「育てている野菜にてんとう虫がついているのを発見した。このてんとう虫は害虫?駆除すべき?」このような疑問を持っている方も多いのではないでしょうか?
てんとう虫は大きく分けて3種類。葉を食べてしまう害虫(別名テントウムシダマシ)と、他の虫や菌を退治してくれる益虫2種類が存在します。
もしついているのが害虫であれば、できる限り早く処理すべきです。しかし益虫だった場合はそのままにしておきたいですよね。
そこでこの記事では、葉についているてんとう虫が害虫か益虫かを見分ける方法を解説します。害虫だった場合の対処法も紹介するので、ぜひ参考にしてみてください。
てんとう虫は益虫か害虫か?
てんとう虫はアブラムシを食べてくれる益虫ですが、テントウムシダマシと言われる葉を食べてしまう害虫はします。記事内では画像つきで詳しく解説しています。
てんとう虫は漢字で書くと?
漢字で書くと「天道虫」です。
てんとう虫は大きく分けて3種類!
てんとう虫の種類は、大きく分けて以下の3種類です。
- 草食(害虫)
- 肉食
- 菌食
この中で害虫なのは草食のみ。そのためてんとう虫は「草食かどうか」を見分けることが大切です。それぞれの特徴や生態について、順番に見ていきましょう。
1:草食(害虫)・別名テントウムシダマシ
てんとう虫の中で害虫に分類されるのが、草食のてんとう虫。別名テントウムシダマシとも呼ばれます。野菜の葉を食べてしまうため害虫に分類されるのですね。
主にナス科やウリ科を好み、被害によく遭う野菜は以下の通りです。
- ナス
- ジャガイモ
- トマト
- ミニトマト
- ピーマン
- パプリカ
- トウガラシ
- シシトウ
- ホオズキ
- イヌホオズキ
- キュウリ
- カボチャ
- カラスウリ
- エンドウ
- エダマメ
- ハクサイ
これらの植物は、葉がボロボロになるまで食べられてしまうことも。葉脈だけ残して食べられていたら、草食てんとう虫の存在を疑ってみてください。
日本には以下5種類の草食てんとう虫(テントウムシダマシ)が生息しています。
- ニジュウヤホシテントウ
- オオニジュウヤホシテントウ
- インゲンテントウ
- トホシテントウ
- ルイヨウマダラテントウ
その中でも、家庭菜園で特によく見られるのが「ニジュウヤホシテントウ」と「オオニジュウヤホシテントウ」。基本的にはこの2種類にのみ気をつけていれば大丈夫です。
それぞれの特徴を詳しく解説していきます。見分け方や被害対策は記事後半で解説しているので、生態に興味がない方はそちらを先にご覧ください。
ニジュウヤホシテントウ
ニジュウヤホシテントウは、その名のとおり28個の斑紋(はんもん)があるてんとう虫です。体はオレンジ色。全体が短い毛で覆われていて、ツヤがないのが特徴的です。
体長6~7mmほどで、関東南部や四国・九州などの暖かい地域に分布しています。
6~7月にかけて成虫になり、10月上旬まで被害が想定されます。そのうえ、繁殖力が強く、年に2回も孵化するので、防除必須の害虫です。
オレンジ色のてんとう虫がいたら危険と覚えておきましょう。
オオニジュウヤホシテントウ
オオニジュウヤホシテントウも、ニジュウヤホシテントウと見た目は同じ。オレンジ色の体に28個の斑紋があるてんとう虫です。
違いは大きさや生息する地域です。オオニジュウヤホシテントウの体長は8mmほどで、ニジュウヤホシテントウよりも少し大きいのですね。また寒い地域で見られ、北海道や東北・北陸などに分布するという特徴があります。
年に1回しか孵化しない分、ニジュウヤホシテントウよりも駆除が簡単。生態もほとんど変わらないため、同じ防除方法で対応できます。
2:肉食(益虫)
肉食のてんとう虫は、植物に害を与えるアブラムシを食べてくれる益虫です。体がツヤツヤしているのが特徴的。たとえば以下のような種類が日本に生息しています。
- ナナホシテントウ
- ナミテントウ
- ダンダラテントウ
- ヒメカメノコテントウ
- オオテントウ
この中でも特によく見られるのが「ナナホシテントウ」と「ナミテントウ」です。この2種類について紹介します。
ナナホシテントウ
ナナホシテントウは、一般的なてんとう虫としてイメージされる種類です。名前のとおり7つの斑紋があり、体は赤色。
体長は5~9mmほどで、北海道から沖縄まで全国に分布しており、特に日当たりの良い草原でよく見られます。
3~5月にかけて繁殖し、数日で孵化。その後数週間で成虫になり、11月頃まで活動します。幼虫の段階からアブラムシを食べてくれる、ありがたい存在です。
ナミテントウ
ナミテントウは個体によって色・模様がさまざまです。たとえば黒い体に2つの赤い斑紋、赤い体に細かい斑紋など。模様のパターンは200以上とも言われています。
体長は4~8mmほど。全国に分布しており、日本で最も多く見られるてんとう虫です。
ナナホシテントウよりも少し遅い4~6月にかけて繁殖し、11月ごろまで活動します。ナミテントウも幼虫からアブラムシを食べるので、天敵農薬として農業に使われます。
