お布施とは僧侶に読経を上げてもらったときや、戒名を付けてもらった際に、感謝の気持ちとして渡すお金です。名目としてはご本尊に捧げるお金という意味を持っており、ご本尊を守る寺院の運営費となります。
お布施は対価ではなく、あくまで感謝の気持ちであることから、決まった金額はありません。参考までに日本消費者協会のアンケート調査によると、葬儀の際に渡すお布施の平均は、42.5万円(2017~2019年)という結果が出ています。
法要ごとのお布施の相場や、渡す際のマナーを確認しましょう。
この記事を監修した専門家
葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
岩田昌幸
葬儀・法事別で見るお布施の相場
葬儀をはじめ、それぞれの法事で僧侶にお布施を渡します。代表的な法事における、お布施の相場は以下です。
葬儀(お通夜、葬儀・告別式、火葬) | 数万~100万円 |
四十九日法要 | 3万~5万円 |
納骨 | 3万~5万円 |
新盆・初盆 | 3万~5万円 |
一周忌 | 3万~5万円 |
三回忌以降 | 3万~5万円 |
弔い上げ | 5万~10万円 |
葬儀
お葬式におけるお布施は、お通夜と葬儀・告別式、火葬時の読経への謝礼です。日本消費者協会のアンケート調査によると、葬儀の際に渡すお布施の平均は、42.5万円(2017~2019年)ですが、実際には数万~100万円と幅があります。
葬儀の際に戒名を付けていただく場合は、お布施も多く包むのが一般的です。戒名のランクやお寺によって大きく変わるため、一概に何円とは言い切れません。
実際に渡す金額に迷ったら、僧侶に直接聞くとよいでしょう。「ほかの人はいくら渡しているか」と聞けば僧侶も答えやすいです。
また「お気持ちで」といわれ具体的な金額を教えてもらえないケースには、葬儀社に相談するとよいでしょう。
四十九日法要
四十九日法要とは亡くなった日を1日目と数えて49日目に行う儀式です。
四十九日法要で包むお布施の相場は、全国的な調査結果はありません。しかし3万~5万円程度という意見が多いようです。
故人は7日ごとに浄土へ行けるかの裁判にかけられ、最後の判決の日が49日目とされています。四十九日をもって忌明けです。
四十九日の場合もお布施の金額に若干の地域差はありますが、大きくは変わりません。
納骨
葬儀時とは別に、納骨法要の際にもお布施を渡す必要があります。納骨法要のお布施の相場は3万~5万円です。お墓を建てる場合や、納骨堂に納骨する場合などさまざまな納骨スタイルがありますが、法要の意味は同じのためお布施の額は変わりません。
納骨とは火葬後に骨壺に収納された遺骨を、お墓や納骨堂に埋蔵・収蔵する儀式のことです。必ずしも火葬直後に行う必要はなく、四十九日や一周忌などの、節目に行うことも多くなっています。
ただし寺院によっては10万円近く納めなければならないケースも存在します。心配な場合は、年長の親戚に確認しましょう。
またお布施のほかにも、交通費や御膳料が発生する場合もあります。
新盆・初盆
新盆では3万~5万円を包みます。通常のお盆では5,000円~2万円が相場のため、少々高くなるでしょう。
新盆(にいぼん)・初盆とは故人が亡くなってから、初めて迎えるお盆のことです。正確には四十九日が過ぎた後に、初めて迎えるお盆のことで、場合によっては命日の翌年になることがあります。
お盆には亡くなった人が家族のもとに帰ってくるといわれており、供養をすることになっていますが、特に新盆は初めて迎えるお盆のため、手厚く供養するのがマナーです。
そのためしばしば法要も盛大に行う傾向にあり、それに伴いお布施の金額も高くなります。
一周忌
一周忌のお布施の相場は、3万~5万円といわれています。一周忌とは故人の命日から、1年後に行われる法事のことです。
回忌の中でも特に重要な法事であり、友人や知人を法要にお招きすることもあります。自宅で行う場合もあれば、会場を借りて行うケースもあるでしょう。
一周忌と同じタイミングで納骨を行う場合は、納骨に対するお布施も別途必要です。
三回忌・七回忌から弔い上げまで
一周忌が終わった後の、直近に行われる年忌法要には、三回忌と七回忌があります。三回忌とは故人の命日の2年後に行われる法事で、七回忌は命日の6年後に行われます。
名称の数字と実際に行われるタイミングが異なるのは、亡くなった年も含めて数えるためです。
三回忌や七回忌のお布施の相場は3~5万円程度と考えましょう。回数が進むにつれ少なくすることもあります。
なお年忌法要は三十三回忌まであり、三十三回忌をもって年忌法要は終了です。これを弔い上げと呼びます。弔い上げのお布施の相場は少し高く、5万~10万円を包んだ方がよいでしょう。
お布施を渡すタイミングは?
