訪日外国人の急増を受けて、今注目されているのが民泊です。
今回は、これから民泊ビジネスを始める人のために、民泊の基礎知識から申請・許可・行政書士への依頼費用まで紹介します。基本的なことから学んでいきましょう。
民泊の基礎知識
まずは、民泊について基本的なことから見てみましょう。
民泊を行うための4形態
一言に民泊といっても様々な形態があり、主な形態は以下の四つです。
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現在、民泊として申請できる形態はこの4つです。
「旅館業法の簡易宿泊所」は所轄自治体による許可が必要ですが、「民泊新法」は届出の提出で民泊の運営ができます。
両者を混同して、前者の形態による民泊を許可なく行ってしまうと法律違反にあたりますので注意が必要です。
これから民泊の申請許可をしようとしている人は、きちんと所定の手続きを踏みましょう。
では、次にそれぞれの形態の民泊について、メリット、デメリットを交えながら詳しく解説します。
自宅を簡易宿泊所として民泊経営
自宅の中の一室を民泊に使用したい場合、旅館業法の中の簡易宿泊所として許可申請を提出します。簡易宿泊所としての民泊とは、どういったものなのでしょうか?
旅館業法の簡易宿泊所は、多数人で共用して使用する宿泊所のことを言います。この形態が民泊の中で最も一般的なものになります。
ほかの民泊形態と異なり、営業日数に上限がなく、宿泊日数にも上限がありません。つまり営業形態に自由度が高く、収益も出しやすいです。
一方で、簡易宿泊所としての営業には許可が必要であり、許可を得るためには旅館業法や各自治体の条例で指定された要件をクリアしなければなりません。またその要件をクリアするためにさまざまな設備を整える必要があり、したがって費用もより多くかかります。
「旅館業法にのっとって準備が出来たから」といって、勝手にインターネットの民泊サイトで宿泊客を募集することは出来ませんので、準備ができたら必ず許可申請をしましょう。
戦略特区で民泊経営
現在、急増する外国人観光客や地域振興を目的として「国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業」が始まっています。
この事業の内容は、全国の指定したエリアの自治体は、自ら条例を制定でき大幅に規制を緩和できることが特徴です。
主な特区民泊エリアは以下の通り。
<首都圏エリア>
<関西圏エリア>
<九州エリア>
<その他>
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特区民泊のメリットは、
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ただ2泊3日以上の滞在が必須条件になっていますので、注意が必要です。
簡易宿泊所の許可の取得よりは比較的に申請しやすい特徴がありますので、このエリアで民泊を考えている人はビジネスチャンスと感じているかも知れません。
期間限定で民泊経営
期間限定で一軒家やマンションを民泊として使用したい人は、 民泊新法(住宅宿泊事業法)による届出住宅としての民泊の適用を受ける必要があります。
2018年の6月にできた民泊新法は、旅館業法で定める四つの形態(ホテル、旅館、簡易宿泊所、下宿)以外の新しい形態です。
上記の形態と大きく違うところは、営業日数の違い。つまり民泊として人を宿泊させる日数が年間180日以内なら旅館業法の適用除外となります。
また、民泊新法における民泊開始に必要な要件は、旅館業法や民泊特区に比べると易しく、役所に「届出」するだけでいいです。
家を一定期間空ける人やマンションに空きができて民泊として収入を得たい人は、この法律の適用を受けましょう。
イベント民泊として民泊経営
イベント民泊とは、地域で何か大きなイベントがあり、周辺の宿泊施設の不足が懸念されるときに、短期間一軒家やマンションを宿泊施設として使用するもの。
東京オリンピックに伴う観光客の集中を想定しているもので、首都圏を中心に宿泊施設を確保が目的です。
イベント民泊は旅行業法に基づく営業許可をとる必要がないので、手続きが簡単なため始めやすい民泊ですが、期間限定のため長期的なビジネスを考えている場合は簡易宿泊所の申請をしましょう。
民泊許可申請に関わる法令・条例
ここからは、民泊の許可申請に関わる法令、条例を解説します。
大きく関わってくるのが旅館業法ですが、そのほかにも一軒家やマンションを民泊として使用するための建築基準、必要な資格など知っておかなければならないことがたくさんあります。
何も知らずに、物件だけ確保してしまうと思わぬ落とし穴があるかもしれません。
旅館業法とは?
