一日葬とは、通夜を省略して、葬儀・告別式・火葬のみをまとめて1日で執り行うお葬式のことです。2日間にわけて行う一般葬とは異なり、式のみを1日におさめることで、ご遺族の負担を最小限に抑えられます。
近年「一般葬」「家族葬」「一日葬」「火葬式・直葬」とお葬式の形式が多様化し、ご家庭に合わせた形で故人を送れるようになってきました。
その中でも一日葬はどんな流れで行い、また費用はどのくらいかかるのでしょうか。実施するメリットやデメリットを踏まえて紹介します。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表二村祐輔
一日葬とは?家族葬との違い
一日葬は告別式と火葬のみで執り行う葬儀です。「一般葬」と呼ばれる一般的な葬儀は2日間かけて通夜、葬儀、告別式、火葬を行うのが基本ですが、一日葬の場合は通夜を行いません。そのため対外的な儀式の日数が1日のみとなります。
一日葬と家族葬の違い
一日葬と混同されがちな葬儀が、家族葬です。一日葬と家族葬では、主な参列者と開催する日数スケジュールが異なります。
家族葬は家族や親戚を中心に執り行う小規模なお葬式のことです。全体の日数と流れは一般葬と変わらず、1日目の夜に通夜、翌日に葬儀・告別式を執り行います。
一方、一日葬の場合は参列者に制限は設けません。通夜を開催せず、1日で執り行う葬儀を総じて一日葬と呼びます。なお一日葬を家族のみで開催することも可能です。
一日葬の4つのメリットとは?
葬儀の形式を決める際、メリットやデメリットを把握したうえで選択することが大切です。一日葬を開催するメリットを解説します。
メリット①忙しい方でも参列しやすい
1つ目のメリットが「忙しい方でも参加しやすい」ことです。通夜なしで葬儀・告別式と火葬までを1日で済ませられることから、一般葬に比べ遺族の心身の負担が大幅に軽くなります。
普段忙しい方でも、一日葬なら予定を合わせやすくなるでしょう。通夜に参加する必要がないため、遠方の人も日帰りで参列できます。遺族が参列者のために、宿泊先を手配する必要もありません。
メリット②葬儀の費用が抑えられる
2つ目のメリットが「葬儀に掛かる費用が抑えられる」ことです。
具体的には、以下の3つの費用が抑えられます。
- 飲食に関する費用
- 式場を利用する費用
- 返礼品の費用
下記にて詳しく解説していきます。
抑えられる費用(1)飲食に関する費用
一日葬では通夜が行われないため、お酒や食事などの通夜振る舞いにかかる費用が丸ごとかかりません。また火葬場での振る舞いも必要ないため、発生する費用を削減できます。
抑えられる費用(2)式場を利用する費用
2日に分けて行う一般葬・家族葬と異なり、1日のみで行うため会場代も節約できます。ただし前日から斎場やホールを借りておかなければならないケースもあるため、注意しましょう。
抑えられる費用(3)返礼品の費用
また一日葬では、返礼品の費用も削減できます。一般葬になると多くの人が参列するため、返礼品をたくさん準備しなければなりません。
一方一日葬は、参列者の数が少なく小規模なケースが多いため、返礼品の用意に時間が掛かりません。上記で記載したように、金銭的な負担を減らせるのが一日葬のメリットです。
メリット③所要時間が短いため家族の負担が減る
お通夜から告別式、火葬まで2日掛かる一般葬には、多くの時間が必要です。そのため一般葬は、遺族の肉体的・精神的な負担が大きく、故人を偲ぶ時間も取りにくくなります。
一方一日葬は、1日ですべてが完結するため、遺族の負担を減らせます。
メリット④遺族が故人と一緒に過ごせる時間が長くなる
一日葬では、一般葬のような通夜が行われません。そのため遺族は、弔問客の対応をする必要がなく、故人と共に過ごす時間を増やせます。
返礼品や食事、弔問客の宿泊場所の手配も必要がないため、故人と過ごす時間が確保しやすいのです。
一日葬の3つのデメリットとは?
