供花(きょうか)・供華(くげ)とは故人に対する哀悼の気持ちと、遺族に対する慰みの気持ちを込めて贈られる花です。贈り主は故人と親しい関係にあった人が多く、贈られた供花はお通夜や葬儀・告別式にて、葬儀場に飾られます。
供花へのご返礼方法は「お礼状を送る」「電話でお礼を述べる」「返礼品を送る」の3つです。
供花を頂いた場合は原則返礼品は必要ないとされていますが、個人名や連名、また会社名であっても、お礼状は差し上げておいた方が良いでしょう。供花の返礼に関する基本的なマナー、返礼品選びのポイント、お礼をする適切なタイミングを解説します。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村 祐輔
お礼状は送るのがマナー
供花は故人とその遺族に対して、気持ちを表すために贈られる花です。そのため供花に対するお礼は原則として不要とされています。
しかし供花を贈った相手や、故人との関係性によっては、何もお礼をしないことは失礼にあたるかもしれません。個人で数万円の供花をいただいた場合はなおさらです。
贈られた供花に「返礼不要」と明記されている場合でも、お礼状を送って感謝の気持ちを伝えると良いでしょう。
ただし供花のお礼に関する考え方は、地域性や宗派などによってさまざまです。贈り主が仕事の関係者である場合、企業によって、慶弔対応に関する内規や規則が定められていることもあります。
地域の慣習については事前に葬儀社に確認をするのがおすすめです。会社名義で供花を贈ってくれた相手には、お礼の要・不要について確認すると良いでしょう。
「お礼状」の送り方と例文
お礼状は、供花のお礼を伝える上で欠かせないものです。「返礼不要」のお知らせがあり、返礼品を贈る必要がない場合であっても、お礼状は供花を贈ってくれた人全員に対して送ります。
はがきや手紙で送る
お礼状の形態は、以下の2つがあげられます。
- はがき・手紙
お礼状は本来、はがきや手紙といった書面で送ることが一般的です。供花のお礼状に用いるはがきや手紙は、基本的に白無地に、黒やグレーの枠があるデザインのものを用います。
作成する際は、縁起が悪いとされる忌み言葉や、重ね言葉の使用を避け、全文において句読点をつけないように注意しなければなりません。初めてお礼状を作成する際に、細かなルールについて不安に感じた時は、葬儀社に相談してみましょう。
- 取り急ぎのお礼はメールで
取り急ぎ、感謝の気持ちを伝える場合はメールを送ることもあります。ただしメールでお礼を伝えたとしても、直接会うことがあれば改めて対面でお礼を伝え、できれば四十九日忌あけの早い時期に、法要や納骨などのご報告とともにお礼状を郵送するようにしましょう。
メールはかなり簡便な方法であり、正式な作法ではありません。そのためメールによるお礼は、長年親しい間柄にあった親族や友人など、限られた人のみにするのが無難です。
勤務先から供花をいただいた場合もメールで送って問題ないでしょう。忌引休暇明けに出社した際に所属部署のメンバー宛てにグループメールでお礼の気持ちを伝えます。また取引先の関係者に対しては、メールで連絡の上、お礼状も送ると良いでしょう。
お礼状の例文
書面・メールともに、お礼状に記すべき内容は大きく3つあります。
- 供花に対する感謝
- 霊前に供花をお供えした旨の報告
- 直接会ってお礼を伝えられないことへのお詫び
これら3つのポイントを踏まえた例文を紹介します。
【はがき・手紙の例文】
謹啓
この度は亡母〇〇の葬儀に際しまして 立派なご供花を賜りまして 誠にありがとうございました
謹んで霊前に飾らせていただきました
△△様のお心遣いに心より感謝申し上げます
お陰様で無事葬儀を終えることができましたことを ここにご報告いたします
本来であれば直接御礼を申し上げるべき処ではございますが 略儀ながら書中にて失礼いたします
謹白
令和◯年◯月◯日
住所
喪主
【メールの例文】
件名 : 供花の御礼
本文 :
営業2課の皆様
この度は亡母〇〇の葬儀に際しまして、ご多忙中にもかかわらず大変立派な供花を頂きまして誠にありがとうございました
謹んで母の霊前に飾らせていただきました
皆様からの素敵なお花に 母もさぞかし喜んでいることでしょう
温かなお心遣いに心から感謝申し上げます
お陰様で無事葬儀を終えることができたことを ここにご報告いたします
本来であれば 皆様に直接ご挨拶に伺いたいところではありますが 取り急ぎ御礼を申し上げたく 略儀にて失礼いたします
本当にありがとうございました
〇〇(差出人)
「電話」でお礼を述べるときのポイント
供花を受け取り、葬儀の霊前に供えることができた旨は、なるべく早く伝えた方が贈った相手も安心できます。近しい親族や関係の深かった方には、電話でお礼を伝えると良いでしょう。
ただし本来のお礼状のマナーとしては、電話はメール同様の略式的なお礼の方法です。そのためメール同様、電話でお礼を伝える相手はごく親しい間柄の人に限ります。
ひとまず電話で感謝の意と、無事葬儀が終わったことを伝え、後ほど改めて正式なお礼状を送るのがおすすめです。
供花に対する「返礼品」の選び方と費用相場
