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個人事業主の経費はいくらまで?上限や割合を解説!

最終更新日: 2024年02月20日

個人事業主は経費を漏らさず計上することで、所得税を大幅に節税できます。ただし事業にかかわるすべての費用を経費にできるわけではありません。

個人事業主が経費にできる項目や上限について、詳しく解説します。

個人事業主の経費に上限はない!費用の目安は?

事業に必要な支出なら、経費に上限はありません!
事業に必要な支出なら、経費に上限はありません!

個人事業主が経費計上できる金額には、上限がありません。

ただしどんな費用でも計上して良いわけではなく、目的や金額のバランスなどを考えて、判断することが重要です。あまりにも高額な費用を計上した場合、税務調査の対象になりかねません。

上限はないものの、個人事業主の経費は、売上の5割~6割にするのが一般的と言われています。

経費とは:事業を行うために必要な費用

そもそも経費とは「事業を行う上で、必要不可欠な支出」です。ただし事業に関する費用でも、全額ではなく一部分のみが経費として認められるケースもあります。

たとえば自宅で仕事をしているからといって、家賃のすべてが経費になるわけではありません。あくまで、仕事をする際に必要なスペースを家賃から割り出した部分が「経費」です。

この「業務用と家庭用の割合を算出すること」を「家事按分」と言います。

必要であれば上限なく経費に計上できる

どんなに高額なものでも「仕事に必要である」ことが証明できれば経費になります。

ただし売上や事業の規模に対して不自然に高額な場合、認められないケースもあり、注意が必要です。

たとえば、年商100万円の個人事業主が1回5万円の接待交際費を年に10回以上計上していると、すべてが事業のためではないと判断されることがあります。

収入や業務内容と照らし合わせ、適切な金額・頻度であるかも判断材料の1つです。経費として計上するために大きな金額でなくても、領収書に支出の目的を記載するようにしましょう。

青色申告と白色申告で経費に計上できる範囲が異なる

確定申告には青色申告と白色申告があり、それぞれ経費に計上できる範囲が異なります。以下に青色申告と白色申告で経費に計上できる範囲の違いを表にまとめました。

白色申告 青色申告
10万円以上の備品 一括で経費計上できない 30万円未満であれば少額減価償却資産が適用され、一括で経費計上できる
家事按分 事業に関わる部分が5割以上を占めないと経費計上できない 事業に関わる部分をすべて経費計上できる
専従者給与 経費にできない 経費にできる

青色申告の方が節税メリットがありますが、「開業届」「青色申告承認申請書」といった書類を税務署に提出したり、複式簿記で帳簿を付けたりと白色申告よりも手間がかかります。

白色申告と青色申告の違いは、以下で詳しく解説しています。

個人事業主が経費として計上できる支出

打ち合わせの際に飲んだコーヒー代は経費です
打ち合わせの際に飲んだコーヒー代は経費です

個人事業主の場合は経費と生活費が混在している場合も多く、どこまでを経費とするのか、その境界が曖昧なことも多いでしょう。また業種によって経費になりやすい費用、なりにくい費用もあります。

個人事業主が経費として認められる、代表的な支出を紹介します。

  • 自宅兼事務所の家賃(一部)
  • 水道光熱費(一部)
  • インターネットのプロバイダ料金
  • 電話代
  • 交通費・宿泊費
  • ガソリン代・駐車場代
  • 自動車税・固定資産税
  • 飲食代
  • 本・雑誌・DVD・ゲーム
  • ホームページ制作・広告費
  • お土産・プレゼント・香典・ご祝儀
  • 文房具やパソコンなどの備品(10万円以下)
  • 盗難された、店舗やオフィスにある現金

自宅兼事務所の家賃(一部)

賃貸マンションなどの自宅を仕事場にしている場合は家賃の一部を、地代家賃の科目で計上します。ただし、全額ではなく仕事で使っている割合を基準に、経費計上する金額を家事按分します。

たとえば50平方メートルのマンションで、部屋全体のうち約10平方メートルを仕事で使っているのであれば、家賃の家事按分は5分の1です。このマンションの家賃が10万円であれば、2万円が経費計上できます。

