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相続による家屋の名義変更は必須|必要書類や具体的な方法

最終更新日: 2024年10月09日

大切な家族が残してくれた家。その想いをしっかりと受け継ぐためには、相続した家屋の名義変更手続きが欠かせません。しかし、初めての方にとっては手続きの流れや必要書類など、疑問点も多いでしょう。

そこで本記事では、相続による家屋の名義変更を行う重要性や手順、必要書類などを詳しく解説します。トラブルなく手続きを終えたい方は是非ご一読ください。

家屋を相続したら名義変更が必要

不動産を相続した場合、名義変更が必要になります。これは、相続によって不動産の所有者が変わるため、法的な手続きとして所有権の移転を登記する必要があるためです。

具体的には、親から子へ不動産が相続された場合、法務局へ必要書類を提出し、登記簿上の所有者を親から子へ変更する手続きを行います。

手続きを怠ると、不動産を売却したり担保にしたりすることができず、また固定資産税の納税義務者も変更されないため、様々な不都合が生じる可能性があります。

相続した家屋の名義変更をしないデメリット

ペン

家屋を相続する場合は名義変更を行わなければいけません。もし名義変更を行わない場合、以下のようなデメリットが発生します。

  • 罰金が科せられる
  • 数次相続が起こり煩雑化する
  • 相続した家屋を売却できない
  • 相続持分売却のリスクがある
  • 自分の子供への負担が大きくなる

罰金が科せられる

相続した家屋の名義変更を怠ると、罰金を科せられる可能性があります。2024年から相続登記が義務化され、違反した場合10万円以下の過料が科せられることになりました

厳密に言うと、科せられる可能性があるのは「罰金」ではなく「過料」です。過料とは、行政上の義務違反に対して科せられる金銭的なペナルティであり、刑事罰としての罰金とは異なります。

過料の金額は10万円以下と定められていますが、具体的な金額は違反の程度や状況などを考慮して個別に判断されます。また、過料を支払わない場合は、財産の差し押さえなどの強制執行が行われる可能性もあるため注意が必要です。

数次相続が起こり煩雑化する

相続した家屋の名義変更をしないデメリットの一つとして、相続の手続きが煩雑化することが挙げられます。その理由は、相続登記が遅れると、その間に相続人だった方が亡くなってしまう可能性があるからです。

すると次の相続が発生し、遺産分割協議の対象となる相続人の数が増えてしまいます。これを「数次相続」と呼びます。相続人が増えれば増えるほど全員の合意を得ることが難しくなり、手続きが長期化したり、争いに発展したりする可能性も出てきます。

したがって、相続した家屋の名義変更は可能な限り速やかに行うことが重要です。

相続した家屋を売却できない

相続した家屋の名義変更をしないデメリットは、相続した家屋を売却できないことです。不動産の売却は、原則として名義人本人が行わなければいけません。

名義変更をせずに放置しておくと、いざ売却したいと思っても手続きが煩雑になったり、売却自体が難しくなったりする可能性があります。

例えば、相続人が複数いる場合、全員の同意を得なければ売却できません。名義変更がされていないと誰が相続人なのか明確でないため、全員の同意を得ることが困難になるでしょう。

相続持分売却のリスクがある

相続した家屋の名義変更をしないままだと、思わぬリスクに直面する可能性があります。その一つが、相続持分売却によるトラブルです。

相続登記を怠ると、法的には相続人全員が家屋を共有している状態が続きます。この状態では、他の相続人の同意を得ることなく自分の相続持分だけを第三者に売却できてしまうのです。

例えば、共有者の一人が経済的に困窮し、自分の持分を売却したとします。すると残りの共有者は、突然見知らぬ他人と家を共有することになります。最悪の場合、共有者間でトラブルが発生し、訴訟に発展する可能性も否定できません。

このように、相続登記をしないまま放置すると、将来大きな問題に発展するリスクもあります。

自分の子供への負担が大きくなる

相続した家屋の名義変更を怠ると、将来自分の子供に大きな負担をかけることになります。なぜなら、名義変更をせずに放置すると、相続が発生するたびに手続きが複雑化していくからです。

具体的には、子供が相続登記をする際に被相続人が増えていくため、必要な戸籍謄本の数も増加します。手続きに時間がかかったり、複雑さゆえに専門家への依頼費用が高額になったりすることも考えられます。

家屋の名義変更を先延ばしにすることは、子供や孫など将来の世代に負の遺産を残すことになりかねません。面倒でも今のうちに名義変更を済ませておくことが、家族への思いやりです。

