法人や個人事業主など、多くの事業者にとって他人事ではない税務調査。「実際に何をするのか」「税務署から連絡が来て不安」と考えている方も多いのではないでしょうか。
税務調査は10年以上来ないこともあれば、複数回受けるケースもあります。しかし、税務調査で確認されるポイントや事前の対策を押さえておけば、必要以上に恐れる必要はありません。
税務調査の内容やチェックされやすい項目、実際に対応する際に押さえておきたいポイントをわかりやすく解説します。
この記事を監修した税理士
京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台
税務調査とは税務申告の正誤を確認する調査
税務調査とは、納税者の税務申告内容が正しいかどうかを調べる調査のことです。管轄の国税局や税務署が、納税者の申告書や帳簿書類などの各種資料を調査します。
所得税や法人税に代表されるほとんどの税金は「申告納税制度」が採用されています。これは納税者自身が税額を計算して、申告および納付を行うというもの。つまり、虚偽の申告や税額の計算ミスが起こる可能性も否めません。
「強制調査」や「任意調査」といった税務調査は、税務に関する不正を確認・是正するために行われているのです。
強制調査と任意調査の2つがある
ひと言で「税務調査」と言っても「強制調査」と「任意調査」があります。これらの大きな違いは、調査の内容に納税者の意思が反映されるか否かです。
強制調査の場合、納税者の許可なく調査を進めることができます。その一方で任意調査の場合は、納税者の同意の下でしか調査を進められません。
税務署で行われている税務調査のほとんどは「任意調査」となっています。
強制調査とは脱税の疑いのある組織への強制的な調査
強制調査とは脱税の疑いがある組織への強制的な調査のことです。管轄の国税局の査察部(マルサ)が裁判所の令状を得て調査を行います。その名の通り強制調査では、調査内容に納税者の意思は反映されません。
強制調査の対象となるのは、多額で悪質な脱税の疑いがある納税者です。脱税の証拠があれば刑事事件として立件されるため、任意調査とは大きく性質を異にする税務調査といえます。
任意調査とは脱税の疑いがない組織への任意の調査
任意調査は脱税の疑いがない組織に対して行う任意の調査です。基本的には税務署の職員から事前に調査日の連絡があるため、事前準備が可能です。
しかし中には、事前の連絡なしで税務調査が行われる「無予告調査」もあります。無予告調査も任意調査の一種であるため、強制的な調査はできません。また無予告調査が行われるのは非常に稀です。適正な申告手続きを行っている納税者に対してはまず行われないでしょう。
任意調査は悪質な脱税を行っていない通常の納税者も対象となっています。そのため刑事事件の立件が目的ではなく、適切な申告手続きが行われるかの確認が主な目的です。申告内容に不備がある場合は、修正申告等の手続きで正しい税額に是正する必要があります。
なお任意調査は「納税者の了承を得てから帳簿書類等を確認する」という意味での「任意」です。任意調査であっても、調査の実施を断ることはできない点に注意しましょう。
税務調査は法人だけでなく個人事業主も対象
税務調査は法人だけでなく、個人事業主も対象です。税務調査が行われる確率は法人で約2.5%~3%、個人事業主で約1%~1.5%です。
一例として、令和元(2019)事務年度における法人の実地での税務調査件数は「約76,000件」でした。これは法人全体の「約2.6%」が対象となっています。一方で令和元事務年度における個人事業主の実地での税務調査件数は「約59,000件」です。これは個人事業主全体の「約1.0%」です。
なお令和2(2020)事務年度以降は、新型コロナウイルス蔓延の影響によって税務調査の件数が減少しています。しかしコロナ渦が落ち着けば、調査件数はコロナ渦以前の割合に戻ると予測できます。
税務調査の流れ・内容
通常の任意調査は大まかに「事前通知」「質問への回答・帳簿書類の提示」「調査結果の説明・申告内容の是正」の流れで行われます。
事前通知
事前通知とは税務署の職員が納税者に対して、税務調査を行う旨の通知を行うことです。基本的には電話での連絡となりますが、連絡が付かない場合は書面での通知で行われます。
