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一般貨物自動車運送事業の許可を取得するには?要件や法令試験を解説

最終更新日: 2024年06月28日

「一般貨物自動車運送事業」は、他人の依頼を受け、事業用の車両を使って有償で荷物を運ぶ事業です。開業するには、車両や営業所などの経営資源を確保し、事業を適切に運営できる体制を証明しなければなりません。

具体的な開業要件や手続きの流れ、必要な資格や試験について解説します。

この記事を監修した行政書士

井口国際コンサルティング事務所 - 千葉県千葉市緑区おゆみ野中央

 

一般貨物自動車運送事業とは

トラック

一般貨物自動車運送事業は荷主から依頼を受けて運賃をもらい、事業用トラックを使って貨物を運ぶ事業のことです。

一般貨物自動車運送事業をはじめるには、国土交通大臣または地方運輸局長に許可を受けることが必要です。

許可が下りると、緑の地に白いナンバーが付いた「緑ナンバー」を付けて営業します。

貨物軽自動車運送事業との違い

貨物軽自動車運送事業は、軽貨物車(3輪以上の軽自動車及び2輪の自動車)を使って貨物を運ぶ事業のことです。具体的には軽トラックや軽自動車、125cc以上などの車両を指します。

一般貨物自動車運送事業は「緑ナンバー」ですが、貨物軽自動車運送事業は黒地に黄色のナンバーがついた「黒ナンバー」です。

軽貨物自動車運送事業を始めるには、必要書類を営業所を管轄する運輸支局へ届け出ることが必要です。

要件や書類の不備がなければ基本的に許可が下りるため、一般貨物自動車運送事業に比べるとハードルが低く、開業しやすいでしょう。

運送業を始めるにあたって、まずは貨物軽自動車運送事業で開業して経験を積み、信用を獲得してから、一般貨物自動車運送事業の許可を取得するというケースも多いです。

一般貨物自動車運送事業の許可取得の大まかな流れ

一般貨物自動車運送事業を取得するまでの流れは、ざっくり以下の通りです。

  • 許可要件の確認
  • 申請書類の作成
  • 管轄の運輸支局へ書類を提出
  • 運輸局の審査
  • 法令試験の受験
  • 残高照明の提出(2回目)
  • 許可の取得・許可証の交付
  • 許可取得後の各種手続き
  • 運輸開始届の提出
  • 営業開始

許可要件の確認

一般貨物自動車運送事業の許可を取得するためには、施設・車両・人・資金に関する要件が存在します。まずは要件の内容を確認し、満たすための準備が必要です。

  • 事業に必要な施設や車両の確保
  • 営業に必要な管理者の確保
  • 事業に必要な資金の確保

要件の詳細は以下の見出しで解説しています。

>>一般貨物自動車運送事業許可の取得要件

申請書類の作成

許可申請に必要な書類を作成、準備します。

指定様式に沿って記入する申請書のほか、事務所や車庫、役員について要件を満たしているか確認するために、以下のような各種書類を用意しなければなりません。

対象者 必要書類
共通
  • 指定様式の申請書類・宣誓書
  • 事務所・車庫の賃貸借契約書の写し(賃貸の場合)
  • 事務所・車庫の登記簿謄本(所有の場合)
  • 事務所・車庫の図面
  • 道路幅員証明書
  • リース契約書(リースの場合)
  • 売買契約書または売渡承諾書など(購入の場合)
  • 車検証(所有の場合)
  • 残高証明書
法人
  • 定款
  • 法人の登記簿謄本
  • 決算書の写し
  • 役員全員の履歴書
個人
  • 戸籍謄本
  • 履歴書

必要な書類の数が多く煩雑な作業です。書類の用意に関しては、行政書士に依頼するのが漏れなく確実で、手間も少ないのでおすすめです。

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申請書類の提出・運輸局の審査

申請書類が準備できたら、開業したいエリアの管轄の運輸支局に提出します。まず地方運輸支局で審査され、その後運輸局での審査に進みます。

審査にかかる期間は3~5か月程度です。

法令試験の受験

一般貨物自動車運送事業を申請すると、登記されている役員が法令試験を受けなければなりません。試験は隔月(奇数月)で実施されており、通常は申請月の次の奇数月に受験することになります。

