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償却資産の固定資産税とは?対象資産と申告、計算方法

最終更新日: 2024年06月28日

「償却資産税と固定資産税の違いは?」「どのくらい納める必要があるの?」といった疑問をお持ちではありませんか。

償却資産税は、固定資産税のうち償却資産に課される税金です。減価償却の対象になる機械や器具などに1.4%の税率が課されます。

本記事では、償却資産税の対象資産や計算方法、申告方法を解説します。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

 

償却資産の固定資産税とは

償却資産の固定資産税とは

償却資産税は償却資産に課される固定資産税の一種です。事業用のパソコンや机、減価償却の対象になる機械、工具器具、備品などに市区町村から1.4%の税率が課されます。

厳密には償却資産税という税金はなく、土地や建物に課される固定資産税と区別するために用いられています。

毎年1月1日時点に所有している事業用の償却資産の評価額に対して課税され、1月末までに市区町村に申告する必要があります。

【種類別&事業別】主な償却資産の一覧表

償却資産とは、1年以上の長期間にわたって使用できる取得原価が10万円以上の車両や機械装置、備品などです。

「事業のために使用できる」資産が対象となるため、休憩室に設置してある冷蔵庫やテレビなどの間接的に事業に使用される資産も対象です。

また現在使用していない遊休資産や、未稼働の資産も事業に使用できる状態であれば対象になります。

資産種類別 償却資産の例

建物附属設備
  • 電気設備(照明設備を含む)
  • 給排水設備
  • 昇降機設備(エスカレーターやエレベーター)
  • 受変電設備など
構築物
  • 門扉
  • 看板などの広告設備
  • 駐車場のアスファルト舗装など
船舶
  • 客船
  • 貨物船
  • 遊覧船
  • 小型ボートなど
航空機
  • 飛行機
  • ヘリコプター
  • グライダーなど
車両及び、運搬具
  • フォークリフト
  • トロッコ
  • 自動車税や軽自動車税の対象のならない車両など
工具・器具及び備品
  • 事務机
  • 応接セット
  • 電話機
  • コピー機
  • テレビ
  • 冷蔵庫
  • 冷暖房器具(ビルトイン以外)など
機械及び装置
  • 食品・金属等の製造加工機械
  • 土木建築機械
  • 太陽光発電設備など

業種別 償却資産の例

各業種に共通するもの
  • パソコン
  • 電話機
  • コピー機
  • 応接セット
  • テレビ
  • 冷蔵庫
  • 金庫
  • 看板など
小売業
  • 陳列棚
  • 商品陳列ケース
  • 自動販売機など
クリーニング業
  • 洗濯機
  • 乾燥機
  • 脱水機
  • プレス機など
飲食業
  • 接客用の家具や部品
  • レジスター
  • 厨房設備など
医院
  • X線装置や電気血圧計などの医療機器
  • レセプト用事務機器
  • 待合室用椅子など

課税対象外となる注意すべき資産

固定資産税の課税対象となる償却資産は原則として減価償却資産に該当するかどうかで判断します。

減価償却資産とは、所得税や法人税の計算をする際に減価償却費を計上する資産です。ただし以下の資産は課税対象となりません。

【償却資産税の課税対象とならない資産】

  • 営業権や商標権、ソフトウエアなどの無形固定資産
  • 取得価額が10万円未満で購入したときに費用処理したもの
  • 取得価額が20万円未満の資産のうち3年間で均等償却を行なう一括償却資産

無形固定資産は減価償却費を計上しますが、償却資産には該当せず固定資産税の対象外です。

少額の資産は上記の処理を行なわず、減価償却費を計上する場合が課税対象となるので注意が必要です。

また中小事業者の特例を適用し、一括で費用処理した30万円未満の少額減価償却資産も償却資産税の対象になります。

償却資産にかかる固定資産税の計算方法

“償却資産税”の計算方法
(画像提供:PIXTA)

