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財務分析の方法を例と共に解説!5つのポイントとそれぞれの指標から分かることとは

最終更新日: 2023年03月10日

この記事では、

  • 財務分析の目的と方法
  • 財務分析の5つのポイント
  • 財務分析に使う指標にはどのようなものがあり、どのように計算するのか
  • 指標から分かることは何か

を、具体例を用いてやさしくご説明します。その上で財務分析をした結果、自社の課題を発見し対策を練る方法をどのように見つけていくかについても解説していきます。

財務分析の目的や方法とは

財務分析の概要と目的
財務分析の概要と目的(画像提供:PIXTA)

財務分析という名のもとに数字をこねくり回したところで現状は変わらないのでは?と思われる方もいるかもしれません。しかし財務分析によって得られる指標は、会社を客観的に見ることができる重要な数値です。まずは財務分析を行う目的と方法について概要をご説明します。

財務分析とは

財務分析とは、会社の財務諸表の数字を使ってさまざまな指標を計算し、経営状況を把握することを言います。指標には一定の計算方法があり、その結果を他社や自社の過去などと比較することによって、経営状況を把握したり分析したりすることができます。

財務分析の目的

財務分析の目的にはいくつかありますが大きくは二つです。

一つ目は経営者の方が自社の経営状況を把握し、現状の課題を発見し対策を練るための一助とするため。

二つ目は外部の方、例えば金融機関や投資家が会社の経営状況を客観的に把握し、融資や投資の判断の一助とするためです。

財務分析は、客観的なデータをもとに経営について判断できる重要な手法となっています。

財務分析の方法

財務分析は会社の財務諸表の数字からさまざまな指標を計算していき、算出された指標にもとづいて会社の経営状況を判断しますが、その方法は主に以下3通りがあります。

  • 自社の前年同月や前年決算時点と比較する、または過去数年の推移を比較することで改善しているか悪化しているか確認する
  • 自社の予算数値と比較して達成度を確認する
  • 同業他社と比較して自社の状況を確認する

まずは「財務諸表」と「財務分析の指標」についてそれぞれ詳しくご説明していきます。

財務分析の対象となる財務諸表

財務分析は財務諸表の数字をもとに行いますが、財務諸表と一口に言っても以下の5種類があります。

  • 貸借対照表
  • 損益計算書
  • 株主資本等変動計算書
  • キャッシュ・フロー計算書
  • 附属明細表

その中でも財務分析に使う数字は、「貸借対照表」と「損益計算書」を参照していることが多いです。ここではその両社について概要をご説明します。

貸借対照表(B/S)

まずは貸借対照表です。英語ではBalance Sheetと言うことから、略してB/Sとも呼ばれます。決算期末時点での会社の財政状態を表すものになり、内訳として以下の3つに分けられています。

(1)資産の部

資産の部では、会社が持っている資産について決算日時点での内容と金額を表します。ただ資産といっても現金や預金だけではなく、最終的には現金に換えられるものや将来において収益を生むものが含まれます。資産の部は、流動資産と固定資産、投資その他の資産、繰延資産に分けられており、一番現金化しやすいものが流動資産、そうでないものが固定資産になります。

具体的には、

  • 流動資産:現金及び預金、売掛金、在庫など
  • 固定資産:建物、器具備品、土地など
  • 投資その他の資産:投資有価証券(株式)など

を表します。

(2)負債の部

負債の部は、会社が負っている債務について決算日時点での内容と金額を表します。流動負債と固定負債に分けられており、具体的には、

  • 流動負債:買掛金、未払金、短期借入金など
  • 固定負債:長期借入金など

を表します。

(3)純資産の部

純資産の部ですが、こちらは資本を表します。具体的には、資本金と資本剰余金(資本準備金等)、利益剰余金などです。株主から払い込んでもらった資金に加えて、営業活動によって獲得した利益のうち会社に残ったものの合計です。

これからご説明する財務分析の指標の中では、「自己資本」とも呼ばれます。

損益計算書(P/L)

次に損益計算書です。英語では Profit and Loss Statement と言うことから、略してP/Lとも呼ばれます。決算期間で会社が稼いだ収益から、かかった費用を差し引き、儲けである利益の金額を表すものです。貸借対照表はストック、損益計算書がフローと言われます。

