友人や知人、会社の関係者の家族葬が執り行われる場合は、弔電(ちょうでん)を送ってもよいのでしょうか。
送るべきではないケースで弔電を送ってしまうと、遺族に負担を与えかねません。家族葬で弔電を遠慮すべきかどうかの判断基準や、送る際のマナーについて解説します。
この記事を監修した専門家
HIROKO MANNER Group 代表/一般社団法人 マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会 代表理事
西出 ひろ子
家族葬に弔電を送ってもよい?
家族葬は限られた人のみを呼ぶ小規模な葬儀です。故人に近しい人のみで静かに送りたいという、ご遺族の意向に従い執り行われます。
家族葬に参列しない場合、基本的には弔電を送っても問題ありません。しかし送ってはいけないケースもあるため注意しましょう。
基本は送ってもOK
家族葬の場合でも、弔電は基本的には送って構いません。弔電は手紙と同様に扱われます。そのためご遺族はお礼状を返信するのみで、お礼の品は必要ありません。供花や供物と異なり場所もとらないため、ご遺族の負担が少なくて済みます。
もし弔電ではなく香典を送りたいと考える場合は、事前にご遺族に確認すると良いでしょう。香典を受け取ったご遺族は、香典返しを考える必要があるためです。ご遺族にできるだけ余計な負担をかけないように配慮しましょう。
弔電を送るのがNGなケースも
以下の場合は、弔電を送ることを控えましょう。
- 弔電を辞退する通知があった際
- 訃報を人づてに聞いた際
ご遺族から直接訃報を知らされたケースでも、弔電を辞退する旨の連絡があるなら、勝手に送るのはやめましょう。家族葬では自分の弔意以上に、ご遺族の気持ちやご意向を尊重することが大切です。
人づてに訃報を知った場合も、弔電を送るのは控える方が無難と言えます。ご遺族から葬儀前に連絡がない際は、参列や弔電を受け付けていない可能性が高いです。
ただし、訃報に関する情報を教えてくれた人や葬儀社がわかっていれば、弔電を受け付けているかどうか伺ってみても良いでしょう。情報を教えてくれた人に、弔電を送っても良いのかどうかを相談しても良いですね。周囲の人たちと足並みを揃えることも大切です。
どうしてもお悔やみの気持ちを遺族に示したいと考えるのなら、四十九日が過ぎて遺族の気持ちが落ち着いた時期に、電話や手紙で連絡するとよいでしょう。
そもそも弔電とは?費用や送り方
そもそも弔電とは、通夜や葬儀に参列できなかった人が、お悔やみの気持ちを遺族に伝える電報です。遠方に住んでいて通夜・葬儀に行けない人や、仕事の都合で時間がとれない人は、弔電を利用して弔意を示せます。
弔電にかかる費用
弔電の料金の相場は3,000〜5,000円です。メッセージやデザインを追加する場合、オプション料金が発生することもあります。
友人や知人に送るシンプルなデザインの場合の相場は1,000円ほどで購入可能です。また生花が付属されていたり、漆塗りの台紙が使用されていたりと、豪華な弔電は1万円ほどかかるでしょう。
弔電の一般的な送り方
弔電は通夜の開始前に届くタイミングで手配するのが一般的です。遅くとも葬儀・告別式までには届くように送るのがマナーとされています。
弔電を送るための注文は電話(115)・郵便局・インターネットのいずれかで可能です。電話と郵便局は受付時間が決まっていますが、インターネットなら24時間いつでも注文できます。
以下の情報を用意しておくと、注文の際にスムーズです。
- 喪主名フルネーム
- 差出人名・故人との関係
- 斎場名
- 斎場の住所・電話番号
- 葬儀の時間
弔電は斎場に直接送るため、斎場名と斎場の住所は間違わないようにしっかりと調べておきましょう。ただし火葬のみの直葬・火葬式の場合は、斎場で保管できないため一度自宅に送るのがおすすめです。
喪主の名前がわからない場合は、自分と直接関係のある知人(ご遺族の関係者宛)に送っても構いません。知人から見て故人がどういう続柄なのかは、間違わずに記しましょう。
家族葬に送る弔電の文例
家族葬に弔電を送る場合の例文を2つ紹介します。故人の敬称は、喪主との関係性により変わる点に注意しましょう。
なお句読点には「終止符を打つ」という意味合いがあるため、使わないとされてきました。ただし、近年では入れても問題ないとされるケースも多いようです。
【差出人が故人の友人・知人の場合】
ご尊父様のご逝去の報に接し 謹んでご冥福をお祈りいたします
