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資本金の仕訳はどうすれば?入金の際も使う際もこれでOK!

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最終更新日: 2023年04月20日

会社を設立し事業がスタートすると必要になるお金。そのお金は「資本金」として、あなたの口座(発起人名義の個人用口座)に置いてあるはずです。では、この資本金を個人用口座から法人用口座に移した際の仕訳はどうなるのでしょう?

このページでは事業を進めていく上で必要な資本金について、口座を移動した際の会計処理や仕訳について分かりやすく解説します。資本金とは何かといった基礎から、増資・減資の仕訳についても参考にしてください。

この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

「資本金」って何?「創立費」「開業費」との違い

資本金とは、事業を始めるための元手です
資本金とは、事業を始めるための元手です

ここで資本金の基礎をしっかり確認しましょう。混同しやすい「創立費」や「開業費」との違いも説明していきます。

資本金とは「事業を行う元手」のことです

資本金とは、事業を始める上で必要となるお金(元手、元金)です。資本金について、会社法の第445条には、次のように記載されています。

株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。

参考:会社法 | 電子政府の総合窓口e-Gov

資本金はいくらでもよく、1円からでも会社を設立することができます。ただし資本金は開業後の運転資金となるので、資本金が多ければ資金繰りはラクですし、金融機関から融資を受けなくても事業を展開していくことが可能です。

このように資本金は、会社の規模や体力を表すものと見ることができます。

  • 資本金とは「事業を行なう元手」のこと
  • 資本金の額に制限はない(1円でもOK)
  • 資本金があるほど資金繰りはラク

資本金の仕訳方法:「現金預金」が借方、「資本金」が貸方

簿記の教科書に載っているような、基本的な資本金の仕訳は以下の通りです。

【仕訳例】現金500,000万円を元入れして会社を設立した

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
現金預金 500,000 資本金 500,000 資本金の払い込み

会社側から見ると現金が入ってきているため、「現金」が借方、「資本金」が貸方です。

「資本金」「創立費」「開業費」の違い

  • 資本金……事業を行なう元手
  • 創立費……会社設立までにかかった費用
  • 開業費……会社設立から営業を開始する(開業)までにかかった費用

上記のとおり創立費と開業費は、支出のタイミングが異なります。具体的にどのような支出が「創立費」「開業費」となるかを下記にまとめました。

<創立費(会社設立までにかかった費用)>

  • 定款その他諸規則の作成費用
  • 株主募集のための広告費用
  • 株式申込証、目論見書などの印刷費用
  • 創立事務所の賃借料
  • 発起人への報酬
  • 設立事務に使用する使用人の給与
  • 証券会社など金融機関の取扱い手数料
  • 創立総会の費用
  • 設立登記の登録免許税

<開業費(会社設立から開業までにかかった費用)>

  • 発起人への報酬
  • チラシなどの広告宣伝費
  • 事業運営に必要な免許取得費用

「創立費」と「開業費」の仕訳方法

ちなみに創立費と開業費の仕訳例は以下の通りです。

【仕訳例】創立費50万円を現金で支払った

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
創立費 500,000 現金 500,000 創立費の支払い

【仕訳例】開業費20万円を現金で支払った

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
開業費 200,000 現金 200,000 開業費の支払い

「資本準備金」との違いは?

資本準備金とは、払い込まれる資本のうち、資本金の額の1/2を超えない額で資本金として計上しないもののことです。会社法の第445条には、下記のように記載されています。

2 前項(資本金についての項目を指す)の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。

参考:会社法 | 電子政府の総合窓口e-Gov

資本金としてではなく資本準備金として計上しておくことで、業績が悪化した時に資本準備金を取り崩し、会社の財産を維持することが可能です。

法人設立日に資本金を払い込んだ場合の仕訳

個人名義口座と別段預金口座の2パターンを説明します
個人名義口座と別段預金口座の2パターンを説明します

会社設立日の時点では法人口座がまだ開設されていません。そのため資本金は発起人(個人)の普通口座、もしくは別段預金口座にあることが一般的です。それぞれの場合の仕訳方法を見ていきましょう。

