道路占用許可が必要になる条件
道路占用許可申請は「占用」の名称が示すとおり、申請者が道路の一部を占用するための許可申請です。
国民や市民の共有財産である道路は、利用者が公平に利用できるものでなくてはいけません。
そのため、道路占用許可を得ることができるのは、道路占用を許可しても公益に反さないものに限られます。
それでは実際にどんなものが道路占用許可申請を要するのかみていきましょう。
看板を出したい
店やビルの壁面に看板を設置する場合、看板が道路に突出する計画であれば道路占用許可が必要になります。
看板は許可基準の中にありますから、歩道であれば道路から2.5m以上、車道であれば4.5m以上の空間を確保できれば許可を受けることができます。
同じ様に屋号を表示したものであっても、道路に置く看板やのぼり旗は道路占用許可基準に適合しないので注意が必要です。
工事のために足場を組みたい
建物を新築する際に建物が道路ぎりぎりまで建つために、外部足場や仮囲いがどうしても道路に突出してしまうことがあります。あるいは足場は敷地内に収まっても、アサガオと呼ばれる落下防止柵が道路に突出してしまうこともあります。
こうした工事用の工作物が道路を占用するケースも許可基準に定められており、許可を受けることができます。
お店が道路にはみ出してしまう
外壁、ドア、窓、ショーケース、カウンター、室外機などが道路に突出することは、建築基準法違反になるので認められません。
床をウッドデッキ形状で突出させることは道路占用許可基準に抵触するので認められません。
店に付随するもので道路占用許可が受けられるのは、庇形状の日よけテントや投光器です。看板と同様に歩道は2.5m以上(投光器は3.5m)、車道は4.5m以上空間を確保する必要があります。
「道路占用許可」と「道路使用許可」の違い
「道路占用許可」とよく似た用語で「道路使用許可」というものがあります。
道路占用許可が道路の占有を対象にしているのであれば、道路使用許可は道路の使用を許可するのだと予測はつきます。
だけど万人が使用できるはずの道路に使用の許可がいるなんてどういうことでしょうか。
そして道路占用許可とどんな違いがあるのでしょうか。申請窓口や許可対象など、それぞれ何が違うのかみていきましょう。
根拠法令が違う
道路占用許可は道路法に基づいて許可を出していますが、道路使用許可は道路交通法に基づき許可を出しています。
許可の対象になる道路が違う
道路占用許可は、道路管理者の立場で道路を管理しているので、自己の管理道路にしか許可権限がありません。
したがって国道は国(都道府県に委任している場合がある)、県道は県、市道は市に許可権限があります。
このため私道の占用に対して行政機関が占用許可を出すことはありません。
道路交通法では「道路」を次のように定義しています。
- 道路法の道路 (高速自動車国道、一般国道、都道府県道、市町村道)
- 道路運送法の道路 (自動車の交通の用に設けられた道路で①以外のもの)
- 一般交通の用に供する場所 (私道、広場、空地、公園内の道路など)
このため人や車が自由に通行できるところであれば、ほとんどが道路使用許可の対象になります。
許可の目的が違う
道路占用許可は、道路管理者の立場として道路を不当に占拠されることがないよう規制するものです。
このため、デモ行進やレッカー車による高所作業のように、明らかに一過性のものは許可の対象にはなりません。道路使用許可は人や車の交通に支障が出ないよう規制するものです。
このため交通の妨げになると思われるものすべてが許可の対象になります。デモ行進、街頭演説、街頭のビラまきなど工事関係以外のことであっても許可の対象になります。
ガス管の埋設工事の例だと、道路占用許可は埋設するガス管が審査の対象になりますが、道路使用許可は埋設工事自体が審査の対象になります。
許可対象が違う
それでは許可の要否の比較をしてみましょう。
このことから道路占用許可が必要なものは、すべて道路使用許可の対象になることが分かります。
一方、道路使用許可の場合は道路占用許可が不要であっても許可を要するものがあります。
申請窓口が違う
道路占用許可は、都道府県や政令指定市は土木事務所、市は道路管理の担当部署に提出します。道路使用許可は、所轄の警察署に提出します。
映画のロケーションのように管轄をまたがる場合でも、ひとつの公安委員会内であれば、いずれかの警察署に道路使用許可申請をすればいいとされています。
また道路占用許可を要する案件の場合、道路使用許可書に道路管理者の印を押してもらうか、道路占用許可書の写しを添付しないと道路使用許可の申請はできません。
道路占用許可とは?