相続してから家屋の名義変更を行う手順

不動産登記

相続による家屋の名義変更は、タイミングによって進め方が異なります。本章では、相続後に名義変更を行う場合の手順を解説します。

  • 家屋の名義を確認する
  • 相続人を決定する
  • 財産分割協議を行う
  • 必要書類を準備する
  • 申請書を作成する
  • 法務局へ申請する

家屋の名義を確認する

まず、家屋の名義を確認する必要があります。現在の所有者が誰なのかを把握することが、相続後の名義変更手続きの第一歩です。具体的には、法務局で登記事項証明書を取得することで、現在の所有者や担保権の有無などを確認することができます。

登記事項証明書を請求する方法は以下の3つです。

  • 法務局窓口
  • 郵送
  • オンライン

1つ目は管轄の法務局窓口での請求です。法務局へ直接出向き、申請書に必要事項を記入します。申請書を提出して手数料を支払うことで、その場で証明書を受け取れます。

2つ目は郵送での請求です。法務局のウェブサイトから申請書をダウンロードし、必要事項を記入、手数料分の収入印紙と返信用封筒を同封して郵送します。後日、証明書が郵送されてきます。

3つ目は、オンラインでの請求です。法務局のオンラインシステムを利用し、必要事項を入力、手数料をクレジットカードなどで支払います。証明書の受け取り方法は、郵送または法務局窓口での受け取りを選択できます。

なお、窓口や郵送での請求の場合、手数料は600円です。対してオンライン請求の場合は500円(窓口で受け取る場合は480円)となっています。手数料を抑えたい方にはオンライン請求がおすすめです。

相続人を決定する

相続人を確定させる方法は、遺言書の有無によって異なります

遺言書がある場合は、その内容に従って相続人を決定します。遺言書に指定された人が、家屋の新しい所有者となるわけです。例えば、父親が遺言書で「自宅は長男に相続させる」と指定していた場合、長男が自動的に家屋の相続人となります。

一方、遺言書がない場合は、民法で定められた法定相続人が相続人となります。法定相続人には、配偶者や子供、親などが含まれます。誰が法定相続人なのかは、戸籍謄本で確認可能です。

財産分割協議を行う

遺言書で特定の相続人が指定されていない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行う必要があります。先述のとおり、遺言書がない場合は民法で定められた法定相続人が自動的に相続人となります。

すると相続財産は相続人全員の共有財産となります。共有状態のままでは家屋の売却や賃貸などの処分が難しくなるため、遺産分割協議が必要です。

例えば、父親が遺言書を残さずに亡くなった場合、民法では母親が2分の1、子供2人が4分の1ずつ相続する権利を有します。父親名義の家屋もこの割合で共有されることになります。

この家屋を母親が相続したい場合は、子供2人の同意が必要です。遺産分割協議を行い、母親が家屋を相続し、子供2人には代わりに預貯金などを相続させるといった内容で合意すれば、共有状態を解消し母親が単独で家屋を所有できます。

必要書類を準備する

相続によって家屋の名義変更を行うには、様々な書類が必要になります。主な必要書類は以下のとおりです。

  • 戸籍謄本
  • 遺産分割協議書
  • 相続人の印鑑証明書
  • 住民票
  • 固定資産評価証明書
  • その他法務局から指示された書類

ただし、必要書類は状況によって異なるため、事前に法務局や専門家に相談して必要な書類を正確に把握することが重要です。漏れや不備があると、手続きが遅延したり名義変更が認められなかったりする可能性もあります。

申請書を作成する

法務局のホームページを参考に申請書を作成しましょう。対象の様式をダウンロードし、必要事項を記入してください。

申請書の作成について不明点があれば、法務局に電話で問い合わせることも可能です。法務局の職員が丁寧に教えてくれます。

法務局へ申請する

最後に、管轄の法務局を調べて申請を行いましょう。法務局のホームページで管轄を確認し、必要書類と申請書を持参して窓口で手続きを進めます。

遠方の場合や多忙な場合は、郵送でも提出が可能です。郵送の場合は必要書類や返信用封筒などを同封し、簡易書留などの追跡可能な方法で送付してください。

生前贈与で家屋の名義変更を行う手順

申請書

次に、生前贈与によって家屋を受け取った場合の名義変更手順を解説します。

  • 必要書類を準備する
  • 申請書を作成する
  • 法務局へ申請する

必要書類を準備する

生前贈与で家屋の名義変更を行うには、贈与する側とされる側それぞれで必要な書類を準備し、法務局への登記申請手続きを行う必要があります。

生前贈与で家屋の名義変更を行う際に必要な手順は以下のとおりです。

  • 贈与契約書
  • 固定資産評価証明書
  • 贈与税の申告書

加えて、贈与する側は所有権移転登記を行うために「登記事項証明書」と「印鑑証明書」が必要となります。一方、贈与される側は、贈与税の申告と登記手続きにおいて本人確認書類として「住民票」と「身分証明書」が必要です。

