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火葬式・直葬の費用相場、流れは?気を付けておくべきポイントも紹介

最終更新日: 2023年01月12日

近年、新型コロナ感染症の影響で人流や参集を控える風潮から、お葬式においても通夜や告別式を行わない「火葬式」や「直葬」と呼ばれる小規模な葬儀形式を選択する方が増えています。

火葬式と直葬の違いは名称であり、基本的に違いはありません

火葬式・直葬は費用や労力の負担を軽減できますが、注意点もいくつかあるため確認しておきましょう。火葬式・直葬の費用や、儀式の流れと合わせて解説します。

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この記事を監修した専門家

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔

火葬式・直葬とは?

葬儀の参列者の足元

火葬式・直葬とは、葬儀のなかで「故人を荼毘(だび)に付すことだけ」を執り行うものです。「荼毘(だび)に付す」とは「火葬すること」を意味します。

一般的な葬儀は「通夜、葬儀・告別式、火葬」の順で進められますが、火葬式・直葬では通夜・告別式を行いません。また僧侶による読経などの宗教的対応は人それぞれです。

参列者は主に近親者のみで、少人数で行われます。

火葬式・直葬を選ぶ人が増えている

これまではお葬式を行うとなると一般葬が通例でしたが、近年では火葬式・直葬を選ぶ方が増えてきました。

鎌倉新書開催の『お葬式に関する全国調査』によると、2020年時に火葬式・直葬を選ぶ方は全体の5%でしたが、2022年には11%に上がっています。この要因は新型コロナ感染症の拡大だけではありません。背景には核家族化や、近隣地域とのお付き合いの希薄化、宗教離れ、経済的な理由もかねてより指摘されています。

以前からお葬式施行の意義や価値が問われはじめ、「自分らしいお見送り」を提唱する葬儀社もありました。現在は葬儀の情報についてインターネットを通じて入手できることも多く、昨今の世相をふまえて、「火葬式」「直葬」あるいは「家族葬」など小規模なお葬式を選択する人が増えています。

家族葬との違い

「火葬式」「直葬」に対して「家族葬」は、もう少し訃報の範囲が広がり、故人と親しかった友人などに連絡することがあります。いずれにしても小規模な葬儀です。

一般的なお葬式のような「告別式」はなされません。ただ会葬に行くべきかどうか戸惑う人もいるので、訃報の連絡時に、参列を辞退する旨を明確に記載するようにしましょう。

関連記事:家族葬とは?家族葬の費用や流れについて| 友人は参列できる?

火葬式・直葬の費用相場

火葬式・直葬は費用をどのくらい抑えられるのでしょうか。費用相場の目安について解説します。

火葬式・直葬の平均相場は【35.4万円】

火葬式・直葬にかかる金額の平均は35.4万円です(※)。10名以下でご遺体安置・火葬のみを執り行う場合、10万円以内で執り行える場合もあります。

お別れ花の手配、読経の追加、安置期間の延長といったオプションによっても変動するため、10万~50万円の幅を見ておくとよいでしょう

一般的なお葬式の費用はその3~5倍が相場といわれています。会葬者数にもよりますが、一般葬の平均費用は147.9万円でした(※)。

火葬式・直葬は少人数で、祭壇なども省くことから、全体の費用をかなり抑えられます。

※ミツモア調べ『葬儀・斎場に関するアンケート(2022年9月)』(n=508名)

火葬式・直葬の費用内訳

火葬式・直葬で発生する費用の主な内訳は、ご遺体管理費・棺代・火葬費・骨壺代などです。大きく以下の3つにわけて考えるとよいでしょう。

ご遺体安置・搬送 葬儀社が手配

  • 病院からのご遺体搬送:寝台車・ドライアイス
  • ご遺体の保全・安置・保管
  • 棺(材質やデザインはさまざま)
火葬料金 葬儀社が代行で申し込みや手配・料金の立替など

  • 公営火葬場の場合
    • 無料~10万円(地域住民などは市区町村での福祉的な設定)
  • 民営火葬場の場合
    • 数万~数十万円(火葬炉の等級や待合室のランクあり)
その他費用
  • 骨壺・骨箱
  • 生花(お別れ用・棺上花など)
  • 湯灌(葬儀社によりオプション)
  • ご遺体保全の死化粧(葬儀社によりオプション)
  • ご遺体保管の冷蔵施設など(保管日数で変動)
  • 霊柩車(車種などのランクあり)
  • 僧侶の斡旋/読経(火葬式・直葬の場合は「炉前勤行」が多い)

など

見積もりを見る際は火葬式・直葬のセット料金に含まれている内容を、よく確認することが重要です。またセット料金に火葬場を利用する料金は含まれていないことも多いので、総体での合計費用を把握しておきましょう。