関東運輸局の2023年5月実施分の試験では、71人が受けて40人が合格しています。不合格の場合は1回だけ再受験が可能です。2回不合格になると、再度許可申請からやり直しになってしまいます。

申請書類の再作成など手間がかかってしまうので、試験で問われる内容は事前に確認しておきましょう。過去の試験内容や合格者数は、運輸局で公開されているケースもあります。

残高証明書の提出(2回目)

最初の申請書類の中に「残高証明書」がありますが、申請から2~3か月後のタイミングで再度指定された時点の残高証明書を提出しなければなりません。

申請時の資金計画で申告した、事業開始に必要な資金の額を下回っていないかどうかが見られます。

許可の取得・許可証の交付

法令試験の合格と残高証明書の提出、運輸局側の審査がすべて問題なく完了した場合、運輸支局から許可が下りたことの通知があります。

同時に許可証交付式の日時が案内されるので、代表者または運行管理者が出席して許可証を受け取りましょう。交付式を行なわない支局(例:東京運輸支局)では、窓口または郵送での受け取りとなります。

許可取得後の各種手続き

許可が下りた後、営業を開始するために必要な手続きがいくつかあります。

  • 登録免許税(12万円)の納付
  • 運行管理者選任届の提出
  • 整備管理者の選任届の提出
  • 運輸開始前確認報告の提出
  • 緑ナンバーの取得

手続きの詳細は以下の見出しで解説しています。

>>一般貨物自動車運送事業許可を取得した後の手続き

営業開始・運輸開始届の提出

許可を受けたら、1年以内に運輸を開始しなければなりません。

緑ナンバーでの営業を開始したら、管轄の運輸支局に遅滞なく運輸開始届を提出しましょう。

また、運輸開始届とあわせて運賃料金設定届も提出するのが一般的です。料金設定届は同時に提出する決まりはありませんが、設定後30日以内に提出する必要があります。

一般貨物自動車運送事業の許可要件

一般貨物自動車運送事業の許可を取得するには、いくつかの要件を満たさなければなりません。

ざっくり分けると、「資金」「施設・車両」「人」に関する事項があります。

資金に関する要件

要件の1つは「運送業の経営に必要な資金を有していること」です。

人件費、事務所や車庫の賃料、燃料費、保険料などの事業に必要なコストを計算し、6ヶ月以上の事業運転資金が確保できていることを証明しなければなりません

関東運輸局の「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可申請の処理方針について」では、資金計画や損害賠償能力について以下のように要件が定められています。

資金計画

  • 資金調達の裏付けがあること
  • 資金計画が合理的かつ確実なものであること

損害賠償能力

  • 自動車損害賠償責任保険または共済に加入する計画があること
  • 危険物の取り扱いがある場合は適切な保険に加入する計画があること

事業を営む上で保険の加入状況や計画についても、チェックがあります。

車両の損害賠償責任保険や共済に加入する計画を立てておくのが大切です。

車両や建物、土地の運用だけでなく、保険に関する支払いを含めた上で、事業計画や資金繰りが成り立つのか確認されます。

施設・車両に関する要件

関東運輸局の「一般貨物自動車運送事業及び特定貨物自動車運送事業の許可申請の処理方針について」によると、許可申請には主に下記の要件が定められています。

営業所・車両・車庫・休憩、睡眠施設の要件を満たし、運輸局に認められると営業が可能です。

項目 要件
施設
(営業所・車庫・休憩、睡眠施設)
  • 使用権原を有する
  • 関係法令に抵触しないものである
  • 規模が適切である
  • 事業遂行上適切なものである
  • 車庫及び休憩、睡眠施設は原則営業所に併設するものであること
車両
  • 原則5台以上
  • 業種や地域によって特例あり