通常の任意調査の場合、納税者の都合に合わせた日程調整が可能となっています。
質問事項への回答・帳簿書類の掲示【調査当日】
調査当日に行う主なことは、質問事項への回答や帳簿書類の提示です。具体的な質問事項の一例は、事業内容や取引先、従業員の実態等です。そして税務署の職員は、回答の内容や提示された帳簿書類を基に、申告内容が適切かを確認します。
調査結果の説明・申告内容の是正
税務調査が終わると、調査結果の説明が行われます。調査内容に問題がなかった場合はこのまま税務調査が終了です。一方で問題点が見つかった場合は、修正申告を推奨されます。
修正申告をする場合は、申告書を提出した後に差額の税額と付帯税の納付を行う必要があります。
税務調査でチェックされる8つの項目
税務調査では売上や仕入などを中心に、各科目で漏れや不正がないかを細かくチェックしていきます。
【税務調査でチェックされる8つの項目】
|
売上
「売上」は税務調査で必ず確認される事項です。売上は税務申告において最も基礎になる要素であるためです。具体的なチェックポイントとしては「計上漏れはないか」「過少に申告をしていないか」等が挙げられます。
調査方法としては「預金通帳・証憑書類と帳簿・決算書が一致していることを確認する」手段等があります。金額が合わない場合、法人の口座はもちろん、代表者の口座まで確認される場合があるため注意が必要です。
仕入
「仕入」も税務調査では必ず確認される事項と考えましょう。架空仕入れ等を行って仕入を過大に計上することで、税負担を軽くする不正手段があるためです。
「仕入と売上が対応しているか」「証憑書類と帳簿内容は一致しているか」等が主に確認されます。また「今期分として翌期の仕入を計上していないか」など、計上時期が正しいかどうかについても確認される可能性が高いです。
棚卸資産
棚卸資産は課税される所得への影響が大きく、不正で使われることもあるため、チェックされる場合が多いです。「評価方法」や「計上漏れ」、「実地棚卸の有無」などが確認されます。
基本的に税務調査では、帳簿や棚卸表を基にチェックが行われます。また事業内容によっては、実際に倉庫の確認を行うケースも存在する点に留意しましょう。
【棚卸資産とは】
棚卸資産とは、商品や原材料等の在庫を指します。 |
交際費
交際費に該当する取引の妥当性がチェックされます。たとえば「別の科目で処理していないか」などが見られます。法人の交際費は税務上の費用として扱われません。そのため課税所得の減少を目的として、意図的にほかの科目で処理するケースがあるのです。
個人の場合、事業と無関係の支出を交際費として処理していないかどうかを確認されることが多いです。たとえば家族や友人との飲食代を経費で落としたいがために、交際費で計上してしまうケースが考えられます。
交通費
旅費・交通費も税務調査でチェックされやすいポイントです。特に注意したいポイントは「カラ出張に疑われないか」です。カラ出張とは実際には出張をしていないにも関わらず、架空の出張費を計上することを指します。
税務職員は出張費の確認で証拠書類やタイムカード、作業日報の確認まで行います。不要なトラブルを避けるためにも、出張の事実を証明する書類を保存することが重要です。
人件費
人件費が不正に計上されていないかどうかも、税務調査では頻繁に確認されます。支払っていない人件費を費用計上して不正をするケースが存在するためです。具体的には「架空の従業員はいないか」「役員報酬や退職金の額は過大でないか」等です。
税務調査では社会保険料の支払い状況や人件費明細書、タイムカード・出勤簿の確認等が行われます。そのため帳簿記録や給与明細書とタイムカードの情報の整合性があるかを事前に確認しましょう。
修繕費
修繕費とは建物や設備等の機材を修理した際に発生する費用です。税務調査では「計上されている修繕費が資本的支出に該当しないかどうか」が頻繁に確認されます。「資本的支出」とは増改築によって設備の使用価値を向上させる、もしくは使用期間を延ばすための支出です。
資本的支出と判断される場合は、価値が向上した部分を資産計上して減価償却を行う必要があります。そのため修繕費が資本的支出に該当しないことを証明する書類や説明を準備しましょう。
