引っ越しの際、住民票の異動とあわせて保険証(被保険者証)の住所変更が必要です。
個人事業主や無職の人などは、引っ越し日前後14日以内に市区町村の専用窓口で資格喪失と加入手続きをします。一方、会社員の人は引っ越しが決まった後、速やかに担当部署へ住所が変わった旨を伝える必要があります。
引っ越しに伴う保険証の住所変更について、国民健康保険と社会保険の手続き方法や期限、対応箇所を含めて解説します。
保険証の住所変更は原則2週間以内に行う
健康保険には会社員ではない人が加入する「国民健康保険」と、会社員の人が加入する「社会保険(被用者保険)」があります。
国民健康保険は14日以内に、社会保険は明確に決まっていませんが、原則14日以内に住所変更することになっています。
引っ越しに伴う住所変更を行う場合、保険の種類によって下記のように保険証(被保険者証)の手続き方法が変わるので、確認しましょう。
保険証の種類 | 国民健康保険 | 社会保険(被用者保険) |
主な加入対象 | ・自営業者 ・個人事業主 ・無職の人 ・上記の家族 など |
・会社勤務の正社員+その家族 ・非正規雇用労働者+その家族 ・公務員など |
期限 | 引っ越し日の前後14日以内 | 原則引越し日の14日前後(就業規則に基づいて速やかに届け出る) |
住所変更の方法 | 【異なる市区町村へ引っ越す時】
資格喪失と加入手続きを行う 【同じ市区町村へ引っ越す時】 住所変更手続きを行う |
・会社の担当部署に手続きを依頼する
・健康保険証の住所欄に記載した旧住所を新住所に修正する |
手続きに必要な書類 | ・国民健康保険証 ・本人確認書類(運転免許証など) ・印鑑 |
本人確認書類(運転免許証など) |
提出場所 | 市区町村の役所(役場) | 会社の担当部署 |
国民健康保険の住所変更方法
引っ越しで住所が変わった場合、原則として国民健康保険の加入者自身が市区町村の役所に足を運んで手続きすることが必要です。家族がいるとき、住民票に記載された住所が一緒であればまとめて手続きができます。
ただし下記のように新居を構える住所によって、手続きの方法が異なるので注意しましょう。
引っ越し先 | 必要な手続き | 対象者 | 手続き場所 | 手続き期限 |
別の市区町村 | 資格喪失 | 本人、世帯主、同一世帯の人、代理人 | 旧居がある市区町村の役所 | 引っ越し日前後から14日以内 |
別の市区町村 | 加入手続き | 本人、世帯主、同一世帯の人、代理人 | 新居がある市区町村の役所 | 引っ越し日から14日以内 |
同じ市区町村 | 住所変更 | 本人、世帯主、同一世帯の人、代理人 | 新居を管轄する市区町村の役所 | 引っ越し日から14日以内 |
別の市区町村に引っ越す場合
今までに住んでいたところから新居のある住所が異なる場合、「資格喪失」の手続きと「加入」の手続きが必要です。
資格喪失の手続き(引っ越し前に住んでいた市区町村の役所)
引っ越し前に住んでいた市区町村の役所で行います。住民票を別の自治体に移すための「転出届」を出すとき一緒に済ませておけば、効率的に引っ越しの準備が進められるでしょう。
手続き場所 | 旧居の市区町村の役所 |
手続き期限 | 引っ越し日から14日以内(引っ越し日前から手続き可能) |
必要な書類 | 【本人申請の場合】
【代理人申請の場合】
|
代理人申請 | 可能 |
郵送申請 | 可能(自治体によって異なる可能性あり) |
国民健康保険の加入手続き(新居がある市区町村の役所)
引っ越し後は転居先の自治体で新しく国民健康保険に入り直します。転入届の手続きとあわせて行うと効率的です。
手続き場所 | 新居がある市区町村の役所 |
手続き期限 | 引っ越し日から14日以内(引っ越し日前から手続きは不可能) |
必要な書類 | 【本人申請の場合】