特にご遺体の安置保管の日数が長くなったり、ご遺体の搬送が遠隔地からの場合、寝台自動車の搬送料金が加算・追加されます。

ご遺体の取りはからいにおける「実務」は、遺族だけで個々に行うことは極めて難しいです。ご自身で行おうとせず、葬儀社に委託するのが1番妥当な処置です。

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火葬式・直葬の葬儀の流れ

火葬式・直葬の流れは、通夜や告別式を行う一般の葬儀や家族葬に比べシンプルな流れです。ご逝去から火葬までの流れを解説します。

搬送・安置

最初はご遺体を病院から安置場所まで移動させます。死後24時間以内は火葬できない決まりになっており、また病院では長時間の安置はできません。

ご自宅で安置する場合は、お布団に寝かせます。初期処置として、部屋の温度などに注意しましょう。部屋の温度は18度が目安です。

葬儀社では、防水シートや除菌・消臭対応などを行ったうえで、ドライアイスなどで保全処置をしてくれます。その後、葬儀に関する打ち合わせや各種手続きといった実務を進めます。

納棺

火葬場に移動するために、故人を棺の中に収める「納棺」を行います。

納棺は大切な葬送儀礼の1つで、この世との決別をはかり「旅立つ」ための行いです。納棺には地元の習俗によって、さまざまな臨終儀礼や殯柩儀礼が存在します。そういう死生観の文化をしみじみと感じることも大切です。

また慣習によっては「湯灌(ゆかん)」というご遺体の湯あみも行います。もしくは拭き清めて清浄にするだけのことも。これらは「納棺の儀」とも呼ばれます。

ここで伝統的な旅支度や、故人に持たせたいものを「副葬品」として入れましょう。中には「火葬不可」のものもあるので、葬儀社によく聞いておくことが重要です。

出棺・火葬

霊柩車で火葬場に移送し、時間になったら荼毘に付します。炉前では最後の別れを行いましょう。ご家庭によっては炉前で僧侶の読経を行ったり、火葬炉の扉が閉まるとそのまえで焼香をしたりすることもあります。

火葬中は待合室や控室で待ちましょう。火葬時間は長くても2時間以内で終わります。

お骨上げ

火葬後はお骨上げを行います。お骨上げにもいろいろ地域慣例があるので、係の人の指示をよく聞いて遺骨を容器に納めましょう。

一般のお葬式の場合はその後「精進落とし」などの会食を行うことが多いですが、火葬式・直葬ではこの場で解散の流れです。

遺骨は通常、「喪主」が自宅へ持って帰ります。

葬儀を火葬式・直葬で行うメリット

棺に向かって手を合わせる男女

火葬式・直葬を検討したとき、「通夜や告別式を行った方がいいのではないか」「あとから後悔しないか」とお悩みの方もいるのではないでしょうか。

火葬式・直葬を行うメリットを紹介します。

現状では新型コロナ感染症の対策になる

直葬・火葬式の場合、葬儀時間が短く人と人の接触機会が減る上、遺族・親族や参列者など少人数のため参集時間も短時間で済むのがメリットです。

2020年に感染拡大した新型コロナウイルス感染症の影響により、日本では2022年現在まで人が集まる機会を減らす風潮が続いています。

親族や参列者の中には、葬儀であっても新型コロナウイルス感染症が気になって、大勢の人が集まる場所には行きたがらない人もいるでしょう。葬儀を火葬式・直葬にすることで、感染防止にも配慮できます。

準備・当日の対応といった手間を削減できる

火葬のみのシンプルな葬儀のため、葬儀のための準備が少なく済み、また当日の受付や接待がないので一般葬よりも手間がかかりません

一般的な葬儀では通夜・葬儀・告別式を通し、参列者の対応や会食の接待が発生します。喪主を筆頭としたご遺族は、大切な人を亡くした直後でありながら、心身ともに休まる暇がありません。

また葬儀・告別式を執り行うにあたり、式場を抑える、参列者を決める、訃報連絡をする、返礼品や香典返しを用意するといった、さまざまな準備も行います。火葬式・直葬のみでも事前準備は行いますが、一般葬と比べると手間を減らせるでしょう。

「身近な人だけで故人とゆっくり過ごせて良かった」という声もあります。

葬儀の費用負担を軽減できるが、注意点も

葬儀費用の軽減は高齢世帯や生活状況によって、とても重要なポイントです。一般のお葬式で受け取る近隣、会社、友人などの会葬もご辞退していることから、祭壇飾りなどの対外的装飾は必要ありません。

また人数が制限されるため、会場費や飲食接待費なども削減可能です。ただし小規模で人数が少ないからといって、菩提寺住職への「お布施」もそれに準ずるということではありません。この点は重々注意が必要です。

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火葬式・直葬のデメリット

納棺の様子

火葬式・直葬を行う際、「訃報連絡を後から聞きつけた遠くの親戚や近隣の方々からの『事後弔問』が不特定になされて困った」など、葬儀が小規模なことによるデメリットもあります。

以下の注意点を踏まえ、火葬式・直葬を選択するべきかを検討してみてください。

故人とのお別れの時間が短い

火葬式・直葬ではご遺体が病院から直接火葬場へ赴くことも多々あります。また葬儀社の安置・保管場所では面会が思うようにできないことも。そのため故人とのお別れが十分になされないという悔恨も発生するのが懸念点です。

