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資本金1000万円の壁って?節税のためのベストな資本金額教えます

最終更新日: 2020年12月16日

会社の資本金は1,000万円以上か1,000万円未満かによって、税金の支払いが大きく異なります。「資本金は大きければ大きいほど良い」という目線で会社を判断している人も多いのではないでしょうか?しかし、一概に資本金が大きい会社=良好な会社と判断することはできません。

資本金が1,000万円未満の場合にはどのような税金のメリット・デメリットがあるのか、ということを具体的に解説します。資本金と税金の関係をしっかりと理解して節税ができるようになりましょう。

この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

資本金を1,000万円未満にするメリット・デメリット

資本金1,000万円のメリットとデメリット

資本金を1,000万円未満にすることにはメリットとデメリットがあります。1,000万円未満の資本金とすることによって節税にはなりますが、やはり対外的な信用度は落ちてしまうことが多いのです。

具体的にどのような節税ができ、なぜ資本金を1,000万円未満にすると対外的な信用が落ちてしまうことがあるのでしょうか?資本金を1,000万円未満にするメリットとデメリットを具体的に解説していきます。

資本金1,000万円未満のメリットは節税できること

資本金を1,000万円未満にするメリットは節税ができることです。具体的には資本金を1,000万円未満とすることによって消費税と住民税を節税することができます。節税の詳細については「資本金額を抑えると法人住民税が11万円安くなる!」の見出し見ていきましょう。

資本金1,000万円未満のデメリットは?

資本金を1,000万円未満とすることについて具体的なデメリットはそれほどありません。しかし、資本金1,000万円未満とすることによって対外的な信用度が低下して、他社との取引で不利になってしまうケースがあります

昔は株式会社の設立要件は「資本金1,000万円以上」と定められていました。そのため、古くからの経営者は「資本金が1,000万円以上ないと信用できる会社ではない」という視点で会社を判断することもあります。

資本金1,000万円超えで下請法の対象に

下請法とは、親会社が優越的地位を濫用して下請け企業に対して「発注書の不発行」や「下請代金の減額や未払い」などの行為を禁止する法律です。この法律は下請け企業を守るための法律ですが、親会社にとっては下請け企業との取引において不利にあることもあります。

下請法で親会社になるには、資本金1,000万円超ということが1つのラインです。契約ごとの親会社と下請け企業の資本金の条件について詳しく見ていきしょう。

資本金の条件は以下の通りです。

  • 製造委託・修理委託の場合
    親会社の資本金1,000万円超3億円以下 下請け企業の資本金1,000万円以下
    親会社の資本金3億円超 下請け企業の資本金3億円以下
  • 情報成果物作成委託・役務提供委託の場合
    親会社の資本金1,000万円超5,000万円以下 下請け企業の資本金1,000万円以下
    親会社の資本金5,000万円超 下請け企業の資本金5,000万円以下
  • 子会社を介して行う場合
    親会社の資本金3億円超、子会社の資本金1,000万円以下 下請け企業の資本金1,000万円以下

このように、どこかの業者に業務を下請に出す場合には、自社の資本金が1,000万円超の場合で、下請け企業の資本金が1,000万円以下であれば下請法の対象となるのです。

下請法の対象となった場合には、親会社は下請け企業に対して以下の義務を負うことになります。

  • 書面の交付義務:発注の際は,直ちに3条書面を交付すること。
  • 支払期日を定める義務:下請代金の支払期日を給付の受領後60日以内に定めること。
  • 書類の作成・保存義務:下請取引の内容を記載した書類を作成し,2年間保存すること。
  • 遅延利息の支払義務:支払が遅延した場合は遅延利息を支払うこと。
引用元:親事業者の義務:公正取引委員会

3条書面とは業者の名称や支払期日などを記載した書類です。支払期日についても60日以内と定められており、遅延損害金まで発生するので親会社にとっては大きな負担です。

自社の資本金を1,000万円未満としておくことによって、下請法の適用対象外となるので法律の様々な制約を受ける必要がなくなるというメリットがあります。

資本金が1,000万円未満だと消費税が免除される!

1,000万円未満の資本金で消費税が免除に

資本金を1,000万円未満にすると消費税を節税することができます。資本金1,000万円未満の会社は消費税の免除期間があるためです。どのくらいの期間消費税が免除になるのか詳しく見ていきましょう。

資本金1,000万円未満なら消費税が最大2年間免除

消費税は顧客から預かった税金を企業が国へ支払うというもので、基本的にどんな会社も納税する必要がある税金です。しかし以下のいずれかに該当した場合には一定期間消費税を納税する必要はありません。

①資本金が1,000万円未満の会社 無条件に1年免除
②設立から6か月間の課税売上高が1,000万円を超えない会社 ①の条件に加えて②または③の条件も満たすことで2年免除
③設立から6か月間の従業員に支払った給与の合計が1,000万円以下の場合 ①に加えて、②もしくは③の条件も満たすことで2年免除

このように、資本金が1,000万円未満であれば、消費税の支払いは1年間免除されるので、資本金を少なくしておくことで消費税を節税できるというメリットを得ることができるのです。

なお、資本金1,000万円未満ということは、999万円までということになります。資本金1,000万円にしてしまうと消費税を支払う必要があるので注意しましょう。

年度のはじめに資本金が1,000万円未満なら免除

消費税が免除される基準の資本金は、年度のはじめの資本金です。初年度目のはじめに資本金が1,000万円未満であれば消費税は免除になるのです。

また、初年度目のはじめに資本金が1,000万円未満で、年度の途中で増資を行い資本金が1,000万円以上になった場合にはその年の消費税は免除になりますが、2年目には消費税の申告が必要になってしまいます。

本来であればニ年度目も免除を受けることができた業者でも、増資によって1,000万円以上の資本金になってしまったら消費税の申告が必要になるので十分に注意してください。

資本金額を抑えると法人住民税が11万円安くなる!

