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母親の預金を相続する方法|重要なポイントやNG行動

最終更新日: 2024年10月10日

大切な家族との別れは、悲しみとともに様々な手続きを伴います。特に預金を相続する際には、法律や手続きについて正しく理解することが重要です。しかし、いざ母親の預金を相続するとなると、何をすべきか分からず困ってしまうでしょう。

そこで本記事では、母親の預金を相続する流れや相続時の重要なポイント、避けるべきNG行動について詳しく解説します。母親が残した大切な財産をスムーズに相続したい方は、是非ご一読ください。

母親の預金相続を行う手順

電卓と通帳

母親の預金相続を行う手順は、以下のとおりです。

  • 相続手続きの申出を行う
  • 必要書類を用意する
  • 書類を提出する

相続手続きの申出を行う

まず、相続手続きを進めるために、母親の預金口座がある銀行の支店に直接連絡するか、または銀行のウェブサイトから相続手続きに関する情報を収集しましょう。

銀行によって必要書類や手続き方法が異なります。例えば、相続人の確認書類に加えて、戸籍謄本や住民票などの提出を求められることがあります。また、銀行によっては、相続手続きの予約が必要な場合や、遺産分割協議書の作成が必要となるケースもあります。

そのため、まずは銀行に連絡し、必要な書類や手続きの流れ、期限などを確認することが大切です。相続手続きに関する相談窓口や専門家を紹介してくれる場合もあるため、疑問点があれば積極的に相談してみましょう。

必要書類を用意する

銀行への相談が完了したら、次に必要書類を揃えましょう。主な必要書類は以下のとおりです。

  • 母親・相続人全員の戸籍謄本
  • 母親・相続人全員の印鑑証明書

また、遺言書の有無などケースに合わせてさらに書類が必要になることもあります。具体的にどのような書類が必要になるのか、詳細については後ほど詳しく説明します。

相続手続きは、場合によっては複雑になることもあります。必要書類を漏れなく準備することでトラブルなくスムーズな手続きが可能になるでしょう

書類を提出する

必要な書類が全て揃ったら、いよいよ銀行の窓口へと提出します

手続きが完了するまでには、ある程度の時間がかかります。銀行によっては数週間から数ヶ月かかる場合もあるため、事前に確認しておくと安心です。また、手続き中に不明な点があれば、遠慮なく銀行の担当者に確認しましょう。

手続きが完了すると母親の預金口座の名義が変更されたり、自分の口座に預金が振り込まれたりします。これで母親の預金の相続手続きが完了です。手続きは複雑に感じるかもしれませんが、一つ一つ丁寧に進めていきましょう。

母親の預金相続で必要な書類

遺言書

先述のとおり、母親の預金相続時に必要な書類は状況によって異なります。それぞれのケースを確認しておきましょう。

  • 遺言書がある場合
  • 遺産分割協議書がある場合
  • 遺言書も遺産分割協議書もない場合

遺言書がある場合

遺言書が存在する場合には、特定の書類の準備が不可欠となります。これは、遺言書の内容に法的な効力を持たせるためです。具体的には、遺言書に加えて家庭裁判所が発行する検認調書または検認済証明書が必要となります。

そもそも遺言書は、大きく分けて3つの種類があります。

  • 自筆証書遺言…遺言者が自分の財産の分け方や希望について自筆で書き記す遺言書
  • 秘密証書遺言…遺言者が公証人の前で遺言の内容を伝え、公証人が作成する遺言書
  • 公正証書遺言…遺言者が遺言書を作成し、封をして証人とともに提出する遺言書です。

遺言書が自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合には、家庭裁判所での検認が必要です。家庭裁判所での手続きを経て、検認調書が発行されます。

対して公正証書遺言の場合には、検認手続きは不要です。ただし、公証役場から検認済証明書を取得する必要があります。

上記の書類を金融機関に提出することで、遺言書に基づいた預金相続手続きを進めることが可能となります。

遺産分割協議書がある場合

母親の預金相続において、遺言書がない場合は遺産分割協議書の提出が必要になります。遺産分割協議書は、法定相続人全員の合意に基づいて作成され、故人の遺産をどのように分割するかを明確に示す法的効力を持つ書類です。

