住んでいるマンションを売却し、戸建てへの住み替えを行うケースも多くなっています。コストカットや節税だけでなく、自由度の高さも戸建てならではのメリットです。住み替えの注意点や具体的な手順を知り、住み替えをすべきかどうかを判断しましょう。
監修者
髙杉義征(セカイエ株式会社元執行役員/宅地建物取引士)
株式会社日京ホールディングスの元取締役、セカイエ株式会社の元執行役員を経て、現在は株式会社ミツモアの事業部長として全体を統括。一貫して不動産業界に携わり、不動産仲介会社、不動産管理会社、不動産テック企業での経験を有する。不動産売却希望者と不動産会社をマッチングするサービスでは、執行役員として事業立ち上げからグロースまでを担当。また、不動産関連のセミナーやライブ配信にも登壇している。
マンションと戸建てのメリット・デメリット
マンションに住んでいる人が戸建てへの住み替えを行う例も増えています。住み替えを検討する前に、マンションと戸建てそれぞれのメリットを見ていきましょう。
項目 | マンション | 戸建て |
---|---|---|
維持費用 | × | ○ |
固定資産税 | △ | ○ |
過ごしやすさ | △ | ○ |
リフォーム・管理の自由度 | △ | ○ |
近隣住民との関係 | ○ | × |
リセール価格 | ○ | △ |
バリアフリー | ○ | △ |
維持費用
マンションに住む場合には、管理費や修繕積立金といった費用が毎月発生します。固定費が毎月かかるため、長く同じ場所に住むのであれば、ランニングコストにも気を配る必要があるのです。
戸建てに住む場合には、こうした維持費をマンションに比べて少なく抑えられます。戸建てに住み替えればランニングコストを支払わなくてよいため、結果的に得になるケースも多いようです。
戸建ての場合は建物が古くなり修繕が必要になった際に、その費用を自分で用意しなければならないものの、マンションならではの月々の費用をカットできる点はメリットといえるでしょう。
また車を所有している人であれば、マンションの場合は駐車場代も毎月支払わなければなりません。
固定資産税
固定資産税とは所有している建物・土地に対して、毎年課される地方税のことです。一般的にマンションよりも戸建ての方が、固定資産税は低くなるといわれています。
マンションは戸建てに比べて建物の耐用年数が長い傾向があり、減価償却期間も長くなるというのがポイントです。建物の価値が下がるまでに長い時間がかかるため、その分固定資産税が高い状態が続いてしまいます。
新築の物件を購入する場合、固定資産税に軽減税率を適用することが可能です。ただしマンションと戸建てでは軽減措置を利用できる年数が異なるため、事前にきちんと調べておく必要があるでしょう。
過ごしやすさ
マンションはいくつもの部屋が集まっているという構造上、上下の部屋からの音漏れや隣人の声が気になるケースも、珍しくありません。あまりに騒音がひどい場合には、隣人とのトラブルに発展する可能性もあるでしょう。
戸建てであれば周辺の家との距離が離れているので、生活音をさほど気にせず生活できます。大音量で音楽を聞いたり楽器を演奏したりと、音漏れが気になる人は、防音壁を利用するのもおすすめです。
家が建つ方向や窓の多さなど、日当たりのよさにこだわって物件選びができるのも、戸建てならではの魅力といえます。日々の過ごしやすさを重視したい場合には、戸建てへの住み替えを検討してみるとよいでしょう。
リフォーム・管理の自由度
ほとんどのマンションには管理規約が存在し、住居の使い方が定められています。エントランスや屋上、廊下などは多くの住民が利用する共用部分なので、ルールを守って生活する意識が大切です。
戸建てには守るべきルールがあらかじめ定められていないため、庭などのスペースも所有者が好きなように活用できます。マンションにはペット禁止の物件もあるため、動物と暮らしたい人には戸建てがおすすめです。
また戸建ての場合は大規模なリフォームも、所有者の意向で自由にできます。自由度が高い一方で、修繕計画は管理組合が作成し、修繕費用も一部分だけを負担すればよいマンションとは異なり、全てを自力でメンテナンスしなければならないのが戸建ての特徴です。
近隣住民との関係
マンションと戸建てのどちらに住むかにかかわらず、近隣住民とのトラブルが起こる可能性はあります。ただし戸建てには利用に関する規約が存在しないため、トラブルを解決しにくいのがデメリットです。
多くのマンションには管理会社が関わっているため、何か問題が起きれば管理会社を通して解決するというのが一般的な流れになります。戸建ての場合は管理会社の介入がないため、自力で相手に対応しなければなりません。
マンションの場合にはトラブルが解決しなければ別のマンションに移るという方法もありますが、戸建てではそう簡単に引っ越せません。近隣住民と長く付き合うことになるため、問題がエスカレートした際には注意が必要です。
リセール価格
自分の住んでいる物件を中古物件として売却する場合、戸建てよりもマンションの方が価格が高くなる傾向があります。近年は新築物件だけでなく、中古マンションの相場も上がっているのが特徴です。
戸建ての方がリセール価格が高い時期もありましたが、近年は中古マンションの需要が高まっています。将来的にリセールの可能性がある場合、買い手が現れるかどうかを考えて住居を選びましょう。
