就労ビザの申請方法について解説します。外国人を雇い入れる、留学生を雇うなど、自分で申請したいと考えている企業に必要な情報を、網羅しています。就労ビザの知識や手続き方法、必要書類・費用、申請先、問い合わせ先などを把握しておきましょう。
就労ビザとは
外国人が日本で就職する場合に必要な就労ビザは、入管法という法律で、厳格に定められた資格です。日本人が普段気にすることの少ない就労ビザや、在留資格について解説します。
就労ビザと滞在ビザは違う
ビザには「中長期滞在」「短期滞在」があり、就労ビザは中長期滞在ビザ、滞在ビザは短期滞在ビザと捉えるのが一般的です。中長期滞在ビザの目的はおもに就労や家族滞在です。90日以上の滞在には中長期滞在ビザが必要となり、在留資格に認められた以外の活動は禁止されています。
短期滞在ビザは「観光ビザ」とも呼ばれるもので、目的は旅行や親族訪問となるでしょう。短期滞在ビザは報酬の受け取りが一切禁止されているため、たとえ短期のアルバイトでも禁じられています。
在留資格とは?
在留資格とは以下のように定義しています。
在留資格の取得(入管法第22条の2)
在留資格の取得とは,日本国籍の離脱や出生その他の事由により入管法に定める上陸の手続を経ることなく我が国に在留することとなる外国人が,その事由が生じた日から引き続き60日を超えて我が国に在留しようとする場合に必要とされる在留の許可です。 |
出典:出入国在留管理庁|在留資格の取得(入管法第22条の2) |
在留資格とビザは、性質が異なるものです。在留資格は外国人が日本国内に滞在するための、資格認定証明書という意味合いになります。
一方ビザは「査証」ともいい、その外国人が所有する「旅券」が適法に発給され、かつ有効であると確認するものです。さらに入国・在留が、査証に記載された条件のもとで適当とされた、「推薦」に相当するものになります。日本では査証の発給は、外務省の所掌事務になっており、ビザは入国許可証という意味です。
在留資格を得るには以下のすべてに当てはまらないことが求められます。
- 法令違反で刑に処されたことがある
- 麻薬などの常習者
- 銃や刀剣などを不法に所持
- 過去に強制退去の履歴がある
- 出国命令制度を利用して出国した経歴がある
- 犯罪歴があり素行不良
在留資格は就労が可能な在留資格と、就労が不可能な在留資格に分類されています。
就労ビザの種類
実は就労ビザという名の証明書は存在しません。在留資格の種類に仕事が当てはまるかどうかで、就労できる職種が決まります。
在留資格は以下のように分類されています。
①分類に当てはまる職業の就労が認められている在留資格 | 外交、公用、教授、芸術、宗教、報道、高度専門職、投資・経営、法律・会計業務、医療、研究、教育、技術、人文知識・国際業務、企業内転勤、興行、技能、技能実習、特定活動 |
②就労が認められていない | 文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在 |
③就労活動に制限がない在留資格 | 永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者 |
①は分類の職種の範囲内で就労が認められている在留資格で、②は地方入国管理局で資格外活動の許可を受ける必要がある、在留資格になります。③は職種に指定がなく、どのような職種にも就ける在留資格です。
就労ビザの有効期間
すべてのビザには「在留期間」という有効期限があります。就労が可能なビザのうち「外交」以外は、15日・1カ月・3カ月・6カ月・1年・3年・5年と在留資格ごとに在留期間が決まっているのです。
在留期間の根拠は、雇用する側の安定性で、中小企業より大企業のほうが、長い在留期間が得られます。雇用契約の形態が有期雇用の場合は、有期雇用の期間が在留期間です。
また人材の重要性によっても、期間が違います。たとえばほかの人には変えられないような技術や、学歴・経験がある場合、在留期間が長くなるのが一般的です。
延長手続きを「在留期間更新」といい、在留期間の満了日の3カ月前から手続きが可能です。申請すれば確実に延長されるものではないので、注意しましょう。
就労ビザ取得が抱える問題点
日本の就労ビザは取りにくいといわれる理由や、取りにくいゆえに起こりうる不法就労の遠因について、紹介します。
日本で就労ビザを取るのが難しい理由
日本の就労ビザ取得が難しいといわれている理由として、以下のようなものが考えられます。
- 手続きが煩雑で面倒
- 提出先が限られており遠方であることが多い
- 就労ビザの取得の難易度が高い
在留資格取得のために、揃えなければならない書類の数は多く、集めるのに時間がかかります。
また入国管理局は、各都道府県に1カ所であることがほとんどです。遠方なうえに、窓口で長時間待たされることから、時間の確保が難しいケースも少なくありません。
専門家に依頼しない場合、不備で申請が通らないこともままあり、再提出にも時間がかかってしまいます。
就労ビザを取得するには根気と時間が必要なため、取得が困難と考えられているのです。
不法就労の遠因になる可能性
日本の在留資格取得には、手間と時間がかかります。面倒に感じる、手続きの途中で在留資格の期限が切れたなど、不法就労の遠因となる可能性をはらんでいるのです。