明確な基準はありませんが、家賃の5割程度が経費として計上できる上限と考えると良いでしょう。

青色申告者の場合は、事業に必要な割合が算出できればその分が経費になります。一方、白色申告者の場合は、主に事業のために使われていることが条件になっているため、自宅の一部で仕事をしている場合の家賃は経費になりません。

水道光熱費(一部)

自宅兼事務所の光熱費も、事業での使用割合に応じて一部を経費計上できます。光熱費の科目で経費にしましょう。

光熱費は「仕事でどのくらい使っているか」を基準に按分するのは難しいため、おおよその使用日数や使用時間で判断します。たとえば1カ月(720時間)の光熱費が2万円で、約3割(200時間)業務にあたっている場合、6000円が光熱費です。

仕事用のコンセントを限定し、コンセントの数で割合を出す人もいます。ガス代は事業で必要でない限り、認められないことが多いです。

インターネットのプロバイダ料金

事業で使うインターネット回線のプロバイダ料金も経費にできます。自宅兼事務所の場合、家賃や光熱費と同様に事業での使用割合に応じた家事按分が必要です。

たとえばビジネスで8時間、プライベートで2時間ネットを使用しているなら、8:2で通信費を按分します。勘定科目は通信費です。

電話代

携帯電話での連絡は、個人事業主にとって欠かせない仕事の手段です。プライベートの電話と共用している場合は、使っている時間などで家事按分して通信費として計上します。

仕事用の電話を別に契約しておけば、按分せずに経費計上できて計算の手間が省けておすすめです。

交通費・宿泊費

取材や遠方への打ち合わせなど、仕事に関係する交通費やホテル代、宿泊費は旅費交通費として経費になります。ただし、原則として経費計上できるのは出先での支出(実費)のみです。また、「半分はプライベート」「家族と一緒」などの場合は、全額の経費計上は難しいでしょう。どんな目的で行き、どんな成果があったかの写真やレポートなどがあると、認められやすくなります。

ガソリン代・駐車場代

仕事で走行した分のガソリン代は、交通費として計上できます。走行距離などをメモしておき、燃費などからガソリン代を計算しましょう。

また、業務用の車両として車を限定しているのであれば、駐車場代、保険料や車検代なども経費計上できます。

自動車税・固定資産税

自動車税や固定資産税、印紙税といった税金は租税公課として計上できます。自動車を自宅用と兼用している場合は、自動車税も家事按分する必要がある点に注意しましょう。

所得税や住民税は経費にできません。

飲食代

打ち合わせの際のコーヒー代や食事代、交流のための飲み代や、仕事関係で行ったゴルフ代なども経費に含まれます。打ち合わせの際の費用は会議費、接待のための費用は接待交際費の科目にいれるのが基本です。

個人事業主の場合、接待交際費の科目で計上される飲食代は上限が設定されていません。一般的には5,000円以下のものは会議費に計上し、5,000円を超える場合は接待交際費にするとよいでしょう。

高額の飲食代を何回も計上していると、経費の用途を疑われる原因になります。税務調査を受けた際の証拠になるよう、領収書には接待先や相手の名前、人数などをメモしておきましょう。

ホームページ制作・広告費

集客のためのホームページや広告宣伝費、パンフレットなどの印刷代は経費にできます。広告宣伝費で仕訳しましょう。

広告宣伝費も上限はなく、全額を経費計上できます。

本・雑誌・DVD・ゲーム

仕事の資料として購入する、本や雑誌、DVDなどは新聞図書費の科目で経費計上できます。ほかにも、例えば漫画雑誌の編集者が購入するコミックやゲーム会社の開発者が購入するゲームなども、業務用の資料であることが説明できれば経費として計上できます。

お土産・プレゼント・香典・ご祝儀

取引先に贈るお土産、香典、ご祝儀などは接待交通費になります。領収書がない香典やご祝儀は出金伝票で処理しましょう。挨拶状などを保管しておくと、調査が入った際も安心です。お土産やプレゼントの領収書に、相手方の名前などを書いておくと良いでしょう。

文房具やパソコンなどの備品(10万円以下)

