしまうためです。
保険が適用されていれば医療費の自己負担は3割です。本来かかるはずだった金額のうち7割を保険者が代わりに支払っているため、10,000円の治療を受けても自己負担額は3,000円で済みます。
しかし住所変更の手続きをしておらず保険証が無効になっていると、10,000円全て支払わなければなりません。後から申請すれば保険適用で引かれるはずだった分は戻ってきますが、領収書をはじめとした多くの書類が必要です。
引っ越し直後に万が一病気をしたりケガをしてしまったりといったトラブルが起きたときに備えて、保険証の住所変更は必ず済ませましょう。
請求書支払いの場合は保険料の請求書が届かない
国民健康保険にも社会保険にも保険料の支払い義務があります。被保険者が毎月決められた額を支払うことで、保険適用の医療を受けた人が払う医療費のうち保険者の負担分をまかなう仕組みです。
保険証の住所変更をしなければ、国民健康保険の請求書が新しい住所に届きません。しかし保険への加入は義務なので、後からまとめて未払い分の保険料を支払わなくてはなりません。
社会保険の場合は勤め先が給与から差し引いて代わりに使っているため、長く滞納する心配はないでしょう。しかし所定の手続きを怠っていると場合によっては給与からの差し引きができず、まとまった支払いが発生する恐れもゼロではありません。
国民健康保険の住所変更と一緒に済ませたい手続き
保険証の住所変更の他にも、引っ越しに当たって済ませておきたい手続きがあります。紹介するものの住所変更をリストアップして、転居の準備を進めましょう。
国民年金・厚生年金の住所変更
健康保険と同じく年金も、引っ越しに当たって住所変更が必要です。20歳以上の国民に義務づけられている国民年金の加入パターンは、次の3種類に分けられます。
- 第1号被保険者:自営業者、フリーター、農業・漁業の従事者、学生、無職
- 第2号被保険者:厚生年金保険の適用を受ける事業所に勤める会社員
- 第3号被保険者:第2号被保険者の扶養家族
第1号保険者に当てはまる人でも、マイナンバーと基礎年金番号がひも付いている人は特に手続きをしなくてもOKです。まだ結びついていない場合は自分で自治体の役所に出向き、年金手帳と本人確認書類を提示して住所変更を届け出ます。
第2号被保険者でマイナンバーと基礎年金番号の結びつきがない人は、会社に「被保険者住所変更届」を出すだけで手続きは完了です。扶養されている第3号被保険者(扶養家族)も同様に、会社が事務処理するため必要な手続きは特にありません。
印鑑登録の住所変更
実印を利用するために印鑑を自治体に登録をしている人は、引っ越し手続きのときに印鑑登録の手続きもしておきましょう。
同一市区町村内での転居であれば、転居届を出したとき自動的に印鑑登録の住所も変更されます。ただし特別区である東京23区や政令指定都市では、市内の区に移っただけでも自治体をまたいだ場合と同じ手続きが必要です。
別の自治体への引っ越しでは転出の際、印鑑登録を廃止したい旨を申し出ます。一部の自治体では転出と同時に印鑑登録が自動的に廃止されるケースもあるため、事前に窓口へ問い合わせておくと確実です。
引っ越し先では登録したい印鑑と本人確認書類を持って役所に行き、新たに印鑑登録をします。ほとんどの自治体で登録できる印鑑の規格は変わりません。
マイナンバーカードの住所変更
マイナンバーカードを持っている人は、引っ越したら「住所変更」の手続きをしましょう。同じ市区町村内での転居であれば転居届を提出したときに、マイナンバーカードの住所変更も可能です。
マイナンバーカードと本人確認書類を提出して、本人確認が済んだ後カードの表にある住所追記欄に新居の住所を記入します。暗証番号が必要な自治体もあるためメモに控えて持っていくと安心です。
引っ越し先が違う自治体の場合、マイナンバーカードの住所変更には「継続利用」の手続きをします。持ち物は同じ自治体のときと基本的に同じです。
届け出をしないとカードが失効してしまう場合があるため、転入届に書いた引っ越し予定日より30日以内・転入届を出してから90日以内に手続きを済ませましょう。
引っ越し後、保険証はいつ届く?
