身内が亡くなると、短時間で葬儀社を選ぶことになります。事前に故人と話し合いができていないときは、何を基準に選べばいいのか迷うことも多いでしょう。
葬儀社の選び方や、葬儀社選びで失敗するとどんなリスクがあるのか、主なケースを紹介します。
この記事を監修した専門家
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
二村祐輔
葬儀社選びで見るべきポイント
葬儀でのトラブルを避け、スムーズに葬儀を進行するには、葬儀社の選び方が重要です。
葬儀社を選ぶ時には、以下4つのポイントに気を付けると、希望する葬儀を行える可能性が高まるでしょう。
- 見積もりプランがわかりやすく明確か
- 信頼できる担当者か・葬祭についての知識度
- 口コミや評価がよいか
- 契約を急かさないか
- 請負契約書などの適正さ
それぞれ詳しく解説します。
見積もりプランがわかりやすく明確か
葬儀社が提供する葬儀プランの多くは、搬送代、車代、棺代、スタッフの人件費といった費用が含まれてます。ただしプラン内の項目や、実際の内容は葬儀社によって異なるため、どういった内容が含まれているのかしっかりと確認しておきましょう。
特に一式・○○パック・○○コースなどの包括設定は内容の確認が重要です。たとえば祭壇や枕飾り、返礼品、仕出し料理などの実費を料金に含めているのか、別料金なのかといった細かい部分を問い合わせて、聞いておきましょう。
オプションの範囲や追加料金の有無について葬儀社と認識を合わせておくことで、思わぬ高額請求を防げます。
希望するプランの料金相場を見比べるためには、複数社から相見積もりを取るのがおすすめです。
信頼できる担当者か・葬祭についての知識度
相談する担当者が希望を踏まえたプランを提示してくれるか、誠実に契約の説明をしてくれるかは重要なポイントです。親身に対応してくれるかといった人柄や、葬祭に関する知識、気軽に相談や質問をしやすいかも確認しておきましょう。
なお見積もり時の担当者と、実際に葬儀を担当するスタッフが異なる場合があるため確認しておくのがおすすめです。
「希望していないプランをあれこれ勧める」「見積もりが大雑把」な担当者には注意しましょう。相談の段階で不信感がある担当者や葬儀社は、後日トラブルになる可能性が高くなります。
口コミや評価がよいか
実際の依頼者からの口コミや評価も参考になるでしょう。葬儀社によっては過去のご依頼者からの声や、いただいた評価をホームページ上に載せています。
ご自身の環境や境遇と似た方の口コミを確認すると、より希望を満たした葬儀を行える可能性が高まります。葬儀社は地場企業なので、地元での評判も非常に参考になるでしょう。
ミツモアでも葬儀を依頼した方の口コミが掲載されているので、参考にしてみてください。
契約を急かさないか
「今なら割引できる」「今すぐ契約しないと、火葬場が混雑して希望の日程で葬儀ができない」など、過度に契約を急がせる葬儀社は避けましょう。サービスがよく多くの人に選んでもらえる葬儀社は、押し付けるような営業をしなくても依頼があります。
営業スタッフの押しが強いだけという可能性もありますが、葬儀を前にして心身ともに負担の大きい中、不安を煽るような葬儀社は避けた方がよいでしょう。
遺体の管理や葬儀の日程で焦ることが多いからこそ、じっくりと話を聞いて、比較することが大切です。
請負契約書などの適正さ
相談時における「個人情報の守秘・管理」の意識は大変重要なポイントです。
最近ではプライバシーポリシーの表示や守秘義務についての覚書き、また見積もり成約の場合には「請負契約書」などの発行をする葬儀社もあります。信頼度を推し量る指標になるでしょう。
葬儀社を選ぶタイミング
葬儀社を決めるタイミングは、生前と逝去直後の2つがあります。
ご逝去直後に葬儀社を決める方も多いようですが、「事前相談しておいた方が満足感が高い」という結果も出ており生前の相談がおすすめです。
ご逝去後に葬儀社を選ぶ場合
【搬送前】病院からの搬送前に決める
病院で亡くなった場合、ご遺体を安置しておける時間にも限りがあります。ご自宅、または斎場などの安置場所にご遺体を安置させるために葬儀社に搬送を依頼しなければなりません。そのため搬送前のタイミングで葬儀社を決める方は多くいらっしゃいます。
身内が亡くなり動揺していると、病院などから紹介された葬儀社に全てを任せたくなるかもしれません。しかし時間のない中、焦って契約をすると、希望と異なる内容になったり、費用が想像以上に高くなったりといったトラブルが起きやすくなります。
一度冷静になり、しっかりと見積もりをもらってから葬儀社を決定することが大切です。また親しい友人など、冷静になれる第三者にも立ち会ってもらうと良いでしょう。
【搬送後】安置してから決める
病院からの搬送のみ紹介された葬儀社に依頼し、式を行う葬儀社はその後に選ぶのも1つの手です。