机やパソコン、印刷用の紙やボールペンなど、仕事に使う備品・消耗品の購入費用は消耗品費として全額計上できます。

ただし10万円を超える備品・消耗品費を購入した場合は減価償却資産と見なされ、耐用年数で按分し経費処理しなければなりません。

また10万円以上20万円未満の減価償却資産は3年間で均等償却することも可能です。少額減価償却資産の特例の詳細は本記事下部に記載しています。

10万円を超える備品は「減価償却」する

10万円を超える購入額の備品は、経費ではなく「減価償却」して数年にわたって経費計上します。個人事業で10万円を上回る高額な支出が発生したときは、そのまま普通の経費として計上してしまわないように気をつけましょう。

※青色申告をしている個人事業主は少額減価償却資産の特例を利用することで30万円未満の少額減価償却資産を一括して経費計上できます(年間の総額は300万円まで)。

盗難された、店舗やオフィスの現金

万が一、オフィスに泥棒が入り、現金を盗まれた場合にお金が事業用であることが証明できれば、雑損失として経費にできます。

証明するためには現金出納帳が重要な証拠になります。いつ盗難に入られ、その際どのくらい現金があったのかを証明できるからです。さらに、警察に被害届を出し、その控えも保管しておきましょう。

個人事業主が経費として計上できない支出

個人事業主の健康診断費用は経費になりません
個人事業主の健康診断費用は経費になりません

経費に計上できる項目は思っていたより多いと感じられたかもしれません。しかし一方で、個人事業主の確定申告では経費にならない支出もあります。

一見、経費にできそうでも認められない費用があるので注意が必要です。ここでは個人事業主が経費にできない支出の代表例を紹介します。

  • 個人事業主自身の給与
  • 生計を共にする家族への給与
  • 自宅兼事務所の敷金
  • 個人事業主が着用するスーツ

個人事業主自身の給与

個人事業主は自分自身へ給与を支払うことができません。そのため、自分に給料を払ったという形で給与を経費計上はできません。また自身の健康診断費用や国民年金保険料、税金なども経費になりません。

生計を共にする家族への給与

仕事を手伝ってくれた配偶者に支払った給与など、生計を同じくする家族や親族への給与や報酬は経費になりません。同じ財布で生活している家族への支払いは「個人事業主本人へ支払ったのと同じ」とみなされるからです。

ただし青色申告者が青色事業専従者給与者として届け出ている家族や親族であれば、給与を経費にできます。

参考:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除|国税庁

自宅兼事務所の敷金

自宅をオフィスとして使用するために引っ越したとしても、敷金は経費になりません。敷金は「返ってくるお金」とみなされるので「投資その他の資産」と計上されるためです。敷金が戻ってくる際、修理費等として返金されない分は、家賃の家事按分割合を参考に計算して「修繕費」として計上します。

個人事業主が着用するスーツ

個人事業主が仕事で着用するスーツの購入費用は一見経費に計上できそうです。しかしスーツは冠婚葬祭やプライベート(デートなど)にも使用されると見なされるので、経費としては原則認められません。

「仕事でスーツ着用が必須の人」は経費として認められた例もありますが、家賃と同じく営業日数に応じ家事按分する対応が必要です。

判断に迷った場合は税理士などプロに相談すると良いでしょう。

個人事業主の支出を経費として認めてもらうポイント

判断が難しい費用が経費として認められるためには、領収書やレシートといった支出の証拠が必要です。支払いの際は、必ず領収書を受け取るようにしましょう。その際「何のために支出したのか」をメモをしておくと、万が一税務調査が入った際に説明がしやすくなります。

交通費など領収書が残らない支出の場合は「出金伝票」を作っておけばOK。出金伝票は100円ショップで手に入るので、忘れずに作成しておきましょう。

領収書やレシートなど、支出の証明になるものは、確定申告で提出する帳簿がつけ終わったからといって処分してはいけません。領収書やレシートは、5~7年の保管義務があります(白色申告は5年、青色申告は7年)。昨年のものだからと処分しないよう、年度ごとにまとめておくようにしましょう。

個人事業主が節税するなら青色申告がおすすめ

個人事業主が青色申告をするメリット5つ
個人事業主が青色申告をするメリット5つ

青色申告とは

青色申告は所得税の確定申告方法のひとつです。白色申告にない控除や特例制度などがあるため節税効果が高い点が特徴です。一定の条件を満たせば、副業・専業に関係なく青色申告ができます。個人事業主が青色申告すると、次のようなメリットとデメリットがあります。

