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社葬の準備に必要なものは?費用の目安や流れについても紹介

最終更新日: 2022年11月14日

会社の役員や功労者が亡くなった際に、法人が主体となり開くお葬式が「社葬」です。社葬は頻繁に行うものではないため、費用や段取りが分からない人もいるでしょう。社葬の基本知識や費用の目安、一般的な流れを解説します。

この記事を監修した専門家

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村祐輔

社葬と個人葬は何が違う?

セレモニーホール

個人葬と社葬の違いは、誰がお葬式を主催するかどうかです。個人葬の場合は、主に遺族が喪主となり葬儀・告別式を営みます。一方社葬の場合は、法人が施主となり主催する形式です

また参列者や会葬者にも違いがあります。

個人葬では故人の親族や友人、会社の同僚や上司など、その人の交友関係によって、幅広い属性の人が会葬することが一般的です。人数は故人の交友関係にもよりますが、50~100名程度が一般的でしょう。

一方で社葬の主な会葬者・参列者は、取引先や顧客など法人としての関係者が中心です。個人葬に比べ大規模な葬儀となるケースが多いでしょう。

社葬における喪主と施主とは

社葬においては、施主としての法人と遺族代表の喪主で、互いに意思疎通を円滑に図ることが重要です。

運営・費用を負担する「施主」

施主とは式の主催者のことで、お葬式の運営や費用の負担を担います。社葬の場合は、企業が施主の立場です。施主の代表として「葬儀委員長」を置くことが多く、当日の挨拶や取り仕切りは葬儀委員長が主に行います。

葬儀委員長は、会長が亡くなった場合は社長、社長が亡くなった場合は次期社長など、現時点での会社のトップがなることが通例です。ただし外部の方にお願いすることもあります。

遺族代表となる「喪主」

喪主とは遺族の代表のことです。社葬か個人葬にかかわらず、喪主は故人の配偶者や、長男などの遺族代表が務めます。個人葬の場合は、施主と喪主を兼任することがほとんどです。

社葬の場合は施主が企業となるため、代表である葬儀委員長と喪主が連携を取りながら準備を進めます。なお個人経営の会社では、個人葬と同様に施主と喪主を分けないことも多いです。葬儀委員長を設置せず、経理上「社葬」という名目で営むこともあります。

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社葬の3つの開催形式

祭壇

社葬の運営や構成スタイルは、以下3つに分けられます。

  • 社葬・団体葬
  • 合同葬
  • お別れ会・偲ぶ会

社葬・団体葬

遺族が行う個人葬とは別日に行う、企業が主催するお葬式のことです。法人が施主となり、遺族は運営に関与しないケースが多いでしょう。

近親者による「密葬」が営まれた後に、後日「本葬」として開催することが一般的です。施行の日時は、訃報の公示や会場準備の期間なども考慮して1~2カ月前後の場合が多いでしょう。

費用負担は法人が担います。

合同葬

合同葬とは遺族と企業が合同で主催する開催形式です。故人が各種団体やいくつかのグループ法人に属していた場合に、それぞれが主催者として合同で名を連ね、また遺族も併せて主催を担います。

式の流れは一般的なお葬式と変わりません。費用負担は主催を担う団体や遺族それぞれが担います。

お別れ会・偲ぶ会

お別れ会・偲ぶ会に厳密な定義はありません。最近では告別式のみの無宗教的な社葬のスタイルとしして、執り行われることが増えてきました。

ホテルや宴会場にて、故人の業績をたたえるためのブースを設けたり、映像を流したりなど、演出に自由度がある点が特徴でしょう。

社葬と同様に、故人の逝去後1~2か月以内か、密葬から四十九日までの間に営まれることが多いです。

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どんな人が社葬の対象者になる?

