喪主とは「遺族の代表者」であり、故人供養の責任者です。葬儀施行全体の差配に立ち会い葬儀社や宗教者とお葬式全体についての打ち合わせを行います。その後の法要や納骨についてもあらかじめ対応しておかなければなりません。
また故人に代わって弔問を受け、いろいろな場面会葬者に対して挨拶を行う立場や、式全体の執行にかかわる総責任者の役割もあります。
喪主の選任やその決め方、具体的に喪主がやるべきことについて解説します。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔
喪主は誰が行うべき?
喪主は厳密には誰が行っても問題ないとされています。ただし慣習として、血縁の近い順で行うことが多いです。また地域の慣習に従う場合もあります。
喪主を決める際の一般的な優先順位は以下です。
- 遺言で指名された人
- 配偶者
- 血縁者(長男→次男以降の直系男子→長女→長女以降の直径女子→故人の両親→故人の兄妹姉妹)
- 知人や友人
遺言書で祭祀主宰者が指定されている場合には、主宰者自身やまた主宰者から指名された人が喪主を務めます。
遺言書が存在しない、または遺言書で喪主が指定されていない場合は、現在では故人の配偶者が喪主を務めるのが一般的です。
配偶者が高齢または闘病中、亡くなっているなどで喪主を務めるのが難しい場合は、血縁関係の近い人から優先的に行うのが一般的です。長男、次男、長女、次女といった順番に優先順位がきまります。なお本人たちで話し合ったうえであれば、たとえば次男が喪主を務めても問題ありません。
故人に配偶者や血縁者などの身寄りがない場合は、入所先の介護施設の代表者や病院関係者、友人・知人が喪主になるケースもあります。
また喪主は原則1人であることが多いですが、複数人で行っても問題ありません。現在では兄弟や姉妹で協力して、連名で喪主を務めることもあるようです。
「喪主」と「施主」との違い
喪主と似ている役割に「施主(せしゅ)」があります。喪主は遺族の代表ですが、施主とは葬儀や法要などの費用を支払う人です。社葬や合同葬といった大規模な葬儀では、喪主と施主を別の人が担当します。
ただし個人・家庭の葬儀では施主を立てることがなく、喪主と兼務するのが一般的です。ただし地方慣例で「喪主」を「施主」に置き換えて使用するなど、同じような意味合いとして通念化している地域もあります。
喪主が具体的にやることを一覧で解説
故人が臨終を迎えたところから事務手続きまで、喪主にはさまざまな仕事があります。喪主が果たすべき具体的な役割について確認しましょう。
葬儀前 |
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葬儀中 |
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葬儀後 |
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葬儀社や宗教者の手配・打ち合わせ
ご逝去から葬儀までの間に喪主が行う内容は、以下の通りです。
- 医師から死亡診断書を受け取り葬儀社を手配
- 親族などに訃報を伝える
- 葬儀社と相談し遺体の安置先を決める
- 遺体の搬送に付き添う
- 葬儀日程を決める
- 菩提寺に連絡する
- 葬儀の日程などの詳細を参列者に伝える
このほか葬儀の準備のために、宗派の確認・故人の正確な住所や本籍の確認・遺影写真の用意・副葬品の用意などを行います。遺影の写真や遺体に着せる衣装選びなどは、ほかの遺族に任せてもかまいません。
葬儀社の選び方や、具体的な手順は以下記事も参考ください。
お通夜や葬儀・告別式での挨拶
お通夜や葬儀の場において、喪主は遺族代表として、参列者への対応や宗教者への挨拶を行います。
お通夜 |
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葬儀・告別式 |
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法要(初七日・四十九日・一周忌など) |
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喪主の挨拶はある程度型があり、言葉遣いのルールが決まっています。具体的な例文は、以下記事も参考にしてみてください。
還骨・初七日忌法要・精進落としの会食
葬儀当日には、還骨や繰り上げての初七日忌法要の読経があることが多いです。火葬後のお骨上げ終了後、予定された会場で行います。
そのまま引き続いて精進落としなどの会食になった際には、その会食前に、喪主は挨拶をしましょう。また宴席の終了まじかの散会前にも、本日の労をねぎらい、長時間のお付き合いに対して感謝を述べます。また、今後の法要や納骨などの予定なども伝えます。
四十九日法要の準備