期ズレ
期ズレとは本来計上するべきでない事業年度に、売上や費用を計上している状態を指します。期ズレが生じていると適切な税額が算出されないため、税務調査でチェックされやすいポイントとなります。
調査では「当期の売上が翌年の売上となっていないか」「翌年の費用が当年の費用となっていないか」が確認されます。そのため全ての費用は原則発生主義で計上し、決算前後の売掛員・買掛金処理に誤りがないかを確認しましょう。
なお発生主義とは、収益や費用の事実が発生した段階で帳簿に計上する手法です。
税務調査が入りやすい個人事業主の特徴
個人事業主に税務調査が入る確率は約1%と言っても、完全無作為に調査対象が選ばれる訳ではありません。税務調査が入りやすい個人事業主の特徴があるのです。
もちろん事業をしていれば避けられない部分もありますが、中には意識すれば避けられる特徴も存在します。そのため税務調査が入りやすい方の特徴を理解し、取組みの改善や調査が入る時期の理解に努めましょう。
税務申告をしていない
税務申告をしていない個人事業主は、税務調査が入りやすくなります。取引先の税務調査から芋づる式に発覚するケースや、第三者の噂から発覚するケース等があります。税務申告は事業者の義務なので、無申告と判明したら高い確率で税務調査が入るでしょう。
税務手続きは事業者の義務であるため、必ず期限内に行うことが大切です。また現在税務申告をしていない場合は、期限後であっても早急に行いましょう。罰則となる延滞税も無申告加算税も、税務調査前に1日でも早く行うことで税負担が軽減されるためです。
売上が大きく増加している
売上が大きく増加している個人事業主も税務調査の対象になりやすいです。特に「売上が伸びている一方で所得は変わらない」「利益率が低い」等の特徴がある場合は注意が必要です。これらに当てはまる場合は、経費の割合が多いことを意味するため、税務署も積極的に実情を把握しに来ます。
大きく売り上げが増加しても、適切な費用計上や申告手続きを行っているのであれば、特段の注意点は必要ありません。しかし経費については論争が生まれやすいため、帳簿の内容を正しく説明できる会計処理を行いましょう。
売上が1,000万円前後もしくはそれ以上の場合に対象になりやすい
「大きく売り上げが増加しているとは、具体的にいくらから」と疑問に思う方も多いです。一概に言えませんが、特に「売上高1,000万円前後」の個人事業者は税務調査が来る確率が高まります。
何故なら課税売上高が1,000万円を超えると、消費税の課税事業者となるためです。消費税の課税事業者にならないように、売上高を1,000万円未満に調整して申告を行っている人がいます。そのような人の申告を是正し、課税事業者にするというケースも多いため、税務調査の確率も向上します。
こちらも適切な申告を行っていれば、税務調査が入っても特段の問題はありません。なお2事業年度前の課税売上高が1,000万円を超えている場合、消費税の納税義務者となります。その場合は消費税の確定申告も必要となるため、今一度過去の売上高の確認をしましょう。
申告内容に不審な点がある
申告内容に不審な点がある場合は、税務調査が入りやすくなります。申告書の不審な点が不正に繋がっていないかを確認するためです。不審な点とは「売上の変動が激しい」「経費が急激に増加している」「経費の用途が不明」などです。
不要な税務調査を避けるためにも、税務署に分かりやすい申告書や決算書の作成を行いましょう。何か事情があって数字が変動している場合、青色決算書の「本年における特殊事業」欄の活用がおすすめです。
起業・開業後3年以上が経過している
起業・開業から3年以上経過している事業者は、税務調査が入る確率が上がります。税務調査は不正がなくても、過去3年分まで遡れることが主な理由です。
もちろん開業から10年経っても調査が来ないケース等も存在するため一概には言えません。しかし開業から複数年経った際は、過去の申告書や決算書を今一度確認することをおすすめします。
海外投資やシェアリングエコノミーに関連する売上が多い
海外投資やシェアリングエコノミーに関連する売上が多い事業者も、税務調査の対象となる可能性が上がります。実際に海外投資やシェアリングエコノミーを行う個人に対して、積極的に調査をしていると明言されています。