お布施を渡すタイミングに決まりはありません。しかし、葬儀・法要の前に渡すのが一般的です。
葬儀や法要の前には、挨拶のために遺族と僧侶が顔を合わせる時間が設けられることがほとんどのため、このタイミングで渡すのが一番スムーズでしょう。「本日はよろしくお願いいたします」と言いながら渡しましょう。
もし開始前に時間がなく渡し損ねた場合は、僧侶が帰宅する前に渡します。「本日はご丁寧なお勤めをいただきありがとうございました。どうぞお納めください」などお礼の挨拶とともに渡しましょう。
お布施を渡す際のマナー
お布施を渡す際にはいくつか気を付けておきたいマナーがあります。お布施をいれる封筒や、渡すときのポイントについて確認しましょう。
お布施を入れる封筒の包み方と書き方
お布施の包みかたで最もフォーマルといわれているのが、奉書紙と呼ばれる和紙に包むことです。
奉書紙で包む際には、お金を半紙で中包みしてから奉書紙で上包するのが望ましいでしょう。中包みの手順は以下の通りです。
- 半紙を少し斜めに置き、その上にお札を表向きに置く
- 折り目がお札と平行になるよう、半紙の上下を折る
- お札の左側に合うように、半紙の左側を折る
- お札を包むように、もう一度半紙の左側を折る
- 半紙の右側を、巻き付けるように折る
中包みができたら以下の方法で、奉書紙を使い上包みをしましょう。
- 奉書紙の裏面を上にして、真ん中から少し左側に中包みを置く
- 左→右→下→上の順番で奉書紙を折る
奉書紙のツルツルした面が表、ザラザラした面が裏です。奉書紙がない場合は、スーパーやコンビニで売っている白封筒でも代用できます。
仏式の場合、表書きには「お布施」または「御礼」と書き、下段には喪主のフルネームを書きましょう。ペンは濃い墨を使用し、薄墨は使いません。
手渡しはNG
お布施を僧侶に渡す際、手渡しを避けなければならない点に注意しましょう。切手盆に置くか、袱紗(ふくさ)に包んで、僧侶から文字が見える向きにして渡します。
切手盆とは冠婚葬祭で使われる、黒塗りのお盆です。一般的にご祝儀やお布施などを渡すときに使います。
切手盆がないときは、金封を包むための布である「ふくさ」で代用することも可能です。弔事の場合は、地味な色のふくさを使用しましょう。
菓子折りと一緒にお布施を渡す場合、菓子折りとは別にお布施を切手盆にのせて渡すと丁寧です。
お布施以外で必要になる費用
葬儀や法事には、お布施以外にも必要な出費があり、事前に用意しておくとスムーズです。代表的な費用を紹介します。
お車代
お車代とは僧侶の交通費のことです。斎場や自宅で葬儀を行う場合は、僧侶に現地まで出向いてもらう必要があります。名目として「お車代」といいますが、実際には感謝の気持ちの意味合いが強くなっています。
遠方でなければ、お車代は5,000円にキリのいい実費を上乗せして渡しましょう。表書きには「お車代」と書きます。
遺族が僧侶を送迎した場合やタクシーを手配した場合は、お車代は不要です。タクシーを呼んだときは、遺族が代金を支払います。
なお参列者に対してはお車代を払う必要はありません。招待されて参加する結婚式とは異なり、法事への参列は本人の意思で行うものだからです。
御膳料
お通夜や葬儀・その他法事の後には会食をしますが、その際には僧侶を招待するのがマナーです。僧侶が会食を辞退した場合は、御膳料を渡します。
なぜ辞退した場合かというと、食事に代わるおもてなしの意味を込めているためです。表書きには「御膳料」と書きます。そのため僧侶が会食に参加した場合は、御膳料は必要ありません。