四十九日は故人がこの世からあの世へ渡る日と考えられており、大きな節目の法要です。仏式葬儀を営んだ場合には、没後初めての大きな法要になります。
- 日程の決定、宗教者の手配
- 会場の予約
- 料理や引出物の注文
- 案内状の手配と発送
- 香典返しの手配
さらに法要当日の喪主は宗教者の出迎えや、前後・要所での挨拶、精進落としの会食での挨拶などを行います。
位牌、仏壇、墓所の準備
本位牌(いはい)・仏壇・墓所の準備も進めなければいけません。位牌とは故人の魂が宿るとされるものです。四十九日には白木の仮位牌から、本位牌への魂の入れ替えの儀式である「開眼供養(かいげんくよう)」が行われます。
仏壇を新調する場合には位牌と一緒に検討しましょう。仏壇を家に設置する場合には宗教者を招き、仏壇の開眼供養も執り行います。
また新しく墓を建てるケースでは、墓地が決まるまでに1~3カ月程度かかると考えましょう。四十九日法要に間に合わない場合は、「百箇日法要(ひゃっかにちほうよう)」や「一周忌(いっしゅうき)」の法要で納骨の儀を行います。
建墓については、あまりあわてなくても良いでしょう。昔は一時的に墓標(木製)を仮に立てておき、それが朽ち果てたころ(7回忌・13回忌など)に石材での建立をしていたようです。
相続、名義変更、各種社会保険などの手続き
役所や関係各所への故人にまつわる手続きも、喪主の役割といえます。申請の期限がある手続きには、注意が必要です。
葬儀のすぐ後に行う手続き |
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死後1カ月から1年以内に行う手続き |
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そのほか必要な手続き |
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各手続きの具体的な手順は、以下記事で解説しています。
葬儀当日の喪主の服装
葬儀当日の喪主の服装は、喪服の中で最も格式が高いとされる、正喪服の着用がふさわしいとされています。正喪服であれば、洋礼装でも和服でも構いません。素材は光沢のない素材、ベルトや靴の素材は動物由来の革製品を避けることを覚えておきましょう。
男性が洋礼装をする場合、正喪服はブラックのモーニングコートに、縞柄でダークグレイのスラックスです。白いワイシャツに黒いネクタイ、ソックスは黒か濃紺を選びましょう。
和服の正喪服は、黒羽二重の染め抜き5つ紋付、羽織袴です。袴は仙台平もしくは博多平、襟は白かグレーの羽二重です。足袋は一般的には白ですが、地域によっては黒にケースもあるので、葬儀社に確認しましょう。
女性が洋礼装をする場合は、フォーマルスーツかワンピースに、シンプルなパンプスを合わせます。
和服は黒無地に、羽二重に染抜きの五つ紋が一般的です。一越ちりめんを正式とする地域もあるため、確認しておきましょう。
葬儀当日の喪主の持ち物
葬儀当日の喪主の持ち物について見ていきましょう。
- 数珠:宗派に合ったものを用意する
- ハンカチ:黒か白の無地。タオルやガーゼは避ける
- 袱紗:寒色系か紫
- 女性の場合はバッグ:光沢がない布製
- メモ帳・ペン
数珠は普段使っているものが使えます。宗派にかかわらず手に持ちやすい、珠が27個の略式数珠が便利です。
女性の場合はバッグも必要です。黒で光沢がない素材で、動物由来の革製品は避けましょう。
葬儀社との打ち合わせや確認、参列者とのやり取りなど、喪主はメモをする事柄が多くあります。現在はスマートフォンでもメモができますが、葬儀中に喪主が操作することを不愉快に感じる参列者がいるかもしれません。そのためメモ帳とペンを持つことがおすすめです。
喪主になったら早めの準備を
喪主は複数人でも行えるものですが、1人の喪主が全ての役目を背負うケースも少なくありません。周りの人や葬儀社を頼りながら、早めに葬儀の準備を進めていくことが大切です。
信頼できる葬儀社を選ぶには、複数社から見積もりを取って比較すると良いでしょう。時間がない中複数の見積もりをとるには、ミツモアの活用がおすすめです。
最大5社から一括で相見積もりができるので、1社1社問い合わせるといった手間を省けます。口コミやチャットで対応を確認できるので、ご自身や故人の希望に合った葬儀社を見つけられるでしょう。
監修者:二村 祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
喪主は字のごとく「喪に服する中心的な主(あるじ)」という意味。つまり故人祭祀の責任者です。ですから喪主は本来、故人の魂を一定期間、見守っていかなければなりません。これを習俗では33年と定めてきました。例えるならば、あの世に生まれ出た魂を、子供に「見立て」て大人にします。これを僧侶に委ね、菩提寺は喪主に成り代わって「養育」していくわけです。この「子供養育」の中二文字をとって、「供養」としています。