一日葬には様々なメリットがある一方、デメリット・注意点も存在します。
デメリット①お別れの時間が短い
一般葬では通夜があるため、式に参列できない方も、通夜で故人とのお別れの時間を過ごせます。一方、一日葬の場合はその日だけなので、故人とゆっくりお別れする時間が短いです。「しっかりお別れできなかった」と後悔する可能性もあることを把握しておきましょう。
デメリット②葬儀に参加できない人が増える
一般葬は2日間行われる一方、一日葬は1日のみで日中に行われることが多いため、参列できる人が限られる可能性があります。遺族以外で、葬儀に参加してほしい人がいる場合は、早めに予定を聞いておくようにしましょう。
デメリット③葬儀終了後の弔問客が増加することも
先述したように、一日葬は参列できる人数に限りがあります。そのため場合によっては、亡くなったことを知った故人の知人・友人が、自宅へ弔問に訪れることもあるでしょう。その場合、弔問対応が必要になるため、遺族の負担が増加します。
デメリット④寺院の理解を得られないことも
一日葬は葬儀社が考案した新しいスタイルのお葬式です。特に仏式の場合は通夜からの一連の流れを重視することが多く、お寺によっては一日葬に反対するケースもあるでしょう。懇意にしている寺院がある場合、事前の相談が重要です。
一日葬を行う流れ
一日葬は一般的に、「搬送・安置→葬儀社と打ち合わせ→納棺→告別式→火葬・お骨上げ」の流れで進みます。具体的な手順を見ていきましょう。
【亡くなった当日】搬送・打ち合わせ
ご遺体搬送・安置
故人が病院で亡くなられた場合、医師が死亡診断を行い、死亡届・死亡診断書を取得します。そののち葬儀社に連絡し、ご自宅または斎場の安置場所までご遺体を搬送といった流れです。
ご臨終の段階で葬儀社が決まっていない場合、病院から紹介される葬儀社にお願いするとよいでしょう。その後に葬儀社を変更できます。
葬儀社との打ち合わせ
遺体の搬送後は指定した葬儀社と打ち合わせを行い、火葬の手続きなど済ませます。ここで故人と生前に付き合いがあった方々に、訃報連絡を行いましょう。訃報連絡では故人の名前・逝去日・遺族の連絡先・葬儀や告別式の日程を伝えます。
お通夜を行わない分、式の前夜は故人とゆっくり過ごしましょう。
【翌日】納棺~告別式~火葬・骨上げ
午前9時~11時頃:納棺・告別式
式の前夜、または当日の朝や、式開始直前に自宅や保管施設で納棺します。その後式場に移動し、故人や遺族の宗教に則って、葬儀や告別式を執り行います。一日葬はタイトなスケジュールになるため、大半のケースでは一般葬より開始時間が早めです。
午前11時~12時頃:出棺・火葬場へ移動
告別式後は出棺し、ご遺体を火葬場へ搬送する流れです。場合によっては、出棺の前に繰り込み初七日法要を行います。家族と親族のみ火葬場へ移動し、一般参列者はここで解散であることがほとんどです。
午前12時~午後2時頃:火葬・お骨上げ
遺族や親族が火葬場に着いたら、荼毘に付します。その前に、火葬炉の前で僧侶による読経や最後のお別れである「納め式」をする場合もあるでしょう。
火葬には1~2時間かかるため、待合室や控室で待つことが多いです。故人についての思い出話や、今後の日程を話し合うことが多いでしょう。
火葬後はお骨上げを行い、骨壺に遺骨を納めます。
午後2時頃~:精進落とし、または初七日法要
一日葬では割愛することが多いですが、火葬後に身内だけで「精進落とし」と呼ばれる食事会をする場合もあります。
またこのタイミングで初七日法要を執り行うことも可能です。関東では主に告別式の後、関西では主に火葬の後に行います。
一日葬にかかる費用 ~平均はどのくらい?~
2022年9月にミツモアで行ったアンケート(n=508名)によると、一日葬にかかった平均費用は76.5万円です。費用には式・会場代・火葬代が含まれます。参列者によって大きく金額が変動するため、40万円~200万円を相場としてみておくとよいでしょう。
施行の日数が短い分、一般葬よりも経費がかからない傾向です。
一日葬の食事やマナーは?
一日葬は一般葬や家族葬とは流れが異なる分、特別なマナーがあるのでは、と不安な方もいるのではないでしょうか。疑問に思われがちな一日葬の食事、マナーについてまとめました。
参列者に食事は必要?
一日葬では通夜が行われないため、通夜振る舞いは必要ありません。翌日の式後もすぐに解散の場合、精進落としといった参列者への飲食提供の用意をしないで済むでしょう。
ただし火葬中や火葬後に限られた方々で会食をすることもあります。参列される親族に意向を聞いて、会食の有無を決めておくのも必要です。
一日葬で用意するお布施はどのくらい?