【青色申告のメリット】

  • 青色申告特別控除で最大65万円の控除を受けられる
  • 同一生計の家族への給与を経費にできる
  • 赤字の繰り越しや繰り戻しができる
  • 30万円未満の備品を一括で経費にできる
  • 「貸倒引当金」で貸し倒れに備えられる
【青色申告のデメリット】

  • 青色申告をするためには事前申請が必要で、確定申告時期に選択できない
  • 帳簿付けが面倒
  • 確定申告の提出書類が少し多くなる
  • 課税所得が少ない場合は、記帳や書類作成の手間だけが増え、大きな節税効果が期待できない
  • 税務調査で事業規模等により事業所得と認められない場合があり、修正申告の指導を受ける可能性がある

メリット①青色申告特別控除で最大65万円の控除を受けられる

個人事業主でも青色申告すると「青色申告特別控除」という特別控除を受けることができます。青色申告特別控除は、記帳方法で選択した簿記の種類によって、受けられる控除額が違います。

簡易(単式)簿記による記帳10万円
複式簿記による記帳(e-Taxによる申告):最大65万円(複式簿記で記帳している場合は総勘定元帳・仕訳帳などの備付も必要)

仮に売上や経費が同じで、課税所得から青色申告特別控除を控除した場合の所得税 (復興特別所得税は除く を試算すると次のようになります。青色申告の節税効果は歴然です。

【所得税の計算方法】

①収入-必要経費-各種控除=課税所得
②(課税所得-青色申告特別控除×所得税率

課税所得 白色申告の所得税
(特別控除なし)
青色申告の所得税
(10万円の特別控除)
青色申告の所得税
(65万円の特別控除)
150万円 75,000 70,000 42,500
300万円 202,500 192,500 137,500
500万円 572,500 552,500 442,500
700万円 974,000 952,500 842,500
800万円 1,204,000 1,181,000 1,054,500
1,000万円 1,764,000 1,731,000 1,549,500
1,200万円 2,424,000 2,391,000 2,209,500
1,500万円 3,414,000 3,381,000 3,199,500

所得税率に関しては以下の速算表を参照してください。さらに住民税は一律10%の税率ですので、6,500円の節税になります。

所得税の税率

参考:所得税の税率|国税庁

メリット②生計を同一とする家族への給与を経費にできる

個人事業主の家族へ支払う給与は、(1)~(4)の条件を満たしていれば経費にできます。

【青色事業専従者の条件】

(1) その年の3月15日までに青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出
(2) 青色申告する個人事業主と、生計を一にする配偶者や親族
(3) 年齢が15歳以上
(4) 年間の半分以上は、事業に専ら従事していること

家族がパートやアルバイトの短時間の仕事をする場合は、相手方の会社に事情を話して、源泉徴収は「乙欄」で処理してもらうようにしてください。それにより、パートやアルバイト先では年末調整しないことになります。青色事業専従者は個人事業主が「甲欄」で処理するためです。

メリット③赤字の繰り越しや繰戻しができる

青色申告している個人事業主は、年間で赤字が発生した場合に、翌年以降最長3年間にわたり赤字を繰り越せます。これを損失申告と言います。

事業を開業した年や、固定資産を多く購入した年などは赤字になるケースもあります。損失申告すれば、翌年が黒字でも前年の赤字と相殺することができ、納める税金を減らせます。

赤字の繰り越しは翌年の税金を節税できますが、事業を営んでいると資金繰りが苦しくお金が必要な場合もあります。その場合は繰戻し還付を受けることもできます。赤字を前年の黒字と相殺して、すでに納めている前年の税金を還付してもらうのです。

赤字の繰り越しと繰戻しは二者択一ですが、繰り戻しによる還付請求にはデメリットがあります。利用する時はデメリットを考慮して検討してください。

【赤字の繰戻しによる還付請求のデメリット】

  • 所得税の還付は受けられるものの、住民税や復興特別所得税の還付を受けることができない
  • 繰り戻し還付の請求を行なうと税務署が調査にくる確率があがる

また、繰り越しできる赤字は、①事業所得・②不動産所得・③山林所得・④譲渡所得から生じる損失のみです。①~④の所得で損益通算しても損失がある場合に損失の繰り越しをします。損益通算とは所得区分別のマイナスを他の所得で控除する制度です。