売上高から売上原価を差し引いて売上総利益を出します。そこから販売費及び一般管理費を差し引いて営業利益を出します。そこからさらに営業外損益を加味したものが経常利益。さらに特別損益を加味したものが税引前当期純利益。そこから税金を引いた最後の残りが当期純利益になります。その流れを表したものが損益計算書です。売上原価は売上に直接かかった費用、販売費及び一般管理費は間接的な費用も含めた費用になります。

この二つの書類の内容を理解することも、財務分析の一部と言えます。

参考:損益計算書とは? 記載項目の意味、見方や書き方を徹底解説!|ミツモア

財務分析の5つのポイントとそれぞれの指標

財務分析の5つのポイントとそれぞれの指標
財務分析の5つのポイントとそれぞれの指標

ここからは財務分析で用いられる指標についてご説明します。指標については、それぞれの指標の性質から大きく5つに分類されており、5大指標とも言われています。まずこの5つの分類をご説明します。

(1)収益性分析

収益性分析は、会社の収益性や儲ける力を判断する指標です。

(2)安全性分析

安全性分析は、財務面の安全性を見る指標です。要するに支払能力を見るもので、短期的な資金繰りの安全性と、長期的な財務構造の安定性の両方を見ます。

(3)活動性分析

活動性分析は、売上を得るために会社が資産を有効に活用しているかどうかを見る指標です。

(4)生産性分析

生産性分析は、会社が経営資源たる人や物を投入した結果、それによっていくら稼いだかを見る指標です。

(5)成長性分析

成長性分析は、その名の通り会社の成長性を見る指標です。成長というと売上に着目しがちではありますが、利益がなければ会社は生き残れません。様々な角度から成長性を判断します。

以上の5つのポイントから財務分析を行いますが、それぞれにおいて指標の内容と計算式について見ていきましょうなお、指標の平均値は業種により差が開くことがありますので、ここでの説明する目安の数値についてはあくまで参考です。

収益性分析

収益性は「資本効率」と「利益率」の2つの側面に分けられます。どれだけの資本を投入してどれだけ稼いだかという資本効率と、売上に対していくらの儲けが残ったかを見る利益率です。

資本効率を見る指標として主なものには以下があります。

総資産利益率(ROA)

総資産利益率(ROA)(%)=当期純利益÷総資産×100

どれだけの総資産(負債+純資産)を投入して当期純利益を稼いだかを見る指標です。この比率が高いほど効率的に稼いだことになり、良好な数字とされます。5%以上あると優良とされています。

自己資本利益率(ROE)

自己資本利益率(ROE)(%)=当期純利益÷自己資本×100

自己資本とは、貸借対照表の純資産の部にあたる部分になります。自己資本に対してどのくらいの当期純利益を稼いだかを見る指標です。こちらも比率が高いほど効率的に稼いだことになり、良好な数字とされます。10%以上あると優良とされています。

総資産経常利益率

総資産経常利益率(%)=経常利益÷総資産×100

ROAでは当期純利益だった部分を経常利益にしたものがこちらの指標です。経常利益はイレギュラーな事象である特別損益の影響を除いた利益であり、会社の実質的な収益性を示す指標になります。5%程度あれば普通と考えられています。

利益率を見る指標として主なものには以下があります。

売上高総利益率

売上高総利益率(%)=売上総利益÷売上高×100

粗利が売上に対してどのくらいを占めているかを見る指標です。この比率が高いほど評価されます。この利率は業種によってかなり差が出てきますので、業種ごとに目標値を確認すると良いでしょう。

中小企業庁が毎年行っている中小企業実態基本調査では、中小企業の財務状況や経営状況が業種ごとに公表されていますので、それらから平均値を算出することができます。

参考:中小企業実態基本調査 / 令和2年速報(令和元年度決算実績) 速報|e-Stat

売上高経常利益率

売上高経常利益率(%)=経常利益÷売上高×100

経常利益が売上に対してどのくらいの割合を占めているかを見る指標で、この比率が高いほど評価されます。こちらも業種によって差がでますが、5%以上あれば優良とされるでしょう。

