家の中の階段や浴室などに手すりを取り付ける場合、どの場所にどんな手すりが必要になるのでしょうか?初めてのバリアフリーリフォームは分からないことだらけですよね。
この記事では、バリアフリー目的で家に手すりを取り付けるときのポイントや費用相場を解説。場所ごとの手すりの選び方やおすすめの手すり材質など、手すり選びに迷わないための情報を網羅しています。
最後には手すりリフォームに関する補助金制度についても紹介するので、ぜひ参考にしてください。
【参考画像あり】バリアフリーの手すりは家のどこに取り付ける?
バリアフリーのために手すりを取り付けるなら、まずは手すりの設置目的を確認しておきましょう。目的は大きく3つあります。
- 歩行補助のため
- 動作補助のため(立つ・座る、浴槽をまたぐ、姿勢を安定させるなど)
- 滑り・転倒防止のため
つまり体の悪い高齢者などが家にいる場合、歩いたり動作したりする際に不便な場所は全て手すりを設置すべき場所になるのです。階段だけ・浴室だけに限らず、生活の動線を考えながらどこに取り付けが必要かを考えていきましょう。
一般的には以下のような場所に手すりが取り付けられています。
- 玄関
- 廊下
- 階段
- トイレ
- 浴室
それぞれの場所でどんな手すりを取り付けるべきかを見ていきましょう。
玄関の手すりを取り付ける場所とその目的
玄関にバリアフリー用の手すりを取り付けるときは、土間と床の段差の移動を補助するように設置します。手すりのスタイルは玄関の段差に沿った「斜め型」が適しています。
上記の形状であれば段差の昇降や歩行補助、姿勢の安定など幅広い効果が期待できるでしょう。体を支える縦向き手すりと歩行を支える水平型(斜め)手すりが組み合わさったものを選んでください。
水平部分の手すりの高さは75cm前後が一般的ですが、利用者に合った高さにするのが良いでしょう。ちなみに最も体重を支えやすいのは、立ったときに足の付け根あたりにくる高さの手すりです。
廊下の手すりを取り付ける場所とその目的
廊下に手すりを取り付けるときに検討すべき場所と、適する手すりの種類は次の通りです。
- 廊下の壁沿い
歩行のサポートが目的なので、廊下に沿った「水平型の手すり」を設置しましょう。玄関と同じく水平型手すりの高さは75cm前後が最適ですが、利用者にとって使いやすい高さがベストです。
- ドアの側
ドアの開け閉め動作をサポートするため「縦型(I字)の手すり」が適しています。
階段の手すりを取り付ける場所とその目的
階段の手すりは、階段の踏みつけ面から70cm~80cmの高さの壁に取り付けます。工事の際に、足の悪い家族が使いやすい高さに調整してもらうとよいでしょう。また階段の最下段から最上段まで切れ目ができないように設置します。
移動時の安全性を考え、手すりは滑り止め効果のある樹脂コーティングが施されたものがおすすめ。とっさのときに握りやすい太さのものを選びましょう。
なお階段の手すりは、現代の建築基準法で設置が義務付けられています。古い住宅で手すりがない場合、最優先で設置する必要がある箇所です。
トイレの手すりを取り付ける場所とその目的
トイレの手すりの設置場所と適する手すりの種類は、以下の通りです。
- 便器の横の壁
立ち上がり補助には縦型、安定して座るには水平型が合っています。そのため両方の性質を持つ「L字手すり」が最適。設置位置のおすすめは、縦の手すり部分がトイレ便座の先端から2cm~3cm先になる位置です。立ち上がる際の重心移動がしやすくなります。
- 便器の脇
肘置き付き、または車いすの人の体移動に適した「トイレ用手すり」を設置するケースもあります。排せつの際に力を入れられない場合や、座り姿勢が安定しない場合に設置するとよいでしょう。手すりを使用しない時は上に跳ね上げられる可動タイプのトイレ用手すりもありますが、やや高額になります。
浴室の手すりを取り付ける場所とその目的
浴室の手すりは水に濡れるため、滑りにくい材質のものを選ぶようにしましょう。高齢者の事故が多い箇所でもあるので、ぱっと手の届く範囲に設置するよう計画する必要があります。浴室の手すり設置場所と適する手すりの種類は以下の通りです。
- 浴槽の中から届く場所
浴室に浸かりながら体を支えることができる「水平型手すり」が適しています。しゃがむときに体を支える目的もあります。
- 浴槽と洗い場の境目
またぐ動作を支える「縦型(I字)手すり」または縦と横をジョイントした「L字型手すり」が適しています。
- 洗い場の壁
浴室を伝い歩きしやすいよう「水平型の手すり」を設置します。床が滑りやすいため、どの場所から手を伸ばしても届くように設置すると安心です。
家に取り付ける手すりの選び方!種類(形)や材質を確認しよう
リフォームで取り付けることができる手すりには「種類」「材質」の違いがあります。
場所や目的・使用者に適したものを選ぶことで、手すりの利便性は大きく向上します。それぞれの特徴とどんな場合に適しているかを見てみましょう。
家に取り付ける手すりの種類について
手すりの種類 | 特徴・目的 |