具体的には、次のような手続きを行ないます。

【損失を繰り越しする場合】

  • 確定申告する時に、通常提出する確定申告書の第一表・第二表と一緒に繰り越しなら「確定申告書第四表(損失申告用)」を提出
  • 翌年以降も連続して青色申告で確定申告書を提出し続ける
  • 何年も損失を繰り越している「繰越控除」がある場合は、古い年度の損失から控除する

【繰戻し還付を受ける場合】

  • 確定申告する時に、損失に関する金額等を記載した確定申告書の第一表・第二表と一緒に繰り戻しなら「純損失の金額の繰戻しによる所得税の還付請求書」を提出
  • 前年も青色申告しており所得税を納付していることが必須

メリット④30万円未満の備品を一括で経費にできる

確定申告で青色申告を選択している場合のみ「少額減価償却資産の特例」により、30万円未満の備品は、年合計300円万まで減価償却せず一括で経費として処理できます。個人事業主が白色申告している場合、10万円を超える備品は固定資産として減価償却しなければいけないので、その年に経費にできる金額は大きく違ってきます。

たとえば28万円のパソコンを購入した場合、青色申告だと少額減価償却資産の特例で28万円を一括で経費にできますが、白色申告だと通常通り減価償却(パソコンの耐用年数4年、定額法で均等償却と仮定)しなければいけないので1年間に経費にできる額は7万円となり、その年の経費は21万円も違います。

メリット⑤「貸倒引当金」で貸し倒れに備えられる

貸倒引当金とは売掛金や貸付金などの債権について、回収できない場合(貸し倒れ)を予想して一定割合を必要経費に算入することです。個人事業主でも青色申告していれば「一括評価による貸倒引当金」と「個別評価による貸倒引当金」の2種類の計上方法が認められています。

一括評価による貸倒引当金は、金銭債権の帳簿価額の合計額5.5%(金融業は3.3%)に相当する金額まで必要経費として計上することができます。

個別評価による貸倒引当金は、会社更生法や民事再生の再生手続開始の申し立て等が行なわれている会社に対する債権などで、損失が見込まれる金額を個別に評価して必要経費として算入することができます。

個人事業主が青色申告をするための条件

青色申告は、不動産所得・事業所得・山林所得のある人が届出により認められます。収入金額や必要経費に関する日々の取引の状況を複式簿記で記帳し、取引に伴い作成したり受け取ったりした書類を保存しなければなりません。個人事業主が青色申告をするための条件は(1)~(3)となります。

(1) ①~③いずれかの所得がある

①事業所得:農業や漁業、製造業やサービス業、その他の事業などを通じて得た所得で譲渡所得と山林所得以外のもの
②不動産所得:土地や建物などの不動産の貸付けなどによる所得
③山林所得:取得日した山林を5年経過後に伐採して譲渡したり、そのまま譲渡したりしたことによって得た所得

(2) 「青色申告承認申請書」を税務署へ提出している

申告を受けようとする年の3月15日までに「青色申告承認申請書」を税務署へ提出していること(事業を1月16日以後に開始した場合は開始後2カ月以内)。

(3) 複式簿記により必要な帳簿を記帳している

貸借対照表・損益計算書といった帳簿を作成していること。また、複式簿記による記帳が必要で総勘定元帳や仕訳帳などの備付も必要。

青色申告に必要な届出の期限や書き方

青色申告に必要な届出の期限や書き方
青色申告に必要な届出の期限や書き方

個人事業主が青色申告するためには、確定申告以前に必要な届出があります。正しく期限内に届出をしていないと、その年は青色申告することができず白色申告することになります。また、青色申告のメリットである青色事業専従者も事前の届出が必要です。青色申告に必要な届出の期限や書き方についてご説明します。

個人事業の開業・廃業等届出書

個人事業主が事業を開始した時や廃業した時は個人事業の開業・廃業等届出書」を所轄の税務署に提出します。他にも事業用の事務所や事業所の新設・増設・移転・廃止した際も届出が必要です。