海外投資等の申告漏れの所得金額は、所得税実地調査全体の約1.5倍です。またシェアリングエコノミーを含むインターネット取引を行う個人の1件あたりの追徴課税は全体の約1.9倍となっています。このことからも、海外投資やシェアリングエコノミーは調査が入りやすい分野であると予測できます。
調査が入りやすい分野のため、適正な申告を証明できる証拠書類等をより一層注意して保管しましょう。
参考:Ⅱ 主な取組|国税庁 |
税務調査が入りやすい法人の特徴
法人に税務調査が入る確率は3%程度ですが、頻繁に税務調査を受けている法人も存在します。それは税務調査が入りやすい法人には一定の特徴があるためです。
税務調査が入りやすい法人の特徴を理解し、該当する方は積極的に調査に備えると良いでしょう。
事業規模が大きい
事業規模が大きい法人は、税務調査の対象となりやすいです。基本的には事業規模が大きい法人ほど、多額の税金を納めています。そして事業規模が大きい法人の申告内容に不備があると、修正後に納めるべき税額も大きくなりやすいです。そのため税務署からすると積極的に調査するべき対象となります。
事業規模が大きい法人は、顧問税理士に一任している場合もあるでしょう。しかし帳簿の管理や、会計の状況等は代表者や経理担当者も正しく理解しておくことが大切です。
売上や利益が大きく変動している
利益や売上が大きく変動している法人も、税務調査の対象となりやすいです。これは事業年度ごとの売上の変動はもちろん、月ごとの変動も含まれます。税務署の職員が売上の変動の原因を理解していない場合、不審な申告内容に見られるためです。
もちろん業種によっては売上に波があるのは仕方がありません。そのため税務調査の際は、売上が変動した理由を正しく説明できるようにしましょう。また決算書に特殊事情として一筆しておけば、調査前に売上の変動の理由を伝えることができるでしょう。
不正が多い業種
不正が多い業種で事業をしている法人も、税務調査を受けやすいと言えます。実は以下のように、不正が多い業種が存在するのです。
【業種の具体例】
|
これは外部的な要因であるので、税務調査を一切受けないようにするのは難しいです。そのためいつ税務調査が入っても問題ないように、日々帳簿や証憑書類の管理をすることが大切です。
過去の税務調査で指摘を受けている
過去の税務調査で指摘を受けている法人は、再度税務調査が入りやすくなります。過去に指摘を受けている場合、再び申告誤りや不正がないかを疑われやすくなるためです。
もちろん最初の税務調査で指摘を受けないのが理想と言えます。その上で一度指摘を受けた箇所については、より入念に会計処理を行うことが大切です。
税務調査の連絡はいつ来る?税務調査を受けやすい時期
税務調査が来る時期は明確に決まっていませんが、7月〜12月にかけて活発になる傾向があります。理由は以下のように複数存在します。当然緊急性の高い事案や怪しい動きが見られた場合は、時期に関係なく税務調査が入る点にも留意しましょう。
【税務調査が7月~12月にかけて多い理由】
|
税務調査では原則として事前の連絡がありますが、調査の何日前に来るかは決まっていません。また証拠隠滅等の恐れがあると判断された場合は、事前連絡なしで調査が行なわれることもある点に留意しましょう。これを一般的に「無予告調査」と言います。
コロナウイルスの影響はあるが税務調査は行われる
新型コロナウイルスは過去の国難と比較しても税務調査に与える影響は非常に大きいです。実際に令和2事務年度における調査件数は、法人・個人共に前年の約30%〜40%程度しかありませんでした。
しかし税務調査が一切行われない訳ではありません。令和3年8月以降は調査の必要性が高い事業者に絞って、税務調査が行われています。そのため健全な申告手続きを行っている方は、税務調査が入る確率が減少すると予想されます。その一方で適切な申告手続きを行っていない場合は、通常通り税務調査が入るでしょう。
またコロナウイルスが一向に収束しない場合、簡易的な接触形態の行政指導の比重が増加すると予測できます。しかし行政指導でも適切な対応を行わない場合には、税務調査に発展する可能性が十分にあるため注意が必要です。
税務調査の連絡が来たらどうすればいい?
