田舎の土地は利便性が低く売れにくい傾向にあるので、売却するためにはコツや知識が必要です。田舎の土地を売る流れや売れにくい理由、売却や処分の方法について紹介します。自分が持っている土地に合った方法で、売れる工夫をしましょう。
田舎の土地を売る流れ
田舎の土地を売る際の、売却前・売却中・売却後の流れについて解説します。不動産会社に仲介を依頼するケースと、近隣住民に個人で売却するケースでも、大まかな流れは同じです。
売却前
境界線がはっきりしていない土地は、トラブルにつながりやすく売りにくいため、まずは測量を行う必要があります。測量会社に依頼し、土地の面積や境界線を確定させましょう。
境界線を確定させたら、複数の不動産会社に査定してもらいます。立地・広さ・形状などの要素により、土地の価格が決まります。
売りにくい田舎の土地を売る場合、不動産会社の実力が重要です。提示された査定価格だけでなく、周辺の土地の売買実績があるかどうかにも注目して、不動産会社を選びましょう。
近所の人に売る場合や空き家バンクに登録する場合は、不動産会社との契約は不要です。
売却中
測量を実施し売りたい土地の境界線を確定させたら、売却活動に入ります。不動産会社に仲介を依頼する場合は、媒介契約を結びます。
不動産会社の契約形式は、以下の3種類です。
- 一般媒介契約:複数社と契約(自分で買主を見つけてもよい)
- 専任媒介契約:1社のみと契約(自分で買主を見つけてもよい)
- 専属専任媒介契約:1社のみと契約(自分で買主を見つけるのはNG)
一般媒介契約は複数の不動産会社と契約できる反面、不動産会社に状況報告の義務がないため、熱心な売却活動が期待できません。
専属専任媒介契約か専任媒介契約なら、1社のみと契約なので、力を入れて販売してくれるでしょう。ただし専属専任媒介契約は自分で買主を探せないため、自分でも購入希望者を探す場合は、専任媒介契約がおすすめです。
購入希望者が現れたら、不動産会社にアドバイスをもらいながら、価格や引き渡し時期などの条件交渉を行います。売主と購入希望者が契約条件に合意したら、売買契約書を作成・締結し、手付金を受け取ります。
土地を不動産会社に買い取ってもらう場合は、査定額や信頼できる対応をしてくれるかという観点から、契約するかどうかを判断しましょう。
近隣住民に売却する場合は、売却活動のために不動産会社と契約する必要はありません。しかし取引をスムーズに進めるには専門知識が必要になる上、トラブルが起こりやすいため、契約手続きを司法書士に依頼すると安心です。
売却後
売却後はあらかじめ測量しておいた土地の境界線を、買主に明示します。土地の境界線がはっきりしていないと、売却後のトラブルにつながる可能性があるためです。
トラブルを防ぐためにもきちんと境界線を明示し、場合によっては境界標を設置しておくとよいでしょう。
その後は売買契約書に記載された引き渡し日に、土地を買主に引き渡します。手付金を除いた売却金額を受け取り、土地の名義人を買主に変更する『所有権移転登記』を行います。
近隣住民に個人で土地を売却した場合、所有権移転登記の手続きで書類をそろえたり、記入したりする際にミスが起こりやすいため、司法書士に依頼すると確実です。買主が金融機関でローンを組んで支払う場合は、金融機関で行います。
土地を売却して利益が出た場合には、翌年に確定申告をする必要がある点にも注意が必要です。
田舎の土地が売れにくい理由とは?
田舎の土地が売れにくい理由に、利便性が低い点が挙げられます。田舎の土地は公共交通機関が通っておらず、行動しにくいというケースが多いためです。
車がないと生活できない環境だと、車の購入費や維持費がかかります。住み替えを検討している人は、「田舎は不便な上にお金がかかる」と判断するのです。
また商業施設・コンビニ・スーパーなどが行動圏内にないと、不便だと感じる人が多い傾向にあります。田舎では充実していない、あるいはまったくないケースも多いため、土地が売れにくくなります。
また『市街化調整区域』にある土地だと、自由に家を建てられないため活用しづらい点も、田舎の土地が売れにくい理由の1つです。また土地が広すぎても活用しづらい上、購入価格が上がるため敬遠されやすい傾向があります。
売却方法1|隣地や近隣住民に聞いてみる
田舎の土地を売りたい場合、隣の土地を持っている人や、近隣住民に聞いてみるとよいでしょう。隣の土地を所有している人が、「もっと広い家に建て替えたい」「離れや倉庫などを建てたい」と考えているのであれば、検討してもらいやすいはずです。
また近隣に住んでいる人に、土地を必要としていないか確認するのも一案といえます。地域の事情に詳しくネットワークが広い人に、土地を必要としている人がいないか確認してみるのもよいでしょう。
個人でやりとりするにあたってトラブルが不安な場合は、不動産会社に仲介を依頼しましょう。仲介手数料はかかりますが、プロが間に入ることで、交渉や取引がスムーズに進みます。
売却方法2|地元の不動産会社に仲介してもらう
田舎の土地を売りたいと考えたら、地元の不動産会社に相談するのもおすすめです。地域の情報や特性に詳しい不動産会社なら、購入希望者を見つけてくれる可能性が高いといえます。
不動産会社が土地の売買が得意か、売却対象の土地がある地域に詳しいかどうかという点が重要です。