生前贈与で家屋の名義変更を行う際には、書類を漏れなく準備してスムーズに手続きを進められるようにしましょう。

申請書を作成する

法務局のホームページから申請書の様式をダウンロードし、記載例や注意事項を参考に記入していきます。贈与者、受贈者の情報、家屋の詳細、贈与契約の内容など、必要事項を正確に記入してください。

不明な点があれば、法務局に直接問い合わせましょう。

法務局へ申請する

必要書類や申請書を管轄の法務局へ提出することで、名義変更の手続きが完了します。管轄の法務局は不動産の所在地によって異なるので、法務局のホームページや電話で確認しましょう。

申請方法は、窓口へ直接出向く方法と、郵送で提出する方法があります。郵送で提出する場合は、申請書や必要書類を封筒に入れ、管轄の法務局へ郵送します。この際、配達記録が残るように簡易書留などの利用がおすすめです。

いずれの方法でも、申請が受理されると数日後に登記が完了し、新しい所有者への名義変更が法的に認められます。

家屋の名義変更手続きの期限

カレンダーと時計

家屋の名義変更手続きは、相続によって不動産を取得したことを知った日から3年以内に行うことが義務付けられています。この期限は2024年4月1日から施行された新しいルールです。もし期限内に手続きを行わないと、10万円以下の過料が科される可能性があります。

相続登記は必要書類の準備や申請手続きなど複雑です。また、相続人が複数いる場合や遺産分割協議が必要な場合は、さらに時間がかかることも考えられます。そのため、早めに専門家に相談してサポートを受けることをおすすめします。

なお、2024年4月1日より前に相続が発生している場合でも、この3年ルールは適用されるので、まだ手続きが済んでいない方は速やかに対応するようにしましょう。

家屋の名義変更にかかる費用

家屋の名義変更にかかる費用は、主に登録免許税と司法書士報酬の2つから構成されます。

登録免許税は、家屋の固定資産税評価額の0.4%と定められています。例えば、評価額が3,000万円の家屋の場合、登録免許税は12万円です。登録免許税は名義変更の際に必ず発生する費用であり、自己申請・司法書士への依頼に関わらず支払う必要があります。

一方、司法書士報酬は、名義変更手続きを司法書士に依頼した場合に発生する費用です。報酬額は司法書士事務所によって異なり、手続き内容の複雑さによっても変動しますが、一般的には数万円程度が相場となっています。

家屋の名義変更にかかる費用は、状況によって大きく異なるため、事前にしっかりと確認しておくことが重要です。必要に応じて専門家に相談し、スムーズな手続きを目指しましょう。

相続による家屋の名義変更を自分で行う場合の注意点

女性

家屋の名義変更は、自分で行うことも可能です。ただ、自分で進める際にはいくつか注意点があるため、事前に確認しておきましょう。

  • 書類の準備に時間や手間がかかる
  • 何度も法務局に行かなければいけない

書類の準備に時間や手間がかかる

相続による家屋の名義変更を自分で行う場合、特に注意したいのは書類の準備に手間がかかることです。名義変更の申請には、戸籍謄本や評価証明書など多くの書類が必要になり、すべて集めるためには多くの時間を要します。

例えば、戸籍謄本は本籍地の役所でしか取得できません。遠方の場合は郵送での請求も可能ですが、手続きに時間がかかる上、戸籍に記載されている内容によってはさらに別の書類が必要になることもあります。

また、申請書自体も複雑で、記入ミスがあると手続きが遅れてしまう可能性があります。不慣れな人にとっては、申請書を書くだけでも大きな負担となるでしょう。

何度も法務局に行かなければいけない

相続による家屋の名義変更を自分で行う場合、何度も法務局へ足を運ぶ必要があります。これは、申請書の提出や必要書類の受け取りなど、窓口で行う手続きが多いためです。日中しか受け付けてもらえないため、フルタイムで働いている場合は大きな負担となるでしょう。

また、申請書類に不備があった場合、修正のために再度法務局へ行く必要が生じることもあります。自分で名義変更を行うとなると、時間的にも精神的にも大きな負担となってしまうでしょう。

相続による家屋の名義変更はプロに任せよう

本記事では、相続時の家屋の名義変更について解説しました。

家屋を相続する場合は名義変更が必要です。名義変更を怠った場合、罰金が発生したり、その後の手続きが煩雑化したりなど、様々なデメリットがあります。また、自分の子供や孫への負担が大きくなる可能性もあるため、名義変更は必ず行いましょう。

ただ、名義変更の手続きは複雑で、自分で行うのは困難です。時間の確保が難しい場合は専門家への依頼も検討しましょう。必要書類の作成は司法書士へ、相続時に発生する税金関連は税理士に依頼することで、円滑に手続きを終えられます。

ただし、税理士に依頼するとなると費用がかかります。なるべく安く済ませたい方には「ミツモア」がおすすめです。いくつかの簡単な質問に答えるだけで、あなたの状況に合った税理士から無料で見積もりを取得できます。是非利用してみてください。

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