法人税の申告・支払時期はいつでも自由な時にできるわけではありません。法人税の申告・支払時期は確定申告だけでなく中間申告もあり、忘れていると附帯税が発生するかもしれません。今回は、法人税の確定申告・中間申告や支払時期についてご紹介します。
この記事を監修した税理士
多田紘大税理士事務所 – 兵庫県
法人税の申告・支払い
法人税の納付と言えば「確定申告」を想像するかもしれませんが、法人税の納付は確定申告だけではありません。前事業年度の確定法人税額によっては、確定申告とは別に「中間申告」が必要になります。申告が間に合わなかったり、支払時期が過ぎるとペルナルティとなる追加の税金が発生することがあります。
確定申告を行う
法人税の納付には確定申告が必要で、個人の所得税のように申告と納付期限が決まっていません。法人税の申告・納付期限は一定の期間が定められており、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内となっています。申告・支払時期が法人毎に違うので、忘れないように注意しましょう。
中間申告を行う
法人税は前年度の確定法人税額が一定の金額を超えると、中間申告が必要になります。確定申告の申告方法は1つですが、中間申告の申告方法は2種類です。2種類の申告方法にはメリット、デメリットがあり、申告・納付金額が変わってきます。2種類の申告方法を理解して、自社にあった方法を選択しましょう。申告方法の具体的な内容はこの後の「中間申告の時期・注意点」で詳しく説明します。
申告・納付が間に合わないとペナルティ
期限内に申告・納付が間に合わずに過ぎた場合には、ペナルティとして追加の税金が課せられます。実際に平成29年度の法人税に対する加算税は88,001件、金額にすると28,093百万円です。計算すると1件当たり、約32万円の追加の税金を支払っていることになります。
確定申告の時期・注意点
個人の所得税の確定申告は毎年3月15日までと決まっていますが、法人税の確定申告は法人によって違います。3月31日が申告・納付期限の法人もあれば、5月31日が申告・納付期限の法人もあります。法人税の申告・納付の時期は事業年度が関わってくるので、具体的に確認しましょう。
申告・納付の時期
法人税の申告・納付期限は、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内です。言い換えれば、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に、申告と納付の両方を完了させなくてはいけません。例えば3月末決算の場合、事業年度終了の日は3月31日、申告と支払時期は5月31日までです。3月末決算の法人を例にすると、申告・納付の時期は以下のようになります。
法人事業税や法人住民税も法人税と同様
法人の確定申告は法人税だけでなく、法人事業税や法人住民税(法人都道府県民税・法人市民税)の申告と納付も必要です。法人事業税や法人住民税の申告・支払時期は法人税と同様に、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内です。申告書の提出先と、納付先が違うので注意しましょう。
税金の種類 | 提出先・納付先 |
法人税
地方法人税 |
国(税務署) |
法人都道府県民税
法人事業税 地方法人特別税(※1) |
都道府県 |
法人市民税 | 市町村 |
※1:「地方法人特別税」は、2019年10月1日以後に開始する事業年度から「特別法人事業税」に置き換わります。そのため、2019年9月30日までに開始する事業年度についてのみ「地方法人特別税」として納税するので注意が必要です。また、税の位置づけは国税ですが都道府県が徴収することとなっており、法人事業税と合わせて納税します。
申告期限延長の特例を利用する条件
法人税の申告・納付は、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内ですが、それ以前に法人税の申告書は株主総会で承認された決算を基に作成しないといけません。
3月決算の大企業は、6月に株主総会が開催されることが多く、株主総会を待っていると事業年度終了の日の翌日から2ヶ月を超えてしまいます。しかし株主総会が開催されないと、株主総会で承認された決算ではありません。そんな時には法人税の確定申告書の提出期限を1ヶ月延長することができます。
確定申告書の提出期限を延長するには「申告期限の延長の特例の申請書」を、納税地の所轄税務署に提出する必要があります。延長の特例の申請書は一度提出したら大丈夫で、延長を受ける度に提出をする必要はありません。大企業の多くで延長が使われており、延長できるのは以下のケースがあります。