民泊を始める上で知っておかなければならない法律が旅館業法。この法律は、宿泊料金をもらって宿泊施設を提供する、ホテルや旅館等に適用されるものです。民泊も同じ条件になるので、当然適用されます。
※特区民泊やイベント民泊は旅館業法の適用ではありません
旅館業法としての民泊の許可を得るための規定は、以下の通りです。
<簡易宿泊所>
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<下宿営業>
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上記以外にも、都市計画法や建築基準法、各自治体の条例が定める基準をクリアしなければなりません。
なお事業者は以上のすべての基準を満たして届出を出すだけでなく、許可まで受ける必要があります。
民泊の建築基準とは?
民泊を始めようとする人は、一軒家やマンションの一室を使用することを考えている人が多いですが、通常の居住用の建物ではホテルや旅館の許可がとれません。
現在の建築基準では、ホテルが10室、旅館は5室以上と決められているので、民泊を一軒家やマンションの一部屋で始めるときは、簡易宿泊所としての許可をとることになります。
また、民泊を始める上で大切になってくるのが「建物の用途」の考え方です。
建物には、住居として住む、工場として使うなどそれぞれ目的があり、そのための設備や建築基準を満たしていなければならないのです。
今まで住んでいた自宅やマンションを民泊として使う場合は、住居としての用途からホテルや旅館の用途に変更するための手続きが必要です。
用途変更を行う場合は、自治体に「用途変更確認申請」という書類を提出します。住宅の図面などの書類も必要なため、建築士などの専門家に相談しましょう。
規制緩和により民泊運営が始めやすくなったとはいえ、許可が下りるようになるには諸々の準備が必要です。
民泊に必要な資格とは?
近年増加する民泊トラブルに対応するために、民泊適正管理主任者という資格ができました。
この資格は、民泊事業を円滑かつ適正に運営するため契約や法律、トラブル対処法など民泊に関する必要な知識を学び、良質な民泊を増やそうとする狙いがあります。
講習とレポートでとれる資格で、合格した者には、適合マークをつけることができます。このマークを基準に民泊を選ぶ宿泊者も増えています。
知っておきたい民泊新法
民泊トラブルの増加を受けて安全面、衛生面、騒音などの基準を定めた民泊新法ができました。
民泊新法の大きなメリットは、民泊として自宅の一軒家やマンションに宿泊者を泊まらせる日数が年間180日以内なら旅館業法の適用を受けないことです。
その他にもざまざまな規定があり、旅行業法との違いは次の通り。
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この法律に定められていることを守らないと民泊の届出が受け入れられず、再提出になる可能性がありますので注意してください。
細かい要件は各自治体の条例を確認
第四条 営業者は、旅館業の施設について、換気、採光、照明、防湿及び清潔その他宿泊者の衛生に必要な措置を講じなければならない。(旅館業法)
と旅館業法にありますが、「必要な措置」の具体的内容は各自治体によって定められています。また自治体によっては「景観条例」が定められている場合がありますので、確認が必要です。
なお各条例について相談したい場合は、後述する保健所の担当課に行くとよいでしょう。
法律に違反した営業を行うと厳しい罰則がある
無許可営業をしたり、旅館業法や民泊新法の規則から逸脱した営業を行うと当然ながら罰則が科せられます。加えて、2017年の旅館業法改正で、罰金の上限が大幅に引き上げられたり、懲役刑も併科される可能性が出てきたりと、その罰則がさらに厳罰化されました。
民泊を行う際には必ず関連の法律を確認し、それにのっとった営業をするよう肝に銘じておくとよいでしょう。
民泊許可申請の必要書類
民泊を始めるためには色々な手続きや申請許可、確認が必要なことは分かってきたと思いますが、ここからは具体的に申請許可に必要なことを学んでいきましょう。
民泊許可申請の前に
民泊許可申請の前に、民泊で使用しようとしている物件が民泊に使用していいものか確認しましょう。ここで具体的に問題となるのは賃貸物件です。
大家さんに許可を取らずに民泊を行うことは、場合によっては賃貸規約違反に該当しますし、マンション・アパートの一室を使用する場合は他の部屋の住民のことも考える必要があります。後々になってトラブルにならないよう、最初の大家さんや他の住人に承諾を得ておくことが望ましいです。
民泊の許可申請はどこで取る?