【代理人申請の場合】
|
代理人申請 | 可能 |
郵送申請 | 可能(自治体によって異なる可能性あり) |
同じ市区町村内で引っ越す場合
引っ越し先を管轄する市区町村の役所に足を運んで住所変更の手続きを行います。転居届の提出とあわせて、国民健康保険の手続きも済ませておくと安心です。
手続き場所 | 新居を管轄する市区町村の役所 |
手続き期限 | 引っ越し日から14日以内(引っ越し日前から手続きは不可能) |
必要な書類 | 【本人申請の場合】
【代理人申請の場合】
|
代理人申請 | 可能 |
郵送申請 | 不可能(自治体によって異なる可能性あり) |
市区町村によって対応が異なりますが、役所で直接手続きを行ったとき、印鑑と本人確認ができた場合に受け取れます。ただし代理人による申請を含め、多くの自治体は後日簡易書留郵便で発送します。新しい保険証が加入者本人に届くのに、1〜2週間かかるので注意しましょう。
社会保険(被用者保険)の住所変更方法
勤務先で社会保険(被用者保険)に加入している人は、会社の担当部署(人事部や総務部など)に連絡して住所変更の手続きを依頼しましょう。依頼した後、担当部署が本人に代わって手続きを代行してもらえます。具体的に行う作業内容は、下記のとおりです。
勤務先の担当部署に住所変更を依頼する
基本的には会社の担当部署に住所が変わったことを連絡するだけで問題ありません。連絡を受けて担当部署は、本人に代わって「健康保険・厚生年金の被保険者住所変更届」に必要事項を記入した後、日本年金機構に提出します。その際、会社の指示に従ってマイナンバーや住所といった情報を提供しましょう。
提出した後、日本年金機構で住所変更の手続きを行い、全国健康保険協会のデータと同期すれば完了です。なお、本人のマイナンバーと基礎年金番号が紐づけられているときは、被保険者住所変更届の提出は不要になります。
変更手続きの具体的な期限は定められていませんが、引っ越しで住所が変わる場合は、就業規則に基づいて速やかに会社の担当部署に住所変更を届け出ましょう。
自分で保険証裏面の住所欄を修正する
住所変更を依頼した後、自分で保険証(被保険者証)の裏面に記載されている住所を修正しましょう。旧住所は二重線で消すか、スペースがない場合はシールを貼って新住所を上書きします。
住所の修正を忘れても保険証自体が使えないことはありませんが、医療機関を受診する際、登録されている住所と、保険証に記載した住所と合っているか確認することがあります。
保険証の住所変更しないとどうなる?
国民健康保険と社会保険の保険証(被保険者証)の住所変更をしないと、下記のような事象が発生します。
医療費が全額自己負担になる
保険が適用されていれば医療費の自己負担は3割です。保険証の住所変更が済んでいないと、ケガや病気で医療機関にかかったとき、支払う医療費に保険が適用されず、医療費は全額自己負担になります。
たとえば、10,000円の治療を受けても自己負担額は3,000円で済みますが、住所変更をしないと10,000円全て支払わなければなりません。後から申請すれば保険適用で引かれるはずだった分は戻ってきますが、領収書をはじめとした多くの書類が必要です。
引っ越し直後に万が一病気をしたりケガをしてしまったりといったトラブルが起きたときに備えて、保険証の住所変更は必ず済ませましょう。
保険料の納付書が届かなくなる
保険証の住所変更を済ませておかないと、国民健康保険料の請求書が新しい住所に届きません。この状態が続くと、保険料が未納の状態になり、再度加入した後も滞納分や延滞金を含む高額な支払いが発生します。
社会保険の場合も、勤め先の給与からの差し引きができず、まとまった支払いが発生する可能性があります。引っ越しが終わったら、速やかに住所変更の手続きを行いましょう。
保険証が届くまで病院に行きたい場合はどうする?
