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任意売却とは?競売との違いやメリット・デメリット、売却時の流れを解説

最終更新日: 2024年04月10日

住宅ローンの返済が滞ると、任意売却をすべきか悩む場合があります。実行後に後悔しないようにするために、任意売却に対する理解を深めておくことが重要です。混同しがちな競売との違いやメリット・デメリット、売却の流れなどを紹介します。

任意売却とは

住宅ローンを返済する見込みがなくなって初めて、任意売却の存在を知ったという人もいるでしょう。「通常の不動産の売買と何が違うの?」と思う人もいるかもしれません。任意売却を検討する前に知っておきたい基本的な仕組みや、競売との違いを紹介します。

任意売却の仕組み

任意売却は住宅ローンの返済が厳しくなった場合に、金融機関など債権者の許可を得て物件を売却することです。任意売却は一般の不動産市場で売りに出しますが、基本的には債権者が売り出し価格を決定します。

住宅ローンの残債があり、自宅の売却資金や自己資金でローンが完済できない場合に選択される方法です。通常の不動産売却との違いは、債権者の了承を得た上で抵当権を解除してもらわなければならない点でしょう。

不動産を売却する際は抵当権を抹消して引き渡しをしなければならず、抵当権を抹消するための条件はローンの完済です。

また任意売却をしても売却価格によってはローンを完済できるとは限らず、完済に至らない場合は、足りない分の資金を自分で用意しなければなりません。

任意売却と競売の違い

競売は住宅ローンが払えなくなったケースで、債権者が債権を回収するために不動産を差し押さえ、売却することです

住宅ローンを払えない状態になり、滞納が3~6カ月程度続くと、滞納分と遅延損害金を払うようにと、債権者から催告書が届きます。

それでも金策のめどが立たず放置した場合、ローンの一括返済を迫られるのが一般的です。一定期間にわたりローンを滞納したことにより、分割払いできる権利(期限の利益)を失ってしまった状態といえます。

債権者は抵当権の対象となっている不動産を差し押さえて競売にかけ、競売によって得た資金は債権の回収に充てられます。落札者が決まれば即座に立ち退かねばならず、引き渡しの時期は考慮してもらえません。

競売に回されてしまう前に任意売却を検討することで、ある程度は所有者側の希望や事情に沿った売却が可能です。

任意売却のメリット

初めての任意売却には大きな不安が伴うものです。メリットを知れば任意売却をすべきか否か、判断しやすくなります。どのようなメリットがあるのか見ていきましょう。

通常売却に近い価格で売却できる

任意売却は通常の不動産売買と同じように、市場価格で売却できます。早く売り切るために少々安い価格を設定するケースも珍しくありませんが、多少条件が悪かったとしても、市場価格の8~9割で売却できることが一般的です。

競売では市場価値の半分~7割程度の価格で販売される場合が多く、ローンが多く残ってしまう結果になる可能性が否めません。競売になる前に任意売却を選択した方が、その後の生活が楽になるでしょう。

事情を知られずに済む

任意売却においては通常の不動産売買と同じように販売されるので、親戚や近所の人々などに、経済事情を知られる心配が少ないといえます

競売にかけられた物件の所有者は、客観的に見てローンが払えない状態になっていると判断できる状態です。

所有している不動産が競売にかけられると、裁判所を通じて対象となっている不動産の住所や写真などが『不動産競売物件情報サイト』に公開されます。周囲の人に家計が困窮している事実を知られてしまうでしょう。

引き渡し日の融通が利く

債権者が認める範囲内ではあるものの、任意売却では自宅の引き渡し日や引越し日などを、買主とある程度調整できます。売主側の事情に合わせやすいところがメリットです。

自宅の売却後に住む新居への引越しの時期を、子どもの学校の都合などに合わせられます。競売になった場合は、退去するタイミングを自分では決められません。

物件が落札されれば強制的に退去を命じられることになり、精神的・時間的な余裕を持てなくなるリスクがあります。

売却した家にそのまま住める可能性もある

任意売却は競売とは違って購入者を選べるので、身内に自宅を買い取ってもらうこともできます。購入者に家賃を払いながら、そのまま住み続けるという選択肢もあるのです

この方法は『リースバック』『親族間賃貸』などと呼ばれるものです。親族や家族に自宅を買い取ってくれる人がいない場合、リースバックを専門に行っている専門業者を利用するという選択肢もあるでしょう。

住み慣れた場所から離れたくない・病気や加齢で引越しが困難といった事情がある場合に、よく利用される方法です。また時間がたってお金の都合がついた場合には、買い戻すことも可能です。

