海外赴任の辞令から出発までの期間は短く、業務の引継ぎと並行して行われる英語研修は、まさに時間との戦いです。多くの人事担当者が抱える「赴任までに間に合うのか」「現地で本当に通用するのか」という不安を解消するためには、単なる日常会話スクールではなく、ビジネスの現場で成果を出すための「赴任前特化型プログラム」を選ぶ必要があります。
本記事では、限られた時間で最大限の効果を発揮する、プロ厳選の海外赴任者向け英語研修サービス8選を、目的別・タイプ別に比較・解説します。
海外赴任者向け英語研修の選び方とタイプ別比較チャート
赴任までの限られた期間で、現地でのビジネス成果と異文化適応を確実に高めるためには、研修サービスを「期間」と「目的」に応じて使い分ける戦略が必要です。主要なサービスは、大きく分けて「短期集中コーチング型」「実務特化ビジネススキル型」「柔軟なオンライン・通学型」の3つに分類されます。
以下の比較表を参考に、貴社の赴任者の状況に最適なカテゴリを選定してください。
海外赴任者向け英語研修サービス比較マトリクス
| サービス名 | タイプ | 特徴(USP) | 推奨レベル | 期間目安 | オンライン |
| プログリット | 短期集中コーチング | 科学的学習設計と徹底した進捗管理 | 全レベル | 2〜3ヶ月 | 対応 |
| ENGLISH COMPANY | 短期集中コーチング | 第二言語習得研究に基づく時短学習 | 全レベル | 3ヶ月〜 | 対応 |
| Gaba | 短期集中コーチング | 柔軟な予約と完全マンツーマン | 初級〜上級 | 1ヶ月〜 | 対応 |
| ベルリッツ | 実務特化ビジネス | 異文化理解と国別商習慣の習得 | 初級〜上級 | 3ヶ月〜 | 対応 |
| ECC | 実務特化ビジネス | 20カ国語対応と家族帯同サポート | 初級〜中級 | 柔軟 | 対応 |
| イーオン | 実務特化ビジネス | 会議・プレゼン特化の実践演習 | 中級〜上級 | 柔軟 | 対応 |
| Bizmates | オンライン柔軟型 | ビジネス経験者講師による実務指導 | 全レベル | 継続 | 完結 |
| ライトアップ | オンライン柔軟型 | 短時間学習と助成金活用の支援 | 初級〜中級 | 継続 | 完結 |
赴任まで2〜3ヶ月しかなく、学習習慣の強制力が必要な場合は「短期集中コーチング型」が最適です。一方で、半年以上の準備期間があり、現地でのマネジメントや商習慣理解を重視する場合は「実務特化ビジネススキル型」が、コストを抑えつつ継続学習を促したい場合は「オンライン・柔軟型」が有力な選択肢となります。
成果を出す研修選定の3つの基準
単に「英語が話せるようになる」ことと、「海外赴任先で成果を出す」ことは同義ではありません。失敗しないパートナー選びのために、必ず確認すべき3つの基準を解説します。
基準1:赴任までの「リードタイム」に合っているか
出発までの残り時間から逆算してサービスを選定することが、成功の第一歩です。調査結果によれば、昨今のグローバル展開の加速により、赴任準備期間は短縮傾向にあります。出発まで「1ヶ月〜3ヶ月未満」の場合、週1回のレッスンでは物理的に間に合いません。この場合は、毎日3時間以上の学習を確保させるコーチング型や、合宿形式のプログラムを選択する必要があります。逆に半年以上の猶予があるならば、週1〜2回の通学やオンラインを併用し、ペースを維持しながらじっくりと異文化適応力を養うプランが有効です。
基準2:「語学」+「異文化マネジメント」のセットか
現地で駐在員が失敗する最大の要因は、言語能力の不足ではなく「文化・商習慣のミスマッチ」です。ジェトロやDigimaの調査でも、現地スタッフとの関係構築力が重要であると示唆されています。したがって、単なる語彙や文法の習得だけでなく、現地のスタッフへの指示出し、評価面談、交渉術など、コンテキスト(文脈)を含んだトレーニングが提供されるかを確認してください。「なぜその言い回しを使うのか」という文化的背景まで学べる研修こそが、現場でのトラブルを未然に防ぎます。
基準3:業務負荷を考慮した「継続性」があるか
赴任直前の社員は、業務の引き継ぎやビザ取得手続きなどで極めて多忙です。どんなに優れたカリキュラムでも、通い続けられなければ意味がありません。早朝・深夜のレッスン対応、スマートフォンで完結する予習・復習システム、あるいは専属コンサルタントによる伴走など、激務の中でも学習を継続させるための仕組み(強制力や利便性)が整っているかを評価します。
【タイプ別】海外赴任におすすめの英語研修サービス8選