実際には、営業所の使用権が何年あるか、営業所と車庫の距離など細かいルールがあります。

人に関する要件

一般貨物自動車運送事業を営むにあたって、「運行管理体制の維持に必要な人員の配置」「役員の法令遵守」が求められます。

運行管理体制の維持に必要な人員の配置

以下の役割を担う人員を選任しなければなりません。

項目 要件
運行管理者
  • 運行管理者資格を持つ者
  • 車両数に応じて必要人数が変わる(最低1名)
  • 運転者との兼任ができない
整備管理者
  • 整備士の有資格者または2年以上の実務経験があり研修を受けた者
  • 運行管理者または運転者との兼任ができる
運転者
  • 車両数以上の常勤運転者が必要(最低5名)

運行管理者は運転者との兼任は認められていないので、許可を取得するには少なくとも「運行管理者1名+運転者5名」の6名が必要です。

役員の法令遵守

許可申請者または法人の役員が、運送業の経営に必要な法令知識を有していることを証明しなければなりません。そのために、申請後に役員法令試験を受験して合格する必要があります。

また貨物自動車運送事業法第5条では、運送事業を申請する事業者と役員の欠格事由を定めています。

犯罪や許可取り消しなど、欠格事由に該当する場合は一定期間が経過するまで申請はできません。

一般貨物自動車運送事業の法令試験の概要

一般貨物自動車運送事業の許可を取得するには、法令試験に合格しなければなりません。受験の対象者や試験内容について解説します。

法令試験の対象者

法令試験を受ける対象者は、個人事業主であれば本人、法人であれば常勤役員のうち1名です。

複数名での受験は認められていないため、法人の場合は誰が試験を受けるのか、あらかじめ決めておきましょう。

過去の合格率は、実施回によりますが50~80%程度です。

1回の申請で試験を受けられるのは2回までなので、対策をして臨むことをおすすめします。

試験内容と注意点

法令試験は貨物自動車運送事業法をはじめ、自動車・道路・労働に関する13の法令が対象です。

問題の数は多くありませんが、対象の法令が多く範囲が広いため、幅広い分野の知識が求められます。

資料や法律関連の書籍は持ち込めないため、勉強しておかなければなりません。

法律に関する条文集は、試験当日配布されます。事前にポイントを書き込んだ条文集の持ち込みや、配布される条文集への書き込みも禁止です。

一般貨物自動車運送事業許可を取得した後の手続き

一般貨物自動車運送事業の許可が下りるまでの期間は、おおむね3~5カ月です。

審査が終了した後、地域によっては新規事業者講習会が開催され、許可証が交付されます。

講習会では運行管理や法令に関する動画講習や、資料の配布が行われるのが一般的です。

登録免許税の納付

許可が下りた後、許可証交付式または郵送で登録免許税の納付書が渡されます。

登録免許税(12万円)は許可取得日から1か月以内に金融機関で納付しなくてはなりません。

納付時に発行された受領書は、指定の書類に添付して運輸局へ提出しましょう。

運行管理者・整備管理者の選任届の提出

申請時に運行管理者・整備管理者として記載した人を運輸局に登録するため、所定の様式の選任届と、管理者に必要な要件を満たしていることを証明する書類を提出しなければなりません。

管理者 必要書類
運行管理者
  • 運行管理者選任届
  • 運行管理者資格者証の写し
整備管理者
  • 整備管理者選任届
  • 自動車整備士技能検定合格証書の写し(有資格者)
  • 実務経験証明書(無資格者)
  • 整備管理者選任前研修修了証明書の写し(無資格者)
  • 整備管理者選任届出書に添付する書面

管理者の選任と併せて、各種確認を兼ねた運輸開始前確認の書類を提出します。事業開始の要件である管理者の選任や運転者の確保など、必要項目を記入しましょう。

書類提出や手続きが完了すると、営業用の緑ナンバーの取得が可能です。

運輸開始前の確認報告書の提出

所定の様式で運輸開始前の確認報告書を提出する必要があります。

運行管理者・整備管理者・運転者の氏名や、事業に使用する車両の情報、社会保険等の加入状況を報告します。

添付書類は以下の通りです。

  • 運行管理者選任届の写し
  • 運転者の運転免許証の写し
  • 社会保険・労働保険の加入証明

緑ナンバーの取得

管理者選任届の提出や運輸開始前の報告が完了した後は、車両登録を行います。

管轄の陸運局に車両を持ち込み、以下の書類を提出して緑ナンバーの交付手続きを行ないます。

  • 車両所有者の委任状
  • 許可申請者の委任状
  • 譲渡証明書(所有者と許可申請者が異なる場合)
  • 申請書
  • 運輸局で押印をもらった事業用自動車等連絡書