個人事業の開業・廃業等届出書

 参考:個人事業の開業・廃業等届出書|国税庁

個人事業の開業・廃業等届出書は原則として開業してから1カ月以内に納税地の税務署に提出します。開業から1カ月以内に提出することとなっていますが、副業をしていて「白色申告だし、事業として届出する実情ではない」という方もいると思います。そんな場合は「青色申告承認申請書」の提出期限である、開業してから2カ月以内に提出しましょう。「個人事業の開業・廃業等届出書」と「青色申告承認申請書」は同じ窓口にセットで提出できるからです。

税務署に持参してもよいですし、郵送で提出することもできます。郵送の場合は返信用封筒を同封すれば控えを返信してくれます。

個人事業の開業・廃業等届出書の書き方

開業する場合は上部の「開業」部分を囲み、下の画像の赤枠部分を必ず記入します。

個人事業の開業・廃業等届出書

参考:個人事業の開業・廃業等届出書|国税庁

以降の部分は必要に応じて記入します。

青色申告承認申請書

個人事業主で事業所得・不動産所得・山林所得が生ずる業務を行ない、青色申告の承認を受けようとする場合は「青色申告承認申請書」を提出します。

青色申告承認申請書

参考:青色申告承認申請書|国税庁

青色申告承認申請書は青色申告をしようとする年の3月15日まで所轄の税務署に提出します。新たな事業や不動産の貸付けをその年の1月16日以後に始めた場合は、事業開始等の日から2月以内に提出します。

青色申告承認申請書の書き方

青色申告の承認を受けようとする場合は、下の画像の赤枠部分を必ず記入します。この記入例はその年の11月1日に事業を開始したと仮定して作成しています。

所得税の青色申告承認申請書
青色申告承認申請書 出典:国税庁

以下の1から6を記入します。記入例としては赤枠部分を記入しています。

1は所得の基点となる事業所などが複数ある場合に記入する欄で、1つの場合は空欄です。

4は青色申告を受けようとする年の1月16日以降に開業した場合の記入例です。

6の(1)と(2)は注意してください。青色申告特別控除で最大65万円の控除を受けるためには(1)で「複式簿記」を選択し、(2)で備付する帳簿「現金出納帳」「売掛帳」「買掛帳」「経費帳」「固定資産台帳」「預金出納帳」「総勘定元帳」「仕訳帳」を選択します。10万円控除でよい場合は「現金出納帳」だけ選択すれば良いです。

所得税の青色申告承認申請書

参考:青色申告承認申請書|国税庁

青色事業専従者給与に関する届出書

青色申告をする個人事業主で、生計を一にする配偶者や親族への給与を青色事業専従者給与額として必要経費に算入しようとする場合は「青色事業専従者給与に関する届出書」を提出します。

青色事業専従者給与に関する届出書

参考:青色事業専従者給与に関する届出書|国税庁

青色事業専従者給与に関する届出書は青色事業専従者の給与を必要経費に算入しようとする年の3月15日まで所轄の税務署に提出します。その年の1月16日以後に青色事業専従者になった人がいる場合は、事業開始等の日か青色事業専従者になった日から2月以内に提出します。

青色事業専従者給与に関する届出書の書き方

青色事業専従者給与に関する届出書を提出する場合は、下の画像の赤枠部分を必ず記入します。この記入例はその年の11月1日に事業を開始したと仮定して作成しています。

青色事業専従者給与に関する届出書
青色事業専従者給与に関する届出書 出典:国税庁

また、以降の青色事業専従者給与の記入は下の書き方の記入例をもとに記入します。

青色事業専従者給与に関する届出書の書き方
 
参考:青色事業専従者給与に関する届出書の書き方|国税庁

確定申告で必要な書類

普段から確定申告の準備をしておくことは、個人事業主にとって非常に大切です。確定申告の時期になって急いで準備をしてしまうと、経費の計算や利益が出たときの節税対策、納税資金の調達が難しくなってしまうことがあります。