法事後の会食をセッティングしない場合でも、御膳料は渡すのがマナーとされています。しかし僧侶に引き出物としてお弁当を渡した場合は、御膳料は不要です。
お手伝いをしてくれた方への「心付け」
僧侶以外にも葬儀の受付や、運営の手伝いをしてくれた人へ、心付けを渡す場合があります。これはいわゆるチップのようなもので、一人当たり5,000円程度を渡すのが一般的です。知人だけでなく葬儀社のスタッフも渡す対象に含まれているので、覚えておきましょう。
封筒の表書きには、「志」または「御礼」と記載します。
しかし近年では、心付けは不要という認識が広まってきました。かつては心付けを渡すのが一般的でしたが、葬儀費用を見積もりから大きく外れないようにするため、なくなりつつあるのです。
近年、都市部を中心に、葬儀が簡略化されていることも背景にあるでしょう。もし心付けを渡すか迷った場合は、葬儀社に聞いてみるのがおすすめです。
お布施にダメな金額はある?
一般的なイメージに従うと、偶数や「4」「9」が含まれる数字は、避けた方がよいのではないかと思う人もいるでしょう。
ただし、お布施で避けるべき金額はありません。
僧侶に不幸があったわけではなく、何よりお布施は感謝の気持ちであるため、金額の意味までを考慮する必要はないです。
偶数や「4」「9」が含まれる金額を渡しても、僧侶は気にしないことがほとんどでしょう。なおお布施を包む封筒に、金額を書く必要もありません。
お布施を払えないときはどうすればよい?
さまざまな事情でお布施の払うことが、難しい人もいるでしょう。そのときは遠慮せず僧侶に相談するのがおすすめです。
本来お布施は感謝の気持ちを表すものなので、支払える範囲で渡せば問題ありません。
ただし一般的な費用相場が決まっている実情もあるため、経済状況により支払いが難しい旨や、少しの額しか渡せない旨を事前に相談するとよいでしょう。
当日渡すのが難しい場合は、後日でもよいかも相談できます。
葬儀費用を抑える方法も
お布施を渡せないのが心苦しい場合は、葬儀費用を抑えてお布施に回すのも1つの手です。
葬儀費用を抑えるには、葬儀の規模を小さくする、公営の斎場や火葬場を利用するといった方法があります。また複数社のプランを比較することで、不要な出費を抑えたプランを選択できるでしょう。
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葬儀社をこれから探すという方は、ぜひ利用してみてください。
身近な知識ではないからこそしっかり確認
特に初めて喪主を務める場合、お布施については分からないことが多いでしょう。具体的な金額が決まっていないからこそ、いくら包めばよいか迷うものです。
しかし法事ごとに大まかな相場は決まっています。またお布施を渡す際にはマナーがあるので、しっかりと押さえておきましょう。
監修者:岩田昌幸
葬送儀礼マナー普及協会 代表理事
葬送儀礼(臨終から葬儀、お墓、先祖供養等)が多様化している中で、「なぜそのようにふるまうのか」といった本来の意味を理解し、そうした考え方や習慣を身につけられるよう「葬送儀礼マナー検定」を実施しています。メディア監修多数、終活・葬儀・お墓関連セミナーも実施しています。
コメント
お布施の金額は寺院により異なります。そのため世の中に発信されている平均金額は参考までに、基本的には懇意にしている寺院に目安を聞くのが確実です。葬儀のあとには何回か法要が行われますので、慣れればスムーズに渡せるでしょう。