給与デジタル払いは政府が議論を進めているものであり、実現されるのも遠い未来の話ではないでしょう。給与デジタル払いは利便性が増してメリットも大きいですが、未だ課題も多いものです。今回は給与デジタル払いに関する仕組みや課題を解説します。
給与デジタル払いが進められている理由
毎月の給与を銀行振込で支払っている企業は多くあります。政府が法改正を考慮してまで給与デジタル払いを検討しているのはなぜなのでしょうか。
給与デジタル払いとは
給与デジタル払いとは、電子情報で決済が可能なプリペイドカードや、スマートフォン決済ができる電子マネーで給与を支払うことです。LINE Payや楽天ペイなどが代表的なものです。
給与を銀行振込で支払うのは、労働基準法の例外です。給与支払いには「通貨払いの原則」「直接払いの原則」「賃金全額払の原則」「毎月1回以上払いの原則」「一定期日払の原則」という五つの原則があります。
労働基準法の第24条での「賃金の支払い」は、原則として現金で直接手渡さなければならないとされています。給与の銀行振込は、それぞれの労働者の同意を得て、振り込まれた給料が支払日に全額引き出しができる条件を満たせていればよいという条件なのです。
参考:厚生労働省「労働基準法」
給与デジタル払いを政府が進めている理由
日本は少子高齢化により、人材不足が深刻化しています。外国人労働者の就労を政府が支援している背景もあり、今後も増えていくでしょう。銀行を開設することが難しいケースもあるため、給与がデジタルマネーになれば雇用の拡大にもつながります。
また政府はキャッシュレス化を積極的に推し進めています。消費者の利便性が向上したり、データの活用によって高度な経済戦略が立てやすくなったりするためです。デジタルマネーがキャッシュレス化を加速させることを期待しての動きでもあります。
経済産業省が2020年に発表した調べでは、日本でのキャッシュレス化はおよそ20%です。同省は「成長戦略フォローアップ」として、キャッシュレス決済比率を2025年6月までに4割程度増やし、最終的には世界最高水準の80%を目指すといっています。
参考:経済産業省キャッシュレスの現状及び意義
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給与デジタル払いの仕組みについて
給与デジタル払いには、資金移動業者の送金サービスを使います。資金移動業者はどのような仕組みなのか解説します。
資金移動業者と銀行の違い
資金移動業者は、送金や決済サービスをする業者です。約80社が登録しています。
銀行 | 資金移動業者 | |
最低資本金(純資産額) | 20億円以上必要 | 基準が定められていない |
利用限度額 | 制限あり | 第一種…限度額なし
第二種…100万円以下 第三種…5万円以下 |
取引 | 為替取引業務のみ | 為替取引以外にも業務可 |
銀行には自己資本規制があり、一定以上の資本をもっています。資金移動業者は、履行保証金として1日の利用者の総額を計算し、最低でも1,000万円以上を信託会社や銀行に供託する義務があります。
アメリカでの実例
アメリカでは、すでに給与デジタル払いが現実的になっています。「ペイロールカード」を参考にしてみましょう。
ペイロールカードとは、前払いのプリペイドカードです。VISAやMastercardなどのクレジットカード機能も付いています。
アメリカでは銀行口座を持てない人や銀行口座を管理する手間を省き、小切手を現金に交換する際の手数料の削減を目的としてペイロールカードの普及が進められてきました。どの州でも使用することができます。
もちろんペイロールカード以外の給与受け取り方法もあります。柔軟さとスピード感、世の中の需要により給与デジタル払いがアメリカ全土で広がっていったのです。
給与デジタル払いの参考例
企業で実際に給与デジタル払いを実行している事例を紹介します。
2021年3月にソフトバンクグループが、約2万人にもなる全従業員に「ニューノーマル支援特別一時金」として20万円を支給しました。その一部をスマホ決済サービスのPayPayで支給しています。
LINE株式会社が交通費をLINE Payで支給したり、東京オリンピックのボランティアにKyashのアプリを使用して交通費を支給したりしています。
給与デジタル払いのメリット
給与デジタル払いを導入する際、メリットを知っておくとスムーズに議論できるでしょう。社員の第3の支払い方法として必要があるのか、企業にとってのメリットをご紹介します。
銀行の手数料の削減につながる
給与の支払いを銀行振込でしているという企業は多いでしょう。企業が利用している銀行であれば、社員の給与振込手数料が無料となります。しかしほかの銀行では毎月振り込み手数料が発生しており、企業負担となっているのです。