ご尊父様と過ごした思い出の数々が 走馬灯のように浮かんでまいります
安らかにご永眠なさいますよう 心よりご冥福をお祈り申し上げます
【差出人が喪主の友人・知人の場合】
ご子息様の突然の悲報に接し 悲しみにたえません
ご家族の皆様のお悲しみや無念のお気持ちは 計り知れないものとお察しいたします
心からお悔やみ申し上げます
故人の敬称例も紹介します。たとえば喪主の父親が亡くなった場合は、「ご尊父様」が最上級の敬称です。
【故人の敬称例】
- 喪主の夫:旦那様、ご主人様、ご夫君(ふくん)様
- 喪主の妻:奥様、ご令室(れいしつ)様、ご令閨(れいけい)様
- 喪主の父:お父様、お父上(ちちうえ)様、ご尊父(そんぷ)様
- 喪主の母:お母様、お母上(ははうえ)様、ご母堂(ぼどう)様
- 喪主の息子:ご子息(しそく)様、ご令息(れいそく)様
- 喪主の娘:お嬢様、ご息女(息女)様、ご令嬢(令嬢)様
家族葬に弔電を送る際の注意点
弔電にはいくつか気を付けるべきポイントがあります。遺族に失礼な印象を与えないように、注意点を押さえておきましょう。
弔電の宛名は喪主にする
弔電は喪主宛に送るのが基本です。故人の名前を宛名にしないように注意しましょう。
また喪主の名前はフルネームで伝えなければなりません。
喪主の名前が分からない場合は、斎場に問い合わせて確認しましょう。斎場への確認もできないのなら、宛名を「○○家ご遺族様」としておけば大丈夫です。
差出人の情報もわかりやすく
故人の人間関係を、ご遺族が全てきちんと把握しているわけではありません。弔電を数多く受け取った場合、中には初めて目にする名前もあるでしょう。
弔電を送る際は差出人の情報も詳細に示す必要があります。名前・住所・連絡先以外に、故人との生前の関係性が分かる情報も添えておきましょう。
たとえば故人の同級生なら「○○高校○○年卒業生」、同じ会社で働いていた場合は「○○会社○○部」と書けば、誰が見ても分かりやすくなります。
忌み言葉を使わないよう注意
弔電の文章には忌み言葉を使わないように気を付けましょう。忌み言葉とは不吉な意味を連想させる言葉です。葬儀や結婚式などの場で使用を控えるべきとされています。
弔電で使うべきではない主な忌み言葉は以下の通りです。
- 不吉な言葉:死ぬ、落ちる、迷う、終わる、消す、数字の4・9
- 繰り返し発生することを連想させる言葉:たびたび・ふたたび、わざわざ、皆々様
細かな言葉遣いにも気を配った弔電を
弔電はご遺族の返礼の負担が少ないため、家族葬に送っても構わないとされています。ただし遺族が弔電を辞退していたり、直接訃報を聞いていなかったりした場合には、弔電は控えるのがマナーです。
弔電を送る際は宛名を喪主にし、差出人の情報も詳しく記す必要があります。忌み言葉や重ね言葉にも注意し、ご遺族に配慮した丁寧な弔電を送りましょう。
監修者:西出 ひろ子
HIROKO MANNER Group 代表
ウイズ株式会社 代表取締役会長
HIROKO ROSE株式会社 代表取締役社長
一般社団法人 マナー&プロトコル・日本伝統文化普及協会 代表理事
葬儀会社などの企業にて、お客様の心に寄り添う営業接客・接遇研修や、マナーコンサルティング、マナー研修を行う。「めざせ!会社の星」 (Eテレ)、「芸能人品格チェックスペシャル」 (ABC朝日)、「なないろ日和」(テレビ東京)などのテレビ番組にてお葬式や喪服のマナーについての出演、監修など多数。NHK大河ドラマや映画、CMなどでは超一流俳優や女優へのマナー所作指導実績数日本NO.1。
- 『お悔やみのマナー』 (アドレナライズ) 2013/9/24発行
- 『知らないと恥をかく 50歳からのマナー』(ワニブックス) 2020/8/25発行
- 『気くばりにいいこと超大全』(宝島社)2022/6/15発行
など多数
コメント
マナーの本質は「相手様の立場に立つこと」です。よかれと思ってお届けした弔電が結果的に、ご遺族に不快な思いをさせたり、ご負担をかけてしまっては本末転倒です。弔電を送る際にも忌み言葉などの言葉は失礼のないように慎重に確認しましょう。一方であまり慎重になり過ぎて、弔電を控えてしまうことも考えものです。
遺族の立場に立てば、故人が多くの人から愛されていたことを知るきっかけともなる弔電です。たとえ弔電を辞退していたとしても、送られてきたその気持ちには感謝することは大事でしょう。故人やご遺族のお気持ちを察しながら、弔電を送る側の気持ちも大切にしたいものです。マナーは互いに互いの立場に立って思いやる気持ち、心ですから。