社会保険の保険者証(被保険者証)は会社に住所変更の申し出をして、自分で保険証の住所を修正すれば利用できます。
その一方、国民健康保険は住所変更を行った後、新しい保険証を簡易書留で郵送交付する場合があり、一時的に保険証が手元にない期間が発生してしまいます。
保険証が届かない期間に病院に行く必要がある場合、以下の対応をしましょう。
即日交付を依頼するか、仮の保険証を発行してもらう
定期的に通院をしている方など、保険証が届くまでの期間に病院に行く可能性が高いときは加入手続きの際、市区町村の窓口で急いでいる旨を相談してみましょう。
新しい住所の本人確認書類(マイナンバーカード、運転免許証など)を提示すれば、その場で交付まで対応してもらえる可能性があります。
即日交付が難しいときでも、仮の保険証にあたる「資格証明書」を発行してもらえます。自治体によって対応が異なるので、窓口での案内にしたがいましょう。
医療費を全額負担して交付後に払い戻しを受ける
急な体調不良やケガなど、もし保険証が手元にない状態で病院にかかった場合でも、その場で費用を全額負担すれば診察や治療を受けられます。負担した費用も、国民健康保険の加入手続きが終わり、保険証を受け取れば、払い戻しができるでしょう。
ただし払い戻しを依頼する際、新居を管轄する市区町村の役所に申請が必要です。窓口やホームページで申請方法を確認しておきましょう
国民健康保険料の過払い・未払いが発生した場合
旧居と新居の引っ越し先が異なる場合、資格喪失手続きと再加入の手続きのタイミングによっては、保険料の支払いが重複したり、未払い期間が発生したりする可能性があります。その際は、下記の対応を行いましょう。
重複期間が発生した場合:過払い分の還付を受ける
旧居のある市区町村で国民健康保険の資格喪失手続きが遅れると、保険料の請求が重複することがあります。
重複して支払ってしまった分の保険料は還付を受けられますが、還付請求の期限は2年間なので、早めに自治体に連絡をしましょう。
再加入が遅れた場合:さかのぼって未払い分を支払う
旧居のある自治体で脱退手続きをしたあと、引っ越し先で加入の手続きをするまでは保険料の請求書が送られてきません。
その際に加入手続きが遅れると、保険料を支払わない期間が発生します。ただし健康保険への加入は義務です。
脱退後、再加入の手続きをするまでの期間分の保険料は、さかのぼって支払う必要があるので注意しましょう。
マイナンバーカードと保険証を紐づけるメリットと手順
2021年10月から一部の医療機関や薬局で、マイナンバーカードを健康保険証として利用できるようになりました。2024年12月2日から現行の健康保険証が廃止され、マイナンバーカードと保険証との紐づけが必要になります。
健康保険証との紐づけを行っていない人に対しては、当分の間「資格確認書」が発行される予定ですが、引っ越しを契機にマイナンバーカードと保険証を紐づけておくと安心です。メリットと手順について解説します。
新しい保険証が届くまで待たずに利用できる
国民健康保険の場合、引っ越し時に住所変更した後、新しい保険証が届くまで医療機関に受診すると、医療費を全額負担しないといけませんでした。
マイナンバーカードと保険証を紐づけておくと、保険証として医療機関や薬局に提示でき、手続きなしで医療費の負担も3割に軽減できます。
企業の社会保険にも対応しているので、引っ越し後の手続きに煩わしさを感じる人は、一体化を検討しましょう。
マイナンバーカードと保険証を紐づける手順
政府が運営する「マイナポータル」からスマホまたはパソコンで手続きができます。マイナンバーカードを用意したうえで下記のような手順で紐づけましょう。
マイナンバーカードと保険証を紐づける手順(スマホの場合)
- スマホに「マイナポータル」アプリをダウンロード
- アプリにログインして「マイナンバーカードの健康保険証利用申込」をタップ
- マイナポータル利用規約を確認した後、「同意して次へ進む」をタップ
- マイナンバーカード登録時に設定した4桁の暗証番号を入力
- スマホでマイナンバーカードを読み取る
- 遷移先のページに「登録完了」と表示されていれば手続き完了
マイナンバーカードの住所変更も忘れずに
新居への引っ越しが決まった際、忘れずに手続きを済ませておきたいのが、マイナンバーカードの住所変更です。同じ市区町村内での転居であれば転居届を提出した際、マイナンバーカードの住所変更が可能です。
