ハイブリッド給湯器は「電気」と「ガス」の2つのエネルギーを使ってお湯を沸かす給湯器のことです。
省エネで光熱費が削減できるという評判がありますが、具体的に従来の給湯器と比べてどんな点が優れているのでしょうか?
ハイブリッド給湯器の仕組みとともに解説します。
ハイブリッド給湯器とは?
ハイブリッド給湯器とは「効率良くお湯を沸かせる電気の長所」と「素早くお湯を沸かせるガスの長所」を組み合わせた、環境にも家計にも優しい給湯器のことです。
【ハイブリッド給湯器の仕組みの要点】
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ハイブリッド給湯器は電気×ガスを使い分けてお湯を沸かす
従来の給湯器の中でも「エコキュート」と「エコジョーズ」は省エネ性能が高く人気があります。ハイブリッド給湯器は、この2種類の機能をうまく組み合わせ、それぞれのデメリットを解消した製品なのです。
【エコキュート(電気)】
- 取り込んだ空気を圧縮して高温にし、その熱を水に伝えお湯を沸かす
- オール電化&安い深夜電力を使うことで、光熱費の削減が可能
- 一度貯水したお湯を使い切ると、再び沸かすのに最低でも30~40分かかる(湯切れ)
【エコジョーズ(ガス)】
- 排気熱を利用することで効率よくお湯を沸かすことが可能
- 普通のガス給湯器と比べて約15%ガス使用量を削減できる
- 使いたい時にすぐお湯が沸く
- 電気で沸かすよりも光熱費が高くなりやすい
このようにハイブリッド給湯器は、基本的に光熱費が安いエコキュート(電気)でお湯を沸かします。そして「お湯切れが起こってしまったときに再度沸かすのに時間がかかる」というエコキュート(電気)のデメリットを、エコジョーズ(ガス)で沸かすことによって補っているのです。
ハイブリッド給湯器の4つのメリット
ハイブリッド給湯器には以下のようなメリットがあります。
- 光熱費(ランニングコスト)が削減できる
- 急に使用量が増えてもお湯切れの心配がない
- 停電や自然災害のときにも給湯できる
- エコキュートと比べてコンパクト
光熱費(ランニングコスト)が削減できる
ハイブリッド給湯器を採用すると、普通のガス給湯器やエコジョーズよりも光熱費が安くなります。
以下の表をご覧ください。普通の給湯器はもちろんのこと、エコジョーズよりも光熱費が削減できていることが分かりますね。
給湯器の種類 | 年間光熱費(都市ガス) | 年間光熱費(LPガス) |
普通のガス給湯器 | 75,000円 | 110,000円 |
エコジョーズ | 63,000円 | 93,000円 |
ハイブリッド給湯器 | 44,000円 | 56,000円 |
オール電化住宅でエコキュートを使用している場合だと、ハイブリッド給湯器の方が年間10,000円ほど光熱費が上がります(標準的な4人家族の場合)。しかしオール電化住宅にすると以下のようなデメリットもあります。
- コンロをIHにする必要がある
- ガス乾燥機が使えない
- 災害時に電気の供給が止まるとお湯が沸かせなくなる
これらのデメリットを踏まえた上でランニングコストを一番安くしたいなら、オール電化×エコキュートが一番おすすめです。
「キッチンはガスコンロが良い」「ガス乾燥機を使いたい」「急な災害に備えたい」などの理由でガスも併用するなら、ハイブリッド給湯器が一番ランニングコストが低くなるでしょう。