任意売却のデメリット・注意点

デメリットや注意点も押さえておくと、任意売却に対する理解が深まります。売却後に「ほかの方法もあったのではないか」と後悔せずに済むでしょう。任意売却に踏み切る前に知っておきたい、デメリットや注意点をチェックします。

債権者の同意が必要

任意売却は自宅の抵当権を持っている債権者の判断によって、可否が決定されるという点が重要です。債権者が任意売却に応じてくれなければ、実行できません。

残債の金額があまりにも大きく、自宅を売却しても返済のめどが立ちそうにないケースでは、同意してもらえない可能性もあります。ローンの滞納が始まった時点で、早めに相談した方がよいでしょう。

一方で債務者に十分な返済能力があると認められる場合も、債権者側が任意売却を認めるメリットがないので、認めてもらえない可能性は高いといえます。

信用情報に傷がつくリスクがある

任意売却を決断してから、家族や債権者と話し合いを進めている間にも住宅ローンの滞納が続くと、滞納履歴が信用情報機関に残り信用情報に傷がつきます

『ブラックリストに載る』と表現されることもあり、クレジットカードの新規作成ができなくなったり、新たな借入がしづらくなったりといった制限が課される点がデメリットです。

ローンを滞納すること自体にリスクがあり、任意売却したからといって信用情報を無傷のまま維持できるわけではない点に、注意しましょう。

売却したお金が手元に残らない

任意売却で得たお金は、債権者が貸し付けたお金を回収するために優先的に取得するので、売主の手元には残りません。また自宅を売ったお金だけではローンを完済できない場合は、残債を支払わう必要があります。

もし売却額がローンの残債を上回ったとしても、譲渡所得税などの支払いが発生する可能性を考えると、手放しでは喜べないでしょう。

譲渡所得税は不動産の取得費と譲渡にかかった費用の合計よりも、売却価格が高くなった場合に発生する税金です。

売却益に課される税金といえるため、売却益が出ない場合には課されない点がポイントです。さらには売却益が出たとしても、3,000万円の特別控除の特例や、強制換価等による特例が適用される可能性もあります。

ただし税金が発生しなくても、住み替えにかかる費用や不動産仲介手数料を負担しなければならず、手元に多くのお金を残すことは期待できません。

債権者との交渉により、引越し代金や不動産仲介料などを負担してもらえるケースもゼロではないものの、基本的には自己負担を覚悟しましょう。

期限内に売れなければ競売へ

任意売却をしても市場価格よりも高価だったり買い手にとって条件が悪かったりすると、なかなか売れません。債権者が定めた期限までに売れなければ、競売にかけられることになります

競売にかけられるまでの期限は債権者の判断に委ねられますが、一般的にはローンの滞納が始まってから10~12カ月程度です。確固とした決まりがあるわけではなく、半年程度で競売にかけられるケースもあります。

十分な時間がなければ低価格で販売せざるを得ないので、早めに任意売却の手続きを始めた方がよいでしょう。

任意売却の流れ

任意売却に踏み切る前に全体的な流れを押さえておくと、どのように進んでいくのかイメージしやすくなります。売買成立までの期間の目安も把握し、事前に心の準備をしましょう。

任意売却の検討を始めるところから、物件の引き渡しまでの流れを紹介します。

金融機関からの督促・現状把握

住宅ローンの滞納が始まると、1カ月程度で金融機関から督促状が届きます。それでも払えずに放置していると、競売の準備が始まります。

保証会社と契約を結んでいる場合は『代位弁済』が行われ、保証会社から金融機関に返済がされる仕組みです。すると今度は保証会社が債権者となって、一括での返済を迫られます。それでも支払えなければ、競売にかけられるという流れです。

ローンを払える見込みがないのであれば、滞納金額を確認して、売却した場合の価格や、売却した利益でローンを完済できるかどうかなど、現状把握を行いましょう。

不動産会社に相談・査定

所有している不動産がいくらで売れるか分からない状態では、任意売却を検討しづらくなります。任意売却に詳しい不動産会社に相談し、査定をしてもらいましょう

不動産会社に間に入ってもらうと、金融機関と交渉しやすくなります。ただし債権者が主導して任意売却に進む場合には、不動産会社を選べないケースが一般的です。

ローンを滞納したからといって必ずしも任意売却が必要になるとは限らないので、自己判断が難しい場合は弁護士などの専門家を頼り、相談してもよいでしょう。

状況によっては任意売却以外の道を選べる可能性もあります。できるだけ早い段階で、無料相談などを使って相談に乗ってもらいましょう。

債権者への確認

任意売却を行うには、ローン契約をしている金融機関などの債権者の同意が必要となります。債権者との交渉は、不動産会社や弁護士などに代行してもらうことも可能です。

費用はかかりますが、専門知識がある人に交渉してもらった方が、確実に話を進められます。競売の取り下げや売却に必要な手続きなどの複雑なやりとりも、スムーズになるでしょう。