この場合、ご遺体の安置をしたうえで、親族やできれば地域の世話役さんなども交えて葬儀社を決定することもあります。
ただしご遺体の保全処置もありますので多くの時間はかけられません。この場になって、複数社から相見積もりをとり検討する時間は、ほとんどないと考えておきましょう。
生前に事前相談をするとスムーズ
「生前に葬儀の話をするのは不謹慎、気が引ける」と思われる方もいるかもしれません。しかしご本人の葬儀への希望を聞いておけるという点では生前での相談は大きなメリットです。
ミツモアで行った喪主経験者へのアンケート(※)では、生前に相談した方の葬儀社への満足度は79.7%で、事前相談していない方は67.4%と、事前相談していた方が特に満足度が高い結果でした。
最終的に支払った費用に関しても、見積もりと実際の支払金額の差異が少なく、事前相談していた方のほうが納得度が高い結果が出ています。
事前相談を行っていれば、いざその時になった際に式の規模や費用の確認、葬儀社の選択に焦らずに済むでしょう。ご本人やご遺族が納得のいく葬儀を挙げるためにも、生前での相談がおすすめです。
なお生前の葬儀社の予約に関しては、本人の希望があるときや、本人が危篤状態などで意思表示できず、親族全員が予約に賛成している場合にのみ行うことが無難でしょう。
葬儀社を選ぶ前に確認しておく事柄
葬儀社に依頼する前に、故人の宗教や希望のエリア、式の規模をはっきりさせておくと見積もりや相談がスムーズです。事前に確認しておきたい内容を紹介します。
故人の宗教・宗派
宗教や宗派、地域の慣習によって、葬儀の流れは変わってきます。故人が信仰する宗教・宗派があるかどうか、確認の上葬儀社を選びましょう。
また遺族や参列者が常識と考えている慣習でも、全ての葬儀社が対応できるとは限りません。宗派ごとに細かいルールがあるため、希望があるときは事前に確認するのがおすすめです。
無宗教や細かいリクエストがないときは、葬儀社が提供する葬儀の流れを確認しておくと手違いがありません。
葬儀を行うエリアと斎場
葬儀社によって、対応エリアは異なります。特に希望する葬儀社がいない場合は、まずは地域で絞り込んで選ぶのがおすすめです。
または葬儀を行いたい斎場があればそこから絞り込みましょう。葬儀社ごとに慣れている斎場は異なります。地域で絞り込んだ場合でも、希望する斎場があれば伝えておくと手続きがスムーズです。
葬儀の形式と規模
葬儀には一般葬・家族葬・一日葬・直葬など、いくつかの形式があります。葬儀社によってもその名称の中身が異なる場合があるため、参列者の人数や予算の想定から、具体的な形式・規模を決めておくのがおすすめです。
基本的に一般葬では、お通夜・告別式・火葬と一通りの儀式を行います。外部の参列者を呼び、規模が大きめなのが特徴です。家族葬は家族および親しい参列者のみで行います。また一日葬はお通夜を設けず、1日のみで告別式・火葬を進める形式です。直葬は、火葬のみ行うシンプルな葬儀で、通夜・告別式を行いません。
予算の上限から絞り込む際には、葬儀社のプランを確認し、希望の予算で対応できる形式を選択するとよいでしょう。
基本的に、参列者の人数が多く会場が広くなるほど予算が上がります。花や棺のグレードによっても追加料金が発生するため、予算の上限と希望する形式はきちんと伝えておくとよいでしょう。
葬儀社選びを失敗するリスクとは
葬儀社選びに失敗したと感じる事例には「高額費用の請求」「契約とサービス内容が異なる」などがあります。
よくあるケースと、トラブルを避ける方法を見ていきましょう。
高額な費用を請求される
「葬儀社に請求された金額が予定よりも高額だった」というのは、よくあるトラブルです。見積もりと実際の請求額に差があり、驚く人もいます。
身内を亡くして動揺している状況では、何も考えられず葬儀社の言うとおり契約を進めてしまうケースもあるでしょう。ゆっくり考えている時間がないからこそ起きる問題です。
ただし、見積もりと実際の費用に差があったとしても、それだけで悪質な葬儀社と判断はできません。
一般的な葬儀社であっても、見積もりに記載されない費用や追加料金によって、予定より高額になってしまうことはあります。
本来オプションを追加する際には、その都度報告や、ご遺族の了解などを取るものです。事後の請求トラブルにならないよう、都度の確認を怠らず遺族にしっかり説明をしてくれる葬儀社を選ぶよう心掛けましょう。
契約と実際のサービス内容が異なる
契約時に聞いていた内容と実際のサービス内容が違うと、納得のいく葬儀ができずトラブルになります。
「家族葬を頼んでいたのに情報共有ができていない」「希望していたグレードの棺が用意されていなかった」など、葬儀当日になってトラブルが発覚するケースです。
原因として葬儀社の連携不足やスタッフの質など、いくつかの問題が考えられるでしょう。事前に確認する時間が少ないからこそ、評判のよくない葬儀社を選んでしまうことがあります。口コミや評価もよく確認することが重要です。