金融機関は遺産分割協議書を確認することで、預金の払い戻しを誰に対して行うべきかを判断します。内容が不十分であったり、記載内容に誤りがあったりすると、金融機関の手続きが遅れる可能性があるため、提出前に必ずチェックしましょう。

遺言書も遺産分割協議書もない場合

遺言書も遺産分割協議書もない場合は、誰が相続人なのかを確定させる材料がありません

そのため、相続人の相続関係を証明するために、被相続人の出生から死亡までの連続した戸籍謄本が必要になります。

また、法定相続人が誰なのか、相続関係を分かりやすく説明するための相続関係説明図も必要です。自分で作成することもできますし、銀行によっては所定の様式がある場合もあります。

遺言書も遺産分割協議書もない場合は、書類準備や手続きが複雑になりがちです。不明な点があれば、銀行や専門家に相談することをおすすめします。

母親の預金相続で知っておくべき6つの知識

通帳

母親の預金相続をスムーズに進めるために必要な知識を紹介します。特に大切なのが以下の6つです。

  • 亡くなった人の預金口座は凍結される
  • 母親の介護や看病に貢献した親族は預金を相続する権利がある
  • 預金の相続順位は家族構成で異なる
  • 預金にかかる税金は相続のタイミングで異なる
  • 相続税の申告には期限がある
  • 最後の入出金から10年経過すると預金が消失する

亡くなった人の預金口座は凍結される

銀行は、親族からの連絡や公的機関からの情報で口座名義人の死亡を把握すると、預金の不正な流出を防ぐために口座を凍結します。口座凍結後は、現金の引き出しや公共料金の引き落とし、振込など、一切の取引ができなくなるため注意が必要です。

相続においても口座凍結は大きな影響を及ぼします。相続手続きを進めるためには遺産の総額を把握する必要がありますが、口座が凍結されていると預金残高の確認ができません。

また、遺産分割協議では預貯金をどのように分割するかを話し合いますが、口座凍結中は資金の移動ができません。分割協議がまとまっても実際に分割を実行できないため、協議が停滞する可能性があります。

そのため、母親の預金口座について生前にしっかりと話し合い、必要に応じて口座凍結後の対応方法などを記した遺言書を作成してもらいましょう。

母親の介護や看病に貢献した親族は預金を相続する権利がある

母親の介護や看病に尽くした親族には、相続人に対して「特別寄与料」を請求できる権利があります。これは民法で定められた制度で、無償で被相続人の介護や看病に貢献した人が相続を認められるというものです。

具体的には、母親の介護のために仕事を辞めて収入が減ったり、介護費用を負担したりした場合などが該当します。どのくらい貢献したかは数値での評価が難しいため、相続人の間で協議によって金額を決定します。

もし、相続人間で協議がまとまらない場合は、家庭裁判所の調停または審判の手続きを行うことも可能です。調停では、裁判所が間に入り当事者間の話し合いを促します。それでも合意に至らない場合は、審判において裁判所が金額を決定します。

預金の相続順位は家族構成で異なる

母親の預金の相続順位は、残された家族構成によって大きく変わります。基本的には夫と子どもが第一順位の相続人です。

子どもがいて夫も健在であれば、夫と子どもが法定相続分に従って預金を相続します。子どもが複数いる場合は、子ども全員で均等に分割します。

しかし、夫や子どもが既に亡くなっている場合など、状況によっては母方の両親や祖父母、兄弟姉妹、さらには甥や姪までが相続人となる可能性があります。

預金にかかる税金は相続のタイミングで異なる

母親の預金を相続する場合、税金についても注意が必要です。預金にかかる税金の種類は母親が存命の間か、亡くなった後かで変わります。

生前に預金を譲り受ける場合の税金は「贈与税」です。年間110万円を超える贈与に対して課税され、超過額に応じて10〜55%の税率が適用されます。

一方、亡くなった後に相続する場合の税金は「相続税」です。基礎控除額(3000万円+600万円 × 法定相続人の数)を超える相続財産に対して課税され、超過額に応じて10〜55%の税率が適用されます。

預金の相続タイミングによってかかる税金の種類が異なり、それに応じて税率や控除額も異なることを理解しておきましょう。

相続税の申告には期限がある

相続税の申告は、被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内に行う必要があります。期限内に申告しないと、ペナルティとして延滞税や加算税が課される可能性があるため注意が必要です。