不法就労とは働く許可を得ていない外国人が、日本で仕事に就いていることです。法律で禁止されており、不法就労の対象となった外国人やその雇用主、斡旋機関などに、厳しい罰則が課せられます。
具体的には以下のような状態の外国人が働いていることを、不法就労といいます。
- 在留期限が切れている人
- 密入国した人
- 短期滞在が目的で入国した人
- 留学生、難民認定申請中の人
- 許可された時間を超えて働いている留学生
- 出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働いている人
このような人を雇用している事業者は、処罰の対象となります。
就労ビザ取得のために満たすべき条件
日本国内で就労ビザ(在留資格)を取得するには、満たさなければならない条件が三つあります。「在留資格該当性」「上陸許可基準」「相当性」です。
在留資格の該当性とは
在留資格の該当性とは、外国人が就こうとする職業が、出入国在留管理庁が認めた職業の分類に、該当していることを指します。
たとえば外国人が日本国内のレストランで、調理師の仕事に就くことを希望したとします。その場合「調理師の技能に該当する在留資格」が、入管法に存在するか重要な焦点となります。
入管法には「技能」というカテゴリーがあり、調理師はこのカテゴリーに当てはまるとして、「在留資格該当性がある」と判断されるのです。
ちなみに日本で人材確保が難しい産業や分野において、専門性や技能を持つ外国人を受け入れる目的の制度を、「特定技能制度」といいます。介護、ビルクリーニング、素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業、建設、造船・舶用工業、自動車整備、航空、宿泊、農業、漁業、飲食料品製造業、外食業の12分野があり、この場合は以下の条件を満たす必要があります。
- 特定産業分野該当性
- 業務区分該当性
- 受入機関適合性、契約適合性
上陸許可基準とは
外国人が日本に上陸許可を求める場合は、上陸審査を受けて上陸を許可するという、証印を受ける必要があります。上陸審査には以下のような許可基準が設けられています。
- 有効な旅券及び日本国領事官等が発給した有効な査証を所持していること
- 申請に係る活動(我が国で行おうとする活動)が偽りのものでないこと
- 我が国で行おうとする活動が、入管法に定める在留資格のいずれかに該当すること
また、上陸許可基準のある在留資格については、その基準に適合すること - 滞在予定期間が、在留期間を定めた施行規則の規定に適合すること
- 入管法第5条に定める上陸拒否事由に該当しないこと
許可が下りた際は、パスポート(旅券)に証印のあるシールを受け取ります。上陸許可の証印シールに記されているのは、「許可年月日」「在留期限」「在留資格」「在留期間」です。
相当性とは
就労ビザを取得するための審査では、入管当局が許可申請を「適当と認めるに足る相当の理由があるときに限り」許可できるという、規定があります。相当とする判断の決め手となる項目は、以下の内容です。
- 素行が不良でないこと
- 独立生計を営むに足りる資産または技能を有すること
- 雇用・労働条件が適正であること
- 納税義務を履行していること
- 入管法に定める届出等の義務を履行していること
在留資格のある外国人が、今までとは違う分野で働くときや、在留資格の期間を延長するときなどに、相当性の審査が必要です。
「相当の理由」があるとの判断は、入管当局の裁量に委ねられています。そのため必ずしも職業の変更や、在留期間の延長が認められるとは、限りません。
就労ビザを取得するための方法をチェック
就労ビザの取得に関する、手続き対象者の条件は決められています。手続きの場所や必要な書類、費用について解説します。
手続きする人はだれか
就労ビザを取得するには、「就労資格証明書交付」を申請する必要があります。原則として申請の手続きを行う人は、日本に滞在を希望する外国人本人です。
ただし外国人を国外から呼び寄せて雇用する場合は、手続きをする際に外国人が日本国内にいないため、法定代理人と、取次者による申請が可能となっています。この場合の代理人とは、以下の立場の人を指します。
- 申請人が経営している機関または雇用されている機関の職員
- 申請人が研修または教育を受けている機関の職員
- 外国人が行う技能、技術または知識を習得する活動の監理を行う団体の職員
- 外国人の円滑な受け入れを図ることを目的とする公益法人の職員
代理人が手続きの取次ぎを依頼できる取次者とは、地方出入国在留管理局長に届け出た弁護士や、行政書士のことです。
手続きする場所はどこか
就労ビザの申請書類は、外国人の住居地を管轄する地方出入国在留管理官署です。
申請の受付時間 | 平日:午前9時~12時・午後13時~16時 |
問い合わせ先 | 地方出入国在留管理官署または外国人在留総合インフォメーションセンター |
また2022年3月から、マイナンバーカードによる在留手続きがオンラインでも申請できるようになりました。オンラインシステムは24時間利用できるうえ、システム利用料は無料で、在留カードを郵送で受け取れる仕組みです。詳しくは出入国在留管理庁の、ホームページで確認してみてください。