実際に売却する際には、そのときの相場をチェックする必要があります。住居をリセールするなら、不動産市場全体の相場や自宅の不動産価値を把握してからトライしましょう。
バリアフリー
高齢の家族と暮らしている家庭では、バリアフリーが行き届いているかという点も重要なポイントです。長く生活することを考えて、誰でも使いやすい設計になっているかどうかを意識しながら物件を選びましょう。
築年数がそれほどたっていないマンションの多くは、フルフラット設計を採用しており、室内外に段差がほとんどありません。転倒などによる怪我をしにくくなっており、高齢者がいても暮らしやすいのが大きなメリットです。
一方で戸建ての場合、間取りや設備はある程度自分たちで決めなければなりません。階段やトイレに手すりを設置したり、角張った部分を減らしたりと、さまざまな工夫が必要です。
マンションから戸建てへの住み替えの注意点
マンションから戸建てに住み替えを行う際は、どのような点に気を付ければよいのでしょうか。マンションの売却手続きやローンなど、気になるポイントを解説します。
ローン残債がある場合
マンションの住宅ローンがまだ残っている場合、売却するためには抵当権を抹消する必要があります。抵当権とはローンを融資している金融機関が、マンションを担保として設定できる権利のことです。
債務者がローンを返済できないという債務不履行に陥った場合、債権者は抵当権を行使して、土地や建物を差し押さえできます。マンション自体を担保にすることで、債権者である金融機関が不利益を被らないようにする仕組みです。
抵当権を抹消するには、ローンの残債を一括で返済しなければなりません。新居の購入価格に残債分を加えて借りられる『住み替えローン』も存在するため、必要があれば利用を考えてみましょう。
売買のタイミング
ライフスタイルの変化を理由に、マンションから戸建てへの住み替えを考える家庭も多いでしょう。子どもの成長や進学など、広いマイホームが必要になる理由は、多岐にわたります。
マンションをなるべく高く売却したいのであれば、需要の高いタイミングを見極めるのがポイントです。進学や就職、転勤などで新生活がスタートする人が多いことから、春を迎える前の2~3月が狙い目となっています。
マンションの築年数によっても査定価格には大きな差が現れ、築20年が1つの目安です。比較的新しい建物は1年ごとに大きく価格が下落するため、築20年以内であれば早めの売却をおすすめします。
戸建て購入時のローン金額
戸建ての物件を購入する際に、ローンを借りるか迷っている人も多いのではないでしょうか。住宅ローンを借りるのであれば、確実に返済できる金額にするのが基本です。
元金に加えて利息分の返済もあるため、事前にシミュレーションを行っておくと、総返済額と毎月支払う金額がイメージしやすくなります。必要な情報を入力するとシミュレーションができるサービスも数多くあるので、活用しましょう。
ローンの総返済額は、世帯年収の4倍程度の金額が目安といわれています。返済期間を延ばしすぎないよう、将来の計画を立てた上でローンを組む意識が重要です。
マンションから戸建てに住み替える流れ
マンションから戸建てへの住み替えを行うには、マンションの売却と新居の購入が必要です。それぞれの手順と大まかな手続きの流れをチェックしましょう。
マンションを売却する手順
自分が住んでいるマンションの売却は、以下のような手順で行われます。
- 売却の相談・価格査定
- 不動産会社と契約
- 売却活動
- マンションの買主と契約
- 手付金の受領
- 残代金の受領
- マンションの引き渡し
- 引越し
まずは不動産価値の査定を複数の不動産会社に依頼し、その結果をもとに契約する不動産会社を選ばなければなりません。マンションの売却活動においては不動産会社が果たす役割が重要なため、意欲や経験のある会社を選ぶよう心掛けましょう。
マンションの買主が見つかったら契約を交わし、手付金と残代金を受け取った後に引き渡しを行います。残代金はマンションの売却価格から、手付金や申込金など、すでに支払われた金額を引いて残った金額のことです。
戸建てを購入する手順
次に新居となる戸建てを購入する手順を解説します。
- 購入の資金計画
- 物件見学
- 売買契約
- 手付金の支払い
- 住宅ローンの契約
- 残代金の支払い
- 物件の引き渡し
- 新居への引越し
新居の購入に必要となる資金計画は、マンションの売却額を前提として決めるのが一般的です。売却するマンションの査定価格が分かったら、予算に合わせて物件探しを開始します。
新居の契約はマンションの売却が完了した後に行いましょう。特にローンの残債がある場合は、正確な売却額が分かるまで契約せずに待つのもよい方法です。
マンションから戸建てに住み替える流れを知ろう
結婚や出産、子どもの進学など、ライフステージの変化に伴いマンションから戸建てに住み替える家庭も多いでしょう。近年はマンションの需要が高まっており、リセール価格が高めになりやすいのもポイントです。
戸建てはマンションとは違い管理規約が存在しないため、建て替えやリフォームも自由に行えます。隣人の音漏れを気にする必要もなく、比較的過ごしやすいのがメリットです。
管理費や修繕積立金などの月々のランニングコストがかからないだけでなく、固定資産税を低く抑えられるのも戸建ての魅力です。マンションの売却やローンについて知り、戸建てへの住み替えを成功させましょう。