いざ民泊を始めるためには、自治体や国に許可申請が必要です。一軒家やマンションを民泊として使用する場合、まずは、簡易宿泊所の許可をとるのが一般的で申請許可は保健所になります。
<保健所内の申請許可>
- 建築基準課→建物の用途、耐震防災
- 開発審査課→都市計画法に合致しているか
- 環境保全課→風営法に違反してないか
<その他の申請許可>
- 消防局→防災設備など
- 下水道処理センター→排水設備など
- 都市計画課→景観など
ざっと紹介しただけでこれだけの関係箇所に許可申請をする必要があります。
また、マンションの場合は、それぞれのマンション管理規約も絡んできますので申請許がおりる難易度は高めです。
官公庁へ提出する書類
官公庁へ提出する書類は次の通りです。
- 登記事項証明書
- 状況見取り図→周囲300メートルの範囲内の状況
- 配置図、平面図→敷地、面積、部屋数、施設など
- 構造施設の使用図
- 使用許諾書
- 水質検査成績書→水道水の水質検査
- 土地、建物登記簿
- 建築検査済証
これらの申請書類を保健所に提出する必要があります。
図面や添付書類の作成
- 台所、浴室、トイレ、洗面設備などが載っている住宅の図面
- 賃貸物件の場合は、転貸の承諾書
- マンションの規約の写し
- 消防法適合通知書
- 誓約書→成人である、暴力団と無関係などを証明するため
- 身分証明書
上記は個人が民泊をするために必要な書類です。法人として民泊を始める場合は必要書類がプラスされます。
民泊許可申請の流れ
では、実際に行政書士に依頼するとどのようなことをしてくれるのでしょうか?
簡易宿泊所→事前確認と申請書類の代行
特区民泊→事前確認と届出代行
民泊新法→事前確認と届出代行
申請する民泊の形態によって差は出ますが、申請書を役所が受理してから許可証を交付するまでに要する期間は、概ね10日です。
民泊許可申請を行政書士に依頼した場合の費用は?
民泊を始めるため、様々な手続きや申請書類の用意をすべて自分一人でやるのはとても大変です。そこで強い味方になってくれるのが行政書士です。
ですが、行政書士に頼むとどのくらい費用がかかるのでしょう。そこで、個人で許可申請を行った場合と、行政書士に依頼した場合の費用の比較をしてみました。
個人で民泊許可申請した場合の費用
個人で民泊の許可申請した場合の主な費用は旅館業営業許可書の手数料です。
民泊の形態で多い簡易宿泊所の場合は、東京の場合で16,500円、大阪の場合で22,000円と地域によってばらつきがありますので確認しておきましょう。
この他にも登記簿の取得費用、建物の平面図や配置図、水質検査の費用などがかかってきます。
費用はあまりかかりませんが、揃える資料が膨大となりますので、大変な労力が必要です。
行政書士に民泊許可を代行依頼した場合の費用
行政書士に民泊許可を代行した場合の費用を見てみましょう。
簡易宿泊所の場合
- 事前調査→約5万円
- 新規開業費用→約40万円
特区民泊の場合(大田区・大阪市の例)
- 大田区に申請→約32万円
- 大阪に申請→約27万円
民泊新法の場合
- 住宅宿泊事業届出→約24万円
- 住宅宿泊管理業登録申請→約24万円
※すべて自治体に支払う手数料込みの値段
このように申請する内容によって金額が変わってきます。
一見すると個人で民泊申請するよりも高額に見えますが、複雑な申請手続きに必要な事前調査から申請書類の作成代行までしてくれてます。
自分がどのような形態で民泊を始めたいのかしっかり決めた上で相談してみましょう。
まとめ ミツモアで行政書士を探そう
いかがでしたか?
民泊を始めるにあたり、基礎知識から申請に必要な手続き、行政書士に頼んだ場合の費用などを紹介していましたが、大切なポイントは下記の通りです。
- 民泊を始めるためには、旅館業法の営業許可を取る必要がある。(例外あり)
- 特区民泊や民泊新法など民泊を始めやすい環境が整いつつある。
- 個人で申請を行うのはとても大変な労力がかかる
- 行政書士に申請を代行してもらうのがベスト
民泊が広がりを見せつつある日本で、建築基準違反や衛生面、安全面に違反している民泊を取り締まる傾向があります。
しっかりと手続きをしなければ民泊を続けていくことはできません。
複雑な申請を許認可の専門家である行政書士にお願いすることが、民泊を始めるための近道です。
自分にあった行政書士をみつけるためにミツモアを活用してみてはいかがでしょうか?