・会計監査人の監査を受けなければならない
・会計監査人の監査は不要だが、定款で株主総会が事業年度末日の翌日から3ヶ月以内に開催できる旨を定めている ・災害その他やむを得ない状況で決算が確定しない |
申告期限延長の特例の注意点
申告期限の延長の特例には忘れてはいけない注意点があり、それは申告期限は延長されるが納付期限は延長されないことです。納付期限は延長されないので、2ヶ月以内に納付をしないと利子税が課税されます。利子税を課税されないようにするためには、納付期限までに見込納付をする必要があります。
また、法人都道府県民税、法人事業税、地方法人特別税、法人市民税については、別途届け出を行わないと申告期限の延長は認められないことにも注意しましょう。
通常の支払時期である、事業年度終了の日の翌日から2ヶ月以内に概算で税金を「見込納付」します。見込納付はあくまで見込みなので、延長後の確定申告の期限までに、見込納付した差額と確定した税金に差額があれば精算します。見込納付が少なければ納付、見込納付が多ければ差額が後日還付されます。
延長した場合は以下のようなスケジュールになります。
中間申告の時期・注意点
法人税には確定申告とは別に中間申告があります。中間申告は法人であれば、全部の法人が該当するのではなく、一定の法人税を超えると発生します。確定申告の申告方法は1つですが、法人税の中間申告の申告方法は2種類あります。どちらの方法で申告をしても申告・支払時期は同じです。
前事業年度の年間法人税が20万円を超える場合に必要
法人税の中間申告は前事業年度の年間の確定法人税額が20万円を超える場合に必要になります。中間申告は簡単に言うと、中間に納付する法人税です。
事業年度開始から6ヶ月経過時点の法人税を事前に納付するので、事業年度が6ヶ月以下の法人は中間申告はないです。また前事業年度の確定法人税額で判定するので、前事業年度がない設立初年度の法人にも中間申告はありません。
予定申告方式
予定申告方式は、法人税の中間納付の金額を前年度の法人税額を基に計算する方法です。
予定申告による中間納付額 = 前年度の確定法人税額 ÷ 前事業年度の月数 × 6 |
計算式は上記になりますが、計算途中の端数は切り捨てされるので注意しましょう。
例えば前年度の確定法人税額が200万円、前事業年度の月数が12ヶ月の場合、上記の計算式に当てはめると200万円(前年度の確定法人税額)÷12ヶ月(前事業年度の月数)×6=100万円と計算したくなりますが、要注意です。
計算途中の端数は切り捨てされるので、具体的には、200万円÷12ヶ月=166,666.666….端数が切り捨てされ166,666円です。この166,666円に6をかけるので166,666円×6=999,996円になります。計算結果後の100円未満の端数は切り捨てされるので999,900円が予定申告方式による納付金額です。
予定申告方式は、前年度の確定法人税額を基に計算するので申告が簡単です。しかし前年度の確定法人税額が基になっているので、今期マイナスになっていても前年度に基づいた税金を納付する必要があります。
仮決算方式
仮決算方式は、事業年度開始から6ヶ月経過する日までの6ヶ月分を1つの事業年度とみなして仮決算し申告する方法です。
仮決算と言っても通常の決算とあまり違いがなく、税務署に申告書を提出する時には決算書・申告書・勘定科目内訳書などの書類を作成するので手間がかかります。その代わりに、当期半年分の実績に基づいた申告になるので、当期上半期の利益が大幅に下がった時には納税額が減ります。
また、前年度の確定法人税額が20万円以下、もしくは仮決算方式によって算定した中間納付額が予定申告方式によって算定した中間納付額を上回る場合、仮決算方式を採用することができない点にも注意が必要です。
一年間で支払う法人税額は同じ
中間申告は予定申告方式と仮決算方式の2種類の方法がありますが、どちらの方法で申告・納付をしても一年間で支払う法人税額は同じです。例えば中間申告を予定申告方式で申告・納付し、確定申告でマイナスになった場合、法人税は0円なので予定申告で納付した税金は還付されます。
一方、当期上半期の利益がマイナスで仮決算方式による中間申告をした場合、中間申告の納付額は0円です。その後、確定申告でもマイナスになった場合、法人税は中間申告の時と同様に0円です。予定申告方式と仮決算方式どちらの方法でも一年間で支払う法人税額は同じです。
申告・納付の時期
