確定申告が終わっていざ所得税を納付しようとしたとき、どのように支払うといいのか困ったことはありませんか?所得税の支払い方法は大きく6種類用意されており、1人ひとりが自由に選べます。
本記事では所得税のすべての支払い方法と、個人事業主におすすめの支払い方法を解説。自分に合った支払い方法を見つけましょう。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
所得税の納付期限と、全額納付できない場合の対処法
所得税の納付期日と、全額まとめて納付できない場合の救済措置、納付しなかった場合どうなるのかということについて解説します。
個人事業主は納付が必要
所得税の納め方は、職業によって大きく2つに分けられます。
1つ目は、会社がまとめて納めてくれるケースです。これはサラリーマンや公務員が当てはまります。毎月の給料から自動的に天引きされるため、自分で納税しに行く必要も、納税を忘れる心配もありません。納税額は毎月の給料明細や源泉徴収票で確認できます。
2つ目は、自分で納めなければいけないケースです。これは個人事業主などが当てはまります。確定申告で納税額を申告し、期日までに決められた支払い方法で納付手続きをしなければいけません。納付書の送付や納税通知はありませんので、納税し忘れに注意が必要です。
納付期日は3月15日まで
所得税を自分で納める場合、3月15日(ただし3月15日が土・日・祝日休日の場合は翌平日)が納付期日です。3月15日は確定申告最終日(納付期日と同様、3月15日が土・日・祝日休日の場合は翌平日)でもあるので、忘れないようにしましょう。
ただし後述する口座振替での支払い方法を選んだ場合、納付期日=引き落とし日とはなりません。3月15日までに確定申告をした後、4月中旬~下旬に指定口座から引き落とされることになります。引き落とし日は毎年異なり、国税庁サイトで確認できます。
口座残高不足により引き落とされなかった場合は滞納となってしまうので、注意しましょう。
全額まとめて納付できない場合は延納できる
納付期日までに全額を納付できない場合、延納という制度を利用可能です。この延納には上限があります。
- 納付期限まで(口座振替の場合は引き落とし日)に所得税額の半分以上を納めること
- 確定申告書の「延納の届出」欄に記入し、事前に延納申請をすること
延納が認められると、残りの税額の納付期日を5月31日まで延長できます。ただし延納期間中は日数に応じて利子税 (令和5年は年0.9%)という、いわゆる利子がかかります。
納付期日までに全額納められないことがあらかじめわかっている場合、または全額納められないかもしれない場合は、延納を利用するようにしましょう。
延納を利用する場合はできるだけ早く残りを納付し、利子税額を低く抑えるのがおすすめです。
延納を使わず、期日までに全額納税しないでいると、日数に応じて延滞税が課せられます。この延滞税は利子税より高額で、2023年の延滞税額は次のとおりです。
- 納付期日翌日から2ヵ月以内:年2.4%
- 納付期日翌日から2ヵ月を超える:年8.7%
所得税の支払い方法は6種類
所得税の支払い方法は、大きく分けて6種類あります。
現金納付 | 窓口納付
QRコードを利用してコンビニ納付 |
キャッシュレス納付 | 振替納税
クレジットカード納付 スマホアプリ納付(Pay払い) e-Taxで納付(ダイレクト納付/ネットバンキングで納付) |
キャッシュレス納付は基本的に事前準備が必要です。それぞれ詳しく紹介します。
窓口で納付
金融機関(日本銀行サイトの「歳入代理店一覧」参照)や所轄税務署(国税庁サイト参照)の窓口に直接出向き、現金で所得税を納付する支払い方法です。この方法は口座振替やコンビニでの支払い・クレジットカード・e-Taxのいずれの納付方法もできない方や、現金で支払いたいという方に向いています。
一度に納められる金額に上限がなく、手数料もかからないのがメリットです。一方、クレジットカードは使えず、窓口の開いている時間に納付しなければいけないのがデメリットといえるでしょう。
コンビニで納付
国税庁サイトから出力したコンビニ納付用QRコード、または税務署から送付・交付されたバーコード付納付書のどちらかを使い、コンビニの窓口で所得税を納付する支払い方法です。
対応しているコンビニは、以下で確認できます。
コンビニ納付は金融機関や税務署が近くにない方や、近所のコンビニで手軽に済ませたいという方に向いています。買い物のついでに支払えて、手数料もかからないのがメリットです。
一方、30万円を超える納付ができない、クレジットカードや電子マネーが使えないのがデメリットと言えます。
口座振替で納付
預貯金口座から振替で所得税を納付する支払い方法です。初回だけ税務署に振替依頼書を提出すると、翌年以降は自動的に引き落とされます。引き落とし日は年により異なるので、国税庁HPで確認しましょう。