ビジネスパーソン

社葬を行う対象者は、原則会社に大きな貢献をした人です一般的には社長から役員クラスまでが対象で、そのほか会社に大きく貢献した人や、功績を残した人、業務中の事故で亡くなってしまった人も、対象になることが多いです。

会社の規則に社葬についての取り決めがある場合は、規定に従えば問題ありません。

ただし必ずご遺族の意向を確認するようにしましょう。最終的には取締役会で、社葬の開催が決定されます。

社葬の流れ

焼香をする人

社葬当日の一般的な流れは以下です。仏式の「本葬」を例に見ていきましょう。

お別れ会に近い式の場合は、読経や焼香は行わず、葬儀委員長の挨拶や故人の思い出話、黙とうや献花のみを行うこともあります。

  1. 受付・案内
  2. 着席
  3. 導師・式衆入場
  4. 開式の辞
  5. 読経・導師焼香
  6. 弔辞朗読・弔電紹介
  7. 葬儀委員長(施主)挨拶
  8. 喪主挨拶
  9. 指名焼香(※)・参列者焼香
  10. 導師・式衆退場
  11. 位牌・遺骨・遺影などのお見送り
  12. 遺族代表者から、お手伝いの方々に対する謝辞

なお式次第は状況により変わります。

※指名焼香:喪主や葬儀委員長といった、本葬儀で重要な方が行う焼香

社葬当日までの準備

打ち合わせ

対象者の逝去から社葬当日までに行う一般的な準備は、以下の通りです。

  1. 臨時取締役会を開く
  2. 遺族にあいさつをし、社葬をする旨の同意を得る
  3. 合同葬、社葬、お別れ会といった形式を決める
  4. 葬儀社と打ち合わせをし、会場や日時を決める
  5. 社葬のご案内状を送付する
  6. 当日の役割を決める

まずは臨時取締役会を開き、社葬を行う旨を決定します。社葬施行のための経費を計上するため、議事録を忘れずに取りましょう。次に遺族へ連絡を取り、社葬を行う旨の同意を取り、どの形式で行うかの希望を聞きます。

葬儀の会場と日時が決定したら、関係者に案内状を送付します。社葬当日の役割も決めておきましょう。

社葬当日までには会場の下見や、可能であればリハーサルを行い、スムーズな式運びができるよう準備をしましょう。式が終わったら、会葬御礼の公示や経費の精算を行います。

社葬に強い葬儀社を選ぼう

社葬を滞りなく行うためには、葬儀社選びも重要です。社葬は個人葬よりも規模が大きくなるため、社葬に強い葬儀社を選びましょう。以下の要素を満たしていれば、社葬に強いと判断できます。

  • 対応が柔軟でレスポンスが速い
  • 社葬の実績がある
  • 見積もりが明快である

葬儀社を選ぶ際は、できるだけ複数の業者から見積もりを取り、料金や対応を比較することがポイントです。ミツモアなら最大5社の見積もりを同時に依頼できます。業者とのやり取りはチャットで行えるので、忙しい中セールス電話がかかってくる心配も不要です。

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社葬にかかる費用

花が敷き詰められた棺

社葬にかかる一般的な費用の負担割合は以下の通りです。運営や準備のために必要となる出費(損金扱い)は、通常は会社負担と考えておくとよいでしょう。

企業負担
  • 社葬のご案内・ご参列の有無確認
  • 僧侶へのお布施(読経謝礼に関わるもの)
  • 駐車場や設備・各種備品の用意
  • スタッフの人件費
ご遺族負担
  • お布施(戒名など、供養に関わるもの)
  • 香典返し
  • 火葬費
  • 墓石・仏壇費

なお亡くなった人の立場や取り決めによって、費用の負担割合が変わるケースもあります。

費用は会場や社葬の規模によって異なる

社葬の費用は会場や規模によって大きく変わるため、決まった相場はありません。しかし目安としては低くて500万円から、大規模な葬儀では2,500万円程度かかる場合があります

