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勘定科目「損害保険料」とは 個人事業主が経費にできる保険料

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最終更新日: 2024年01月16日

損害保険料とは事業用の建物や機械、自動車といった物品にかけている損害保険の費用を計上するときに使う勘定科目です。

万が一の火災や事故に備えて、損害保険に加入しているという個人事業主の方は多いと思います。損害保険料の中には、収支内訳書や青色申告決算書において経費として計上できるものや、経費にできなくても所得控除の対象になる保険料があります。

この記事では、どのような保険料が経費として計上できるのか、また、記帳の際の仕訳方法などについて解説していきます。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

 

勘定科目「損害保険料」とは

勘定科目「損害保険料」とは
勘定科目「損害保険料」とは

生命保険が身体に対してかける保険である一方、損害保険は物に対してかける保険を言います。万が一の事故や火災といった損害から、事業を守るためにかける保険料を指します。契約時に定めた一定額の保険金が支払われる生命保険とは異なり、損害額に応じて保険金が支払われる「実損払方式」が損害保険料の中心となっています。

ここでは、損害保険料の具体例や、消費税区分について説明していきます。

損害保険料とは

先述の通り、損害保険は物に対してかける保険です。損害保険料の代表的な対象費用は以下のようなものです。

  • 事務所や倉庫などの、事業用資産の火災保険料
  • 事業用自動車の自動車保険
  • 事業で使用している機械の損害保険料

確定申告における「損害保険料」とは、事業を行なう際の損害に対する各種掛け捨ての保険料を処理するために使用する勘定科目です。

損害保険料の消費税区分

国税庁において、損害保険料は「預貯金の利子及び保険料を対価とする役務の提供等」に該当するため、全額非課税取引とされています。そのため、支払った保険料の全額が経費となります。

No.6201 非課税となる取引|国税庁

経費にできる保険料とできない保険料

経費にできる保険料とできない保険料
経費にできる保険料とできない保険料

個人事業主が自分自身や家族を対象とした損害保険料は、経費として認めてもらえるのでしょうか。ここからは、どのような損害保険料が経費にできて、どのような損害保険料が経費にできないのかを説明していきます。

経費にできる保険料

経費にできる保険料には、以下のものが挙げられます。

  • 火災保険料
  • 地震保険料
  • 自動車保険料

事務所・店舗や営業車など、保険の対象が事業用である保険が対象です。

ちなみに、損害保険料は、保険契約をして保険料を振り込んだ時点で経費として計上できます(保険会社に保険料が着金すると同時に保障開始となる保険がほとんどです)。そのため、保険の審査がスムーズに通れば、数日で決算に間に合わせることも可能です。

経費にできない保険料

経費にできない保険料には、以下のものが挙げられます。

  • 生命保険
  • 火災保険(事業主の自宅に伴うもの)
  • 地震保険(事業主の自宅に伴うもの)
  • 旅行保険(事業主自身やその家族に伴うもの)
  • 国民年金保険
  • 国民健康保険

経費として計上することができるのは、あくまで事業に必要な支出のみとなります。個人事業主自身やその自宅などが対象の保険は、経費とすることはできません。ただし、経費にできなくても所得控除の対象となる損害保険料もあります

次に損害保険料の所得控除について説明していきます。

所得控除ができる地震保険料控除とは

所得控除ができる地震保険料控除とは
所得控除ができる地震保険料控除とは

地震保険は、損害保険の一つです。地震保険料も、事業に関するものであれば経費とすることができます。地震大国である日本において、国民一人一人の自助努力を支援するために、従来の損害保険料控除が改組され地震保険料控除が創設されました。

ここからは、地震保険料控除の概要や上限額について説明していきます。

地震保険料控除の概要

「納税者が特定の損害保険契約等に係る地震等損害部分の保険料又は掛金を支払った場合には、一定の金額の所得控除を受ける」ことができるという仕組みを、地震保険料控除と言います。

No.1145 地震保険料控除|国税庁

日本は、地球上でも地震が起こりやすい地域にあり、マグニチュード6の地震が全世界の20%発生するとのデータもあるほどの地震大国です。そんな地震災害が多い我が国において、政府が地震保険加入率を高めることを目的として、平成18年度に税制改正が行われました。その際、従来の損害保険料控除が廃止され、より控除枠の大きい「地震保険料控除」が新設されたのです。

地震保険料控除を受けるためには、確定申告において地震保険料を支払っているという申請をする必要があります。支払保険料によって控除額は異なりますが、所得税や住民税の控除が受けられるので、節税効果が見込めます。