必要な書類と費用
在留資格取得のために必要書類は、日本での活動内容(在留資格)に応じた、申請書・資料の提出が必要になるため、カテゴリーによって内容がそれぞれ異なります。たとえば調理師として活動する場合、活動資格は「技能」となり、書類は以下のようなものが必要です。
- 在留資格認定証明書交付申請書:1通
- 写真:1枚
- 返信用封筒:1通(切手を貼る)
- 雇用先形態に応じたカテゴリーに該当することを証明する文書
- 申請人の職歴を証明する文書など
就労ビザ取得にかかる費用は新規の場合、返信用封筒に貼る404円の切手代のみです。内容の変更や更新には4,000円の手数料が必要になります。
就労ビザの申請の流れ
就労ビザ申請の流れを、「海外から外国人を呼び寄せて雇用する」「留学生を雇用する」「国内在住の外国人を雇用する」の、三つのケースごとに説明します。
海外から呼び寄せて雇用する場合
海外から外国人を呼び寄せて雇用する場合では、外国人本人がまだ海外にいるため、雇用主になる企業や団体が、外国人の代わりに手続きを行います。おもな流れは以下のとおりです。
- 在留資格認定証明書交付申請
- 在留資格認定証明書取得
- 在留資格認定書を外国人本人に送付
- 在留資格認定証明書を在外日本公館で提示し上陸許可を申請
- ビザ(査証)発給
- 来日
- 外国人本人と面談
- 雇用契約を締結する
- 在留資格認定証明書の交付を申請する
- 受け入れ準備
- 入社
- 住民登録・銀行口座開設など
上陸許可を申請してからビザが発給されるまで、数日を要しており、申請受理の翌日から5業務日以内となるのが一般的です。原則として在留資格認定証明書の交付日から、3カ月以内に外国人が入国できるよう手配します。
住まいが定まりしだい14日以内に、住居地の市区町村窓口に住居地を届け出ましょう。企業・団体は外国人が雇用保険の被保険者となる場合、雇い入れた日の翌月10日までに、ハローワークに届け出ます。
留学生を雇用する場合
留学生を雇用する場合の流れは、おおむね以下のようになります。
- 在留資格の確認
- 雇用契約書の取り交わし
- 在留資格変更許可申請
- 入社
留学生を雇用する場合は、在留資格外の活動を行うことになるため、「在留資格変更許可申請」を提出します。申請を行う人は外国人本人が原則で、条件を満たした場合に限り、代理人や取次者が手続きを行えます。
就労制限の有無や在留資格期限、資格証の真偽など雇用契約書を取り交わす前に、かならず在留資格を確認しましょう。なお在留資格変更許可申請には、許可を受ける際の手数料として、4,000円の収入印紙が必要です。
国内の外国人を雇用する場合
日本国内に在住の外国人を雇い入れる場合の流れは、以下のようになります。
- 在留資格の確認
- 雇用契約書の取り交わし
- 在留資格変更許可申請
- 入社
外国人の在留カードで、就労制限の有無や在留期限、在留カード裏面にある資格外活動許可などを確認し、雇用が適法か照合します。外国人の前職と今回の仕事内容が大きく異なり、対象となるカテゴリーの変更が必要な場合は、就労資格証明書交付申請が必要です。
在留資格変更許可申請はオンラインでも手続きが可能なので、出入国管理庁のホームページから確認してみてください。
就労ビザ取得のQ&A
実際に就労ビザを取得する際に気になる、取得までの期限や分からないことがあった場合の、問い合わせ先を紹介します。
取得までにかかる時間は?
新たに就労ビザを取得するまでにかかる時間は、書類に不備がない場合の目安として、おおむね1~3カ月ほどです。在留資格変更許可申請は2週間~1カ月が標準的な処理期間です。正式に許可が下りるまでは、雇用契約を交わしていても、報酬を得る活動は禁止されています。
また留学生が就職するまでの間に大学を卒業し、学籍がない状態で短期間のアルバイトとして働くことはできません。報酬が発生しないような入社式の出席や社内見学、研修は認められています。
就労ビザ取得の相談窓口
就労ビザの手続きを行う際に、必要書類やそのほかの確認事項で、問い合わせが必要になる場合もあるでしょう。その際の問い合わせ先は、以下になります。
外国人在留支援センター(FRESC/フレスク)
外務省ビザ・インフォメーション |
|
所在地 | 〒160-0004
東京都新宿区四谷一丁目6番1号 四谷タワー13階 |
受付時間 | 平日9時~17時
※土日祝、年末年始(12月29日~1月3日)は除く |
電話番号 | 0570-011000(ナビダイヤル) |
FAX番号 | 03-5501-8490 |
出典:ビザの申請に関する相談受付|外務省 |
インターネット上には民間の無料相談窓口もありますが、行政書士事務所や弁護士事務所へ相談する場合は、基本的に有料となります。
就労ビザの取得は専門家を利用する方法も
就労ビザの手続きには、時間と労力が必要です。専門家ではない人が申請を行う場合、書類の不備で雇用が延期になるなどのアクシデントも考えられます。
法律が関係する手続きでもあるので、速やかに滞りなく済ませるために、行政書士や弁護士など専門家の利用を検討するのも一つの方法です。