土地や家屋など不動産の所有者は、固定資産税を納付しなければなりません。
固定資産税の納付には期限が設けられており、滞納すると延滞金を追加で支払う必要が出てきます。いつまでも滞納を続けていると、最悪の場合は大切な財産を差し押さえられてしまうことも。
固定資産税を滞納するとどうなるのか、延滞金や期限までに納付できない場合の対処法などをみていきましょう。
この記事を監修した税理士
安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
固定資産税を滞納すると延滞金がかかる【財産差し押さえの可能性も】
固定資産税を滞納すると、納期限の翌日から延滞金が発生します。また未納が長期にわたって改善されない場合、調査を経て財産が差し押さえられる可能性があります。差し押さえの対象となるのは土地や建物のほか、預貯金や給料などです。
固定資産税を滞納すると、自治体から督促状が送られてきます。それでも納税しなかった場合、書面や電話、訪問により納税の催促が行なわれます。
事情があって納税が難しいのであれば、市町村など各自治体で分割納付や減免・猶予などの相談が可能です。また課税に不服がある場合は申し立てることもできます。
滞納期間ごとの延滞金
延滞金は納期限の翌日から発生し、納付日までの期間で金額が決まります。延滞金の割合は年度ごとに定められ、令和4年1月1日から令和4年12月31日の場合、納期限の翌日から1か月を経過するまでの期間は「2.4%」、それ以後の期間は「8.7%」です。
つまり、納期限から1か月を過ぎたタイミングで延滞金の割合が高くなるのです。
延滞金の計算は以下の計算式で行ないます。
【延滞金の計算式】
{延滞した税額×日数A×(延滞金特例基準割合+1%)÷365日}+{延滞した税額×日数B×(延滞金特例基準割合+7.3%)÷365日} |
日数Aは納期限の翌日から1か月を経過するまでの日数であり、日数Bは納期限の翌日から1か月を経過した日から納付日までの日数となります。
財産が差し押さえられる流れ
度重なる督促を無視すれば、大切な財産は最終的に競売にかけられます。
【督促状発送からの一連の流れ】
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1.督促状・催告書の発送
固定資産税が納付期限まで納付されない場合、納付期限から20日以内に督促状を滞納者に発送します。
督促状の送付後も納付されない場合、市町村によっても対応は異なりますが、文書や電話、訪問などで数回の催告が行なわれるのが一般的です。
2.財産調査
度重なる催告に対しても納付されない、また連絡がない場合は、滞納者の財産や支払能力の有無を把握するため財産調査を実施します。
滞納者が会社に勤務し給与を受け取っている場合は、役所に「給与支払報告書」が提出されているため、容易に給与額や振込口座の特定が可能です。
金融機関の預貯金についても調査します。預貯金調査では照会を求める文書を金融機関に送付するだけで確認可能です。金融機関は照会に応じる義務があると法律で定められています。
3.財産の差し押さえ
財産の差し押さえでは、まず勤務先から支払われる給与と預貯金を差し押さえます。税金の滞納での差し押さえでは裁判所に申し立てを行なう必要はなく、行政処分として即差し押さえの実行が可能です。
売却される恐れがあるため不動産の差し押さえも当然行なわれますが、住宅ローンの残債が残っている場合は金融機関に抵当権が設定されており売却できません。
4.財産の競売
不動産を差し押さえられても固定資産税と延滞金の納付を拒んだ場合、競売にかけられます。公売によって換金し滞納金の支払いに充てるのです。
また、自営業で給与の差し押さえができない場合や預貯金口座に差し押さえるほどの金額がない場合には、自宅にある換金可能な物品を押収し競売にかけます。
車や骨董品、貴金物などを差し押さえ、公売オークションなどで売却して現金化されるのです。
期限までに納付できない場合の対処法
様々な準備をしていても、経済困難などでどうしても期限内に固定資産税を納付できない場合があります。そのまま放置するのではなく自治体窓口に相談するなど、なるべく早めの対応が大切です。
自治体の窓口に連絡する
まずは自治体の窓口に、どうしても固定資産税が支払えない現状を伝えましょう。
どのような事情があっても、固定資産税の納税義務は免除されませんが、支払い方法を分割にしたり、できるだけ負担の少ない方法を検討してくれる可能性はあります。課税している市町村の窓口にまずは相談してみましょう。
分納や徴収猶予の相談をする
固定資産税を滞納した場合、納付しなければ所有不動産を差し押さえ登記されます。資金繰りが厳しく即座に滞納金全額を用意できない場合には、分納での納付も可能です。
【通常の分納 | シンプルだが延滞税の免除がない】
通常の分納では書類の準備などはせず、役所の徴収職員との打ち合わせで分納計画を取り決めます。手軽でシンプルな方法のため、もっとも多くの滞納者が利用する方法です。
ただ、分納計画どおりに納付しなければ、弁明の機会を与えられずに資産の差し押さえが実行される場合もあるため注意しましょう。
また、滞納金に加えて延滞が解消されるまでの日数分の延滞金が必要になります。
通常の分納のメリット |
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通常の分納のデメリット |
