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パートやアルバイトに対しても源泉徴収票の発行は必要? 源泉徴収票の作成方法についても解説

最終更新日: 2021年03月29日

パートやアルバイトを雇った際にも、正社員を雇用した場合と同じように、源泉徴収票を発行したり年末調整をしたりする必要があるのでしょうか。

ここでは、パートやアルバイトへの源泉徴収票発行の要否や源泉徴収票の書き方、退職者への注意点などについて解説します。

この記事を監修した税理士

EMZ国際投資税理士法人 - 東京都港区六本木

源泉徴収とは

源泉徴収とは
源泉徴収とは

源泉徴収とは、会社などが給与を支払ったり、報酬を支払ったりする際に、あらかじめ所得税分を差し引いて支払う仕組みのことです。この差し引いた所得税は会社が預かり、従業員の代わりに納税しなければなりません。それでは、源泉徴収の仕組みについて、具体的に見ていきましょう。

源泉徴収の仕組み

源泉徴収で差し引かれたお金は、当然のことながら、会社の儲けになるわけではありません。差し引いたお金は、納税に備えて会社が一時的に預かっているだけだということを、まずは理解しておいてください。

本来、税金は所得を得た人が支払うべきものです。しかし、国民の大半をしめるサラリーマンなどが一人ひとり確定申告をするとなると、税務署は大混雑してしまいますし、チェックをするのも困難でしょう。また、仮にきちんと納税されなかった際に、徴収するのも大変です。そのため、一定の給与所得者については、本人に代わって会社がまとめて納税をすることになっています。

そして会社がまとめて納税をするために、給与から差し引く形で所得税相当額を預かる制度が、源泉徴収なのです。

年間の所得が103万円以下であれば所得税はかからない

とはいえ、給与を支払う場合であっても、その給与の額が一定の額以下であれば、源泉徴収は必要ありません。なぜなら、年間の給与収入が103万円以下であれば、そもそも所得税は課税されないためです。所得税が課税されない以上、会社が所得税相当額を預かる必要はありません。

この103万円とは、給与収入1,625,000円までの場合の給与所得控除額の550,000円と、合計所得金額2,400万円以下の場合の基礎控除額の480,000円を合計した金額です。なお、この内訳は従来、給与所得控除額が650,000円、基礎控除額380,000円の合計だったのですが、これが改正され、令和2年分から新しい控除額が適用されています。

このような理由から、年間の給与が103万円以下であるアルバイトの場合には源泉徴収は必要ありません。

副業は本業と源泉徴収税額が異なる

それでは、会社は、アルバイト等の給与から、どのくらいの金額を源泉徴収をすれば良いのでしょうか。これは、国税庁が公表している「給与所得の源泉徴収税額表」で決められていますので、それに従って金額を算定することとなります。

「甲」と「乙」に分かれていますが、一社のみから給与を得ている人の場合には、この表の中の「甲」欄の金額を源泉徴収すれば問題ありません。一方で、他に本業がある場合には、表の中の「乙」欄の金額を源泉徴収します。

一般的には、「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」が出されている会社が本業であり、出されていない会社が副業であると考えると良いでしょう。

甲の場合と乙の場合とでは、乙の場合の方が源泉徴収をする額が高くなることが一般的です。これは、給与所得に対する税金が、所得が高くなるほど税率が高くなる累進課税を取っていることが理由です。また、甲に該当する場合には扶養親族等の数に応じて源泉徴収額が変動することに対して、乙に該当する場合には、扶養親族等の数で源泉徴収額は変わりません。

払いすぎた所得税を精算するための手続き

源泉徴収の額は、あくまでも所得税の額を仮計算した結果によるものです。ですから、年の途中で給与が変動したり、所得控除となる事項が生じた場合などには、源泉徴収をした額と実際に納付すべき所得税の額との間にずれが生じる可能性があります。このずれを調整する手続きが、年末調整と確定申告です。年末調整と確定申告の概要や、それぞれの手続きでそれぞれで修正できる内容は、主に次の通りです。

これらの手続きを行うことで所得税が精算され、払い過ぎていた場合には還付を受けることが可能です。

年末調整

源泉徴収をした額と実際に納付すべき所得税の額との間に生じたずれのうち、会社が年末時点で把握できたものについて調整するのが、年末調整です。この年末調整により、源泉徴収した額が実際の所得税の額よりも多かったのであれば、その多く徴収しすぎた分を従業員に返還します。一方で、仮に源泉徴収した額が実際の所得税よりも少ない場合には、その分を追加で徴収するわけです。

所得控除や税額控除のうち、年末調整で調整できるものには、次のものが挙げられます。年末調整のみですべての調整が完了するのであれば、従業員個々人の確定申告は必要ありません。