1,000人を超える会社では、1,000万円以上はかかると見てよいでしょう。

費用の内訳は個人葬と大きく変わりませんが、会場費や人件費、飲食費が個人葬に比べて高くなる傾向にあります。

社葬の費用は経費扱いできる

法人税の規定では、社葬を行うことが妥当と認められる場合には、社葬に通常必要な部分の費用について、損金に計上できるとされています。
そのため式場費用、祭壇費用、供花などの一般的なお葬式にかかる費用は、経費に計上できると考えておけば良いでしょう。

香典はすべて遺族の収入になります。また香典返しや墓石代、本葬以外の読経代は経費に計上できません。こうした経費に計上できない費用は、基本的に遺族負担となります。ただし、たとえば法人名義で経費として香典が渡された場合は、香典返しは必要ありません。

葬儀にかかった費用を経費に計上するときは、社葬の実施を決定した取締役会の議事録と、領収書が必要です。

参考:No.5389 社葬費用の取扱い|国税庁

社葬を行うメリット・デメリット

手を合わせる男性

会社目線で見た、社葬を行うメリットとデメリットを解説します。

メリット①遺族の費用負担を軽減

社葬を行うことで、遺族の負担を軽減できます。影響力の大きい人が亡くなった場合、告別式には多くの会葬者が参列することが予想されます。そうすると会場も大きな場所を用意しなければならず、遺族側に大きな金銭的負担がかかるでしょう。

しかし社葬を行えば会社の資金を使って開催できます。かかった費用は福利厚生費などとして、経費に計上することも可能です。

メリット②対外的なアピール

また社葬を行うことで、対外的なアピールにもなります。企業の重要人物が亡くなった際は、企業の先行きについて不安視する声も、一定数あるでしょう。そこで立派な社葬を行うことで、企業内外に先行きが安心であることを示せます。

さらに社葬を行うことで、きちんとしている企業というイメージを与えられるので、社員の団結力も高まるでしょう。

デメリット①手間やスケジュールの負担が大きい

社葬の規模や進行内容によっては、遺族や施主の負担が大きくなる点がデメリットです。

社葬は会社の重要人物の葬儀のため、当日に多くの参列者の来訪が予想されます。誰もが故人を偲ぶために足を運んでくれているので、接遇はないがしろにはできません。弔辞者などの特別な来賓がある場合は、とくにそのご案内や誘導が大切です。

また合同葬の場合は、開催までに十分な時間を見ておく必要があります。普段の業務をしている中、合同先(遺族や多他団体など)との折衝や調整などが発生し、負担が大きくなるでしょう。

社葬に参列するとき香典は必要?

香典

社葬であっても、香典辞退の旨の連絡がない限り、香典は持参しましょう。

香典の金額は、取引関係などによりさまざまです。1万~5万円が相場ですが、故人との関係性により10~20万円包むこともあるでしょう。

ただし社葬の場合、経理処理の関係で香典を辞退しているケースが多いです。代わりに供花を受け付けていることは多々あるので、事前に確認しましょう。

社葬の実施には下準備が重要

喪服を着た女性

社葬はそう多く経験するものではないため、いざというときに、どのような行動を取ればよいか、分からなくなる人も多いでしょう。

社葬・合同葬・お別れ会などを大規模に営むことが予想されている場合などは、主に会社総務が中心となり、企業の危機管理事項として事前に意識しておくべきです。

もし自分が社葬を執り行う立場になったら、まずはあらかじめ段取りや費用面について把握しておきましょう。社葬に詳しい葬儀社に相談することも大切です。

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監修者:二村祐輔

日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)

著書・監修

  • 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
  • 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
  • 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
  • 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載

など多数

コメント
これまで「社葬」は故人遺族で営む「密葬」の後に、「本葬」というお葬式を公示して、対外的な対応として施行される通例が一般的でした。その場合、施行準備や訃報連絡あるいはご案内のタイミングの関係から、多くは火葬後に十分な日時を置いてからなされていました。いまでは密葬を「葬儀」と捉え、本葬の社葬を「告別式」と位置付けることで、無宗教的な「お別れ会」などとしてホテルで施行される事例が激増しています。