急に使用量が増えてもお湯切れの心配がない
エコキュート(電気)だと効率良くお湯を沸かすことはできますが、一度タンクに貯めたお湯がなくなると再び沸かすのに時間がかかってしまいます。
ハイブリッド給湯器なら普段使う分は電気で効率良くお湯を沸かし、足りなくなった場合はガスで素早くお湯を沸かすので湯切れの心配がありません。
親戚や友人が泊まりに来たときなど、急に多くのお湯が必要になる場合でも安心です。
停電や自然災害のときにも給湯できる
ハイブリッド給湯器は、ガスと電気の複数のエネルギー源を使えることが大きな強みです。停電や自然災害でガスか電気どちらかの供給が止まったときにも、片方のシステムを動かしてお湯を沸かすことができます。
エコキュートと比べてコンパクト
電気でお湯を沸かすエコキュートは、電気代が安い時間帯に沸かしたお湯を貯水タンクにためておき、必要なときにお湯を供給するシステムであり、巨大なタンクが必要なところが難点でした。
一方でハイブリッド給湯器は、ガスと電気を効果的に使い分けながら給湯するため、エコキュートほど大きなタンクが必要ありません。
ハイブリッド給湯器の4つのデメリット
ハイブリッド給湯器には以下のようなデメリットがあります。
- 導入費用が高い
- 暖かい地域では光熱費の削減にならない可能性がある
- 気温の低い地域では寒さ対策が必要
- 設置場所の確保が必要
導入費用が高い
給湯効率が良く、光熱費が安いハイブリッド給湯器ですが、導入費用(イニシャルコスト)が他の機器よりも高いのが難点です。導入費用がかかる分、利用年数が短い、または利用頻度が低いと節約にならないことがあります。
【各給湯器のイニシャルコスト(本体・工事費含む)】
- ハイブリッド給湯器:約45~70万円
- エコキュート:約45~55万円
- エコジョーズ:約15~28万円
- ガス給湯器:約10~20万円
もちろんハイブリッド給湯器にはここまで解説したように、ランニングコスト以外のメリットもあります。ただしコストのみに注目するのであれば、導入費用を回収するまでに数年から十数年かかる点に注意してください。
地域の気候や家族構成によっては光熱費の節約にならないことも
ハイブリッド給湯器を採用して大幅に光熱費を節約できるのは、同居家族の人数が多い場合や、温水式床暖房に使うお湯の使用量が多い家庭です。
タンクに貯めた量で毎日の給湯を十分にまかなえる家庭なら、ガス給湯の機会もありません。
また、暖かくて床暖房がいらない地域にお住まいの場合も、思ったより光熱費が削減できない可能性が高いです。
各ご家庭の状況に合わせて給湯器を選びましょう。
気温の低い地域では寒さ対策が必要
ハイブリッド給湯器の「冷媒ヒートポンプ式給湯器」の部分は寒さに弱く、お湯を沸かす効率が悪くなります。-10度以下など極端に寒い状況では、作動しなくなってしまうこともあります。
寒冷地仕様のハイブリッド給湯器を出しているメーカーもあるので、寒い地域にお住まいの場合はしっかり自宅で使える製品かどうか確認してから購入しましょう。
設置場所の確保が必要
大型のタンクが必要なエコキュート(冷媒ヒートポンプ給湯器)と比較するとコンパクトではあるものの、ハイブリッド給湯器にもタンクユニットは存在するので、ある程度の広さの設置場所は確保しなければなりません。
自宅の敷地内に設置可能な場所があるかどうか確認しましょう。
太陽光発電・床暖房との併用がおすすめ!