ここからは、前述の3つのタイプに基づき、海外赴任者の課題解決に直結するおすすめの研修サービス8選を詳細に解説します。
<短期集中・コーチング型>
赴任まで1〜3ヶ月しかなく、短期間で飛躍的に英語力を向上させる必要がある場合に最適なサービス群です。
プログリット(PROGRIT)
プログリットは、英語を教えるティーチングではなく、「学習生産性の最大化」に特化したコーチングサービスです。応用言語学や行動経済学に基づいた科学的なカリキュラム設計と、専属コンサルタントによる徹底的な進捗管理が特徴です。多忙な赴任予定者であっても、月間80〜90時間の学習時間を確保させ、生活習慣そのものを変革します。
強みと推奨企業
最大の強みは、短期間での圧倒的な成果創出能力です。英語学習における「甘え」を排除し、赴任直前の数ヶ月でビジネス英語力を強引にでも引き上げたい企業に最適です。実際にビジネス英会話コースでは、会議やプレゼンなど実践的なシーンを想定したトレーニングが行われ、赴任後の垂直立ち上げを支援します。
株式会社スタディーハッカー(ENGLISH COMPANY / STRAIL)
ENGLISH COMPANYは、「第二言語習得研究」の知見をベースに、学習の無駄を極限まで省いた「高密度トレーニング」を提供します。専門家が個々の課題(例:音声知覚の弱さ、語彙不足など)を精密に診断し、その解決に最短ルートで効くメニューのみを提示するため、少ない学習時間で高い効果が期待できます。
強みと推奨企業
「時短」が最大の強みです。理系職や専門職など、論理的なアプローチを好む社員や、長時間学習の確保が物理的に困難な多忙なエグゼクティブ層に適しています。また、財務や戦略などのビジネス知識と英語を同時に学べるコースもあり、経営幹部候補の育成にも強みを発揮します。
株式会社GABA(Gabaマンツーマン英会話)
GABAは、完全マンツーマン形式に特化し、受講者のスケジュールや目的に合わせて柔軟にカスタマイズできる点が特徴です。「短期集中プラン」を活用すれば、1〜2ヶ月の短期間で集中的にレッスンを詰め込むことが可能です。早朝から夜間まで、対面とオンラインを自由に組み合わせられるため、不規則な業務スケジュールの社員でも無理なく受講できます。
強みと推奨企業
「駆け込み寺」としての機能性が強みです。汎用的なカリキュラムではなく、自社の製品資料を持ち込んでのプレゼン練習や、特定の商談に向けたロールプレイングなど、個別の業務内容に完全に即した「直前対策」を行いたい企業に最適です。
<実務特化・ビジネススキル型>
現地でのマネジメント業務や、高度な折衝・交渉をスムーズに行うための「実践力」と「異文化理解」を重視する場合に適したサービス群です。
ベルリッツ・ジャパン株式会社

ベルリッツは、140年以上の歴史を持つグローバルスタンダードな語学教育機関です。その最大の特徴は、語学力だけでなく、各国の商習慣やマナー、価値観までを含めた「異文化理解トレーニング」を提供している点です。トヨタ自動車などの大手企業導入実績も豊富で、現地語のみを使用する「ベルリッツ・メソッド」により、現地で通用する実践的なコミュニケーション能力を養います。
強みと推奨企業
世界中に展開するネットワークが強みであり、赴任前だけでなく赴任後も現地拠点で学習を継続可能です。非英語圏への赴任や、現地スタッフを率いるマネジメント層に対し、語学プラスアルファの「異文化適応力」を身につけさせたい大手・中堅企業にとって、信頼できるパートナーとなります。
株式会社ECC(法人向け海外赴任前研修)
ECCの法人向け研修は、語学教育に加え、帯同家族へのサポートプログラムが充実している点が特徴です。英語や中国語はもちろん、マイナー言語を含む20カ国語以上に対応しており、多様な赴任先への対策を一元的に依頼できます。赴任者本人だけでなく、生活に不安を抱える家族向けの語学・異文化研修もセットで提供可能です。
強みと推奨企業
対応言語の幅広さと、福利厚生的なケアの手厚さが強みです。工場進出などで非英語圏への赴任が多いメーカーや、初めての海外赴任で家族の不安を解消し、駐在員が業務に専念できる環境を整えたい企業に推奨されます。
株式会社イーオン(AEON)
イーオンは、全国に広がる直営校ネットワークとオンラインを融合させたハイブリッドな受講環境を提供します。「即効性ビジネススキルコース」では、会議のファシリテーション、プレゼンテーション、交渉など、特定のビジネスシーンに特化したカリキュラムが用意されており、現場で即座に使える運用力を鍛えます。
強みと推奨企業