個人の口座に資本金を入れた場合の仕訳

会社を設立した時点で、資本金は会社のお金です。発起人名義で個人の普通預金に資本金を入金した場合、会社の口座と区別するために「預け金」もしくは「別段口座」を用います。

【仕訳例】個人用口座に資本金50万円を入金し、後に会社の口座へ移動したとき。

①個人用口座に資本金50万円を入金した

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
預け金 500,000 資本金 500,000 資本金の払い込み

②個人名義口座から50万円を会社の法人用口座へ移動した

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
普通預金 500,000 預け金 500,000 普通預金に振り替え

ただし、資本金の移動に振込手数料がかかった場合は以下のような仕訳をしてください。

②´個人名義口座から50万円を会社の法人用口座へ移動した。支払手数料756円は会社負担とした

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
普通預金 499,244 預け金 500,000
支払手数料 756

上記仕訳は、振込手数料756円が相殺され、入金された状態です。ちなみに振込手数料を相殺せずに発起人が立て替えた場合、会社から発起人に対して立て替えてもらった振込手数料支払う義務が発生します。この場合の仕訳は、以下の通りです。

②´´個人名義口座から50万円を会社の法人用口座へ移動した。支払手数料は振込人(発起人)が立て替えた

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
支払手数料 756 短期借入金 756

会社が支払うべき手数料を個人が立て替えているので、会社にとっては借金となります。

別段預金口座に資本金を入れた場合の仕訳

別段預金口座とは、通常の預金に該当しない資金の一時的な保管場所です。勘定科目は「別段預金」を用います。

【仕訳例】別段預金に資本金100万円を入金し、その後普通預金に振り替えたとき。

①別段預金に資本金100万円を入金した

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
別段預金 1,000,000 資本金 1,000,000 資本金の払い込み

②別段預金を普通預金に振り替えた

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
普通預金 1,000,000 別段預金 1,000,000 普通預金に振り替え

法人口座開設前に資本金を使用した場合の仕訳

資本金は会社のお金です
資本金は「会社の」お金です

法人用口座に資本金を移す「前」に、資本金を使用した場合の仕訳を見ていきましょう。

経費を支払った場合の仕訳

【仕訳例】法人口座開設前に発起人の個人用口座にある資本金100万円で、会社設立費用15万円を払ったとき。

①発起人の個人用口座にある資本金100万円で会社設立費用15万円を払った

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
創立費 150,000 預け金 150,000 創立費の支払い

②法人口座開設後、発起人個人の口座から85万円を会社の口座へ移動した

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額 摘要
普通預金 850,000 預け金 850,000 普通預金に振り替え

資本金は会社のお金ですから、会社が発起人に預けているお金から会社設立費用が支払われたという状況になります。この事例では、会社が発起人個人から返してもらうべき金額は、100万円−15万円=85万円です。

私用に使いこんでしまった場合

先ほどは個人用の口座に入っている会社のお金(資本金)を、会社のために使ったケースを見てきました。口座間の移動はあるものの、会社のために会社のお金を経費として使っているということなので、特に問題はありません。

しかし個人的に使い込んでしまった場合や、見せ金の返済に充てるため会社の口座にお金を戻せないとなると問題が出てきます。たとえ自分の会社であっても個人と法人は切り離して考えなければなりません。