債権者が任意売却に応じてくれたら、売却活動を開始します。

売却活動

任意売却に進む状態になっても、家に住みながら売却活動を行うケースが少なくありません。売却活動は通常の売買と同じで、不動産会社がチラシやネット広告を出すといった売却活動を行います。

売却活動中は購入希望者の内覧への対応も必要です。少しでもよい条件で購入してもらうため、誠実に対応しましょう。

内覧した人に「ここに住みたい」と思ってもらえるように、丁寧に案内します。ゴミや不用品を片付けて室内を清掃するだけでなく、庭やアプローチの見栄えを整えておくことも大事です。

売買契約締結

買主と交渉し売買条件の合意を得られたら、売買契約の締結へと進みます。通常の不動産売買とは異なり、手付金の支払いはありません。

手付金がない理由は、債務者が受け取った手付金を持って、姿をくらますのを防止するためとされています。

必要書類は不動産会社が準備してくれるので、内容を確認しましょう。債権者に対し購入申込書と売買代金分配表を提出します。

売買代金分配表に不動産会社への仲介手数料や登記費用など、売買にかかる諸経費を記載する流れです。

場合によっては、売却代金から滞納しているマンションの管理費や、修繕積立金などへの分配を認めてもらえることもあるので、書類に記載して相談してみましょう。

物件の引き渡し

売買の契約締結から1カ月程度で引き渡しに進みます。買主と話し合って、引き渡しの希望日を調整しましょう。金融機関とも相談した上で、引き渡しの日を決定します。

売却先が決定したら引越し先を探し、引越し後に引き渡しと代金の支払いをする流れです。債権者の判断次第ではありますが、売買代金から引越し代などを出してもらえることもあるので交渉してみましょう。

引き渡しの日に決済がされると司法書士が抵当権の抹消手続きを行い、同時に所有権移転登記も行われます。

任意売却を検討すべきケース

ローンの返済が遅れたからといって、即座に任意売却をした方がよいわけではありません。どのようなケースで任意売却を考えた方がよいのか、見ていきましょう。

長期的に支払いのめどが立たない

一般的に住宅ローンを1~2カ月滞納しただけでは、任意売却が認められません。どうしてもお金の都合をつけられる見込みがなく、長期的に支払いのめどが立たない状態になった場合に、任意売却を検討します。

3~6カ月程度の滞納が続いた段階で、任意売却が許可されるケースが大半です。一時的に収入が落ち込んだものの、残業や副業などにより収入を上げられる可能性があるといった、まだ返済の見込みがあるケースでは、許可されない可能性もあります。

病気などで働けず、今後の収入が見込めない状態では、任意売却が認められる可能性は高いでしょう。

離婚で家を処分したい

夫婦共働きで住宅ローンを返済している状況で離婚することになり、返済が難しいので家を処分したいというケースでは、任意売却を検討しましょう

不動産を売却しても住宅ローンの残債が大きく上回る場合は、金融機関との交渉が必要です。離婚しても返済能力が変わらない場合や、引き続き住み続ける場合は、任意売却せずにローンを払い続ける選択肢もあります。

また連帯債務者から外れたい・財産分与したいなどの事情で、自宅を手放したいケースもあるでしょう。離婚する場合であってもローンを滞納せずに払えている状況だと、任意売却を認めてもらえない可能性があります。

離婚をきっかけに任意売却したい場合は、残債をどのように払っていくかが問題になるケースも少なくありません。離婚時の任意売却に関するトラブルが心配な人は、不動産会社や弁護士などに相談してみましょう。

裁判所から競売開始通知書が届いた

裁判所から『競売開始通知書』が届いた段階で、競売を回避したいのであれば、金融機関などの債権者に対し、速やかに任意売却の相談が必要です

すでにローンの滞納が長期化している状態なので、任意売却が認められるケースが多いといえます。

ただしすでに競売が始まってしまい、入札がなされた状態では任意売却を許可してもらえないので、早めに動き出しましょう。

任意売却ができないケース

住宅ローンの契約者が任意売却を希望しても、金融機関が認めてくれない場合もあります。状況によっては別の方法を検討しなければらない可能性もあるのです。どのようなケースで認められないのか、見ていきましょう。

