廃油やプラスチックなどの産業廃棄物の処理を事業として行うのに必要なのが、産業廃棄物収集運搬業の許可です。
産廃収集運搬業許可を取得するには、講習の受講や事業計画の提出、資金力の証明など多くの要件があります。許可を受けるまでに必要なプロセスをまとめました。
この記事を監修した行政書士
井口国際コンサルティング事務所 - 千葉県千葉市緑区おゆみ野中央
産業廃棄物収集運搬業許可があるとできること
産業廃棄物収集運搬業許可は、企業などから委託を受け、産業廃棄物を集めて運ぶために必要な許認可です。この許可でできるようになる仕事はおもに以下の2つです。
産業廃棄物の回収が可能になる
産業廃棄物収集運搬業許可を受けると、さまざまな産業廃棄物の収集・運搬ができるようになります。
産業廃棄物は、事業活動に伴って生じた廃棄物のうち、法律・政令で定められた20種類のことです。具体的には、金属くず・木くず・燃え殻・廃油・がれき類などが挙げられます。
事業活動によって出る産業廃棄物と一般廃棄物は、法律上明確に分けられており、収集や運搬に関するルールが定められています。
産業廃棄物収集運搬業許可の資格があれば、委託を受けて他社の産業廃棄物を回収するビジネスを始められるので、仕事の幅が広がるでしょう。
一般家庭のエアコン・冷蔵庫などの回収も条件つきで可能
いわゆる「家電リサイクル法4品目」である、エアコン・テレビ・冷蔵庫・洗濯機は、産業廃棄物収集運搬業許可を得ていれば回収が可能です。
ただし「小売業者または指定法人もしくは、指定法人の委託を受けていること」という条件を満たしている必要があります。
家電量販店やリサイクルショップなどと提携すれば、さらに仕事の幅を広げられます。
産業廃棄物収集運搬業許可の取得要件
産業廃棄物収集運搬業の許可を取得するには、以下5つの要件を満たさなくてはいけません。
- 講習会を受講し、修了証を取得していること
- 事業の継続に必要な経理的基礎を有していること
- 適切な事業計画が立てられていること
- 収集運搬に必要な施設があること
- 定められた欠格事由に該当しないこと
指定講習会を受講し、修了証を取得していること
新規で産廃収集運搬業許可を取得しようとする事業者には、講習会の受講が義務付けられています。
産業廃棄物の適切な処理に必要な専門知識・技能を身に着けることが目的です。
講習会の受講対象者は、個人事業主の場合は事業主本人、法人の場合は法人の代表者・役員・事業所の代表者などです。
都道府県や政令市によって異なる場合があるので、事業を行う地域の取り扱いを確認しましょう。
講習会の受講者枠はすぐに埋まってしまうので、許可申請を検討するときはまず講習会の予約から始めるのをおすすめします。
事業の継続に必要な経理的基礎を有していること
許可を受けるには、事業を適切に継続できる財務基盤があるかどうかも問われます。
自己資本比率や直近3年間の経常利益、税金などの納付状況から判断されるのが基本です。具体的には、「債務超過がないか」「継続して利益を上げられる状態にあるか」といった観点で確認が入ります。
新規で法人を設立するため経営の実績がなかったり、財務状況がよくなかったりする場合は、収支計画書や事業改善計画書などの追加書類を求められることがあります。
適切な事業計画が立てられていること
法律にのっとって適切に事業を営む計画を整えていることも示さなければなりません。
収集予定の産業廃棄物の種類や運搬量、予定している運搬先、収集・運搬の方法や使用する車両の情報など、具体的な計画をまとめて提出する必要があります。
実際に事業を開始しているわけではないので、事業計画には予定・計画段階の情報を記載して構いません。
ただし現実味のない内容になっていると指摘が入り、審査がスムーズに進まないので注意しましょう。
事業に必要な収集運搬施設(車両・容器・駐車場)があること
収集予定の産業廃棄物の運搬に適した収集運搬施設を有しているかどうかも確認されます。
- 産業廃棄物を適切に運搬できる車両・容器を用意しているか
- 車両や容器、駐車場の使用権限があるか
たとえば、ふん尿を運搬するのであれば悪臭が漏れない容器が必要ですし、土砂の積載が禁止されている車両だとがれき類の運搬ができません。