資本金の増資・減資の仕訳

増資・減資の仕訳方法を見ていきましょう
増資・減資の仕訳方法を見ていきましょう

資本金の額は、会社設立後に増やしたり減らしたりできます。

  • 資本金を増やすこと→「増資」
  • 資本金を減らすこと→「減資」

増資・減資をした場合の仕訳方法をそれぞれ見ていきましょう。

増資の際の仕訳

増資には、出資を受けて資本金を増やす「有償増資」と、剰余金などを資本金へ組み込む「無償増資」の2種類があります。

  1. 有償増資……株主や一般の投資家などから出資を受けて資本金を増やす
  2. 無償増資……積み立てておいた資本準備金や剰余金などで資本金を増やす

まず、有償増資の仕訳から見ていきましょう。

1.有償増資の仕訳

有償増資では、払込期間を設けるのが一般的です。払込期日までに全額の払込みを受けた場合、仕訳は下記のようになります。

例:株式100株を一株当たり500円で発行した場合

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
別段預金 50,000 新株式申込証拠金 50,000

払込期日が到来し増資額が確定したら、別段預金と新株式申込証拠金を、 現金預金と資本金へ切り替えましょう。

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
新株式申込証拠金 50,000 資本金 50,000
現金預金 50,000 別段預金 50,000

ここまでが有償増資の説明です。次に、無償増資の場合を見ていきましょう。

2.無償増資の仕訳

無償増資の場合は、積み立てておいた資本準備金や剰余金など他の資本を振り替えて資本金を増加させます。

例:資本準備金500,000円を資本金に組み入れた場合

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
資本準備金 500,000 資本金 500,000

減資の際の仕訳

減資するときも、有償と無償とで仕訳方法が異なります。

  1. 有償減資……減資して生じた剰余金を株主へ交付する
  2. 無償減資……減資して生じた剰余金を株主へ交付しない

まずは、有償減資の仕訳を見ていきましょう。

1.有償減資の仕訳

有償減資では、減資によって生じた剰余金を株主へ金銭で交付します。

例:資本金を100万円減少させ、配当金として70万円払った場合

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
資本金 1,000,000 現金預金 700,000
その他資本余剰金 300,000

2.無償減資の仕訳

無償減資には以下の2通りがあります。

  1. 資本金を減らしてその他資本余剰金を増やす
  2. 資本金の減少を欠損補填に充当する

仕訳はそれぞれ次のようになります。

<1.資本金を減らしてその他資本余剰金を増やす場合>

例:資本金を30万円減額し、その他資本余剰金とした場合

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
資本金 300,000 その他資本余剰金 300,000

<2.資本金の減少を欠損補填に充当する場合>

例:資本金を30万円減額し、欠損補填とした場合

借方勘定科目 金額 貸方勘定科目 金額
資本金 300,000 繰越利益剰余金 300,000

資本金に関する注意点

資本金に関する注意点
資本金に関する注意点

最後に資本金に関する注意点を2つご紹介します。資本金を正しく仕訳するために、確認しておきましょう。

個人事業主やフリーランスの資本金は元入金

個人事業主やフリーランスが開業前に用意した資本金や準備金は、元入金(もといれきん) として扱われます。元入金は個人でのみ使う勘定科目で、法人では使いません。

法人の資本金は金額が変わることはありませんが、 元入金は会計上マイナスになることもあります。元入金がマイナスになるケースとは、以下のような場合です。

  • 利益以上の金額を事業用口座からプライベート口座に移動した場合
  • 赤字になった場合

このような場合に元入金がマイナスになりますが、毎年元入金がマイナスになっていると「運転資金を確保していない」とみなされ、銀行から融資を受ける場合に不利になることもあります。

見せ金(みせがね)は必ずバレる

見せ金(みせがね)とは、発起人が払込取扱機関以外から借りたお金を金融機関に払込み、それを資金として会社を設立することです。

見せ金は資本金を実際の金額より大きく見せるための詐欺行為ですので、見せ金を使って会社を設立すると公正証書原本不実記載罪に問われる可能性があります。他にも見せ金を使って会社を設立した場合、次の2つがデメリットです。

  • 見せ金は借金であるため会社設立時に資金マイナスからのスタートになってしまう
  • 補助金や助成金の申請が通らなくなる

このように、見せ金を使って自己資金を高く見せた代償は大きいものです。会社を設立するときは自己資金でスタートできるようにしましょう。

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この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・CFP?)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。