最終的な利益である当期純利益が売上に占める割合も重要な指標にはなってきますが、当期純利益は会社の臨時的な損益も含めての数字になります。

安全性分析

続いて安全性分析の指標をご説明します。安全性には上記でも述べたように短期的な資金繰りの安全性と、長期的な財務構造の安定性の両方があります。

短期的な資金繰りの安全性や支払能力の大きさを見る指標として主なものには以下があります。

流動比率

流動比率(%)=流動資産÷流動負債×100

短期的に支払をしなければならない流動負債(買掛金など)に対して、短期的に現金化できる流動資産がどのくらいあるかを示した指標です。この比率が高いほど支払い能力があると判断され、安全性が高いことを示します。この比率は100%以上にすることが望ましく、理想は200%とされています。

当座比率

当座比率(%)=当座資産÷流動負債×100

こちらも流動比率と同様の目的で、短期的に支払をしなければならない流動負債に対して、支払能力がどのくらいあるかを示した指標です。当座資産は流動資産から主に在庫などを除いた資産を言います。在庫は流動資産の中でも滞留することが多いため、これを除いて計算するとより現実的な支払能力を見ることが可能です。こちらも100%以上にすることが望ましいとされています。

次に長期的な財務構造の安定性を見る指標として主なものには以下があります。

自己資本比率

自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100

自己資本は純資産の部、すなわち株主からの出資と経営活動により蓄えた過去の儲けの累計で、借入のように返済する必要がない会社の基礎財産です。この比率が高いと借入に依存せずに自己資金で賄える幅が高く、安定性が高いと判断されます。この比率は50%以上あると優良とされています。

固定比率

固定比率(%)=固定資産÷自己資本×100

固定資産は回収するまでに長期間を要すため、その資金は返済が不要な自己資本で賄うと安全であると考えられています。そのため、この指標は低いほどより安全と判断され、比率が100%以下が良好な状態です。

活動性分析

次に、売上を得るために会社が資産を有効に活用しているかどうかを見る活動性分析の指標をご説明します。指標として主なものには以下があります。

総資本回転率

総資本回転率(回)=売上高÷総資本(期首と期末の平均)

総資本がどのくらいの売上を生み出しているかを示す指標で、この回数が多いほど少ない資本で多くの売上を効率的に生み出せていることを示します。業種によってかなり差が出る数値です。

棚卸資産回転率

棚卸資産回転率(回)=売上高÷棚卸資産(期首と期末の平均)

棚卸資産が売上に対して有効に活用できているかを示す指標で、この回数が少ないと棚卸資産の動きが鈍く滞留気味であると判断されます。つまり回数が多い方が好ましいと言えます。この数値も業種によってかなり差が出てきますので、業種ごとに目標を確認すると良いでしょう。

売上債権回転率

売上債権回転率(回)=売上高÷売上債権(期首と期末の平均)

売上に対する売上債権の割合であり、この数値が高ければ売上債権の回収期間が短いことを示します。売上債権の回転率は3~4回転が普通とされる数値です。

売上債権の部分を買入債務に変えると、買入債権回転率を出すことができます。このように回転率を把握することは、会社の資本を有効活用できているかを確認でするために重要です。

生産性分析

生産性分析の指標をご説明します。指標として主なものには以下があります。

労働生産性

労働生産性(円)=付加価値額÷従業員数

従業員一人がいくらの付加価値を生み出しているかを示す指標です。そのため、大きければ良いとされます。

ここで付加価値という言葉が初めて出てきましたが、付加価値とは営業活動により得られる利益のことで、売上から材料費や仕入れの費用を引いた金額です。人件費は引きません。このため売上総利益とも少し違う概念になってきますが、とりあえずは人件費を抜いた粗利を指すと考えて下さい。

資本生産性

資本生産性(円)=付加価値額÷総資本

総資本がどのくらいの付加価値を生んでいるかを示す指標です。高ければ効率的に生産できていることを表します。この金額は中小企業では1,000万円、上場企業では1,500万円が目標とされています。

労働分配率

労働分配率(%)=人件費÷付加価値額×100

付加価値に対する人件費の割合を示すもので、付加価値がどのくらい人件費として分配されているかを示す指標です。このため、この数値は低いほうが会社に多くの付加価値が残せることになります。この指標は50~60%が適正とされています。