ただし自宅安置などの場合は、その間自宅にいることができて良かったという声もあります。

いずれにしても火葬式・直葬の場合は短時間での施行が原則ですので、お別れの時間が短い点について、留意していく必要があるでしょう。

葬儀後のクレーム対応が発生することも

火葬式・直葬で葬儀を行うことへの事前の根回しや合意が、近親者の間でできていないと、その場や後日に、遺族に対しての批判が故人の兄弟(叔父や叔母)などから出ることがあります。

また忌引き休暇の申請といった会社への報告や、近隣に対する訃報公示などにも配慮がないと、やはり後日にクレームが出る可能性があるのが懸念点です。

また一般的には火葬式・直葬、また家族葬でも、会葬するかどうかは遺族が指し示すことではなく、会葬者自身が故人との関係をふまえて決めることとされています。そのため施行後に不定期・不特定な弔問者が絶えず、しばらく外出もできないというケースも。

故人とのお別れができなかったことに、憤まんを述べる古くからのご友人がいた例もあります。周囲への配慮が欠けると、遺された方々の今後の生活にも影響しますので注意が必要です。

火葬式・直葬で気を付けておくべきポイント

棺に青い花を入れる人

どのような葬儀も、事前準備が重要です。ただし火葬式・直葬を行う際には、一般葬と異なる気を付けるべきポイントがあります。

事前に踏まえておき、いざというときに焦らないようにしましょう。

周囲の理解を得ておく

故人を火葬式・直葬で送ることを検討している場合は、事前に周囲の理解と合意を得ておきましょう。

ミツモアのアンケートでは「参列者の意見も確認し、僧侶無しで全員が納得できた」と、理解を得たうえで良い式を挙げられたとの声もありました。

通常の葬儀とはかなり違う内容になるため、事前の周囲への相談が重要です。年齢が高くなるほど慣習やしきたりにこだわる傾向があるため、なかなか理解を得られない場合は葬儀スタイルを再考する必要がでてきます。

ご遺体の安置場所を確保しておく

火葬式・直葬を行う場合は、ご遺体の安置場所をどこにするか検討しておきましょう。遺体はすぐに火葬できるわけではなく、死後24時間以上時間を置かなければならないことが法律で決まっています

火葬場に空きがない場合も、どこかに遺体を安置しておかなければなりません。葬儀社に依頼すれば安置場所を確保してくれる上、移動のための車も手配してくれます。

自宅で安置できるなら、火葬まで故人と過ごす時間を少しでも長く確保できるでしょう。葬儀に来られない人を呼び、故人に手を合わせてもらうことも可能です。

菩提寺(菩提寺)に納骨の相談をしておく

菩提寺とは先祖代々のお墓がある寺院です。菩提寺は通夜・葬儀・告別式という宗教的な流れを重視するため、宗教色が少ない、または排除した火葬式・直葬を行うと納骨を断られる恐れがあります。

新たに納骨堂を探す手間が増える上、先祖代々続く菩提寺との関係が切れてしまう可能性も懸念です。関係の深い菩提寺に納骨しないことで、周囲からよく思われないケースも考えられるでしょう。

火葬式・直葬を選ぶ場合は、事前に菩提寺に相談することが大切です。宗教的な要素を省略した葬儀を行っても、理解ある住職なら納骨を受け入れてくれるでしょう。

信頼できる葬儀社を選ぶ

葬儀を執り行う際は、信頼できる葬儀社を選びましょう。見積もりの内容をしっかりと確認し、何でも相談できる葬儀社を選ぶことが大切です。

相見積もりを取って複数の業者を比較すれば、火葬式・直葬の適正料金を把握できます。「実際に依頼したら思っていたよりも高かった」と後悔しないように、最低でも3社は見積もりを取るのがおすすめです。

ただし時間が限られている中、葬儀社を探して見積もりを取るのは骨が折れるでしょう。そのようなときは、最大5社から一括で見積もりが届く、ミツモアの利用を利用してみてください。

お住まいの地域や希望の葬儀を選択するだけで、複数社の見積もりを無料で確認できますよ。

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火葬式・直葬は周囲の理解を得ることが大切

花が入った棺を囲む参列者

火葬式・直葬は通夜や告別式を行わないシンプルな葬儀で、経済的な状況や感染症拡大の影響から選択されることが増えています。

ただし故人と最後に過ごす時間が短いため、遠方からの参列者に不満を持たれる懸念も。菩薩寺への相談なしに執り行うと、納骨を断られるケースもあるようです。

周囲からの理解を得ておくことを大切に、納得のいく葬儀をあげましょう。

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監修者:二村 祐輔

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)

著書・監修

  • 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
  • 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
  • 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
  • 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載

など多数

コメント
ご遺体を「荼毘に付す」ということは、お葬式の中の「葬儀」であり、なかでもご遺体に関する手立てとしては、最も実務的な社会制度です。遺された人が確実に果たさなければならない実働でもあります。しかし、火葬やそれのみを行う「直葬」にも、遺された方々の想いがあるものです。実施する際は、故人の希望(遺志)だけでは済まず、世間的に配慮しなければならない対応があることを認識の上、検討するとよいでしょう。

参考:日本葬祭アカデミー業務研究室