一方、相続放棄も期限が定められています。相続放棄とは、被相続人の財産も借金も一切受け継がないという意思表示のことです。相続放棄を行う場合は、自分が相続人であることを知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所へ申述する必要があります。

最後の入出金から10年経過すると預金が消失する

母親の預金相続後は放置せずこまめに確認しましょう。なぜなら、預金は最後の入出金から10年が経過すると「休眠預金」となり、さらに手続きを怠ると預金そのものが消失してしまう可能性があるからです。

休眠預金となっている場合は、必要な書類を提出することで払い戻しを受けることができます。また、母親が生前に利用していた金融機関が既に存在しない場合でも、預金保険機構に問い合わせることで休眠預金となっているかを確認できます。

たとえ少額であっても大切な母親の財産ですので、放置せずに適切な手続きを行いましょう。

母親の預金相続でやってはいけないNG行動

通帳

母親の預金を相続する際に誤った行動を取ってしまうと、手続きにかかる時間が増えたりトラブルに発展したりする可能性があります。事前にやってはいけないNG行動を確認しておきましょう。

  • 母親の預金を勝手に引き出す
  • 母親の遺言書を勝手に見る
  • 領収書や銀行の取引明細を納税完了前に破棄する
  • 母親のスマホを解約する

母親の預金を勝手に引き出す

母親の預金を勝手に引き出すことは、絶対に避けるべき行動です。他の相続人から財産を使い込もうとしているのではないかと疑われ、不信感を招く可能性があります。

例えば、母親の預金を葬儀費用に充てたとしても、他の相続人からすれば本当に葬儀費用に使ったのか、それとも一部を自分のために使ったのか確かめようがありません。他の相続人との関係が悪化し、遺産分割協議がスムーズに進まなくなるでしょう。

また、母親の預金を勝手に引き出すことは、他の相続人との関係悪化だけでなく法的にも問題があります。勝手に預金を引き出す行為は、他の相続人の財産を不当に処分する行為とみなされ、損害賠償請求や刑事告訴を受ける可能性があります。

母親の預金は、遺産分割協議が終了するまで手をつけずに保管しておくことが大切です。

母親の遺言書を勝手に見る

母親の遺言書を見つけても、勝手に開封することは避けましょう。遺言書は故人の最期の意思が記された重要な書類であり、法的な効力も持ちます。そのため、勝手に開封してしまうと他の相続人とのトラブルに発展したり、法律違反とみなされたりする可能性があります。

遺言書を発見した際は、まずは他の相続人にその事実を伝え、皆で協力して検認手続きを行うようにしましょう。検認手続きでは、家庭裁判所の立ち会いのもと遺言書が正式なものであるか、内容に不審な点はないかなどが確認されます。

検認を経ることで、遺言書の正当性が保証され、相続をスムーズに進められます。遺言書は故人の尊厳を守るためにも、正しい手続きに従って取り扱うことが大切です。

領収書や銀行の取引明細を納税完了前に破棄する

母親の預金相続時に、相続に関係する領収書や銀行の取引明細を納税完了前に破棄しないよう気を付けましょう。これは、相続税の申告や納税において重要な証拠となるからです。

例えば、葬儀費用や入院費用などを相続人が立て替えた場合、その領収書は相続税の控除を受けるために必要です。また、銀行の取引明細書は、故人が生前に贈与を行っていたかどうかを確認するために重要な役割を果たします。

納税が完了するまでは、領収書や取引明細を大切に保管しておきましょう。

母親のスマホを解約する

母親のスマホを安易に解約してしまうことは、預金相続において大きな落とし穴です。スマホには、銀行口座の情報や契約内容を確認できるアプリなどがインストールされている可能性があります。

スマホに残された銀行口座に紐づく情報が確認できないと、口座の存在に気付かない、手続きの方法が分からず時間を無駄にしてしまうでしょう。

母親の預金相続を進める際は、まずはスマホの中身をしっかりと確認し、必要な情報を控えておきましょう。焦って解約してしまうと、後々後悔することになりかねません。

母親側がやっておくべき預金相続対策

現金と通帳

これまで子ども側の必要な手続きやポイントについて解説しましたが、本章では母親側がやっておくべき預金相続対策について紹介します。

  • 預金口座を遺言書に記載する
  • 相続に関する書類をまとめておく
  • 成年後見制度や家族信託を行う
  • 名義預金を避ける
  • 生前贈与を検討する