税務調査の連絡が来たら、その後の対応が重要です。税務調査の連絡が来た際の対応を正しく理解・実行できれば、焦らずに当日を迎えることができます。
また正しく事前準備をしていれば税務調査がより円滑に進むため、事前にすべきことも確認・実行しましょう。
税理士に立ち合いを依頼する
税務調査の連絡が来たら、税理士に立会いを依頼することが大切です。顧問税理士がいる場合は直ちに連絡を行いましょう。税務署からの連絡によって日付の決定をしますが、その場では回答せずに税理士の都合と調整することが大切です。
また顧問税理士がいない場合は、税理士に新たに依頼する形となります。もし予算的に顧問税理士を依頼する余裕がない会社であっても、税務調査の立会いのみの依頼も可能です。予算に応じてその時々に税理士に依頼するという付き合い方があるため、調査時や申告時に活用しましょう。
ミツモアなら相談相手となる税理士を無料で探すことが可能です。相談内容などの簡単な質問に答えるだけで、最大5名の税理士から見積もりがもらえます。
確定申告書などの書類を準備する
税務調査の連絡が来たら、少なくとも過去3年分の資料を準備する必要があります。また3年以上の調査が必要と判断された場合は、最大過去7年分まで調査される可能性があります。そのため事前に過去7年分の資料を準備することが理想です。
必要な資料は調査の対象税目によっても異なるので、自身が必要な資料は何かを正しく把握しましょう。
対象税目 | 法人税/所得税
※所得税は存在する資料のみで問題ありません |
相続税 |
必要書類 | 法人税(所得税)の確定申告書(控) | 相続税の申告書(控) |
決算書類(貸借対照表/損益計算書等) | 申告書に添付した資料の原本 | |
帳簿書類(総勘定元帳/仕訳帳/現金出納帳/固定資産台帳等) | 土地の権利書や不動産関連の契約書 | |
売上・仕入関連(契約書/見積書/請求書/納品書等) | – | |
現金・預金関連(預金通常/領収書等) | – | |
棚卸明細書 | – | |
雇用関連(労働者名簿/雇用契約書/出勤簿/源泉徴収簿/年末調整の関連書類/役員報酬の関連書類等) | – | |
事業概況関連(登記簿/定款/総会議事録/組織図等) | – |
書類に不備がないか確認する
税務調査が始まる前に、書類に不備がないかを確認します。以下のような不備があった場合は、早急に対応した上で税務調査に臨みましょう。
【書類内容のチェックポイント】
|
特に証憑書類が不足していた際は、再発行ができるかを取引先に確認しましょう。再発行ができない場合は出金伝票等を用いて代わりの書類を用意する必要があります。
また不透明な資料がある場合は、何のために生じた資料かを明確に説明できるようにすることが大切です。加えて証憑書類と帳簿が一致しない場合、調査開始時に自己申告することで税務署からの心象が良くなるでしょう。
必要書類を一式揃えれば、それ以降にやることはそれほど多くありません。申告書と決算書を提出しているので、修正等ができないためです。ただし担当の税理士から指示がある場合は、指示内容を遵守しましょう。
税務調査に対応する際の注意点とは?押さえたい5つのポイント
税務調査当日の対応によっても、調査が円滑に進むか否かが異なります。不要な行動を取ってしまうと、それを足掛かりに指摘をされてしまう恐れがあるためです。
調査を円滑に進め不要な指摘を避けるためにも、押さえるべきポイントを事前に確認し、調査当日に活かしましょう。
税務調査を過度に恐れる必要はない
税務調査を過度に怖がる必要はありません。税務調査は誤りや不正がない事業者にも入るので、そこまで重く捉えないようにしましょう。
また指摘があっても、悪意がなければ修正するだけで済むため、そこまで問題ではありません。
顧問税理士と打ち合わせをしておく
顧問税理士とは税務調査の事前の打ち合わせを行っておきましょう。事前に想定される流れや受け答え、注意点を共有できれば、当日も落ち着いて対応することができます。
可能ならば当日の受け答えのシミュレーションを税理士とすることで、より円滑に調査を進められます。
質問には正直に答え、あいまいな回答は避ける
税務調査では税務署の職員からの質問には正直に答えましょう。虚偽やあいまいな回答をしてはいけません。
税務調査で嘘をつくと、1年以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。またそうでなくとも、あいまいな回答は税務職員に不信感を抱かせ、細かい点まで指摘される原因となります。
質問されたことにのみ答える
税務調査では質問されたことにのみ回答しましょう。正直に答えようとするあまり不要な情報を話すと、それが原因となって指摘が入る場合があるためです。
質問には結論から答える形で、一問一答の会話を意識することが大切です。
留置きに備えて必要な書類をコピーしておく
留置きとは税務署の職員が事業者の同意を得た後に、各種資料を預かることです。
普段から使用する資料を預けてしまうと、業務に支障が出る場合もあります。そのため留置きをされて業務に支障が出る書類は、税務調査の前にコピーを取っておきましょう。
税務調査で誤りを指摘されたらどんな処置がある?