成長性分析

最後に成長性分析の指標をご説明します。ただし、これらについては指標というよりは過去と比較をするという計算式です。

売上高成長率

売上高成長率(%)=(当期売上高-前期売上高)÷前期売上高×100

前年に比べてどのくらい売上が伸びたかを見る指標です。

純資産成長率

純資産成長率(%)=(当期純資産-前期純資産)÷前期純資産×100

前年に比べてどのくらい純資産が伸びたかを見る指標です。

この他にも、売上総利益や経常利益など、確認したい指標を前年と比較することも成長性分析の一環です。

財務分析の例

財務分析の例
財務分析の例

ここまで財務分析の指標について計算式をご説明してきましたが、ここで実際の貸借対照表と損益計算書を用いていくつか計算をしてみましょう。

ここではコロナの影響を受けた外食産業、株式会社ゼンショーホールディングスと株式会社吉野家ホールディングスの直近の業績である第三四半期の数字をもとに計算してみます。前者は牛丼「すき家」を中心に、ファミレスなども展開している外食の大手企業です。一方後者はゼンショーよりも規模は小さいものの、牛丼の老舗「吉野家」を中心に展開しています。共に牛丼で有名ということで、両社の数字を見てみましょう。

両社の損益計算書はこちらです。実際の財務諸表はより細かい情報が多く掲載されているため、要約をしています。

損益計算書の要約
損益計算書の要約

両社の貸借対照表を要約したものがこちらです。

貸借対照表の要約
貸借対照表の要約

指標の計算にあたっては前年度の数字も必要になってくることがありますが、ここでは当年度の財務諸表のみ掲示いたします。

収益性分析

両社共に当期純利益はマイナスとなっており、業績が悪化していることが推測されますので、ここでは売上高総利益率を見てみます。

計算式:売上高総利益率(%)=売上総利益÷売上高×100

ゼンショーの場合、売上総利益256,377百万円÷売上高448,340百万円×100=57.1%

吉野家の場合、売上総利益79,414百万円÷売上高126,882百万円×100=62.5%

これを見るとゼンショーの方が規模は大きいうえに最終利益は吉野家よりも良い数字であるにも関わらず、売上高総利益率(粗利率)は低いことが分かります。

安全性分析

続いて安全性分析をしてみましょう。ここでは自己資本比率(%)を求めてみます。

計算式:自己資本比率(%)=自己資本÷総資本×100

ゼンショーの場合、自己資本78,694百万円÷総資本382,811百万円×100=20.5%

吉野家の場合、自己資本42,136百万円÷総資本134,950百万円×100=31.2%

これを見るとこちらでもゼンショーの方が規模が大きいものの、自己資本の比率は低く借入などの負債の比率が高いことが分かります。

活動性分析

活動性分析もしてみましょう。総資本回転率を出してみます。

計算式:総資本回転率(回)=売上高÷総資本(期首と期末の平均)

ゼンショーの場合、売上高448,340百万円÷総資本(382,811百万円+*365,853百万円)/2=1.19回

吉野家の場合、売上高126,882百万円÷総資本(134,950百万円+*126,167百万円)/2=0.97回

こちらではゼンショーの方が良い数字で、投入した資本から多くの売上を上げています(※総資本の期首数字は上記財務諸表には記載はありません)。

生産性分析

生産性分析は中小企業ではとても重要な指標ですが、上場企業を分析する場合には付加価値の数字が開示資料だけでは正確な計算ができないこと、従業員の数字は別途有価証券報告書などから探さないといけないので困難です。

簡便的に付加価値を売上総利益として、労働生産性を出してみましょう。

計算式:労働生産性(円)=付加価値額÷従業員数

ゼンショーの場合、付加価値額256,377百万円÷従業員数14,402人(※)=17.8百万円

吉野家の場合、付加価値額79,414百万円÷従業員数4,581人(※)=17.3百万円

(※)有価証券報告書より転記

これを見ると両社ともにほぼ同じ数字です。臨時雇用の人数が多い業種ですが、両社共にその状況は同じですので、この時点での生産性としてはほぼ同じと考えて良いでしょう。

成長性分析

最後に成長性分析を見てみます。上記では前年の財務諸表を掲示していないので、第三四半期報告書から前年との比較情報を抜粋します。

まずはゼンショーはこちらです。

ゼンショーの連結営業成績
ゼンショーの連結営業成績

売上は前期に比べ6.6%減少しています。当期純利益だと△74.1%。厳しい状況にあることが分かります。

一方で吉野家はこちらです。

吉野家の連結営業成績
吉野家の連結営業成績

営業利益以降の利益が全て赤字となってしまっており、ゼンショーよりもさらに厳しい状況にあることが分かります。

両社共に現時点では厳しい状況ですが、おそらく現在は外食産業全体が厳しい状況にあることが想像できますので、さらに過去からの推移を見てみます。

現時点で営業利益が赤字となってしまっている吉野家の、過去からの推移は以下のようになっています。

動きはあるものの、過去の経常利益はプラスで推移してきたことが読み取れます。このように数年単位で比較することも大事です。成長性分析と難しい名前がついていますが、このように比較するだけである程度の分析ができます。