用意した車両を置いておくのに十分なスペースがある駐車場も必要です。
欠格事由に該当しないこと
法律にしたがって適切に事業を行えない可能性がある者を規定する「欠格事由」というものがあります。
許可を受けようとする事業主や、法人の役員・株主などが欠格事由に当てはまる場合、許可は受けられません。
具体的には、「暴力団関係者」「破産者」「判断能力が不十分な者」に該当しないかどうかが確認されます。
また、資格を取得した後に欠格事由に当てはまってしまった場合も、許可が取り消されます。
欠格事由の詳細は以下の見出しで解説しています。
産業廃棄物収集運搬業許可の取得に必要な講習会の受け方
産業廃棄物収集運搬業の許可申請時には、指定の講習会を受けたことを証明する修了証を提出する必要があります。
講習会には定員があり、早めに予約しないと枠が埋まってしまう恐れがあります。特に都市圏で開催される講習会は埋まるのが早いです。
許可の取得に向けて動き始めたら、まず講習会の予約を取ることが大事です。
受講予約から修了証を受け取るまでの流れ
- 「日本産業廃棄物処理振興センター」のWebサイトで講習会の予約を取る
- 受講料を支払う
- オンラインまたは対面で講習会を受講する
- 事前に指定した会場で試験を受ける
- 合格したら修了証を受け取る
「公益財団法人 日本産業廃棄物処理振興センター」のWebサイトで「産業廃棄物の収集・運搬課程の新規」の講習を選択し、日時と空き状況を確認します。試験会場は全国にあるので、最寄りの場所を選びましょう。
仮受付を済ませたら、受講料を支払います。受講方法はオンライン形式と対面形式があり、後者の方が受講料が高いことが特徴です。支払い完了後に受講番号やテキストが届きます。
産業廃棄物の収集・運搬課程のカリキュラムは5科目で、オンライン形式の講義視聴時間は12時間です。
対面式の場合も2日間にわたって講習会に参加する必要があります。まとまった時間を確保して臨みましょう。
講習会に出席した後、事前に指定した会場で試験を受けます。不合格の場合も2回まで再試験を受けられますが、別途受験料が必要です。
合格すれば修了証が郵送されます。修了証が届くまではだいたい2~3週間程度かかります。
産業廃棄物収集運搬業許可の欠格事由
法令で定められている欠格事由に該当する人は、産業廃棄物収集運搬業許可を受けられません。
産業廃棄物収集運搬をするにあたって、不適格だと判断されるのは、どのような人物なのか見ていきましょう。
法令で定められた欠格事由の内容
廃棄物処理法の第7条と第14条に定められている欠格事由の中から、代表的なものを紹介します。
- 成年被後見人や被保佐人・破産者であり復権していない
- 暴力団員をやめてから5年が経過していない
- 「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」(第31条7項を除く)や傷害罪・脅迫罪などで罰金刑に処され、5年を経過していない
- 禁固刑以上の刑罰を受けてから5年が経過していない
- 廃棄物処理法や浄化槽法など、生活環境の保全を目的とする法令に違反した事実があり、5年を経過していない
- 廃棄物処理業や浄化槽清掃業の許可を取り消された日から5年を経過しない
- 暴力団員に事業活動を支配されている
- その業務に関し不正または不誠実な行為をする恐れがあると認められる理由がある
成年被後見人や被保佐人は精神上の障害があり、判断能力がないと認められた人のことです。
罰金刑や禁固刑などの刑罰を受けた経験がある場合には、欠格事由に該当する恐れがある点を押さえておきましょう。執行猶予があり、実際には服役しなかった場合であっても、欠格事由に該当します。
欠格要件に該当してはいけない人物
以下の人物が欠格要件に該当していると、許可が下りません。
- 法人…法人・会社役員・株主(持ち株比率5%以上)・顧問・相談役・支店長や所長など政令で定められた使用人
- 個人…個人事業主
役員だけでなく、法人に対して「実質的な支配力を発揮できる立場の人」も、対象である点に注意しましょう。