手続きが完了すると、新しい車検証と緑ナンバーが交付されます。

車のナンバープレートは自分で取り付けるのではなく、運輸局へ持ち込んで取り付けと封印を受けなければなりません。

必要に応じて名義変更やナンバー変更の手続きも可能です。

運輸開始届の提出

運輸業を開始したら、緑ナンバーに変更した後の車検証・自動車任意保険証券の写しを添付し、管轄の運輸支局に運輸開始届を提出しましょう。

運輸開始届は許可取得後1年以内に提出する必要があります。

このとき、あわせて運賃料金設定届出書も提出します。

同時に出さなければならない決まりはありませんが、料金設定後30日以内に提出することとなっているので、一緒に対応したほうが楽です。

運輸開始届を提出すると、運送業の許可申請の手続きは完了です。講習や巡回指導が行われるため、法令や要件を把握した上で経営を進めましょう。

申請をスムーズに進めるには行政書士に相談するのがおすすめ

運送業の許可を取得するには、大量の申請書類の作成や試験の受験など、煩雑な手続きが必要です。

すべて自分で用意しようとすると、漏れやミスが生じる可能性が高いでしょう。

行政書士に依頼すれば、集める書類の指示や書類作成の代行を任せられます。

不明点や個別の事情があれば、相談も可能です。

書類の不備や要件の確認不足があると申請に時間がかかってしまうので、行政書士に任せた方がスムーズに手続きを進められます。

許可申請に不安がある場合は、身近な行政書士を頼ってみてはいかがでしょうか。

信頼できる行政書士の選び方

行政書士を選ぶときのポイントは以下の通りです。

  • 一般貨物自動車運送事業(緑ナンバー)の申請実績のある行政書士を選ぶ
  • 複数の行政書士に連絡をとって料金や対応を比較する

行政書士は行政手続きの専門家ですが、得意分野は人によって異なります。

運送業の許可申請を依頼したいときは、運送業の申請に詳しい行政書士を探すようにしましょう。

満足のいくサポートを受けるには、相性や評判も重要です。なんでも相談できる行政書士を見つければ、疑問点を払拭できます。

ミツモアでは一般貨物自動車運送事業の申請が可能な行政書士の候補を複数探すことが可能です。

料金やサービス内容、問い合わせた際の対応を比較して、自分に合った専門家を見つけられます。

記事を監修した行政書士のコメント

井口国際コンサルティング事務所 - 千葉県千葉市緑区おゆみ野中央

一般貨物自動車運送事業許可の取得は、申請の難易度が高いです。その難易度から、行政書士事務所でも、一般貨物自動車運送事業許可申請は引き受けない事務所が多くあります。 トラックや駐車場に事務所、乗務員など、準備するものも多く、すべて整っているのになかなか許可が下りずに営業ができないという事態になると、損害も大きくなります。一般貨物自動車運送事業許可は山登りと同じで、法令試験の準備なども含め、計画的にスムーズに、立ちはだかる山を登っていく必要があります。

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この記事を監修した行政書士

井口国際コンサルティング事務所 - 千葉県千葉市緑区おゆみ野中央

井口美保子(行政書士、宅地建物取引士、消費生活相談員、日本FP協会所属AFP、MBA、法務博士) 多角的な資格と深い法律知識及び経験により、ビジネスに関する各種許認可とビザなどの国際業務をメインに活動。宅建業免許も取得し、不動産が絡む相続手続き、農地転用、許認可取得のための事務所・店舗探しなどにも強みがある。海外生活も経験しているため、英語対応可能な国際派行政書士。