資本金を抑えることで法人税も安くなる

資本金を1,000万円未満にすることによって節税できる税金は消費税だけではありません。資本金を1,000万円未満にすることによって法人住民税も節税することができるのです。どのタイミングでどの程度安くなるのか、このパートで見ていきましょう。

資本金1,000万円以下だと均等割が安くなる

住民税には所得割と均等割があります。所得割とは所得に応じて課税されるもので、均等割とは住民1人あたりに均等に課税される部分です。

法人の場合には均等割の金額は従業員の人数と資本金の金額に応じて決まっています。

住民税の金額は自治体によって異なりますが、東京23区内に本店を置く場合には以下のとおりです。

従業員の人数 資本金1,000万円以下 資本金1,000万円超1億円以下
従業員50人以下の場合 7万円
(都道府県の法人住民税5万円、市町村の法人住民税2万円)
18万円
(都道府県の法人住民税13万円、市町村の法人住民税5万円)
従業員50人超の場合 14万円
(都道府県の法人住民税12万円、市町村の法人住民税2万円)
20万円
(都道府県の法人住民税15万円、市町村の法人住民税5万円)

このように、従業員が50名以下であれば、資本金が1,000万円以下と1,000万円超の場合とで、法人住民税が11万円も異なります。

ただ資本金を1,000万円以下とするだけで11万円も節税することができるのは大きなメリットです。

なお、消費税免除は1,000万円未満の会社が対象になりますが、住民税の節税は1,000万円以下なので注意しておきましょう。

消費税と住民税のどちらもメリットを得たい場合には1,000万円未満としておく必要があります。

起業時じゃない!住民税が決まるのは期末時点

法人住民税は事業年度末時点の資本金で決まるのです。毎年4月末を決算としている会社の場合には4月30日時点の資本金で法人住民税の均等割の金額が決まります。このため、起業時の資本金額が必ずしも住民税の金額算定のための資本金額になるわけではありません。

増資をする場合、事業年度内に行ない資本金が1,000万円を超えると法人住民税の均等割は高くなるのです。法人住民税を節約したいのであれば、事業年度終了後増資をする必要があります。

【就活生向け】会社の規模と資本金額は関係ない!

資本金だけで就職先は決められない

会社の規模や給料は資本金とは必ずしも関係ありません。安定や給料を会社の資本金で判断するのは大きな間違いです。資本金の金額は税金上の理由などによって会社が戦略的に設定していることが多いからです。会社を判断するのであれば、資本金だけでなくその他の情報も加味して総合的な目線が必要になります。

会社の規模や安定は資本金額だけでは測れない

会社の規模や安定度は資本金だけで測ることはできません。資本金が小さくても安定して高収益を出している会社はたくさんあります。

反対に資本金が大きいことで、貸借対照表が肥大化して効率の高い経営を行うことができず、満足な収益をあげることができていない会社もたくさんありうるのです。

会社を判断するのであれば資本金=規模の大きな会社として判断するだけでなく、利益率や売上の推移、創業年数など様々な要素から総合的に判断すべきでしょう。資本金よりも重要なことは「安定して利益を確保できているかどうか」です。

資本金の額は確かに会社の規模を表す大切な指標ですが、その他の指標もしっかりとチェックして総合的に会社は判断するようにしましょう。

「資本金額が高い=年収が高い」ではない!

就活生の中には年収の高さから就職する勤務先を選択する人もいるでしょう。しかし、就活時に資本金額から年収の高さを判断することは必ずしも正しいとは言えません。

2015年の国税庁「民間給与の実態調査結果」から企業規模別の年収をまとめると以下のようになります。

資本金 給料 ボーナス 年収
個人事業主 230.0万円 26.7万円 256.7万円
2,000万円以下 330.7万円 28.8万円 359.6万円
2,000万円以上 343.4万円 46.2万円 389.7万円
5,000万円以上 340.0万円 61.5万円 401.5万円
引用元:平成27年分民間給与実態統計調査

このように、個人事業主は大きく劣りますが、給料だけであれば資本金5,000万円以上の会社と2,000万円以下の会社では10万円程度の違いしかありません

データからも「資本金が大きい」=「給料が高い」ということではなく、給料の基準はあくまでもその会社の経営者個別の考え方に依るところが大きいと言えそうです。

やはり会社の選ぶ際には資本金は1つの目安程度と考えて、利益率や従業員の給与水準や売上や利益の推移、そして何よりも仕事にやりがいを感じることができるかどうかという基準で選択するようにしましょう。

監修税理士のコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

節税をしたいのであれば、設立時の資本金は1,000万円未満にされることをおススメします。消費税、法人住民税均等割の取扱いにより、数十万円の節税メリットを受けられるでしょう。 とはいえ、採用活動などの際に資本金の金額によって有利不利が生じることは事実です。ある程度事業が軌道に乗り、採用活動に本腰を入れるタイミングで増資するのが良いでしょう。

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この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・CFP?)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。