太陽光発電の余剰電力で無駄なく給湯
ハイブリッド給湯器は、太陽光パネルで生み出した余剰電力を活用して給湯できます。
太陽光発電で生み出した電気のうち、余った分は電力会社に売ることができます。ハイブリッド給湯器であれば、電力消費量が小さいので、売電にまわす電力量も増えるでしょう。
床暖房の電気代が削減しつつ快適に使える
床暖房機能のついたハイブリッド給湯器なら、従来の床暖房よりも大幅に電気代が削減できます。
スイッチを入れた直後はエコジョーズ(ガス給湯)ですばやく床をあたためて、温度が上がってからはヒートポンプ(電気)で沸かしたお湯を循環させてあたたかさを維持します。
ガスと電気を効果的に使い分けることによって、あたたまるまでの待ち時間もなく快適に床暖房を使うことができ、電気代も抑えられるのです。
ハイブリッド給湯器がおすすめなのはこんな人
ここまでの内容をまとめると、ハイブリッド給湯器は以下のような方に特におすすめです。
- 寒冷地にお住まいの方(対策さえできていれば、本来は寒冷地でこそおすすめです)
- 家族が多い方
- 冬に暖房(特に温水式床暖房)を付けっぱなしにする方
要するに「お湯をたくさん使う方」であればハイブリッド給湯器のメリットを最大限生かせるというわけですね。
前述した通りハイブリッド給湯器はイニシャルコスト(初期費用)が高額です。しかしランニングコスト(長い目で見たときの費用)が安いので、お湯の使用量が多いほど光熱費の削減効果が高くなります。
そのため普段からお湯をたくさん使っているかどうかを一度考えてみましょう。お住まいの地域の気候やライフスタイルに合わせて、ハイブリッド給湯器を検討してみてください。
ハイブリッド給湯器の選び方
ハイブリッド給湯器を選ぶ際には2つほど、決めることがあります。
- 給湯機能だけでいいか、温水式床暖房機能も付けるか
- シングルハイブリッドにするか、ダブルハイブリッドにするか
まずはお風呂やキッチンで使うためだけにお湯を沸かすのか、温水式床暖房で使うお湯も必要なのかを決めます。
温水式床暖房を選んだ場合、さらに2タイプに分かれます。
- シングルハイブリッド:お風呂やキッチンのお湯のみ電気で沸かし、温水式床暖房のお湯はガスで沸かす
- ダブルハイブリッド:お風呂やキッチン・温水式床暖房のお湯も全て電気で沸かす
温水式床暖房をよく使うなら②ダブルハイブリッドを選ぶのがおすすめですよ。
ちなみにハイブリッド給湯器は工事業者から、工事と本体のセットで安く購入することもできます。その際は本体選びもサポートしてもらえるので、自分1人で決めるのではなくプロに手伝ってもらうのがおすすめです。
ハイブリッド給湯器の導入・維持にかかる費用
ハイブリッド給湯器を設置するために必要な費用の詳細は、以下の通りです。
【ノーリツ・ハイブリッド給湯器・ハイブリッドGHT・タンク容量140Lタイプ】
本体・付属品費用内訳 | ||
部材名 | 販売価格 | |
貯湯ユニット | 280,000円程度 | |
ヒートポンプユニット | 170,000円程度 | |
リモコン | 30,000円程度 | |
配管カバー | 7,000円程度 | |
小計 | 約490,000円 | |
標準基本工事費内訳 | ||
本体運搬設置施工費 | 50,000円程度 | |
電気工事費 | 30,000円程度 | |
排水工事費 | 10,000円程度 | |
基礎工事費 | 50,000円程度 | |
追い焚き配管工事費 | 20,000円程度 | |
リモコン配管工事費 | 10,000円程度 | |
試運転調整費 | 10,000円程度 | |
部材費 | 10,000円程度 | |
諸経費 | 10,000円程度 | |
小計 | 約200,000円 | |
合計 | 約690,000円(税抜) |
工事業者のHPには「本体・工事費込み◯◯万円」というように、一式の価格でかかる費用が書かれていることが多いです。
しかし設置する場所や様々な条件によって、費用は変わってきます。現地調査後の見積もり次第では、上記の費用内訳よりも高くなることも安くなることもあります。
ちなみに一般的なガス給湯器の交換にかかる費用は5~30万円程度が目安です。差額の要因は本体価格で、サイズや機能によってかなり金額が異なります。詳しくは以下の記事を参考にしてください。
維持費用の相場
例えばハイブリッド給湯器とエコジョーズの総費用を比較してみましょう。初期費用+光熱費を比較すると以下のようになります。
ハイブリッド給湯器 年間44,000円 |
エコジョーズ(ガス)
年間63,000円 |
|
0年間(初期費用) | 500,000円 | 200,000円 |
1年間 | 544,000円 | 263,000円 |