一日葬のお布施にかかる費用の相場は一概には言えませんが、約数万~20万円以上は考えておく必要があります。
お葬式の規模によってお布施の額が異なるということは原則的にありません。地域や僧侶との関係によっても異なるため、葬儀社に確認しておくとよいでしょう。
一日葬では通夜を執り行わないため、通夜の分のお布施が必要なく、一般葬よりも価格を抑えられます。
香典返しは必要?
一日葬では、一般葬と同様の香典を参列者から受け取ります。そのためいただいた香典の1/3~1/2の金額の品物を、香典返しとするのが慣例でした。
ただし現在ではいろいろな考え方があり、家族のみの葬儀の場合、香典そのものを辞退するケースもあります。
一日葬に適した服装は?
喪主、ご遺族、参列者ともに一般葬と変わりありません。喪主は正喪服または準喪服、親族・参列者は準喪服を着用します。
準喪服はブラックフォーマルなスーツやワンピースを着用するのが一般的です。ビジネススーツは喪服に該当しないため注意しましょう。
学生の場合は学生服を着用します。小学生や未就学児は、白のトップスに黒いズボン、または黒のワンピースがおすすめです。
後悔しない一日葬のために重要な3つのポイント
「何となく一日葬を選んだけど、心のこもった見送りができなかった・・・」とならないために、葬儀の前に行っておくべき3つの重要なポイントを紹介します。
1、葬儀中に故人を偲ぶ時間を作る
形式的に葬儀・告別式をするのではなく、しっかりと故人を偲ぶ時間を取りましょう。葬儀前には、故人の好物を家族で作るなどして、故人との思い出を振り返る時間を取るのがよいでしょう。
葬儀中には、故人の生前の写真や遺品を飾るなどするとよいです。時間が短い一日葬だからこそ、限られた時間を故人のために使うことが、後悔のない葬儀のために欠かせないのです。
2、葬儀に呼ぶ人を事前に話し合っておく
後悔のない一日葬にするためには「葬儀に呼ぶ人を、故人と生前に話し合っておく」ことも重要です。先述したように、一日葬は1日で完結するため、葬儀当日に都合が悪い参列者がいると、その人は参加ができません。
一日葬を実施予定の場合は、故人と関係の深い友人・知人を葬儀前に明らかにしておき、葬儀の日程を早めに共有しておきましょう。そうすることで「必ず参列してほしい人が葬儀に参列できない」といった事態が発生しづらくなります。
3、葬儀社に丸投げしない
また「葬儀社に葬儀の内容を丸投げしない」ことが、後悔のない葬儀には重要です。大切な家族が亡くなった場合、多くの人は冷静さを失います。
冷静さを失った状態で葬儀社に葬儀を丸投げすると、
「葬儀社のいうとおりに葬儀をしたら、相場よりもかなり高くなった」
「思っていた葬儀が実施できなかった」
といった問題が発生しかねません。後悔のない葬儀を実現するためにも、事前に葬儀の内容や、掛けられる費用を明確にしておき、自身の要望にあった葬儀社を探しておきましょう。
一日葬は信頼できる葬儀社に依頼しよう
一日葬はかかる時間を短縮できる分、ご遺族の負担が少ないメリットがあります。故人とのお別れの時間が短い点については、他の親族らや周囲の方々の理解や合意を得ておく必要があるでしょう。
またお葬式そのものは1日に短縮されるといっても、葬儀社との打ち合わせや訃報連絡などすべきことは様々です。事前に行う準備にも気を配りながら、納得のいく葬儀を執り行いましょう。
葬儀社選びは相見積もりがおすすめ
お葬式の準備は心身に負担のかかるものです。信頼できる葬儀社に依頼することで、スムーズに事前準備や式を執り行えるでしょう。
葬儀社を選ぶ際には複数の葬儀社から相見積もりを取り、費用などの内訳を比較するのがおすすめです。
お時間の限られている方は、ミツモアを活用するのがおすすめです。最大5社から最適な見積もりを、一括で集められます。
業者の評判を口コミで確認したり、業者と直接チャットでやりとりしたりできますよ。
監修者:二村祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
通常のご逝去であれば、法律上は24時間以上たたないと火葬することはできません。そのため原則、一晩は過ごすことになります。一日葬とは通夜のご弔問を、翌日の式のご会葬に集約するという式進行の提案です。葬儀・告別式を対外的に昼の時間帯に行うことで、「一日葬」という通称を多くの葬儀社が使用しています。現代的なお葬式の進め方ですが、お別れの時間が短いといった問題も出てきますので、事前に注意点を確認しておきましょう。