マイナンバーカードと本人確認書類を提出して本人確認が済んだ後、カードの表にある住所追記欄に新居の住所を記入します。暗証番号が必要な自治体もあるためメモに控えて持っていくと安心です。なお現住所から別の市区町村に引っ越す場合、「継続利用」の手続きをします。
引っ越し日から14日以内に転入や転居に伴う住所変更をしないと、マイナンバーカードの継続利用ができなくなり、失効します。
加えて、転入届が受理された日から90日以内にマイナンバーカードの継続利用手続きを済ませないと、同様に失効してしまうので注意しましょう。
引っ越しに伴う電子証明書の有効期限
引っ越しに伴う住所変更があっても、マイナポータルへのログインや、コンビニでの住民票の写しを交付する際に必要な「利用者利用者証明用電子証明書」は有効期限まで利用できます。
ただし「署名用電子証明書」は住所変更時に失効します。マイナポータル経由でパスポートの更新をしたい人や、確定申告でe-Taxを利用したい人は、転入届を提出する際に新しい署名用電子証明書の発行を申請しましょう。
国民健康保険の住所変更と一緒に済ませたい手続き
国民健康保険の保険証とあわせて、主に下記3つの異動手続きも忘れずにやっておくと安心です。
国民年金の住所変更手続き
マイナンバーと基礎年金番号を紐づいていない被保険者は引っ越した際、住所変更の届け出が必要です。引っ越し先がある市区町村の役所に所定の住所変更届をはじめとした必要書類を提出します。
手続き場所 | 新居を管轄する市区町村の役所 |
手続き期限 | 引っ越し日から14日以内 |
必要な書類 | 【本人申請の場合】
【代理人申請の場合】
|
代理人申請 | 可能 |
郵送申請 | 可能(管轄する年金事務所) |
マイナンバーと基礎年金番号が紐づいていれば、手続きは不要です。日本年金機構の「ねんきんネット」で紐づいているか確認できるので、引っ越す前に確認しておきましょう。
印鑑登録の住所変更手続き
実印を利用するために印鑑を自治体に登録をしている人は、引っ越し手続きのときに印鑑登録の住所変更手続きも行いましょう。引っ越し先によって手続きに必要な書類が異なるので、確認しておくと安心です。
同じ市区町村内での引っ越す場合
原則として印鑑登録の変更手続きは不要です。引っ越し日から14日以内に転居届を提出すれば、印鑑登録した住所も自動的に上書きされます。なお印鑑登録証や印鑑証明書は引っ越し先でも引き続き利用できます。
手続き場所 | 新居を管轄する市区町村の役所 |
手続き期限 | 引っ越し日から14日以内 |
必要な書類 | 【本人申請の場合】
【代理人申請の場合】
|
代理人申請 | 可能 |
別の市区町村内での引っ越す場合
旧居を管轄する市区町村の役所に転出届を提出した時点で、自動的に旧住所の印鑑登録は廃止されます。引っ越した後、新居を管轄する市区町村で新たに「印鑑登録」の手続きを行います。
手続き場所 | 新居を管轄する市区町村の役所 |
手続き期限 | 特に期限は定められていないが、できる限り早めに |
必要な書類 | 【本人申請の場合】
【代理人申請の場合】
|
代理人申請 | 可能 |
運転免許をはじめとした自動車関連の変更手続き
自家用車を所有している人は運転免許証やナンバープレートといった自動車関連の住所変更をする場合、変更手続きを行いましょう。証明書類によって手続きする場所や期限が異なります。
自動車関連の証明書類 | 手続き場所 | 手続き期限 |
運転免許証 | 最寄りの警察署、運転免許更新センター、運転免許試験場 | 引っ越し日から14日以内 |
車庫証明 | 最寄りの警察署 | 引っ越し日から15日以内 |
車検証・ナンバープレート | ・運輸支局(普通自動車)
・管轄の軽自動車検査協会(軽自動車) |
引っ越し日から15日以内 |
自賠責保険・任意自動車保険 | 保険会社の店頭窓口やウェブサイト | 特に定められていないが、速やかに |
引っ越したら早めに保険証の住所変更を
引っ越しが決まったら、期日までに保険証の住所変更を行わないと、医療費の負担額が増えてしまうほか、保険料も未払い分をさかのぼって支払う手間がかかります。保険証の住所変更とあわせて、住民票の異動やライフラインの手続き、引っ越し業者から見積もりを取りましょう。
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