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貨物軽自動車運送事業に必要な条件は?一般的な運送事業との違いも

最終更新日: 2023年09月04日

軽トラックなどの軽貨物車で行なう運送業を「貨物軽自動車運送事業」といいます。車両1台から事業をはじめられるので、個人事業主として開業する方も多いです。令和4年10月27日より、軽乗用車も貨物軽自動車運送事業の用に供することが可能となりました。

この記事では、事業を始めるための要件や手続きの手順を解説します。

この記事を監修した行政書士

井口国際コンサルティング事務所 - 千葉県千葉市緑区おゆみ野中央

 

貨物軽自動車運送事業とは

軽トラック

貨物軽自動車運送事業は、他人から依頼を受けて、軽自動車または二輪自動車を使って有償で荷物を運ぶ事業です。

具体的には、軽トラックや軽自動車に分類される乗用車、バイクなどの車両が使われています。

黒地に白いナンバーが刻まれた、通称「黒ナンバー」を車両に取り付けるのが特徴です。

国土交通省に届出を行い、受理されたら事業を始められます。荷物の宅配や引越しなどの仕事を請け負っている事業者が多いです。

一般的な運送業との違い

運送業には貨物軽自動車運送事業のほかに、「一般貨物自動車運送事業」「特定貨物自動車運送事業」があります。

貨物軽自動車運送事業との主な違いは、車両の種類です。

貨物軽自動車運送事業では軽自動車を使用しますが、一般貨物自動車運送事業ではトラックを使って荷物を運ぶのが一般的です。

特定貨物自動車運送事業は荷主が1者のみの事業を指します。

車両は一般の自動車やトラックが主流です。運送を依頼する個人や会社が1つなのであれば、特定貨物自動車運送事業の許可があれば経営できます。

貨物軽自動車運送業を始めるための要件

貨物軽自動車運送事業を始めるには、以下の要件を満たさなければなりません。

  • 軽貨物車両の確保
  • 営業所・休憩施設・車庫の確保
  • 運行管理体制の整備
  • 損害賠償能力
  • 運送約款の制定

①軽貨物車両の確保

運送に使用する車両を最低1台以上用意して届け出る必要があります。使用できる車両は排気量660cc以下の軽トラックや軽乗用車、排気量125ccを超えるバイクが該当します。

車両の種類や乗車定員、最大積載量の規定をクリアできる車両を用意しましょう。

かつては軽貨物車とバイクに限られていましたが、2022年10月より、軽乗用車でも黒ナンバーを取得できるようになっています。

②営業所・休憩施設・車庫の確保

車両のほかに、営業所や乗務員の休憩施設、車両を収める車庫を確保していることを示す必要があります。

個人事業主として開業する場合、自宅を営業所として申請するケースが多いです。

自己所有物件でも賃貸物件でも申請はできますが、賃貸借契約などで使用権限があることを証明しなければなりません。

車庫は原則として事業所併設または半径2km以内に所在する必要があります。通常は自宅のガレージや、事務所の併設駐車場を届け出ることが多いでしょう。

所持する車両を全て収容する広さがあり、使用権原を有していることが要件です。また関係法令に抵触せず、他の用途に使用されるものとの明確な区分けも求められます。

③運行管理体制の整備

貨物軽自動車運送事業を営むために必要な運行管理体制が整備されているかどうかも確認されます。

常勤の運行管理責任者と、車両数と同数の運転者を確保し、安全かつ適切な事業運営ができることを示さなくてはいけません。

とはいえ一般貨物自動車運送事業とは異なり、貨物軽自動車運送事業では、資格を持った運行管理責任者を置く必要はありません。事業主が運転者も運行管理責任者も兼ねることができます。

なお、事業に使用する車両が10台以上になる場合は、整備管理者の選任が必要です。

④損害賠償能力の有無

損害賠償請求をされたときに、十分に支払いができるかを証明する必要があります。

すべての自動車に加入が義務付けられている「自賠責保険」のほか、自賠責保険ではカバーしきれない可能性を考えて「任意保険」への加入も検討すると良いでしょう。

⑤運送約款の制定

届出にあたって「運送約款」というルールを定める必要があります。

運賃の収受や事業者の責任についてを定めるもので、事業者の利益を優先し、依頼主の利益を損ねるような内容でないかどうかを見られます。

また、事業内容について、旅客の運送ではなく貨物の運送を行うことを明確に示さなくてはいけません。

国土交通省が公示した「標準貨物軽自動車運送約款」を使用することも可能です。標準約款を使用する場合は、自社の事業に適合した内容であるかを確認しましょう。

貨物軽自動車運送業の届出に必要な書類・費用

貨物軽自動車運送事業の申請には、指定の書類を提出しなければなりません。必要書類と申請にかかる主な費用について解説します。

提出書類

新規申請時に必要となる書類は、主に以下の4点です。

  • 貨物軽自動車運送事業経営届出書
  • 運賃料金表
  • 事業用自動車等連絡書
  • 車検証の写し(新車であれば車体番号が確認できる書面)