講師の質が安定しており、担任制によって受講者の弱点を継続的にフォローできる点が強みです。地方拠点からの赴任者にも都市部と同等の研修を提供したい企業や、基礎から応用までバランスよく、着実に実力を積み上げさせたい企業に適しています。
<オンライン・柔軟性重視型>
予算を抑えつつ、多くの社員に学習機会を提供したい場合や、赴任後も長期的に学習習慣を維持させたい場合に適したサービス群です。
Bizmates(ビズメイツ)
Bizmatesは、ビジネス特化型のオンライン英会話サービスです。最大の特徴は、トレーナー全員がビジネス経験者であることです。「海外赴任」に特化したパッケージでは、赴任前の準備から赴任後の業務相談までシームレスにサポートします。自分の業務資料をレッスンに持ち込み、添削や予行演習を行うことも可能です。
強みと推奨企業
圧倒的なコストパフォーマンスと実務直結性が強みです。毎日25分のレッスンを通じて、英語を話すことを日常化させます。予算が限られている場合や、若手トレーニーを含む多数の社員に対し、一斉にグローバル研修の機会を提供したい企業の有力な選択肢です。
株式会社ライトアップ
ライトアップは、短時間・高効率なオンライン学習プログラムを提供しています。日本人講師による指導が含まれているため、英語初心者であっても、ニュアンスの違いや異文化背景を母国語で深く理解することができます。eラーニングや助成金活用のコンサルティングも行っており、企業の研修コスト最適化を支援します。
強みと推奨企業
英語への心理的ハードルを下げる丁寧な指導が強みです。初めて海外赴任する若手社員や、英語に苦手意識があり、いきなり外国人講師とのレッスンには抵抗がある社員に対し、基礎固めと自信醸成を行いたい企業におすすめです。
海外赴任前研修の費用相場と予算の考え方
研修予算の策定にあたり、費用相場を把握することは不可欠です。一般的に、法人向け研修は形式によって価格帯が大きく異なります。
研修形式別・費用相場(1名あたり)
- コーチング・短期集中型(2〜3ヶ月): 30万〜60万円
- 専属コンサルタントによる管理費が含まれるため高額ですが、短期間での成果確度が高く、投資対効果(ROI)に優れています。
- 通学・マンツーマン型(20〜40回): 20万〜40万円
- 回数制で予算に応じた調整が可能です。カスタマイズ性が高く、特定のスキル強化に適しています。
- オンライン英会話(月額): 1万〜3万円
- 最も低コストで導入可能です。長期的な継続学習や、対象人数が多い場合に有利です。
予算配分のヒント
コストを最適化するためには、対象者の階層と目的に応じてサービスを使い分ける「ポートフォリオ型」の運用が有効です。
例えば、失敗が許されない「経営幹部・マネジメント層」には高単価なコーチング型を投資し、成長期待の「若手・トレーニー」にはオンライン型を導入するなど、メリハリのある予算配分を行うことで、全社的なROIを最大化できます。
人事担当者が知っておくべき「研修効果」を最大化するポイント
研修会社と契約するだけでは、赴任者の成功は約束されません。人事担当者が主体的に関与し、研修効果を高めるための重要なポイントがあります。
まず、赴任前の「英語力診断」と「目標設定」です。TOEICやVERSANTなどのスコアで現状を可視化するだけでなく、「着任後の最初の会議で発言する」「現地スタッフと1対1で面談を行う」といった、具体的な行動目標(KPI)を設定させることが重要です。
次に、「業務課題の教材化」です。実際に現地で使用するプレゼン資料やメール文面をレッスンの題材として持ち込めるよう、研修会社と調整してください。自分の業務に直結する学習は、受講者のモチベーションを維持する最大の要因となります。
最後に、「赴任後のフォローアップ」です。「行って終わり」にするのではなく、着任3ヶ月後にオンライン面談を実施するなど、現地での適応状況を確認し、必要であれば追加の学習サポートを提供する体制を整えておくことが、駐在員の早期離職やメンタル不調を防ぐ防波堤となります。
戦略的な英語研修で、グローバルビジネスの成功を

海外赴任研修は、単なる福利厚生コストではなく、現地事業を成功させるための重要な「投資」です。適切なパートナー(研修会社)を選び、社員が自信を持って渡航できる準備を整えることこそが、グローバル展開を支える人事担当者の最大の貢献です。
赴任者の役割、残された期間、そして予算を総合的に判断し、最も成果に直結するプログラムを選定してください。まずは、自社の課題(期間・予算・人数)に合致しそうなサービスを3社程度ピックアップし、資料請求や無料カウンセリングを通じて、具体的な提案を受けてみることから始めましょう。