この方法は毎年確定申告書を提出する方に向いています。利用可能額の制限がなく、手続きは初回のみでいいこと、手数料がかからないことがメリットです。一方、インターネットバンクなどの一部金融機関・店舗では利用できないのがデメリットといえるでしょう。
クレジットカードで納付
専用サイトで手続きをして、クレジットカードを使い所得税を納付する支払い方法です。この方法はパソコンやスマホで手続きしたい方や、クレジットカードで納付したい方に向いています。自宅にいながら手続きができる、分割払いやリボ払いができるのが主なメリットです。
一方、納付額に応じた決済手数料がかかる、毎回手続きが必要などのデメリットもあります。クレジットカードを使った納付については、この後詳しくご紹介します。
スマートフォンアプリで納付(Pay払い)
スマホの専用サイトで手続きして、Pay払いで所得税を納付します。2023年より新たに追加された納税方法で、PayPay、d払い、auPay、LINE Pay、メルペイ、Amazon Payが対応可能です。
自宅で手続きでき、各種Pay払いのポイントがたまるのがメリットと言えます。スマホアプリ決済で納税できる金額は30万円までな点に注意しましょう。
e-Taxを使って納付
e-Taxで電子納税した場合に利用できる支払い方法です。
いわゆる電子納税のことで、預貯金口座からの納付方法(ダイレクト納付)とインターネットバンキングでの納付方法の2種類があります。
自宅で納付でき、手数料もかからないのが主なメリットです。一方、e-Taxを使う準備が必要、使いにくさを感じる方もいるなどのデメリットもあります。e-Taxを使った納付については、この後詳しくご紹介します。
おすすめの方法1: クレジットカードで納付
所得税の支払い方法に迷っている個人事業主に、おすすめの方法をご紹介していきます。ここではその一つとして、クレジットカードを使った納付方法を、e-Taxを使う場合と使わない場合に分けて詳しく解説。クレジットカード納付のメリットとデメリットを見比べながら、自分に合っているかどうかを見極める参考にしてください。
1、e-Taxを使わず、専用サイトにアクセスして納付する方法
国税庁サイトや確定申告書等作成コーナーから、またはURLを直接打ち込んで「国税クレジットカードお支払いサイト」へアクセスして手続きをする支払い方法です。24時間いつでも納付手続きができます。事前にクレジットカードと所得税の納付に関わる情報がわかるもの(確定申告書や税務署から送付された通知書など)を用意しましょう。
サイト上で
- 氏名・住所などの個人情報
- 納付先税務署・申告区分・納付税額などの納付に関わる情報
- クレジットカード情報
を入力し、納品ボタンを押すと手続き完了です。メール送信先を入力した場合は、「クレジットカード納付手続完了通知」が送られてきます。
2、e-Tax経由で専用サイトにアクセスして納付する方法
e-Taxから「国税クレジットカードお支払いサイト」へアクセスして手続きをする支払い方法です。e-Tax利用時間内で納付手続きができます。e-Taxを使用後に、引き続き所得税の納付手続きをする方におすすめです。
個人情報や納付に関わる情報を自分で入力する必要がなく、手続きがよりスムーズに進みます。事前にクレジットカードを用意しましょう。まず、e-Taxで確定申告や納付情報登録などのデータを送信します。送信後にメッセージボックスの受信通知を確認し、「クレジットカード納付」をクリックして専用サイトへ移動しましょう。
サイト上でクレジットカード情報を入力し、納品ボタンを押すと手続き完了です。手続きが終わると、メッセージボックスに「クレジットカード納付手続完了通知」が届きます。
納付手続きの注意点
いずれの支払い方法でも、次の点に注意が必要です。
(1)使用できるクレジットカードは以下のものに限られています。
Visa、Mastercard、JCB、American Express、Diners Club、TS CUBIC CARD |
(2)納付ボタンを押した後で、納付手続きを取り消したり、送信内容を延納に変更したりできません。
(3)納付手続完了ページは、後から確認できません。大切な情報なので、印刷したり保存したりしておくのがおすすめです。また「クレジットカード納付手続完了通知」も大切に保管しておきましょう。
クレジットカード納付の8つのメリット
クレジットカードを使う支払い方法には、次のようなメリットがあります。
- 24時間、所得税を納税できる(e-Taxを使わず、専用サイトにアクセスする場合)
- クレジットカードのポイントがたまる
- 分割払いやリボ払いができる
- 事前の手続きが不要
- 支払いを一元管理できる
- 利用明細書に記載される
- 現金を持ち歩くことも金融機関などに出向くこともなく、自宅で手続きを完了できる
- 支払う=お金が引き落とされるタイミングがずれるため、その間にお金の準備ができる(納付期日までに手続きを完了させてからカードの引き落とし日まで、時間の余裕ができる)
クレジットカード納付の6つのデメリット
多くのメリットがある一方で、次のようなデメリットもあります。