供花に対する返礼品を贈る際には、必ずお礼状を添えましょう。お礼状と同様、供花のお礼に品物を贈る際にも、様々なマナーがあります。
返礼品におすすめの品
返礼品は「消え物」と呼ばれる品を贈るのが一般的です。「消え物」とは後に残らない品物のことを指し、「不祝儀(不吉なこと)を残さない」という考え方を元とした言葉です。
食品や消耗品が「消え物」の代表で、食品であれば、お菓子類やコーヒー・紅茶などの嗜好品が好まれます。近年、返礼品として選ばれることが増えているのは、やはりお菓子などの詰め合わせです。
会社へ贈る返礼品であれば、常温で日持ちがよく、みんなで分け合えるような、個包装の菓子折りを贈ると良いでしょう。
供花に対する返礼品で特に送ってはいけないものはありませんが、香典返しなどの弔事ギフトなどのマナーを参考にします。
返礼品には掛け紙をかける
それぞれの返礼品には掛け紙をかけます。弔事用の水引を使用し、表書きは宗派を問わない「志」が無難です。
表書きを含め、返礼品に関する慣習やしきたりは、地域によって異なることがあります。事前に葬儀社や周囲の人に、確認しておくとよいでしょう。
返礼品の費用相場
供花のみを贈られた場合は、供花の金額に対して3分の1~半額程度が相場です。また香典と供花の両方をいただいた場合は、2つの金額を合算したものに対して3分の1~半額程度の金額の品を用意します。
返礼品の適正価格を考える上で必要な供花の価格は、以下を参考にしてください。
小さなもの(枕花・花瓶差しの花束など) | 5,000円~ |
スタンド式(盛り花・かご花など) | 15,000円~2万円 |
豪華なもの(洋ランやそれに類する鉢もの) | 20,000円~ |
盛り花・かご花は通常、祭壇の両脇や室内に序列に基づいて掲示されます。また洋ランといった類する鉢ものは、葬儀後も自宅で飾ります。
なお返礼品の適正価格は明確には決まっていません。価格に関しても、地域や家族の慣習によって相場が異なるため、確認しておいた方が安全です。
供花のお礼を送るタイミング
もし供花に対する返礼の品物を贈ることになったならば、基本的には忌中明けの対応になります。つまり「四十九日明け」です。
供花を贈ってくれた方の故人との関係性やその親しさによって御礼のタイミングなども異なります。返礼の品物をお送りすべきか、お礼状だけでよいものかどうかなどの思慮が必要です。
1. 電話やメールは葬儀後すぐ
葬儀が無事終わったら、供花を贈ってくれた人全員にお礼を伝えます。
手段は電話かメールが一般的で、先述の通り「取り急ぎお礼が伝えたかった」という気持ちを、はっきりと伝えることがポイントです。
供花をいただいた人の中でも、以下のような相手には、葬儀の後すぐにお礼の連絡が必要となります。連絡漏れがないように注意しましょう。
- 葬儀に参列していなかった人
- 取引先など外部の会社の人
- 会社名ではなく個人名で供花を贈ってくれた上司や同僚
上記以外にも忌引休暇が明けての初出社日には、供花の手配を行ってくれた人事、または総務部や自身の所属部署のメンバーに対して、メールで報告とお礼を伝えておきます。
2. お礼状は葬儀後早めに
正式なお礼状やご返礼品をお送りする場合は、四十九日明けが適切です。しかし供花に対してのお礼は電話やメールでは済まない場合、やはりお礼状だけでもだしたいという場合は、葬儀後早めに出すこともあります。
できればいただいた供花が祭壇とともに飾られている写真などを添えるのが良いでしょう。
基本的には葬儀におけるさまざまな社会的対応は、四十九日までは慎み控えるのが一般通例です。贈答に関する慣例もそれに順じます。
3. 返礼品を贈る場合は四十九日明け
返礼品は香典返しの時期と同様の、四十九日明けに贈ります。葬儀の49日後から、遅くとも30日以内には届くようにしましょう。
「返礼不要」を希望する贈り主や、会社として返礼品の受け取りができないといった理由で辞退する人以外には、基本的に返礼品を贈ります。
勤務先や取引先など、会社に菓子折りを贈るのもこのタイミングです。宛先は個人名ではなく、部署名で贈りましょう。
供花のお礼は正しい方法とタイミングで贈ろう
供花を贈る背景には、贈り主それぞれに異なる理由や事情があることから、各々に適した方法とタイミングで、お礼を伝えることが大切です。
特に会社名義で贈られた供花に対しては、会社によって慶弔対応に関する取り決めが異なるケースも少なくありません。
葬儀社や周囲の人に相談しながら供花のお礼を進めていくことで、しっかりと感謝の気持ちを伝えることができるでしょう。
監修者:二村 祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
お花を手向けるということは故人に対する供物として最も始原的な対応とされています。旧人類として25万年前から6万年近くまで、新人類クロマニヨン人が出現するまでの間、ネアンデルタール人がいました。彼らの死者に花を手向けるという行為が考古学的に検証されたことで、類人猿ではなく人としてのカテゴリーに組み込まれました。そうして発掘された遺体は「花を捧げられた人」と呼ばれ、それが葬送の起源とされています。