  • 基礎控除
  • 配偶者控除、配偶者特別控除
  • 扶養控除
  • 障害者控除
  • 寡婦(夫)控除
  • ひとり親控除
  • 勤労学生控除
  • 生命保険料控除
  • 地震保険料控除
  • 社会保険料控除
  • 小規模企業共済等掛金控除
  • 住宅ローン控除(2年目以降)

確定申告

一方、年末調整で調整できなかったずれについては、従業員個々が確定申告を行うことにより、調整します。確定申告が必要となるケースとしては、従業員が他にも不動産所得や事業所得など、確定申告が必要とされている他の所得がある場合のほか、確定申告でなければ受けられない控除を受けたい場合が挙げられます。

年末調整では調整できず、適用を受けたい場合に確定申告が必要となる控除は、次の通りです。

  • 医療費控除
  • 寄附金控除
  • 雑損控除
  • 住宅ローン控除(初年度)

日雇いバイトで源泉徴収の対象となる場合とは?

それでは、日雇いのアルバイトであっても、源泉徴収は必要なのでしょうか。結論をお伝えすれば、その日給が9,300円未満かどうかによって異なります。日給9,300円未満であれば原則として源泉徴収は不要である一方、これ以上であれば、たとえ日雇いのアルバイトであっても源泉徴収は必要です。

具体的な源泉徴収額については、国税庁の公表している源泉徴収税額表を確認してください。

また、日雇いであっても2か月を超えて継続して給与を支払う場合には計算方法が変わりますので、注意が必要です。

いずれにしても、「日雇いのアルバイトであれば源泉徴収が不要」ということではありませんので、誤解しないようにしましょう。

アルバイトに対する源泉徴収票の発行は義務?

アルバイトに対する源泉徴収票の発行は義務?
アルバイトに対する源泉徴収票の発行は義務?

それでは、アルバイトに対しての源泉徴収票の発行は必要なのでしょうか。「アルバイトであれば源泉徴収票を渡す必要はない」とか、「アルバイトであれば源泉徴収票はもらえない」と思っている方もいるようですが、実はそうではありません。アルバイトやパ―トに対してであっても、源泉徴収票の発行は必要なのです。

それでは、具体的に見ていきましょう。

源泉徴収票とは

源泉徴収票とは、1年間の源泉徴収と、年末調整の結果をまとめた用紙です。従業員がこれを見ることで、所得控除額や適用された控除の額、源泉徴収の額などがわかります。また、源泉徴収前の自分の給与の額もわかりますので、これを見ればいわゆる「年収」がわかるわけです。

従業員が源泉徴収票を使う場面は少なくありません。例えば、年末調整で受けられない控除を受けるなどの理由で確定申告をする際には、源泉徴収票が必須となります。ほかにも、従業員が住宅ローンを組んだりする際など、収入額の証明として、銀行から提示を求められることが通常です。

このように、源泉徴収票は、従業員にとって大切なものだと知っておきましょう。

パートやアルバイトに対しても源泉徴収票を発行する義務がある

源泉徴収票は、給与等を支払ったすべての人について作成し、交付することが義務付けられています。パートやアルバイトであれば源泉徴収票を渡す必要はないわけではありません。

また、給与が103万円以下などで源泉徴収が不要な人や、アルバイトを掛け持ちしていて、年末調整は他の勤務先で行うような場合であっても源泉徴収票の交付は必要ですので、誤解のないようにしておいてください。源泉徴収や年末調整が必要な人と、源泉徴収票の交付をすべき人は同じではないということです。

パートやアルバイト採用時には前職の源泉徴収票を提出してもらう

年の途中で入社した方がいる場合には、前職での源泉徴収票を提出してもらうようにしましょう。これは、その入社した方がアルバイトやパートであっても変わりはありません。なぜなら、前職の源泉徴収票がなければ、年末調整を適正に行うことができないためです。もし、前職の会社へ依頼しても源泉徴収票を発行してもらえない場合には、税務署へ相談してみましょう。

アルバイトで年末調整の対象となる人とならない人

アルバイトで年末調整の対象となる人とならない人
アルバイトで年末調整の対象となる人とならない人

ではアルバイトであっても、すべての人が年末調整の対象となるのでしょうか。実は、アルバイトの中には年末調整の対象とならない人も存在します。ここでは、どのような場合に年末調整が必要となり、どのような場合には不要となるのか、見ていきましょう。

なお、12月に行う年末調整の対象者について解説します。

年末調整の対象となる人

年末調整の対象となる人は、次の条件にすべて当てはまる人です。これらに当てはまれば、パートやアルバイトであっても源泉徴収が必要となります。

  • 年末時点で在籍していること
  • 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していること

年末調整の対象とならない人

一方で、年末調整の対象とならない人は、次のような人です。

  • 年末時点で在籍していない人
  • 「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を提出していない人
  • 2ヵ所以上から給与の支払いを受けており、他の給与の支払者が年末調整を行う人