- 利用できる時間が限られる(e-Tax経由で専用サイトにアクセスする場合)
- 決済手数料が必要(税額10,000円ごとに税別76円、「国税クレジットカードお支払いサイト」で詳しい決済手数料を確認できる)
- 領収書が発行されない
- 後から手続きを取り消したり延納に変更したりできない
- 納付するたびに手続きが必要
- 1,000万円未満かつクレジットカードの決済可能額以下(決済手数料を含む)という利用制限がある
クレジットカード納付は、トヨタファイナンス株式会社という運営業者に国税の建て替え納付を委託するという支払い方法です。そのため、運営業者によるサービスの対価として、2の決済手数料が発生します。
特に気を付けたいのは4です。万が一間違って所得税の納付手続きをしてしまった場合は、所轄の税務署に連絡して手続きをしなければいけません。納付金額や内容を十分確認してから、納付ボタンを押しましょう。
おすすめの方法2: e-Taxを使って納付
e-Taxを使った支払い方法は、e-Taxを使って確定申告している個人事業主におすすめです。ダイレクト納付とインターネットバンキング(登録方式と入力方式)に分けて、それぞれのシステムを詳しく解説していきます。
e-Taxを使った納付のメリットとデメリットを知って、使いやすい支払い方法を選ぶ参考にしてください。
1、ダイレクト納付
e-Taxで確定申告や納付情報などのデータを作成・送信後、指定口座からの振替で所得税を納付する支払い方法です。データの送付後、メッセージボックスの受信通知から、「すぐに納付」または「納付日を指定して納付する」(納付期日内での日にち指定)のどちらかを選べます。
この方法を利用するには、事前に税務署へのダイレクト納付の届出(金融機関の預貯金口座の指定など)が必要です。届出をしてからダイレクト納付を利用できるようになるまで1ヵ月ほどかかるので、余裕を持って準備しましょう。
2、インターネットバンキング
e-Taxに登録されている情報を介して、インターネットバンキングやATMで所得税を納付する支払い方法です。この方法は、e-Taxでデータを作成・送信するかしないかによって、次の2つに分かれます。
(1)登録方式
e-Taxで確定申告や納付情報などのデータを作成・送信後に発行される納付区分番号を使い、インターネットバンキングやATMで納付する方法です。インターネットバンキングにログイン後、税金・各種料金払込のメニューを選択して、必要事項を入力していきます。
入力項目の名称は、金融機関側で使用しているものとe-Tax側で使用しているものが異なるので、登録方式による納税手続で確認しながら進めましょう。
(2)入力方式
e-Taxでのデータ作成・送信を行なわずに、インターネットバンキングやATMで納付する方法です。
入力方式による納税手続を見ながら納付目的コード(登録方式の納付区分番号にあたる)を自分で作成し、入力項目の名称を確認しながら手続きを進めましょう。税務署から確定申告書が送付されている方は、同封されている納付書下部に納付目的コードが印字されていますので、自分で作成する必要はありません。
入力方式は、税務署に届け出ている納税者情報(所轄税務署など)が同じ場合のみ使えます。もし転勤や引っ越しなどで納税地が変わった場合は、先に納税者情報の変更をしておくか、別の方法で納付しましょう。
e-Taxの利用可能時間
e-Taxは次のように利用時間が決まっています。※メンテナンス日を除く
【通常期】
|
【所得税などの確定申告時期】
※ただし月曜日0時~8時30分のメンテナンス時間を除く |
e-Taxのサイトでは、下のように具体的な利用時間のカレンダーが掲載されていますので、そちらも確認してみてください。
e-Taxを使った納付の3つのメリット
e-Taxを使った支払い方法には、次のようなメリットがあります。
- e-Taxから確定申告した人は登録が不要
- ダイレクト納付またはネットバンキングを選ぶと、現金を持ち歩くことも窓口に出向くこともなく、自宅で所得税の納付を完了できる
- 手数料がかからない
ダイレクト納付は、これ以外に次のようなこともメリットです。
【ダイレクト納付】
- e-Taxでの申請後、簡単な操作で納付手続きが完了する
- インターネット銀行の契約が必要ない
- 即時または期日指定から納付期日を選べる
e-Taxを使った納付の2つのデメリット
e-Taxを使った所得税の支払い方法には、次のようなデメリットもあります。
- e-Taxから確定申告していない人は、先に登録が必要
- e-Tax利用可能時間や金融機関のシステム稼働時間などで、利用時間が限られる
また、ダイレクト納付とインターネットバンキングは、それぞれ次のようなこともデメリットです。
【ダイレクト納付】
- 事前に税務署への申請が必要
【インターネットバンキング】
- 事前にインターネット銀行の口座開設と、ログインID・パスワードの取得が必要
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