償却資産にかかる固定資産税は以下の3つのステップで計算できます。

  1. 評価額を求める
  2. 課税標準額を求める
  3. 償却資産税の税額を求める

1.評価額を求める

評価額は「前年に取得した資産」と「前年以前に取得した資産」で計算方法が異なります。

ただし共通して償却資産の耐用年数を計算に用いるので、以下のリンクから事前に確認しておきましょう。

参考:耐用年数表|国税庁

前年中に取得した資産の評価額の計算方法

減価残存率=1ー(耐用年数に応じた減価率×1/2)

評価額=取得原価×減価残存率

前年中に取得した償却資産の減価残存率は、取得した月にかかわらず半年間償却したとみなして減価率に1/2をかけて計算します。

この減価残存率は計算しなくても各市町村のホームページ等から確認することが可能です。

以下のURLは東京都主税局が作成した減価残存率の一覧表です。耐用年数をもとに「前年中取得のものA」の減価残存率を確認してみてください。

参考:減価残存率表|東京都主税局

前年以前に取得した資産の計算方法

減価残存率=1ー耐用年数に応じた減価率

評価額=前年度評価額×減価残存率

前年以前に取得した資産は取得価額ではなく、前年度の評価額を用いて計算する点に注意が必要です。

また前年以前に取得した資産についても、市区町村のホームページ等で減価残存率を調べられます。東京都主税局が作成した減価残存率の一覧表で、耐用年数をもとに「前年前取得のものB」の減価残存率を確認してみてください。

参考:減価残存率表|東京都主税局

2.課税標準額を求める

償却資産ごとの評価額の計算ができたら、前年中と前年以前に取得した償却資産の評価額を合計して税額計算の基礎となる課税標準額を求めます。

課税標準額=前年中に取得した資産の評価額+前年以前に取得した資産の評価額

課税標準額を求めたら1,000円未満の金額を切り捨てる処理を行ないましょう。

3.償却資産税の税額を求める

課税標準額を求めたら償却資産にかかる固定資産税の税率1.4%をかけて償却資産税額を計算します。

税額=課税標準額×1.4%

計算した税額の百円未満を切り捨てた金額が実際に納税する金額です。

償却資産税には土地や家屋に関する税金が含まれていませんが、土地や家屋も固定資産税の税率は変わりません。

そのため償却資産の課税標準額に土地や家屋の課税標準額を足し、1.4%をかけることで固定資産税の総額を求められます。

償却資産税算出シミュレーション

以下の条件の場合の償却資産税額の計算シミュレーションを行ないます。

①前年中に取得した機械 取得原価50万円 耐用年数10年

②2年前に取得した備品 取得原価30万円 耐用年数8年

1.評価額の計算

①の評価額

前年中に取得した耐用年数10年の資産は、減価残存率0.897なので評価額は448,500円になります。

①の評価額=50万円×0.897=448,500円

②の評価額

②の評価額を求めるためには、前年の評価額を求めなければなりません。前年中に取得した耐用年数8年の資産は、減価残存率0.875なので前年評価額は262,500円になります。

②の前年評価額=30万円×0.875=262,500円

前年の評価額を求めたら、前年以前取得の耐用年数8年の減価残存率0.750を用いて評価額を計算します。

②の評価額=262,500円×0.750=196,875円

2.課税標準額の計算

課税標準額=①の評価額+②の評価額=448,500円+196,875円=645,375円

千円未満を切り捨てて課税標準額は645,000円です。

3.税額の計算

税額=645,000円×1.4%=9,030円

百円未満を切り捨てて9,000円が税額になります。

特例が適用される資産がある!