中間申告の支払時期は、事業年度開始の日から6ヶ月経過した日から2ヶ月以内です。例えば3月決算法人の場合、事業年度開始から6ヵ月経過した日から2ヶ月以内は11月30日になります。3月決算の法人を例にすると、中間申告・中間納付は以下のようになります。
中間申告をしないと延滞税がかかる
中間申告を忘れて申告しなかった場合、予定申告方式による申告書の提出があったものとみなされます。そのため、中間申告をしなくても無申告加算税が課せられることはありません。
中間申告を忘れていても、申告書の提出はあったものとみなされますが納付は別です。納付期限が過ぎても納付をしていなかった場合は、延滞税などが課せられることがあるので注意しましょう。
附帯税について
法人税の確定申告、中間申告には申告期限と納付期限があります。日本の法人税は、納税者自らが申告・納税をする申告納税制度です。この制度を維持するために、期限内に申告をしなかった場合や期限内に納付をしなかった場合には、ペナルティが設けられています。
期限内に申告・支払ができないと追加の税金がかかる
申告期限・納付期限内に申告や支払ができない場合は、ペナルティとして追加の税金が課せられます。この追加の税金のことを附帯税と言い、附帯税には「延滞税」と「加算税」があります。名前が似ている税金があるので、違いを確認しましょう。附帯税には「利子税」も含まれますが、ここでは説明を省きます。
延滞税とは
延滞税は、納付期限までに納付をしなかった場合に課せられる税金で、具体的には以下の場合に課せられます。
・申告などで確定した税額を法定納期限までに完納しないとき
・期限後申告書又は修正申告書を提出した場合で、納付しなければならない税額があるとき ・更正又は決定の処分を受けた場合で、納付しなければならない税額があるとき |
延滞税の計算方法は、期間によって異なり延滞税が1,000円未満の場合は課税されません。
期間 | 計算方法 |
納付期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで | ・7.3%
・特例基準割合+1% どちらか低い割合 |
納付期限の翌日から2ヶ月を経過した日以降 | ・14.6%
・特例基準割合+7.3% どちらか低い割合 |
加算税とは
加算税は、申告が適正でなかった場合や源泉所得税を納付しなかった場合などに課せられる税金です。加算税は「過少申告加算税」「無申告加算税」「重加算税」「不納付加算税」の4種類があり、それぞれの内容は以下になります。
加算税の種類 | 内容 | |
法人税による加算税 | 過少申告加算税 | 期限内に申告書を提出しているが、修正申告や更生があり追加の税額が発生した場合 |
無申告加算税 | 期限後に申告書の提出をして、納付する税金があった場合など | |
重加算税 | 過少申告加算税、無申告加算税が課税される場合で、事実を隠蔽したり、仮装して申告した場合など | |
源泉徴収による加算税 | 不納付加算税 | 源泉所得税の納付期限までに納付しなかった場合 |
申告・支払時期を守って余分な税金をなくす
申告・支払時期を守らなければ、余分な税金を支払うことになります。加算税や延滞税は、決算書上租税公課として経費になって利益が計算されていますが、税務上は損金不算入(経費から除外)されます。余分な税金を支払わないようにするためにも、法人税の支払時期を守りましょう。
前事業年度の利益を確認する
前事業年度の年間の確定法人税額で、法人税の中間申告の有無がわかります。つまり、確定申告で税金が計算された時点で、進行事業年度の中間申告の有無が決定しています。まずは、法人税の課税対象となる前事業年度の利益や所得を確認しましょう。
申告・支払を期限内に行う
法人税の申告・支払を期限内にしっかりと行うことで、余分な税金の支払をなくせます。申告書は期限内に資金がなくても提出できますが、支払は資金がないと期限内に納付ができません。確定申告・中間申告の支払時期をきちんと把握し、期限内に納付ができるように資金を準備しておくことが大事です。
詳細は税理士に聞こう
中間申告はいずれの方法を選択するか、判断が難しいものです。今期の状況、資金繰りを踏まえて最適な申告方法を選択するためにも、一度税理士に相談することをオススメします。
この記事を監修した税理士のコメント
多田紘大税理士事務所 – 兵庫県
申告・納付期限を正しく理解したうえで不要な税金の支払いをなくしましょう。更に、あらかじめどれくらいの税金の支払いが発生することが見込まれるかを把握したうえで資金面からの準備を進めていくことが大事になります。
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