縦型(I字) | ・立ち上がりの補助
・立ち姿勢の安定 ・扉を開閉するときの支え |
水平型(階段や玄関などの傾斜に沿った斜め型を含む) | ・歩行の補助
・座り姿勢の安定 ・転倒や転落防止 ・両側に付ければ、体の移動や起き上がりの補助 |
L字型 | ・立ち上がりと姿勢維持の両立
・狭い場所の立ち上がり、歩行の補助 |
家に取り付ける手すりの材質について
材質 | 特徴 |
木 | ・手になじみ、冷たさを感じにくい
・樹脂コーティングされたものは滑りにくい ・水回り以外の室内に最適 |
プラスチック | ・水に強くトイレや浴室の手すりに最適
・濡れやすい場所は滑り止め加工が必要 |
ステンレス | ・さびにくく丈夫で玄関の外など野外の手すりに最適
・熱を伝えやすいため、樹脂などでコーティングされたものがおすすめ |
ただしお住まいの状況によって最適な種類・材質は異なります。業者に相談しながら適切なものを選んでもらうのがおすすめです。
家に手すりを取り付けるリフォームの費用相場
設置場所別に、家に手すりを取り付けるときの費用相場を見ていきます。
設置場所 | 費用相場 |
玄関 | 1万~3万円 |
階段 | 5万~10万円 |
廊下 | 2万~4万円(2mあたり) |
トイレ | 3万~10万円 |
浴室 | 3万~8万円 |
手すりの価格は設置箇所の量と長さによって変わるため、上記の相場はあくまでも参考価格。自分の家の場合どうなるかを知りたい場合は、リフォーム業者に直接質問してみましょう。
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手すり取り付けリフォーム費用の内訳
手すり設置リフォームの工事代金は以下の内訳で構成されています。
設置場所 | 費用相場 | 備考 |
手すり本体代金 | 1万~3万円 | 手すりの材質、長さ、設置箇所数によって費用が変わる |
工事費用 | 1万5,000~3万円 | 複数箇所を同時に工事すると割引になることがある |
追加料金 | 要見積もり | 手すりを設置する壁を補強する工事「下地補強工事」の追加工事事例が多い |
諸経費
・交通費 ・駐車場代金など |
要見積もり | 業者によって諸経費に含まれる内容が異なるため、気になる場合は見積もりの際に直接確認する |
見積もりを依頼するときは、追加工事の発生要件や各内訳の詳細を必ず確認しておきましょう。
手すり取り付けリフォームの事例紹介!10万円の工事では何ができる?
予算10万円であれば、以下のような工事が可能です。
例① | ・廊下1mに水平型手すりを1カ所設置
・浴槽側の壁に水平型手すりを1カ所設置 ・直線階段に階段用手すりを設置 |
例② | ・玄関から廊下に続く水平型手すりを設置
・トイレにL字型手すりを設置 ・浴槽と洗い場の境目にL字型手すりを設置 |
なお10万円のリフォーム工事を行った場合、介護保険の住宅改修費補助を申請すれば実際の費用負担は1万~3万円になります。補助金制度については次の章で解説します。
家の手すり取り付けが対象になる補助金制度をチェック
家の手すり工事は、介護目的・高齢者の歩行補助目的であれば国や地方自治体からの補助金支給対象になります。申請できる可能性のある制度は以下の2種類です。
- 介護保険の住宅改修費補助
- 地方自治体の補助・助成制度
特に介護保険の制度は、介護保険に加入さえしていれば支給条件はほぼ満たすことになるため必ずチェックしておきましょう。それぞれ概要を説明します。
1.介護保険の住宅改修費補助制度
国の補助金制度で、要介護認定を受けている介護保険被保険者が居住する家をバリアフリーリフォームすると対象になります。
補助金額は最大20万円までのリフォーム費用の7割~9割。つまり20万円のリフォーム工事を行ったら、自己負担金額は6万~8万円にまで抑えられるというわけですね。補助割合は被保険者の収入によって変わります。
補助金申請時にはケアマネジャーの理由書を添える必要があるため、リフォーム前に担当のケアマネジャーに相談することをおすすめします。
2.地方自治体の補助・助成制度
お住まいの地域によっては、地方自治体の制度で介護のための手すりリフォームにかかった費用を助成していることがあります。制度の内容は自治体によって異なるので、詳細については役所窓口に確認しましょう。なお制度自体を行っていない自治体もあるため、事前確認は必須です。
DIYで家の中に手すりを取り付けることはできる?
結論からいうと「DIYで家に手すりを取り付けるのは不可能ではないが、やめた方がいい」です。理由は壊れたときのリスクが高すぎる点と、工事内容が高度な点。
バリアフリー目的の手すりの場合、体重のほぼ全てを手すりに預けることになります。体重をかけた状態で階段の手すりが壊れれば、転落事故につながり最悪の事態に陥る可能性も。また手すり工事では壁の内側である「下地」の状態を確認する必要があるため、住宅工事の専門知識も必要です。
ちなみに手すり取り付けのDIYに関しては、こちらの記事で解説しています。