このように、現時点における利益などの数字はゼンショーの方が比較的良く、すべての面において優良とも見えますが、安全性や粗利率を見ると吉野家の方が良い数値を出しており、財務分析を行うとさまざまな視点で経営状況を見ることができると分かっていただけたかと思います。

以上のように財務分析を行うことで2社を比較することができますが、比較する際には注意点があります。

例えば売上高総利益率など、財務分析の指標は業績の良し悪しだけでなく業種によって違いが出てくるものがあります。例えば、人件費が主の業種の場合は売上高総利益率は高くなります。

そのため、もし中小企業の経営者の方が自社の課題を解決するために自社について財務分析をしたい場合に、まったく違う業種と比較しても一概に優劣をつけることはできません。今回紹介した例のように、同業他社と比較をすることが大切です。

また、比較対象として同じくらいの規模ではないと意味がない、例えば中小企業が上場企業と比較することは意味がないのではと思われるかもしれませんが、そんなことはありません。財務分析の指標は比率です。中小企業の方が良い数字がでる指標、むしろ出さなければならない指標もあります。上場企業の指標を目標にすることは良い刺激にもなるでしょう。

財務分析を行うのにおすすめの資格とは?

財務分析を行うのにおすすめの資格とは?
財務分析を行うのにおすすめの資格とは?(画像提供:PIXTA)

では実際に財務分析は誰がどのように行っていくのが良いでしょうか?ここでは財務分析をする人と、おすすめの資格をご紹介します。

財務分析は誰が行う?

ここでもう一度財務分析の目的をおさらいします。

  • 経営者の方が自社の経営状況を把握し、現状の課題を発見し対策を練るための一助にするため。
  • 外部の方、例えば金融機関や投資家が会社の経営状況を客観的に把握し、融資や投資の判断の一助とするため。

この記事では前者のケースにフォーカスします。

経営者が財務分析の結果を知るためには、財務分析を行う人は以下のどちらかになります。

  • 経営者自身、または経理担当者が行う
  • 外部の人に分析をしてもらって結果を見る

経営者の方がご自身で分析できるに超したことはありません。やり方については以下で経営分析レポートの書き方の項目でご説明します。ただし、できれば経営者の方は分析ではなく「判断すること」に注力して頂きたいところです。経理担当者に任せるか、外部の信頼できる専門家に分析をしてもらうのが良いでしょう。

財務分析を行うのにおすすめの資格

もし経理担当者が財務分析を行う場合、どのように勉強したら良いか、何か資格が必要なのかと不安に思われるかもしれません。結論としては、財務分析を行うにあたり、資格は必要ありません。財務分析の結果はどこに提出するものでもなく、自身の判断のために利用するものだからです。

ただし、財務分析を行うには財務諸表の内容や指標の意味などを正確に理解していることが望まれます。そこで、財務諸表の内容などを理解するのにおすすめの資格をご紹介します。

日商簿記検定

財務分析における一番の基礎は、財務諸表が読んでそれぞれの科目が表す意味が分かることです。これだけでも財務分析はかなりできます。簿記2級があれば基本的なことは理解できるでしょう。

ビジネス会計検定

ビジネス会計検定試験は、財務諸表に関する知識や分析力を問うもので、財務諸表が表す数値を理解し、ビジネスに役立てていくことに重点を置いています。財務分析に直結した内容になっており、2級がおすすめです。

その他の資格

ファイナンシャルプランナーや公認会計士も、財務分析が資格の勉強の中に含まれます。ただしそれがすべてではなく一部であること、また難易度も高いので「財務分析」だけを目的とした場合はそぐわないでしょう。しかし関連する資格ということで興味のある方は検討してみられることもありかと思われます。