預金口座を遺言書に記載する

遺言書を作成する際は、自分が保有している全ての預金口座を明記しておきましょう。これは、夫や子供たちが存在に気付かなければ、相続されずに消滅してしまう可能性があるためです。

特にネット銀行は家族が見つけづらい傾向にあります。通帳やキャッシュカードが手元に残らず、オンライン上でしか確認できないケースが多いからです。また、利用頻度の低い金融機関の口座も、家族がその存在に気付くのが難しい場合があります。

遺言書には金融機関名、支店名、口座番号、口座名義を正確に記載することが大切です。また、可能であれば残高や利用目的なども記載しておくと、家族が相続手続きを進める際に役立ちます。

相続に関する書類をまとめておく

預金口座について遺言書に明記するのと合わせて、相続に関する書類をまとめておくことも大切です。相続が発生すると様々な手続きが必要となりますが、必要な書類がすぐに揃わなければ手続きが遅れてしまう可能性があります。

特に、銀行口座や証券口座などの預金に関する書類は、相続人がスムーズに相続できるように、死亡後に請求手続きを行う生命保険などの証券と一緒にまとめて保管しておくことが重要です。

また、書類の保管場所も家族に伝えておきましょう。相続が発生した際に、家族が書類を探し回ることなく、速やかに手続きを進められます。

成年後見制度や家族信託を行う

大切な預金の行方を自分の意思で決めたい場合は、成年後見制度や家族信託といった仕組みを事前に検討しておくことが重要です。将来、もし認知症などで判断能力が低下してしまった場合でも、自身が望む形で預金が承継されるよう準備できます。

成年後見制度を利用すれば、信頼できる人を後見人に選任し、財産管理を任せることが可能です。後見人が預金の出し入れや管理を行い、必要に応じて生活費の支払いなども委任できます。

また、家族信託を活用すれば、元気なうちに信頼できる家族などに財産の管理や運用を任せられます。「孫の教育資金として使ってほしい」「介護費用に充ててほしい」といった具体的な希望を託すことが可能です。

名義預金を避ける

預金相続において母親が特に注意すべきなのは名義預金です。名義預金とは、預金名義と実際の所有者が異なる預金のことで、相続トラブルや税務上の問題を引き起こす原因となります。

名義預金は贈与や遺贈とみなされず、相続財産に含まれます。結果として、本来相続人に渡るはずだった財産が減ってしまうだけでなく、多額の相続税を支払わなければならなくなる可能性もあるのです。

例えば、母親が自身の財産を子ども名義で預金した場合は名義預金とみなされます。名義預金を避けてなるべく多くの預金を子どもに残したい場合は、後述する生前贈与を検討しましょう。

生前贈与を検討する

母親側の相続対策として、生前贈与がおすすめです。なぜなら、基礎控除額の範囲内であれば、税金を支払うことなく子どもへ預金をスムーズに引き継ぐことができるからです。

生前贈与の場合にかかる税金は贈与税で、年間110万円までの贈与であれば発生しません。毎年コツコツと贈与を続けることで、相続時に発生する相続税の負担を軽減できるでしょう。

ただし、生前贈与を行う際には、贈与の記録を残しておくことや贈与した後の財産の管理方法などを、事前にしっかりと確認しておく必要があります。

適切な方法で母親の預金を相続しよう

本記事では、母親の預金相続について解説しました。

母親の預金相続を行う手順は、まず銀行に連絡し必要書類を確認することから始まります。必要な書類を揃えて銀行に提出し、手続き完了を待ちます。必要書類は遺言書の有無や遺産分割協議書の有無によって異なるので、事前に確認しておきましょう。

母親の預金相続に関する知識として、口座凍結や相続順位、税金、申告期限などについて理解しておく必要があります。また、母親の預金を勝手に引き出したり、遺言書を勝手に開封したりするなど、軽率な行動は避けましょう。

また、母親の預金を相続する場合、相続税が発生してしまいます。少しでも税負担を減らしたいなら、適切な節税対策を行ってくれる税理士への相談も検討しましょう。

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