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【納税の猶予 | 延滞税を大幅に免除できるが準備が大変】
すべての滞納者が利用できるわけではないですが、病気やケガ、会社の倒産などの事情で収入を確保できない場合に利用できるのが「納税の猶予(徴収猶予)」です。
〈納税の猶予の利用条件〉
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利用条件に該当すれば、条件によって50~100%の延滞税が免除されます。申請には「徴収猶予申請書」のほか必要書類を提出し、審査を受けなければなりません。
また、通常の分納から途中で納税の猶予に切り替えることも可能です。
納税の猶予のメリット |
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納税の猶予のデメリット |
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不動産を売却する
不動産を売却すれば、その不動産から固定資産税は発生しません。また、すでに発生している固定資産税についても、不動産の売却代金から支払えます。
ただし、住宅ローンを支払っている場合は簡単に売却できないため、金融機関に相談する必要があります。また売却した後の生活をどのようにするのか、具体的な計画を立ててから売却を行なうようにしましょう。
固定資産の価格が不服の時は申し立てを
固定資産税の計算は、その対象となる土地や建物の評価額をもとに計算を行ないます。その評価額が高くなるほど固定資産税は高くなるのです。
仮に今の評価額が高すぎると感じるのであれば、申し立てを行なって評価額の見直しを求められます。ただし、申し立てを行なったからといって必ず評価額や税額が減少するわけではありません。
固定資産税を滞納して差し押さえられた時の対処法
万が一、固定資産税を滞納して財産が差し押さえられた時は、返済計画について早急に相談しましょう。滞納分の固定資産税をすべて払わない限り、差し押さえは基本的に解除されません。
返済計画を自治体と相談する
滞納した固定資産税は、時間がかかっても返済しなければなりません。返済計画について自治体の担当者に相談し、できるだけ無理のない返済方法を考えていきましょう。どのような事情で納税できずに苦しんでいるのか、正直に話すことが大切です。
換価の猶予を利用する
納税の猶予の利用条件に該当せず、すでに財産を差し押さえられている滞納者が利用できる分納方法です。
「換価」とは売却のこと。認められれば差し押さえられた財産の売却を1~2年止められるほか、換価の猶予期間中の延滞税の2分の1が免除されます。
ただ、認められる可能性が低く、必ずしも利用できるとは限りません。
換価の猶予のメリット |
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換価の猶予のデメリット |
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一時的に何とかしてお金を工面する
お金を工面し、納税資金を準備するという方法です。どこから調達したお金であっても、納税を済ませればその後に延滞金が発生したり、財産を差し押さえられたりはしません。
そこで、滞納して差し押さえを受けるよりは良いだろうと考えて、親戚の人にお金を借りたり、消費者金融を利用したりする人もいます。
この時注意しなければならないのは、借入れしたお金を返済できなくなれば、やはり遅延利息が発生したり差し押さえを受けたりする可能性があることです。
特に消費者金融を利用すると、固定資産税の延滞金より高い利率で延滞利息が発生する可能性もあるため、注意しましょう。
固定資産税の滞納解消の注意点
固定資産税の滞納解消に関して、知っておきたい注意点を解説します。
自己破産、債務整理を行なっても免責されない
固定資産税を含めた各種税金は、自己破産や債務整理をしても免責されません。少しずつでも分割での納付が求められ、完納するまでは請求され続けます。仮に、不動産を手放していても同様です。
時効で納付を乗り切るのは現実的ではない
固定資産税の滞納には時効があり、納付期限から5年を経過した場合に消滅します。しかし、民法第147条の規定によって時効は中断できると定められており、時効で納付を乗り切ろうという考えは現実的ではありません。
- 請求
- 差し押さえ・仮押さえまたは仮処分
- 承認
5年が経過しても上記の理由によって、時効の中断の翌日から起算した5年後が新たな時効として設定されます。
財産が差し押さえられている場合は上記の条件に該当するわけですから、時効をあてにして納付しないのは無駄な抵抗と言わざるを得ないのです。
固定資産税の滞納を防ぐ早めの行動を
固定資産税を滞納すると、延滞金のほか大切な財産を差し押さえられる場合もあります。固定資産税を払えない事態に陥ってしまった場合、早めに役所に相談することが大切です。
延滞期間が長くなるほど延滞税も膨れ上がるため、滞納の可能性が生じた段階での早めの行動を心がけましょう。
監修税理士からのコメント
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この記事の監修税理士
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