地震保険料控除の上限額

地震保険料控除の上限額は一律ではなく、その支払保険料の金額によって異なります。具体的な金額は以下の通りです。

区分 年間の支払保険料の合計 控除額
(1)地震保険料 50,000円以下 支払金額の全額
50,000円超 一律50,000円
(2)旧長期損害保険料 10,000円以下 支払金額の全額
10,000円超20,000円以下 支払金額×1/2+5,000円
20,000円超 15,000円
(1)・(2)両方がある場合 (1)、(2)それぞれの方法で計算した金額の合計額(最高50,000円)

出典:No.1145 地震保険料控除|国税庁

保険が事業とプライベートの両方にかかる場合の処理

例えば、年間10万円の支払保険料の自賠責保険をかけている自動車を、プライベートだけではなく事業用にも利用しているとします。その場合は「家事按分」といって、支払保険料の一部は、事業を行なうために必要な出費として処理することが認められています。按分する基準は車であれば使用日数や走行距離です。

わかりやすく、その自動車をプライベート50%、事業用50%の割合で利用しているとします。つまり今回のケースでは、10万円の保険料のうち事業に伴う割合の50%分、5万円の保険料は経費として計上できることになります。

家事按分で経費にする割合は法律などで定められているわけではなく、個人事業主が決めるものです。そうなると全てを経費に計上してしまおうと思うかもしれません。しかし経費にするためには、経費にしたことの経緯や記録などの証拠が必要となります。場合によっては、税務署の調査が入ることもあり得るので、きちんと説明ができないと申告漏れと見なされることもあるので要注意です。厳密な記録までは難しいとしても、事業における使用回数や走行距離などはこまめに記録しておくことをオススメします。

損害保険料の仕訳例

損害保険料の仕訳例
損害保険料の仕訳例

ここからは、損害保険料の仕訳例を、支払いのパターン別に具体的に解説していきます。

1年契約の場合

まずは、地震保険料を12カ月契約で7,000円支払った際の仕訳例です。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
保険料 7,000円 普通預金 7,000円 保険料の支払い

毎年発生する損害保険料で、1年以内に効果を得るものの場合は、支払い時に支払保険料を全額経費とすることができます。これを、「短期前払費用の特例」と言います。1年契約の保険料などは、毎年この仕訳処理を行なえば良いです。

1年を超える契約の保険金を前払いする場合

続いて、地震保険料を24カ月契約で29,400円を支払った際の1年目の仕訳例です。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
保険料 14,700円 普通預金 29,400円 保険料 今年度分
前払費用  14,700円 保険料 翌年度分

複数年度に跨る損害保険料を一括で支払っている場合は、短期前払費用の特例は使えません。そのため、期間に応じて経費にする方法で処理します。

事業でもプライベートでも使っている場合

最後に、自動車の自賠責保険料を12カ月契約で15,000円を支払い、事業50%、プライベート50%で家事按分した場合の仕訳例です。

借方勘定科目 借方金額 貸方勘定科目 貸方金額 摘要
保険料   7,500円 普通預金  15,000円 事業用損害保険料
事業主貸  7,500円 家事使用分

摘要欄には、事業で使用した分とプライベートで使用した分とが判別できるような記載をし、帳簿しておきましょう。

損害保険料を正しく経費にして節税効果を狙おう

損害保険料を正しく経費にして節税効果を狙おう
損害保険料を正しく経費にして節税効果を狙おう

事業のために支払った火災保険料や自動車保険料などは、経費として計上することができます。そのため、個人事業主の方は経費漏れがないように気をつけましょう。

プライベートで利用した分と家事按分をする際の割合は、個人事業主で決めることができます。しかし、不自然な経費処理がなされていると、税務署からの調査が入ることもあり得ます。日々記録している事業における機材の使用回数や自動車の走行距離をもとに、経費とする分は正しく割り出しましょう。

また、経費とすることができない損害保険料でも、所得控除の仕組みを活用して節税することもできます。

個人事業主の節税対策の第一歩は、経費の計上漏れがないかの確認から始まるとも言えるでしょう。わからないことがあれば、まずは気軽に税理士に相談しましょう。

監修税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

損害保険料は、事業に関連するものであれば経費になりますし、事業に関係しないものであれば所得控除を受けられる可能性があります。 店舗経営をする場合や、適切に処理すれば節税に繋がりますので、内容をよく確認した上で節税に使えるものは使いましょう。

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この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・1級FP技能士) 1987年香川県生まれ 2008年公認会計士試験合格 2010年京都大学経済学部経営学科卒業。 大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。