貨物軽自動車運送事業経営届出書と運賃料金表には指定の様式があります。

管轄の運輸局Webサイトからダウンロードするか、運輸支局で配布されているものを準備しておきましょう。

提出用と控えの2部を用意します。控えは提出後に返却されますが、届出の証明になるため大切に保管しましょう。

事業用自動車等連絡書には、事業に使用する車両の情報を記入します。

運輸支局への提出用と、軽自動車検査協会への提出用(黒ナンバーの発行)の2部用意しましょう。

すでに黒ナンバーを取得し、貨物軽自動車運送事業に使用されている車両を譲り受けるケースでは、元の使用者側でも手続きが必要です。

費用

貨物軽自動車運送事業の届出そのものには、費用はかかりません。

ただし新しいナンバープレートの交付には一定の手数料がかかります。黒ナンバーの交付手数料は地域差がありますが、おおむね1,400~1,500円程度と考えておきましょう。

そのほか、開業および事業の維持にあたっては一定のコストがかかることも頭に入れておかなければいけません。

新たに車両を用意する場合、中古車両でも50万円前後は見ておく必要があります。

継続してかかるコストは、営業所や駐車場の賃料(賃貸の場合)、車両保険料、ガソリン代、車検費用などです。

貨物軽自動車運送事業を開業する流れ

貨物軽自動車運送事業を開業するまでには、以下の流れで手続きを行います。

  1. 運輸支局で書類の届出
  2. 軽自動車検査協会でナンバープレートの発行
  3. 税務署で開業届の提出

①運輸支局で書類の届出

営業所のエリアを管轄する運輸支局に出向いて、必要書類を提出します。

書類に不備がなければ、当日中に届出が受理されます。このとき、黒ナンバーの取得に必要な押印済みの事業用自動車等連絡書を受け取りましょう。

抜け漏れや書類の添付忘れが不安な場合は、行政への提出書類作成のプロである行政書士に申請のサポートを依頼するのもおすすめです。

②軽自動車検査協会でナンバープレートの発行

軽自動車検査協会に出向き、運輸支局で受け取った事業用自動車等連絡書、車検証の写し、使用中の黄色のナンバープレートを提出しましょう。

引き換えに事業用の黒地のナンバープレート(黒ナンバー)が交付されるので、車両に取り付けます。

なお、ナンバーの希望がある場合や、字光式ナンバーを希望する場合は、別途手続きが必要です。

③開業届の提出

届出が受理され、黒ナンバーも取得したら、事業を開始できます。

開業日から1か月以内に、事業所の所在地を管轄する税務署に開業届を忘れず提出しましょう。

税負担が軽減される青色申告で確定申告をするために、「所得税の青色申告承認申請書」を同時に提出しておくのがおすすめです。

貨物軽自動車運送事業の申請準備は行政書士に依頼できる

試験の受験や審査が必要な一般貨物自動車運送事業と異なり、貨物軽自動車運送事業の申請は届出制で、受理されるまでそれほど時間はかかりません。

しかし実際に事業を始めるまでには、会社設立や営業用黒ナンバーの取得、車検など、多くの作業が必要です。

行政書士に依頼すれば、手続きの進め方から提出書類の作成まで、全面的にサポートを受けられます。

自分で調べて届出準備をする時間がない場合や、手続きの抜け漏れが心配な場合は、ぜひ一度相談してみましょう。

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この記事を監修した行政書士

井口国際コンサルティング事務所 - 千葉県千葉市緑区おゆみ野中央

井口美保子(行政書士、宅地建物取引士、消費生活相談員、日本FP協会所属AFP、MBA、法務博士) 多角的な資格と深い法律知識及び経験により、ビジネスに関する各種許認可とビザなどの国際業務をメインに活動。宅建業免許も取得し、不動産が絡む相続手続き、農地転用、許認可取得のための事務所・店舗探しなどにも強みがある。海外生活も経験しているため、英語対応可能な国際派行政書士。 コメント: 新しく事業を始める場合、その事業開始のために「許可」の取得が必要なのか、「届出」が必要なのか確認してください。「許可」と「届出」では取得の際の難易度が異なります。「届出」よりも「許可」を取得する方が難易度が高いです。 貨物軽自動車運送事業開始には、「届出」が必要です。「届出」ですので、ご自分で手続きしても書類に不備がなければ受け付けられます。 ただ、窓口が混雑する傾向にあるので、相談や申請の待ち時間が長い、修正や訂正箇所が多くなり窓口に何度も足を運ぶ必要が出てくる、などのデメリットはあります。