償却資産には特例によって課税標準額が減額される制度があります。現在実施されている主な特例制度は「生産性向上特別措置法に係る課税標準の特例」「経営力向上設備に係る課税標準の特例」の2つです。

中小企業等経営強化法に係る課税標準の特例

資本金1億円以下などの条件を満たす中小事業者が導入した先端設備等について、課税標準額が3年間減額される制度です。市町村の判断により課税標準額の減額幅は1/2から全額に設定されています。

経営力向上設備に係る課税標準の特例

中小事業者が国の認定を受けた「経営力向上計画」に基づき取得した機械や建物附属設備などについて、3年間課税標準額を1/2減額する特例制度です。

なお、この特例は平成31(2019)年3月31日までに取得した資産が対象です。経営力向上計画の認定申請は平成31(2019)年4月1日以降も引き続き可能ですが、期限を過ぎて取得した資産は特例措置の対象外となりますのでご注意ください。

償却資産申告の流れ

償却資産申告の流れ

償却資産税は土地や家屋などの固定資産税とは異なり、毎年償却資産の申告が必要になります。

また納税者が申告した償却資産の情報をもとに市町村が納税額を決定する賦課課税方式のため、必要に応じて課税対象となる評価額が正しいかどうかなどの確認も必要です。

【償却資産税の納付までの流れ】

  1. 申告書提出(~1月末)
  2. 価格等の決定及び課税台帳への登録
  3. 課税台帳に登録した旨の公示
  4. 課税台帳の閲覧
  5. 審査の申出
  6. 税額の算出及び納税通知書の交付(課税)
  7. 審査請求
  8. 納期

1.申告書提出(~1月末)

1月1日時点で償却資産を保有している場合は、その年の1月31日までに資産が所在する市町村に申告書を提出しなければなりません。

償却資産の保有状況を以下の2種類の方法のどちらかで市区町村に申告します。

一般方式

前年中に増加または減少した資産(初年度は全ての資産)を申告する方式です。評価額の計算は申告をもとに市町村で行ないます。

電算方式

1月1日時点で保有している全ての資産を評価額まで計算して申告する方式です。

電算方式は固定資産管理のソフトウエアなども必要で手間がかかることから、中小事業者は一般方式での申告を選択する場合が多くなります。

2.価格等の決定及び課税台帳への登録

償却資産申告書の提出を受けた市町村は、申告された内容をもとに償却資産課税台帳に価格等の情報を登録します。

なおこの情報は申告に基づくものだけでなく、実地調査が行なわれた資産などについてはその調査に基づいた価格等の登録が行なわれます。

3.課税台帳に登録した旨の公示

償却資産課税台帳に価格等の全ての情報を登録したとき、市町村長はその旨を公示しなければなりません。これは土地や家屋を固定資産課税台帳に登録した場合と同様の情報開示制度です。

4.課税台帳の閲覧

償却資産課税台帳に価格等の登録が公示された日から課税台帳を閲覧できます。閲覧の申請は各市税事務所などで行なうことができ、所有者や納税管理人、代理人等が閲覧可能です。

5.審査の申出

償却資産課税台帳に登録されている評価額に不服がある場合は、固定資産評価審査委員会に審査の申出を行なうことができます。

固定資産評価審査委員会は市町村に設置されている行政委員会の一つで、行政機関である市町村とは独立した中立的な立場から申し立て内容について審査を行なう機関です。

この審査は、課税台帳に登録した旨の公示があった日から申出を行なうことができ、納税通知書を受け取った日から3か月後までが申出の期限となります。

6.税額の算出及び納税通知書の交付(課税)

市町村が課税台帳の評価額に基づいて固定資産税を算出した後、納税義務者へ納税通知書が交付されます。納税通知書の交付時期は市町村によって異なりますが、例年4月下旬から6月上旬頃の交付が一般的です。

償却資産は課税標準額が150万円未満(免税点)の場合、固定資産税が課されないため納税通知書も交付されません。ただし課税標準額が150万円未満の場合であっても、償却資産を保有している限り償却資産の申告は必要です。

7.審査請求

納税通知書の交付を受けて、その課税内容などに不服がある場合は審査請求も可能です。審査請求は課税を行なった各市町村長へ行ないます。

通常は納税通知書を受け取った日の翌日から3か月(市町村によっては2か月)以内に審査請求しなければなりません。

8.納期

納税通知書を受け取った償却資産にかかる固定資産税は、基本的に4回に分けて支払うこととなります。

納税通知書の交付や税金の納期は市町村によって異なります。市町村ごとの納期については、ホームページや納税通知書での確認が必要です。

東京都では6月、9月、12月、翌年2月が納期限として定められています。

申告漏れがあるとどうなる?