税務調査により申告内容が正しいと認められると、申告是認として税務調査は終わりです。しかしながら修正申告が必要になったり、さらに故意でなかったとしても帳簿の不備でペナルティを課せられたりすることもあります。
申告内容に誤りがなかった場合
税務調査の結果、申告内容に誤りがなかったと認められる場合は「申告是認」となり終了となります。実際には「申告是認」となるケースは少なく、「修正申告」を必要とすることがほとんどです。
修正申告をする場合
税務調査の結果、問題が見つかり修正が必要になると「修正申告」するように指導されます。修正申告を提出するということは、税務署の指摘を正しいと認め、追徴課税や加算税、延滞税などを支払うということです。
会社側が税務署の指摘に納得がいかない場合は、「修正申告」を受け入れない選択もできます。税務調査の結果に納得できない場合は、安易に修正申告書を提出するべきではないことを覚えておきましょう。
修正申告をしない場合
税務調査の結果に納得がいかない場合は、修正申告をせず更正処分を受けます。日本では納税者が確定申告をすることで納税額が決まりますが、更正処分では税務署長が納税額を決定します。あえて更正処分を受け、それを不服として税務署長または国税局長に異議申し立てします。
異議申し立ての処分に納得がいかない場合は、国税不服審判所に審査請求も可能です。
ペナルティとして加算税が発生する場合
加算税とは申告書を提出しなかった場合や修正申告を提出した場合、また更正処分に納得できた場合に、本来納めるべき税金に追加して支払う税金です。次の6種類があります。
延滞税
法律で決められた期日までに税金を支払わなかった際に課される税金です。理由の如何に関わらず、納付期限の翌日から2ヶ月間は年7.3%、その後は14.6%の割合で税金が課されます。
利子税
監査を受けなければならないなど、期日までに納税できない時に税務署に申告し、申告期限の延長が認められたときに、その期間に応じて課せられる税金のことです。日数に応じて原則年7.3%の割合で税金が課されます。
過少申告加算税
期限内に提出した申告書の税額が本来納めるべき額より少なく、修正申告書を提出したり税額の更正を受けたりすると生じる税金です。不足分の10%の税金が課されます。ただし、最初に申告した税額、もしくは50万円のいずれか多い金額を超える部分については15%の割合です。税務調査の前に間違いに気付き、自ら修正申告を提出した場合には課税されません。
無申告加算税
期限内に申告書を提出しなかった場合に課される税金です。税の50万円までは15%、50万円を超える部分については20%が課されます。ただし、税務調査の前に自ら申告し期限後申告と認められた場合には、5%に軽減されるため、遅れた場合はなるべく早く提出することが大切です。
不納付加算税
源泉徴収税額を期限までに納めなかった場合に課される税金です。収めるべき税の10%の割合で課されますが、税務調査の前に自ら納付すると5%に軽減されます。
重加算税
故意に隠蔽するなど悪質とみなされる場合に課される税金です。重加算税は他と比べても重い税金です。過少申告加算税や不納付加算税に代わり35%、無申告加算税に代わり40%の割合です。
青色申告の承認の取消し
税務調査の結果、青色申告の承認が取消されることもあるため注意が必要です。青色申告の承認の取消しは、法令に掲げられている事実および記帳状況などから総合的に判断されます。
帳簿書類の開示拒否や悪質な所得隠蔽などが、青色申告の承認の取消しとなり得る事由です。
取引業者への反面調査
税務調査を行い、「帳簿や現場だけでは確認できない」、「不自然な点が多すぎる」ケースでは会社関係者に反面調査を実施します。反面調査は抜き打ちで行われるため、取引先に多大な迷惑をかける可能性が高いでしょう。税務調査の途中で銀行や取引先に向かうことも十分にありえます。
帳簿に不備があったり、調査に対して非協力的だったりすると反面調査になる可能性が高くなることも。そのため冷静に対応し、書類の開示を求められた際には応じるようにしましょう。
税務調査の結果に不満がある場合どうする?