賃金移動業者は、銀行よりも送金手数料は安く設定できます。デジタル給与払いとなった場合、銀行へ支払っていた手数料を削減できます。
製造業や建設業の場合、日雇いや週払いの給与支払い形態もあるかもしれません。支払い回数が多い企業であれば、経費の削減となります。給与振込手数料が少なくなれば月1回の給与支払いを月2回や3回にするという柔軟な対応も取れるようになります。
銀行口座のない人でも利用しやすい
日本に在住している外国人労働者の中には、銀行口座を作るのが難しいケースがあります。言語の壁だけでなく、身分証明を取り寄せる手間や条件の厳しさなどから、口座そのものを開設することが困難なのです。
銀行口座の開設には、日本に6カ月以上滞在していなければなりません。在留カードが有効期限内でも、一部の銀行では在留期間満了日が口座開設から3カ月以内の場合は、口座開設ができないなど不便さがあります。
給与デジタル払いなら手続きも簡易になります。海外送金の手数料も銀行より安く、公共料金の支払いもスムーズにできてメリットも大きくなるのです。企業側も人材の募集・確保のハードルが下がるでしょう。
給与受取の利便性向上
給与デジタル払いになれば、PayPal・LINE Pay・d払いなどスマホ決済サービスで直接デジタルマネーを受け取れます。
まず現金を下ろす手間がなくなります。デジタル払いできる場所も増えたため、現金やクレジットカードを持ち歩く必要もありません。もちろん、ATMから現金を引き出すことも可能です。
またキャッシュレス決済アプリには、還元サービスも多く展開されています。日常的にデジタルマネーを使うシーンが増えれば、ポイントが貯まったり、還元サービスを頻繁に受け取ったりといった恩恵を受けることも増えるでしょう。
給与デジタル払いで考えられる課題
給与のデジタル払いは、社員のデジタルマネーの便利さや企業のコスト削減といったメリットがあります。しかし政府が思うような推進には至っていません。課題を知り、どのような点に気を付けるべきか考えてみましょう。
セキュリティ対策が不十分なこと
電子マネーサービスをしているNTTドコモは、運営するドコモ口座から不正に個人情報が奪われるという事件を起こしました。
ドコモ口座の開設には、本人確認をメールアドレスだけで行なっていました。そこに銀行のセキュリティの甘さが加わり、この問題を起こしてしまったのです。
キャッシュレス決済サービスは、インターネット上で個人情報やパスワードを不正に抜き取られる可能性があります。もしアカウントを乗っ取られた場合、重要な情報が流出してしまいます。
不正利用された場合、銀行は「預金保護法」があるので法律で保護されています。しかし資金移動業者は、まだ法律で保護されていません。被害の拡大防止に向けた策を最優先にするとあるだけで、これからの課題となっています。
破綻したときの保証が十分でない
銀行が破綻した場合は、預金保険制度が適用されて「元本1,000万円まで」と「破綻日までの利息」が保証されています。
資金移動業者の場合は履行保証金があります。これは業者が破綻した60日以内に、債権の申請を自分でしなければなりません。
さらに申請したときの費用を差し引かれるうえに、申し出された金額から配当を計算して支払われるため、全額を保証するものではありません。還付にも半年程必要であるとされており、すぐにお金が受け取れる可能性も低くなるのです。
会社のシステム変更を検討する
法改正や賃金体系が変わると影響されるのが給与システムです。給与デジタル払いに変更する際に、導入している現在のシステムを確認する必要が出てきます。
給与システムがクラウド型であれば自動更新されるでしょう。しかし買い切り型の場合は、再購入する必要が出てきます。事前に調べておくとよいでしょう。
また給与のデジタル払いには、社員の希望によって支払い方法を調整する作業や、送金先の二重管理と仕事の負担が増える可能性があります。業務の負荷も検討すべき内容でしょう。
給与デジタル払いの準備を進めよう
給与のデジタル払いは、手渡し、銀行支払いに続く3番目の新たな受け取り方法として便利な選択肢となります。
スマホ決済サービスを行う資金移動業者のセキュリティ対策や給与が振り込まれたあとの保証などが課題となっているため、政府の動向も含めて今後を観察しておく必要があるでしょう。
企業の経費削減やキャッシュレス化への動きを考えると、社員の希望者に対して少しずつ給与デジタル払いをはじめてみるのもいいでしょう。
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