アルバイトを掛け持ちしている人がいるような場合には、そのアルバイトがどの会社で年末調整を受けるのかについて、あらかじめすり合わせをしておくと良いでしょう。

年末調整の対象とならない場合は確定申告を行う

年末調整の対象とならない人は、原則として自分で確定申告をすることとなります。例えば他に不動産所得があるなど、確定申告で支払うべき税額がある場合には確定申告と納税は義務ですので、必ず行わなければなりません。
一方で、医療費控除などの控除を受けたい場合には、確定申告をすることで、納め過ぎた税金の還付が受けられます。

この確定申告の際に源泉徴収票が必要となりますので、たとえアルバイトであっても、源泉徴収票の交付は義務とされているのです。

アルバイトに発行する源泉徴収票の作成方法

アルバイトに発行する源泉徴収票の作成方法
アルバイトに発行する源泉徴収票の作成方法

それでは、アルバイトに発行する源泉徴収票は、どのように作成すれば良いのでしょうか。発行の時期や作成に必要なもの、そして実際に作成をする方法についてみていきましょう。

源泉徴収票の作成と発行の時期

源泉徴収票の発行には年末調整の結果を反映させる必要があるため、通常は年末調整の後に発行します。一般的には、12月の給与明細と一緒に交付する会社が多いでしょう。

源泉徴収票の作成に必要なもの

源泉徴収票は、年末調整の計算書類をもとに作成します。そのため源泉徴収票を作成するには、年末調整の計算書類が必要です。源泉徴収票を作成する前段階として年末調整が必要になると考えてください。

源泉徴収票の作成方法

源泉徴収票は、年末調整の計算書類からの転記のみで作成できます。年末調整をソフトで行なっているのであれば、源泉徴収票にも自動で転記されることが通常です。

源泉徴収票の再発行や退職者への発行に関する注意点

源泉徴収票の再発行や退職者への発行に関する注意点
源泉徴収票の再発行や退職者への発行に関する注意点

ここまでで、年末時点で在籍している人への源泉徴収票の発行について解説してきました。ここでは源泉徴収票の再発行や、年の途中で退職したアルバイトへの源泉徴収票の発行などについて解説します。

源泉徴収票の再発行は義務

アルバイトに対して源泉徴収票を発行した後に、「失くしてしまったので、再発行してほしい」と言われた場合には、会社は、源泉徴収票の再発行に応じなければなりません。再発行は所得税法上の義務となっており、再発行を拒否した場合には、法令違反となってしまいます。

面倒だからと言って断ったりすることのないよう、再発行は義務である旨を知っておいてください。

退職したアルバイトに対しても源泉徴収票は発行しなくてはならない

年の途中で退職をしたアルバイトなどがいる場合には、その時点で源泉徴収票を発行しなければなりません。年の途中で退職した人は、その後の状況により他の会社で年末調整を受けるか、確定申告を行いますが、その際に源泉徴収票が必要となるためです。

年末時点での源泉徴収票の発行は、年末時点で在籍をしている人に対して行いますが、年の途中で退職をした人がいる場合には、その時点で源泉徴収票の発行が必要となりますので忘れないようにしましょう。

パートやアルバイトに源泉徴収票を発行しなかった場合

パートやアルバイトに源泉徴収票を発行しなかった場合には、税務署からの行政指導が入る可能性がありますので、注意しましょう。

転職先での年末調整や確定申告など、源泉徴収票が必要となる場面は多く存在します。ですので、会社が源泉徴収票を発行してくれないと、パートやアルバイトとしては困ってしまうわけです。このようなとき、源泉徴収票をもらえなかったパートやアルバイトは、「源泉徴収票の不交付の届出書」を管轄の税務署へ提出し、対応を求めることができます。そして、この「源泉徴収票の不交付の届出書」が出されると、源泉徴収票を発行しない会社に対して、税務署から行政指導が入るわけです。

パートやアルバイトだからといって源泉徴収票を発行せずにいると、このような指導が入る可能性がありますので、源泉徴収票の発行義務を認識したうえできちんと発行するようにしましょう。

アルバイトへの源泉徴収票の発行は忘れず行いましょう

アルバイトへの源泉徴収票の発行は忘れず行いましょう
アルバイトへの源泉徴収票の発行は忘れず行いましょう

アルバイトやパートだからといって、源泉徴収票の発行が不要なわけではありません。また、一定の場合には年末調整も必要です。行政指導を受けてしまうことのないよう、源泉徴収についての義務などを正しく認識し、きちんと対応するようにしましょう。

この記事を監修した税理士

EMZ国際投資税理士法人 - 東京都港区六本木

東京港区で、11年目を迎えた会計事務所です。公認会計士2名・税理士2名が所属しています。個人、法人問わず、税務顧問を始め、確定申告、 経理アウトソーシング、会社設立、相続、など会計事務所を主軸に会計・税務のみに留まらないサービスをお客様にお届けしております。海外財産、海外不動産、仮想通貨など、複雑な申告もお任せください。

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