償却資産は地方税法に基づいて市町村が実地調査を行なうこともあります。

申告漏れがあった場合は実地調査に基づいて追加申告を行なうこととなり、過年度に遡って課税されるだけでなく、延滞金も課される可能性があるため注意が必要です。

正当な理由もなく申告しなかった場合や、虚偽の申告を行なった場合などの悪質なケースでは、懲役刑などの罰則や過料と呼ばれる罰金を科される可能性もあります。

固定資産税Q&A

固定資産税Q&A

償却資産税は原則として保有している事業者の申告に基づいて計算されるため、土地や家屋の固定資産税とは処理面で大きな違いがあるのも事実です。

ここからは、主に償却資産の処理で発生する固定資産税に関する疑問をQ&Aの形式で紹介します。

消費税の扱いはどうすればいい?

固定資産の取得価額において、消費税の扱いは資産を保有している事業者の経理方式によって決まります。税込経理方式を採用している場合は税込価格で取得価額を計算し、税抜経理方式を採用している場合は税抜価格での計算です。

耐用年数が過ぎても課税の対象?

耐用年数を過ぎた固定資産でもスクラップなどとして処分できる価値があり、これを残存価額と言います。

法人税や所得税では、残存価額の制度が廃止されたため備忘価額の1円まで償却できます。しかし固定資産税においては取得価額の5%が下限の残存価額となっており、この金額を超えて償却することは不可能です。

そのため耐用年数を超えた資産であっても、事業のために使用できる状態であれば固定資産税がかかります。

リースの場合はどうすればいい?

一般的なリース契約では、リース資産の所有権は貸主であるリース会社にあります。そのためリース資産にかかる固定資産税も使用者ではなく、所有者であるリース会社が納めるのが基本です。

ただしリース期間満了後に所有権が使用者に移転する所有権移転ファイナンスリース取引などでは、使用者が実質の保有者とみなされるため使用者が固定資産税を支払うこととなります。

建物などに附属している設備にも税金がかかる?

建物などに附属している設備についても、家屋の税金に含まれていない場合は償却資産税がかかることもあります。

中でも太陽光発電設備は、家庭用以外の設備が基本的に固定資産税の対象です。家庭用の太陽光発電設備でも10kw以上で余剰電力を売電している場合などは、償却資産の申告が必要となります。

また家屋の内装や電気配線設備などは、家屋の一部として固定資産税を課されるものです。事業用に借りたテナントなどで別途内装工事や、電気配線設備などに関する支出を行なった場合は「特定附帯設備」として償却資産の申告が必要です。

固定資産税は税理士に相談しよう!

固定資産税は税理士に相談しよう!
(画像提供:PIXTA)

固定資産税は償却資産の申告が必要な上、市町村が決定した税額の検証なども容易にはできません。これは固定資産税だけに限った事ではありませんが、税金は複雑な仕組みのものが多いため何かを処理するためには大変な労力を要するものです。このようなときは、税金のプロである税理士に相談することも選択肢の一つです。

固定資産税の算出が正確にできる!

償却資産の申告は毎年行なわなければなりませんが、その処理は事業規模が大きくなればなるほど手間がかかるものです。このような場合は、税金の専門家である税理士に依頼することで、申告までの全ての処理を依頼することができます。

費用はかかりますが、償却資産の申告や決定された固定資産税を正確に検証できることは大きなメリットです。

監修税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

償却資産税の申告と計算はかなり複雑になります。 また、150万円未満の固定資産しか有さず、税金が課されない場合も申告義務はありますので、申告をきちんと行うようにしましょう。 分からない場合は税理士に確認するようにしましょう。

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この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・CFP🄬)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。