地元の頼れる不動産会社を見つけるためには、一括査定サイトを活用しましょう。一括査定サイトなら1社ずつ個別に査定を依頼する手間と時間がかかりません。
一括査定サイトから複数の不動産会社に査定を依頼したら、査定価格をチェックし、なぜその価格になったのか、根拠を尋ねましょう。納得できる回答や対応をしてくれる不動産会社であれば、信頼できると判断できます。
売却方法3|空き家バンクに土地を登録する
田舎の土地を売るなら『空き家バンク』に登録する方法があります。空き家バンクは国や自治体が運営している不動産情報サイトです。本来は空き家を貸したい人や、売りたい人が登録するサイトですが、自治体によっては土地だけでも登録できます。
不動産会社が運営しているサイトと違い、営利目的ではなく、情報を提供するだけのサイトです。購入希望者が現れた場合、直接交渉しなければならないため、不動産の取引に関する知識がある程度は必要になります。
個人で交渉や契約ができる不動産の知識があり、自治体が土地だけの登録にも対応している場合、空き家バンクに土地を登録する方法もいいでしょう。
売却方法4|不動産会社に買取を相談する
『買取』とは不動産会社が買主となり、土地を購入してくれる方法です。購入希望者を探す必要がないため、田舎の土地でもスムーズに売却できます。
購入希望者を探す『仲介』の場合、購入希望者がすぐに現れるとは限りません。交渉や契約などの手間や時間がかかるため、数カ月単位の時間がかかります。
一方で不動産会社による買取なら、早ければ1カ月程度で売却が完了します。買取を相談する場合も仲介同様、複数社に査定を依頼し、納得できる価格で買い取ってくれる不動産会社を探しましょう。
売却方法5|地方自治体に売却する
自治体が必要としている土地の場合、『公有地の拡大の推進に関する法律(公有地拡大推進法)』に基づいて、売却できるケースがあります。
公有地の拡大の推進に関する法律とは、自治体が土地を計画的に取得できるように施行された法律です。
自治体は道路や公園などの公共用地を確保するために、土地を必要としている場合があります。自治体の需要と自分が売りたい土地の条件が合致すれば、自治体に購入してもらえます。
しかし自治体が必要としていない土地を売りたいといっても、購入してもらえません。自分の売りたい土地が必要とされているかどうかは、各自治体の窓口に問い合わせて確認しましょう。
田舎の土地が売れないときの処分方法は?
田舎の土地が売れないと、持っているだけで固定資産税がかかります。更地の場合は税負担の軽減措置が適用されません。土地が売れないときには、処分するか活用するかという選択肢があります。それぞれについて理解しておきましょう。
寄付する
田舎の土地が売れず手放したい場合は、自治体・個人・法人へ寄付する方法があります。自治体に寄付する場合は売却するときと同様、使用用途がない土地は受け付けてもらえません。こちらも各自治体の窓口で相談するとよいでしょう。
個人に土地を寄付する場合、寄付する相手に『贈与税』がかかります。土地を受け取った人が、土地の資産価値に応じた税金を納めなければなりません。所有権移転登記をする際に、『贈与契約書』の作成が必要です。
営利法人である一般企業へ寄付する際は、寄付する側に『譲渡所得税』がかかるケースがあるので、注意が必要です。その理由は「土地を売却して得られたはずの金額を全額寄付した」と扱われるためです。
学校やNPO法人、神社などの公益法人に土地を寄付する場合は、手続きをすれば譲渡所得税が免除されます。
相続放棄する
家族が死亡して田舎の土地を相続する場合は、『相続放棄』という手段もあります。相続放棄をする場合は、土地以外の全ての財産も放棄しなければなりません。そのため資産のほとんどが不要な土地である場合や借金の方が多い場合は、相続放棄が有効です。
それ以外のケースはデメリットが大きいため、慎重に判断しましょう。自分が相続を放棄すると、次の順位の相続人に相続の権利が移ります。土地の相続を完全に放棄するためには、全ての資産を相続人全員が放棄する必要がある点に注意が必要です。
なお相続放棄を選択する場合には、相続してから(相続の開始があったことを知ったときから)3カ月以内に手続きをしなければならないことも覚えておきましょう。
活用する
田舎の土地が売れない場合、寄付や相続放棄をせず、活用するのも一案です。道路沿いにある土地なら、コンビニや飲食店などの店舗経営、駐車場経営という方法が考えられます。
またアパート・マンション経営、介護施設・医療施設、農地にするといった活用方法もあるでしょう。
店舗経営は集客が必要で、駐車場やアパート・マンション経営は地域に人がいることが前提な上、立地が重要です。立地が悪く人を集めなければならない活用方法が難しい場合は、農地や太陽光発電用地としての活用を視野に入れるとよいでしょう。
田舎の土地を売却する方法を検討しよう
田舎の土地は交通の便が悪い、商業施設が行動圏内にないなどの理由から売れにくい傾向があります。
そのため隣地や近隣の住民に土地を必要としていないか聞いてみる、地元の不動産会社に仲介・買取を相談する、空き家バンクに登録するなどの方法で、売却の可能性を探るとよいでしょう。
それでも売れない場合は寄付をする方法もあります。田舎の土地を相続する局面を迎えた場合は、状況に応じて相続放棄を検討するのも一案です。
田舎の土地の価値を正確に把握し、売却をはじめとする手放す方法を検討しましょう。