道路占用許可は、どういった手続で申請を進めればいいのでしょうか。
またどんな許可基準があって、審査期間はどれくらいかかるものなのでしょうか。
その他手数料や条件など道路占用許可のあれこれをみていきましょう。
道路占用の許可基準
許可基準はそれぞれの自治体で定めていますので、最終的には申請先の窓口で確認をする必要があります。ここでは概ね全国的に共通している基準についてご説明します。
袖看板は道路からの突き出し1m以内のもので、道路から看板の下端までの高さが4.5m~4.7m以上あれば許可基準に適合します。ただし歩道は2.5m以上とすることができます。
庇形状の日よけテントは、道路からの出寸法が0.5~1.0mと認められる範囲が自治体によって様々です。高さの基準は袖看板と同じで日よけテントの最下部が測定点になります。
工事用の足場は道路の突出が1m以内が許可基準です。自治体によっては、「かつ歩道復員の1/3以内」と定めているところもあります。上空を占有する場合も許容出寸法は同じです。
下端までの高さは歩道であれば2.5~3.0m以上、車道であれば4.5~4.7mという基準が設けられています。
工事用の道路占用は、支柱を立てればさらに占有の出寸法を伸ばせる自治体もあります。しかし反対にこのタイプを想定していない自治体もあり、工事着手に際しては担当窓口と十分な協議が必要です。
道路を占用できる期間
許可を受けられる占用期間は、公益企業であれば10年ですが、その他の一般許可は5年が期限とされています。さらに占用を続けたい場合は、更新手続が必要です。
道路占用許可の申請費用
申請手数料は自治体によって異なります。手数料が不要の自治体が多数ですが、一部1,000円前後の手数料が必要な自治体もあります。
道路占用料が必要
道路を占有した場合、道路管理者に道路占用料を支払うことになります。これもそれぞれの自治体が条例で定めていますので、都市によってまちまちです。
国道を占用した場合は、国土交通省の定めた占用料によりますので、これを以下に示します。なお国の場合は、全国を第一級地から第五級地に分類して料金を定めています。ここでは首都圏や県庁所在地の多くが適用される第一級地の占用料を示します。
年間を通して設置されている看板と違って、工事用施設は1年以内に撤去されるものがほとんどですから、月単位で料金が定められています。
看板は表示面積で料金が定められています。袖看板は通常両面表示ですから、それぞれの面積が換算されます。自治体によっては、こうしたケースは片面の1.5倍が対象になるところもあります。
にぎわいの創出のための道路占用許可の特例
地域の活性化や都市の賑わいを創出するために、道路占用許可の許可基準を一部見直しすることを国が提唱しています。
その効果もあって、これまで実現できなかったことが実現しているケースが各地に出現しています。
路上イベントの特例
地方公共団体が主催するものや支援するイベントに限り、道路占用許可の許可基準が緩和されるようになりました。
このため、これまで認められなかった「テント、パラソル、ステージ、やぐら、音響用機器」などの設置に対して道路占用許可がおりるケースが全国的に増加しています。
オープンカフェの特例
路上にパラソルやテーブルを出す、いわゆるオープンカフェの形式に対して道路占用許可がおりることは、基本的にはありません。
ところがこれも「にぎわい・交流の創出のための道路占用許可の特例」として認められるケースがいくつか出現しています。
これはある一定のエリアを市町村が「都市再生整備計画の区域」と位置づけることによって食事施設や自転車駐車器具の占用許可基準が緩和される制度です。
大阪市のうめきた先行開発地区(オープンカフェ・広告事業)をはじめ、実際にいくつかの都市でこの制度を活用した事業が展開しています。
道路占用許可の申請手続
それでは実際どのように道路占用許可申請手続を進めていけばいいのでしょうか。
道路占用許可をとるには、誰がどこにいって申請すればいいのか、どんな書類を添付すればいいのかなど各種手続について詳しくご説明します。
さらには、はたして個人でどこまで手続が可能なのか、やはり専門家に任せた方がいいのかについても触れていきます。
道路占用許可申請の申請官庁は?
道路の種類によって申請場所が異なります。道路の種類と申請先の関係を以下の表に示します。
それぞれの部署が独自の許可基準を運しているので、申請前に必ず許可基準を確認しましょう。
個人で行う場合の手続
申請の前には事前協議が必要です。事前協議によって、これなら許可がおろせるというレベルまでつめてから許可申請をしましょう。
行政手続法上は事前協議なしに申請をしてもいいのですが、不要な軋轢を避けるためにも事前協議は不可欠です。
道路占用許可申請は、各自治体が定めた書式によって記入をしていきます。図面は「位置図」「平面図」「断面図」が必要です。位置図とは地図のようなもので、たとえば看板を設置しようとするならば、その建物が地区のどこに位置しているのかを示します。
市販の地図を用いて作成する場合は、著作権違反にならないよう複製許諾シールを貼りましょう。
平面図は看板と道路を上から見た図です。この図面で道路を何㎡占有しているのかを示します。
断面図は真上から看板を切断したところを真横から見ている図です。これで道路からの高さ、道路突出長さ、看板の表示面積が分かります。
図面は通常、看板会社が作成してくれますが、入手できない場合は自分で書きましょう。その場合道路から高さ、突出長さ、看板の大きさを正確に把握する必要があります。
行政書士に依頼するときに準備するもの
自分で申請手続をするのが困難だと判断したら、行政書士に手続を依頼する方法があります。
場合によっては、看板会社が手続の代行をしますと言ってくるかもしれません。
あるいは店の設計をしてくれた建築士が申請代理をしますと言うかもしれませんが、申請手続には資格がいるので注意してください。
報酬を得て官公署に申請手続ができるのは法律上、行政書士のみです。
看板会社にはそもそも行政手続をする資格がありません。建築士が手続代理ができるのは、建築確認申請などの建築物に関することに限定されています。
看板は建築物ではないので建築士にも手続代理はできません。
このため道路占用許可を依頼するのは、行政書士に限定されます。依頼する際には前項であげた図面の有無や工事期間、占有期間を行政書士に伝えましょう。
更新手続に必要なもの
更新手続は簡単です。
満了期間が近づくと許可した官公署から往復はがきで「道路占用期間満了通知書」が郵送されてきます。これに必要事項を書いて返送すればいいのです。
簡単といっても、手続を怠れば不法占拠物件になりますので注意が必要です。
まとめ
ここまで道路占用許可について、いろいろお話をしてきましたが、いかがだったでしょうか。道路占用許可の申請手続が煩雑だと感じられた方は、手続の専門家である行政書士に依頼されてはいかがでしょうか。
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