税務調査の結果に不満がある場合は、再調査の請求を行うことが可能です。さらに再調査が認められない場合、審査請求を行えます。
再調査の請求
税務調査の結果に不満がある場合は、はじめに再調査の請求を行います。再調査の請求とは、税務署長に処分の見直しを求める手続きのことです。処分があった日の翌日から3ヶ月以内に、税務署長(または国税局長)に再調査の請求書を提出します。
現行では再調査の請求をせず、直接審査請求を行えるため、再調査の請求が必要かどうかはケースバイケースといえるでしょう。
審査請求
再調査の請求を行ったものの主張が認められなかった場合は、税務調査の審査請求が可能です。再調査決定書の謄本の送達があった日から1ヶ月以内に、審査請求書を国税不服審判所長に提出する必要があります。
なお再調査の請求を経ずに直接審査請求となった場合は、処分を知った日の翌日から3ヶ月以内に手続きを行わなければなりません。原則、1年以内に裁決がなされます。
訴訟
税務調査の審査請求において主張が認められなかった場合、課税処分などの取り消しを求めて裁判所に取消訴訟の提起が可能です。裁決を知った日から6ヶ月以内に、管轄の地方裁判所に訴状を提出して手続きを行います。
長期にわたる裁判は避けられないでしょう。
税務調査を避けるための3つの対策
可能であるならば税務調査を避けたいという方も多いでしょう。税務調査を完全に避けることは難しいですが、確率を下げる手段はあります。
いずれも日々の取組みによって行えるため、本日から取り入れてみてはいかがでしょうか。
日々の記帳を丁寧に行う
税務調査の確率を下げるためには、正しい税務申告を行うことが何よりも大切です。申告の正確性を担保するためにも、毎日丁寧な記帳を心がけましょう。
【記帳の際のポイント】
|
申告書はできるだけ詳細まで記入
申告書を作成する際にも注意すべき点があります。税務調査にも関係する申告書作成時には、次のことに気をつけましょう。
【申告書作成時のポイント】
|
書面添付制度を活用する
書面添付制度とは税理士が申告書の内容を確認し、信用性がある旨を証明した書類を添付できる制度です。書類添付制度を活用することによって、税務署の職員から見ても申告書に信憑性が生まれます。その結果、税務調査を受ける確率が減少して余計な手間がかからなくなるのです。
書面添付制度を活用するには、税理士への依頼が必須です。税理士が納税者に対して聞き取った内容を控え、書類の作成を行います。そのため納税者側は特段の手続きを行う必要はありません。
税務調査は冷静な対処が大事!税理士に頼ろう
税務調査の際に最も重要なポイントは、日頃から適切な処理を心がけて税務申告を正しく行うことです。日頃の記帳を丁寧に行っていたり、正しい内容を申告したりしていれば、税務調査を過度に恐れる必要はありません。
税務調査の連絡が来た段階で顧問税理士に相談して、連携を取りながら必要書類を揃えたり、質問回答の準備を進めたりするなどの対策を進めていきましょう。
また顧問税理士がいない場合は、税理士に相談を依頼するのがおすすめです。事前の準備から当日の対応まで、豊富な知識と経験に基づいたサポートが受けられます。
税務調査に適切に対処し、気後れすること無く事業を推進していきましょう。
監修税理士からのコメント
京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台
ミツモアで税理士を探そう!
税理士とのお付き合いは、そのときだけのものではなく、長期間に渡るものです。だからこそ、費用だけでなく、相性や対応の誠実さも、事前に十分に確認しておきたいですね。
そんな税理士選びにおすすめなのが、全国の税理士が登録しているマッチングサイト「ミツモア」です。地域と依頼したい内容に応じて、まずは見積もりが確認できます。その後、メッセージでのやりとりで担当業務の範囲やオプションなどを確認できるので、面談するのと同じように、税理士の人柄が見えてきます。
簡単!2分で税理士を探せる!
ミツモアなら簡単な質問に答えていただくだけで2分で見積もり依頼が完了です。
パソコンやスマートフォンからお手軽に行うことが出来ます。
最大5件の見積りが届く
見積もり依頼をすると、税理士より最大5件の見積もりが届きます。その見積もりから、条件にあった税理士を探してみましょう。税理士によって料金や条件など異なるので、比較できるのもメリットです。
チャットで相談ができる
依頼内容に合う税理士がみつかったら、依頼の詳細や見積もり内容などチャットで相談ができます。チャットだからやり取りも簡単で、自分の要望もより伝えやすいでしょう。
税理士に依頼するならミツモアで見積もり依頼をしてみてはいかがでしょうか?
この記事の監修税理士
京浜税理士法人 横浜事務所 - 神奈川県横浜市青葉区青葉台