葬儀内容について親族や参列者から苦情が出る
葬儀には親族や、故人の関係者が訪れます。葬儀内容は遺族が決定しますが、親族との関係性や考え方によっては苦情が出ることもあるでしょう。
「葬儀の内容が寂しい」「演出が明るく不謹慎に感じる」など、人によって考え方はさまざまです。地域の慣習や葬儀に対する考え方はそれぞれ違うため、地方の親戚などからクレームを寄せられることもあります。
葬儀に呼ぶ範囲が広いときや、故人の希望で特殊な形の葬儀を行うケースでは、喪主の意向やこの地での慣例を理解してもらうことでトラブルを防ぐことが可能です。
葬儀社の種類と違い
葬儀社には、いくつかの種類があります。運営元の特徴を知っておけば、「思っていた葬儀社と違った」と戸惑うことも少なくなるでしょう。
一般的な葬儀社の種類を紹介します。
葬儀専門業者
葬儀に関するサービスを専門的に扱う業者です。「葬儀社」というとこの葬儀専門業者を思い浮かべる人も多いでしょう。
業者の規模によって、運営の範囲は異なります。複数の葬祭ホールや事業所を有している葬祭企業から、家族で営む地元の「葬儀屋さん」までさまざまです。
お葬式全般を扱うことから、生花店や仕出し料理、返礼品・ギフトなどを取り扱う業者とも連携しており、総合的な葬祭サービスを提供し、葬儀後の納骨や霊園の斡旋までトータルでサポートしてくれるところもあります。なるべく相談先を1つにまとめたいと考える人におすすめです。
葬儀仲介会社
葬儀仲介会社は、提携する複数の葬儀社から利用者が求めるサービスを紹介する会社です。
葬儀社選びに迷う人や、葬儀社についての知識が薄い人でも利用しやすいでしょう。仲介会社は葬儀を行わず、紹介先の葬儀社がサービスを提供します。
仲介会社に支払われるのは、葬儀社または依頼者からの仲介手数料です。複数の会社から選びたい人や、仲介会社を通して誠実な葬儀社を探したいと考えるときには、仲介会社の利用が向いているでしょう。
複数の会社から事前の見積もりを取って選びたい人や、仲介会社を通して誠実な葬儀社を探したいと考えるときには、仲介会社の利用が向いているでしょう。
冠婚葬祭互助会
冠婚葬祭互助会は毎月数千円を積み立て、結婚式・葬儀などの資金として利用できるサービスです。該当する互助会が運営する斎場・プランを利用できます。
支払いは満期になるまで続き、50~100回程度の設定が一般的です。解約手数料を支払うと途中解約ができ、満期になっていなくても冠婚葬祭の一部費用に充てられます。返金有無はプランにより異なるので注意しましょう。
互助会のメリットは、家族の冠婚葬祭でもサービスが利用できるところです。家族の利用範囲は互助会ごとに異なるため、家族の結婚式や葬儀に利用したいと考えている場合は、事前に確認しておきましょう。
JAや生協などの協同組合
JAや生協では、出資金を支払っている組合員を対象に葬儀のサービスを提供しています。一定の基準を満たすと組合員以外の利用も可能です。
専門の葬儀社と連携しサービスを提供している組合や、自社で斎場を運営している組合があり、事業者によってサービスの提供形態は異なります。
一般の葬儀社に比べると価格が低く設定されているので、協同組合員である場合は相談してみるとよいでしょう。
葬儀社選びのポイントを押さえ、納得できる葬儀を
身内が亡くなった後、葬儀社を選ぶとなると時間的な猶予が無いことが多いでしょう。そのような時こそ、焦らず複数社から見積もりをとり、担当者の人柄や葬儀社ごとのサービス内容を比較しましょう。
また葬儀をスムーズに進めるために、生前での事前相談もおすすめしています。故人と親族、またご自身の希望をよく確認し、信頼できる葬儀社を選びましょう。
監修者:二村祐輔
日本葬祭アカデミー教務研究室 代表
『葬祭カウンセラー』認定・認証団体 主宰
東洋大学 国際観光学科 非常勤講師(葬祭ビジネス論)
著書・監修
- 『60歳からのエンディングノート入門 私の葬儀・法要・相続』(東京堂出版) 2012/10/25発行
- 『気持ちが伝わるマイ・エンディングノート』 (池田書店) 2017/9/16発行
- 『最新版 親の葬儀・法要・相続の安心ガイドブック』(ナツメ社) 2018/8/9発行
- 『葬祭のはなし』(東京新聞) 2022年現在連載
など多数
コメント
最近では葬儀社の情報も、インターネットを通じていろいろ確認できるようになりました。特に注意すべきは、生前相談や事前相談の際にやり取りされる「情報」です。葬祭企業が相談に対する「プライバシーポリシー」を表明しているかどうかは、葬儀社選択の大きなポイントになります。死亡届や死亡診断書には、本籍から現住所、続柄、死因、病状等々、いろいろな情報を含んでいるものです。そうした書類の取り扱いについても、十分に配慮できる葬儀社は信頼をおけるでしょう。