許可を受けた後に欠格要件に当てはまった場合、営業中であっても許可が取り消されます。許可申請のタイミングだけでなく、適法かつ適切に事業を営んでいることを証明し続けなければなりません。
産業廃棄物収集運搬業許可の申請方法とかかる費用・時間
申請方法
各都道府県によって細かい申請方法が異なりますが、許可申請書と事業計画書を窓口で対面で申請する方法が基本です。
事前に予約を行わなければならないケースもあります。あらかじめ窓口に問い合わせるか、ホームページを確認して、申請の流れを把握しておきましょう。
申請先は都道府県知事ですが、都道府県をまたいで収集運搬をする場合は、産業廃棄物を回収する場所と、降ろす場所の両方からの許可が必要です。
申請書類の必要事項は多く、併せて提出しなければならない書類も多岐にわたります。個人で行う際は、かなりの労力を要することを覚悟しましょう。
許可申請にかかる費用
産業廃棄物収集運搬業の許可にかかる費用は、おもに講習会の受講料と申請時の手数料です。
項目 | 金額 |
---|---|
講習会受講料 | オンライン:25,300円 対面:29,700円 |
新規許可申請手数料 | 81,000円 |
更新手数料 | 積替え保管を除く:42,000円 積替え保管を含む:73,000円 |
※2023年8月時点
なお、一度受けた許可は永続的に有効ではなく、5年ごとに更新しなければなりません。更新申請時にも手数料が必要です。
許可申請にかかる時間
申請を行ってから審査が完了するまでにかかる時間も、都道府県によって異なります。2カ所以上で申請する場合、許可日が異なる点にも注意しましょう。
審査には3カ月程度の時間を有することが多く、申請に不備があると、さらに多くの時間を要します。
無駄なやり取りなくスムーズに申請するには、産業廃棄物収集運搬業の許可申請の経験が豊富な行政書士に依頼するのがおすすめです。
産業廃棄物収集運搬業許可に関するQ&A
産業廃棄物収集運搬業許可に期限はある?
産業廃棄物収集運搬業許可の有効期限は「5年間」です。許可が取れた日から5年目になる前日で切れます。審査期間のことも考慮し、2~3か月前までに更新許可申請を出せるように準備しましょう。
期限を1日でも過ぎてしまえば、産業廃棄物の収集運搬業を続けられません。再び事業をするには、新たに許可を取り直す必要があります。
また更新するには、講習会の受講が必須です。新規修了証の有効期限は5年間、更新修了証の有効期間は2年間ですが、都道府県によっても異なるので注意しましょう。
産業廃棄物収集運搬業許可が不要なケースは?
自社から出た産業廃棄物のみを収集運搬するだけであれば、許可は要りません。委託を受けて産業廃棄物収集運搬をする場合に許可が必要です。
また元請けで解体工事をした際に出る解体物を収集運搬する際には不要とされています。産業廃棄物は排出者の責任で処理できるので、自社で処理して問題ないという扱いです。
ただし収集運搬のためのルールは適用されます。
飛散・流出の防止や、悪臭がもれないようにする措置を取る必要があります。運搬車両の表示や、必要書類の携帯も義務づけられている点に注意しましょう。
また空き瓶や古紙の回収など「リサイクル目的の場合」も、原則として許可は不要とされています。
産業廃棄物収集運搬業の申請は行政書士に依頼するのがおすすめ
産業廃棄物を回収するビジネスを始めるには、産業廃棄物収集運搬の資格取得が不可欠です。許可を得るまでには、講習会の申し込みをし、講習を受け、試験に合格する必要があります。
その後、都道府県へ申請を行い、審査を経てようやく許可が受けられる流れです。事業を始めるにあたって必要な要件を満たすことも重要ですが、まずは講習会の修了証を手に入れることから始めましょう。
申請の際は、行政書士の手を借りるとスムーズです。自分で申請する時間がない人や、確実に事業を開始したい人は依頼するのが賢明です。
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この記事を監修した行政書士
井口国際コンサルティング事務所 - 千葉県千葉市緑区おゆみ野中央