共同名義人の同意が得られない

共同名義人や連帯保証人と意見の相違があると、手続きを進められません。事前に話し合って任意売却への同意を得ましょう。夫婦や家族が共同名義人という場合でも、合意が必要です。

任意売却の手続きを進めて、不動産の売買契約をする際には、所有者全員の本人確認が必要となります。共同名義人と連絡が取れる状態にしておきましょう。

共同名義人同士で任意売却の必要性を理解し、意見を1つにまとめておきます。また連帯保証人はローン契約者が返済の義務を果たさなかったときに、金融機関から責任を問われる立場です。

ローン契約者が返済をしない状態が続けば、連帯保証人に一括請求されるリスクがあります。連帯保証人の同意が得られないと、任意売却を進められないので、事前に事情を知らせておきましょう。

債権者の同意が得られない

任意売却を認めるかどうかは、債権者の考え次第です。任意売却する必要性がない場合や、債権者にとってメリットが感じられない状態の場合は、認めてもらえないこともあります

例えば債務者に支払い能力が十分にあり、ローンの滞納がない場合は、債権者が任意売却に同意するメリットがありません。

ローンを返せなくなった事情をできるだけ丁寧に伝え、納得してもらう必要があります。交渉に自信がない場合は、不動産会社や弁護士などの力を借りましょう。

すでに競売が開始している

競売開始通知書が届いても開札期日前であれば取り下げられますが、すでに入札がされている状態では、債権者は任意売却に応じてくれません

任意売却できる期限は、不動産が競売にかけられ、落札者を決めるための開札が行われる前日までです。

住宅ローンの滞納から6~12カ月というタイミングが、競売の始まる目安といえます。6カ月を過ぎる前に金融機関に任意売却の相談をして、競売にかけるのを待ってもらいましょう。

競売を開始するギリギリのタイミングになってしまうと、不動産の価格をかなり下げて早めに売却しなければなりません。できるだけ好条件で売却するためにも、早めの行動が大事です。

税金を滞納している

固定資産税・所得税・住民税などの税金を滞納していて、すでに不動産を差し押さえられている状態では、任意売却ができません

役所の担当者と話し合いをして、差し押さえを解除してもらう必要があります。社会保険料を滞納している場合も、財産の差し押さえが行われる場合があるため、注意が必要です。

国や自治体に不動産を差し押さえられている状態で、不動産が売却される方法を公売といいます。税金や社会保険料が払えなくなり、滞納が続くと督促状が届きます。払えない場合は早めに担当窓口に相談しましょう。

任意売却をしてもローンの残債がある場合の対処法

任意売却をしたからといって、ローンが全てなくなるとは限りません。不動産を売却したお金で返せなかった残債を、返済していく義務があります。

滞納していたローンの支払いはもちろん、遅延損害金が必要になるケースも少なくありません。任意売却をしてもローンの残債がある場合の対処法をチェックしましょう。

債権者に相談を

任意売却をした時点でローンを返せない状態になっているため、多くの残債を一括では払えない状況であるケースが一般的です。再びローンが滞っては困るので、債権者に相談して分割払いをお願いします。

返済方法や期限を決める権利は、金融機関側にある点を押さえておきましょう。これまでのローンの返済状況などを見て、信用できないと判断されると、一括返済を迫られる可能性もあります。

任意売却の仲介を依頼する不動産会社に、残債の利子や返済額の交渉を行ってもらうこともできるので、交渉に自信がない場合は依頼しましょう。

自己破産も検討

自己破産は地方裁判所に申し立てて、債務をゼロにする制度のことです。免責許可を得られると官報に住所氏名が掲載され、20万円以上の財産を処分されるなどのデメリットもあります。

しかし債務がない状態で人生をやり直せるチャンスだと考えれば、それほど大きなデメリットとはいえないでしょう。

さまざまな事情から、ローンを返済しながら生活していく自信が持てなくなってしまった場合は、自己破産も視野に入れましょう。

任意売却の流れや注意点を知って検討を

多くの人にとって不動産を処分する機会は、それほど多いとはいえません。ローンが返せない状態での任意売却では、大きな不安を抱えがちです。

あらかじめ流れや注意点を押さえておくと、心の準備をしやすく、不動産会社とのやりとりや金融機関などの債権者との交渉もしやすくなります

住み慣れた住居を失うことは精神的な負担が大きいので、メリットやデメリットなどをしっかりと押さえてから臨みましょう。

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