以下に記した確定申告に必要な書類を早めに確認し、日頃から必要経費の計算や書類の整理など、確定申告に向けた準備を進めておきましょう。

確定申告の必要書類

青色申告決算書

青色申告決算書(1ページ目)
青色申告決算書(1ページ目) 出典:国税庁

青色申告の際に確定申告書と併せて提出する、青色申告決算書。この書類に全ての収入金額や必要経費の内訳を記載します。

収支内訳書

収支内訳書(1ページ目)
収支内訳書(1ページ目) 出典:国税庁

白色申告の際に確定申告書と併せて提出するのが、収支内訳書です。全ての収入金額や必要経費の内訳などを記載します。

青色申告に必要なもの

帳簿書類の保存期間
帳簿書類の保存期間 出典:国税庁

申告の際に領収書など経費を証明する書類を提出する必要はありませんが、税務調査などで下記の書類が必要になります。年次や月、種類ごとにわかりやすく整理し、定められた期間内はしっかり保管しましょう。

帳簿

青色申告では仕訳帳や総勘定元帳といった帳簿、損益計算書などの決算関係書類と領収書は全て7年間の保管が必要です。それ以外の請求書や納品書などの保存期間は5年間です。

決算関係書類

損益計算書などの決算関係書類と領収書の保存期間は7年間です。

領収書・出金伝票

領収書は全て7年間保管しなければなりません。請求書や納品書、出金伝票などは5年間の保存が必要です。

白色申告に必要なもの

帳簿書類の保存期間
帳簿書類の保存期間 出典:国税庁

白色申告を行う際も青色申告同様、領収書などを提出する必要はありません。ただし税務調査などの際に下記の書類が必要となり、種類ごとに保管期間が定められています。ファイルを作成するなどわかりやすく整理し、保管しておきましょう。

帳簿

白色申告の法定帳簿は7年間、任意帳簿は5年間の保存が必要です。

領収書・出金伝票

その他の請求書や領収書などの保存期間は5年間です。

帳簿付けは会計ソフトがおすすめ

個人事業主が本業の仕事をしながら、自分で確定申告するのは大変です。まして複式簿記の知識の必要な青色申告はハードルが高いでしょう。しかし最近は会計ソフトの機能がアップしており、簿記の知識がなくても日々の仕訳や記帳が可能です。

一般的に、日々記帳をして補助簿を作成すれば、自動で主要簿も作成してくれます。また会計ソフトによっては領収書をスマホで撮影するだけで、複式簿記の自動仕訳も可能です。

会計ソフトによっては無料で使ったり、試したりできます。以下に無料から使える会計ソフトをまとめたので、初めて会計ソフトを利用する個人事業主や、会計ソフトの変更を考えている人は参考にしてみてください。

個人事業主の経費に関する相談は税理士へ

確定申告の経費は税のプロ、税理士に相談しよう!
確定申告の経費は税のプロ、税理士に相談しよう!

個人事業主が経費計上できる費用の範囲は広く、上限もありません。しかし事業の内容やバランスなどによって、経費として認められないこともあります。経費として認められるかどうかに迷ったときは、税金のプロである税理士に相談するのがおすすめです。

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税理士は経費として認められる範囲を熟知している

税理士は税金に関する手続きの代行や相談を受けられるプロフェッショナルで、さまざまな税金を知り尽くしています。個人事業主の経費の範囲や申告方法、書類の揃え方などを相談すれば、多くの経験に基づくアドバイスがもらえます。

確定申告も丸ごとおまかせできる

確定申告でも、領収書や請求書などの帳票の整理から必要な帳簿の作成、確定申告書の作成まで、トータルでサポートしてもらえます。申告書には税理士の名前を記入する欄があり、税務署の信用度も高くなる点もメリットです。

また確定申告時にはさまざまな控除があります。税理士に依頼すれば、控除要件を満たしているかどうかを判断した上で申告書を作成してくれるので、節税につなげられます。

さらに経費で節税!法人成りの相談も税理士に

個人事業の売上が順調で収入が伸びているなら、法人化を目指す選択肢も良いでしょう。法人化すると個人事業主より経費として認められる範囲が広くなるため、さらに節税につなげられます。

法人化を検討するなら、税理士にタイミングや道筋を相談するのがオススメです。「そもそも今の段階で法人化すべきかどうなのか」という点について、専門家の視点から適切なアドバイスをくれます。

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税理士とのお付き合いは長きに渡るもの。費用も大切ですが、自分との相性や人柄なども事前に確認しておきましょう。

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