引っ越しの手続きを終えた、新しい保険証が届くまでの期間は人によって異なります。
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同じ市区町村内の引っ越し
手続き時に、印鑑と本人確認できるもの(運転免許証やパスポートなど)を持参すると、当日中に貰うことができます。
印鑑と本人確認できるものがない場合は、後日郵送されます。届くまでの期間はおおよそ1週間です。引っ越し繫忙期だと、2週間かかる可能性もあります。
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異なる市区町村への引っ越し
引っ越し先の保険証は郵送で届きます。こちらも手に届くまで1~2週間ほどかかります。なるべく早く保険証が欲しい方は、手続きを早めに行いましょう。
保険証の郵送待ち中に病院に行きたい場合は?
自治体によりますが、役所で国民健康保険の加入手続きをしたあと、新しい保険証が書留による郵送交付となることがあります。この場合、一時的に保険証が手元にない期間が発生してしまいます。
その期間に病院に行かなければならないときはどうすればよいのか、まとめてみました。
即日交付を依頼するか、仮の保険証を発行してもらう
定期的に通院をしている方など、保険証が届くまでの期間に病院に行く可能性が高い方は、加入手続きをしたときに役所窓口で急いでいる旨を相談してみましょう。
新しい住所の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証等)を提示すれば、その場で交付まで対応してもらえる可能性があります。
即日交付が難しくても、仮の保険証である資格証明書を発行してもらえるはずです。
自治体によって対応が異なるので、窓口での案内にしたがいましょう。
医療費を全額支払っても払い戻しを受けられる
急な体調不良や怪我など、もし保険証が手元にない状態で病院にかかった場合でも、その場で費用を全額負担すれば診察や治療を受けることは可能です。
負担した費用も、国民健康保険の加入手続きが終われば払い戻しが受けられるので安心してください。
払い戻してもらうには自治体への申請が必要なので、詳しくはお住まいの自治体のホームページ等で確認しましょう。
国民健康保険料の過払い・未払いが発生した場合
旧居と新居の自治体が異なる場合、資格喪失手続きと再加入の手続きのタイミングによっては、保険料の支払いが重複したり、未払い期間が発生したりする可能性があります。
基本的には、保険料はどこか1つの自治体に対して途切れることなく納めなければならないので、過払い・未払い分はあとから調整します。
重複期間が発生した場合:過払い分の還付を受ける
旧居のある自治体での資格喪失手続きが遅れると、保険料の請求が重複することがあります。
重複して支払ってしまった分の保険料は還付を受けることが可能です。
ただし還付請求の期限は2年間ですので、早めに自治体に連絡をしましょう。
再加入が遅れた場合:さかのぼって未払い分を支払う
旧居のある自治体で脱退手続きをしたあと、引っ越し先で加入の手続きをするまでは保険料の請求書が送られてきません。
加入手続きが遅れると、保険料を支払わない期間が発生することになります。
ただし健康保険への加入は義務です。脱退後、再加入の手続きをするまでの期間分の保険料は、さかのぼって支払う必要があるので注意しましょう。
引っ越したら早めに保険証の住所変更を
引っ越し時に保険証の住所変更をしなければ、医療費が自己負担になってしまいます。後から高額な保険料を請求される可能性もあるため、転居してから14日以内に手続きを終わらせましょう。
引越し時は保険証の手続き以外にもやるべきことが多くあります。国民健康保険に加入している人やマイナンバーカードを持っている人は、国民年金や印鑑登録・マイナンバーカードの住所変更も役所で行います。
以下の記事では全体像をまとめているので、手続き漏れがないようにチェックしておきましょう。
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