財務分析レポートの書き方

財務分析レポートの書き方
財務分析レポートの書き方

では実際に財務分析をした結果はどのようにまとめたら良いでしょうか?財務分析の結果はどこに提出するものでもなく、自身の判断のために利用するものとご説明しました。そのため、特に決まったフォーマットがあるわけではありません。自社の判断に寄与するような、分かり易いレポートが望まれます。

ここでは財務分析レポートの書き方についてご説明します。

財務分析はエクセルのフォーマットを用いて行うことが可能

今まで見てきたように、財務分析に使用する指標は全て一定の計算式が決められています。このためエクセルで計算式を入れておけば、財務諸表の数字のみを入力するだけで計算が可能です。財務諸表の数字もできれば手打ちではなく会計ソフトからエクセルにはき出してコピーすれば、より正確かつ時短が図れるでしょう。

最初にフォーマットを作るのが大変ですが、一度設定しておけばずっと使えます。エクセルは好みに合わせて加工ができるので、欲しい情報を中心にグラフにするなど見やすくすることもできます。また、Webには財務分析のためのエクセルのフォーマットもありますので、それらをダウンロードして使うのも良いでしょう。財務分析はエクセルを使用することがおすすめです。

財務分析レポートの書き方

財務分析レポートの例
財務分析レポートの例

次に財務分析レポートの書き方についてご説明します。まずは財務分析の方法を再掲させて頂きます。

  • 自社の前年同月や前年決算時点と比較する、または過去数年の推移を比較することで改善しているか悪化しているか確認する
  • 自社の予算数値と確認して達成度を確認する
  • 同業他社と比較して自社の状況を確認する

このため財務分析レポートもこの方法に沿うように、前年や予算、同業他社の数字と比較する形式にすると良いでしょう。

そして具体的な分析結果について、コメントをしていきましょう。具体的には指標が悪い場合や、前期比較や予算比較で増減した場合に考えられる詳細な原因をコメントしていきましょう。会社の経営内容の詳細を分かっている方でないと記入できない箇所も多くあります。

財務分析は税理士に依頼できる

財務分析は税理士に依頼できる
財務分析は税理士に依頼できる(画像提供:PIXTA)

上記、財務分析は誰が行う?の見出しで、財務分析をする人について以下のように説明しました。

  • 経営者自身、または経理担当者が行う
  • 外部の人に分析をしてもらって結果を見る

ここまではご自身で分析をすることを前提としていましたが、最後に外部の人に分析をしてもらうことについて説明していきます。

中小企業では、間接部門の人手が足りないことが多いかと思います。また、専門性が足りないことも考えられます。そのようなときは是非外部の人に財務分析を依頼しましょう。

ただ、財務分析は数字を比較した先に課題を発見し対策を練ることが目的です。依頼する場合は専門性があるだけでなく自社のことを熟知しており、分析結果を出すだけでなく経営者とともに課題を共有してくれる人が望ましいでしょう。

分析というとコンサルタントを思い浮かべるかもしれません。そうした選択肢もありますが、中小企業が依頼するには価格も高めになってきます。そこでおすすめしたいのは税理士です。税理士は税務の専門家で、税務申告書を作成するのが仕事と思われている方もいるでしょう。もちろん、申告書の作成業務だけを依頼することも可能です。しかし税理士は、中小企業の経営者の方の身近な専門家であり、中小企業の経営についても支援を行います。税理士は申告書を作成する過程で会社の内容もよく把握していますので、顧問契約を結べば年間を通して経営者の身近な相談相手となるでしょう。

また同業他社と比較する際に、中小企業の場合は基本的に決算書が公開されていないため、もし同じような規模の会社と比較したい場合は困難になります。税理士は多くの中小企業接しているため、助言のために統計のデータを持っていたりします。もちろん守秘義務がありますのでお客様の実際の数字は決して漏らしませんが、統計データにもとづいた分析が可能です。

さらに中小企業は上場企業とは違った観点も必要です。例えば財務分析の指標の中でも中小企業が経営する中で重要なものは生産性分析になってくるでしょう。労働分配率を役員と従業員でどのように分けるかなど、中小企業ならではの悩みもあります。税理士は中小企業の特徴を踏まえた分析が可能です。

税理士に財務分析を依頼されることを選択肢の一つとしてみてはいかがでしょうか。

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