5年間 | 720,000円 | 515,000円 |
10年間 | 940,000円 | 830,000円 |
15年間 | 1,160,000円 | 1,145,000円 |
20年間 | 1,380,000円 | 1,460,000円 |
※あくまで目安であり、利用頻度が高いとハイブリッド給湯器の方が節約になります。
エコジョーズと比較するとだいたい15年くらいから逆転するイメージです。エコキュートと比較する場合は数年程度でハイブリッド給湯器の方が安くなることもあります。
助成金・補助金が出る自治体も
2021年7月現在、ハイブリッド給湯器の設置に対して一部の自治体が補助金を出しています。国の補助金制度は今のところありません。
環境破壊が問題視されていることから、一次エネルギーの消費が少なく環境にやさしい住宅設備の普及を進めたいという背景があります。
自治体によって補助の金額は異なりますが、3~5万円程度であることが多いようです。
まだ従来の「エコキュート」や「エコジョーズ」しか対象でない自治体もありますが、今後ハイブリッド給湯器も対象になる自治体が増えていくかもしれません。
ハイブリッド給湯器の代表的なメーカーと商品
給湯器メーカーの中でも、比較的新しい製品であるハイブリッド給湯器を販売している会社はまだ多くありません。
その中でも、品質や評判の面で「リンナイ」「ノーリツ」が代表的な2大メーカーです。両社の手がけるハイブリッド給湯器をご紹介します。
リンナイ「ECO ONE(エコ・ワン)」
リンナイは国内初のハイブリッド給湯器を開発したメーカーです。
代表製品である「ECO ONE(エコワン)」は機器のタイプが豊富であり、ご家庭の状況にあわせたタンク容量や設置方法を選べます。
スマートスピーカーやスマホアプリと連動して音声操作や遠隔操作が可能であり、スマートホーム化を進めている人にとっては魅力的な製品でしょう。
エコ・ワンのラインナップは以下の通りです。
ふろ給湯・暖房対応タイプ | |||||
タイプ名 | 一体or分離※1 | 容量 | 暖房能力 | 価格(一般地用) | 価格(寒冷地用) |
ダブルハイブリッド | 一体 | 160L | 14.0kW | 1,009,800円 | 1,020,800円 |
11.6kW | 987,800円 | 998,800円 | |||
シングルハイブリッド | 一体 | 160L | 14.0kW | 902,000円 | 913,000円 |
11.6kW | 880,000円 | 891,000円 | |||
100L | 14.0kW | 858,000円 | 869,000円 | ||
11.6kW | 836,000円 | 847,000円 | |||
分離 | 50L | 11.6kW | 759,000円 | 770,000円 | |
ふろ給湯器タイプ | |||||
タイプ名 | 一体or分離 | 容量 | 暖房能力 | 価格(一般地用) | 価格(寒冷地用) |
シングルハイブリッド | 一体 | 160L | – | 836,000円 | 847,000円 |
一体 | 100L | – | 792,000円 | 803,000円 | |
分離 | 50L | – | 715,000円 | 726,000円 |
※工事費・リモコン別。価格は購入場所によって変わります。
※1:一体タイプとは熱源機とタンクが一体となっているもの、分離タイプは別々になっているものを言います。
ノーリツ「ユコアHYBRID(ハイブリッド)」
ユコアHYBRIDは入浴中の方を遠隔で見守ることができる機能や、太陽光で発電した電気を優先的に使う機能が搭載されています。
高齢者やお子様と一緒にお住まいの方、卒FIT(太陽光発電に関する制度)で発電した電気を有効に活用したい方におすすめの商品です。
ユコアHYBRIDのラインナップは以下の通りです。
ふろ給湯・暖房対応タイプ | |||||
シリーズ名 | タイプ名 | 一体or分離 | 容量 | 暖房能力 | 価格 |
ユコアHYBRID | シングルハイブリッド | 一体 | 140L | ~17.4kW | 817,800円 |
ふろ給湯タイプ | |||||
シリーズ名 | タイプ名 | 一体or分離 | 容量 | 暖房能力 | 価格 |
ユコアHYBRID | シングルハイブリッド | 一体 | 140L | – | 737,800円 |
ユコアHYBRID-S | 130L | – | 637,000円 |
※工事費・リモコン別。価格は購入場所によって変わります。
ダブルハイブリッドを使いたいのであれば「リンナイ」のものから選びましょう。
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