3:菌食(益虫)
菌食のてんとう虫は、キュウリやトマトなどによく発生するうどんこ病菌を食べてくれる益虫です。日本には以下のような、菌食てんとう虫が生息しています。
- キイロテントウ
- シロホシテントウ
- ムーアシロホシテントウ
- クモガタテントウ
代表的な2種類を紹介します。
キイロテントウ
キイロテントウは鮮やかな黄色一色の羽が特徴的なてんとう虫。胸部は白色で黒い斑紋があります。
体長は3.5~5mmほどで、四国や九州・沖縄などの暖かい地域に生息しています。4~10月にかけて活動しており、幼虫の段階からうどんこ病菌を食べる益虫です。
シロホシテントウ
シロホシテントウは光沢のある黄褐色の体に、白い斑紋が特徴的なてんとう虫です。
体長は3~5mmほどで、北海道から九州まで広く分布しています。キイロテントウと同じく、うどんこ病菌を食べてくれる益虫です。
そのてんとう虫は害虫?益虫?テントウムシダマシの見分け方
てんとう虫には、益虫と害虫がいることが分かったと思います。ここではさらに詳しく、害虫であるテントウムシダマシの見分け方を解説していきます。
成虫の場合:体の光沢をチェック
てんとう虫の成虫は、表面に光沢があるかないかをチェックしてみてください。害虫は表面に光沢がなく、短い毛が生えているのが特徴。それに対し益虫は、体の表面に光沢がありツヤツヤしています。
こちらは害虫(テントウムシダマシ)の画像です。
今度は肉食のナナホシテントウの画像です。ハッキリと違いが分かると思います。
そのほかにも、触角が明らかに長いてんとう虫がいたら害虫を疑ってみてください。上記の画像でも分かる通り、草食のてんとう虫は触角が比較的長いという特徴を持ちます。
幼虫の場合:体に毛があるかどうかをチェック
テントウムシダマシの幼虫は、このようにトゲのような毛が生えているのが特徴的です。
すごい見た目なので危険を感じるかもしれませんが、触っても刺さりませんし、毒も持っていません。
このような見た目の生き物を見つけたら、早い内に駆除していくことをおすすめします。
卵の場合:卵の表面に毛がないかをチェック
卵の段階で害虫か益虫かを見分けるには、卵の様子をよく観察する必要があります。
- 卵に毛が生えている→ニジュウヤホシテントウの可能性が高い
- 卵が間隔を空けて生みつけられている→オオニジュウヤホシテントウの可能性が高い
またこれらテントウムシダマシは、ナス科野菜の葉の裏に卵を産み付けます。春先の5月ごろに卵がついていたら、テントウムシダマシの可能性が高いです。
てんとう虫の害虫(テントウムシダマシ)の駆除方法
てんとう虫が草食の「ニジュウヤホシテントウ」「オオニジュウヤホシテントウ」だった場合、これらは「テントウムシダマシ」と呼ばれる害虫です。
放っておくと葉を食べられてしまうため、以下の方法で駆除する必要があります。
- 地道に捨てる
- 自然農薬
- 殺虫剤や薬剤をまく
それぞれの駆除方法を順番に見ていきましょう。
駆除方法1:地道に捨てる
基本的には割りばしを使って取り除いたり、葉ごと切り落としたりして地道に捨てていきましょう。この方法であれば、益虫まで駆除してしまうこともありません。こまめにチェックして捕殺することで、農薬散布の回数も減らせます。
成虫や幼虫はもちろんのこと、葉の裏にある卵の段階で駆除できると、被害を最小限に抑えられます。
駆除方法2:自然農薬
家庭菜園をしていると、あまり農薬を使いたくないという人も多いのではないでしょうか?そんな人におすすめなのが、自然農薬を使った駆除方法です。
化学合成薬品よりも保存期間や効果の持続時間は短いですが、農薬を使わずに害虫駆除ができます。
たとえば以下のような自然農薬が、テントウムシダマシに効くと言われています。
- 木酢液の自然農薬
- トウガラシエキスの自然農薬
- タバスコの自然農薬
材料があれば自宅でも作れるので、ぜひ挑戦してみてください。
駆除方法3:殺虫剤をまく
殺虫剤を使うと益虫にも影響が出たり、農作物を痛めてしまったりすることがあります。しかし手っ取り早く広範囲の害虫を駆除するには、殺虫剤が一番効率的なのも事実。
殺虫剤を使う場合は、テントウムシダマシに効果があって、使用する作物に登録されているものを選びましょう。たとえばナスには以下のようなものがおすすめです。
- パイベニカVスプレー
- ベニカXネクストスプレー
- 家庭園芸用スミチオン乳剤
どの薬もAmazonやホームセンターなどで、1,000円前後で購入できます。
てんとう虫の害虫(テントウムシダマシ)の予防方法
テントウムシダマシの被害を抑えるには、予防が一番大切です。そもそも発生しなければ、駆除する必要もありませんよね。テントウムシダマシの主な予防方法を3つ紹介します。
- てんとう虫が寄り付く前にネットを張る
- 風通しを良くする
- 卵がないかこまめにチェック
予防方法1:てんとう虫が寄り付く前にネットを張る
ネットで作物を覆うことで、他の畑や土地から飛んでくる害虫の侵入を防げます。
テントウムシダマシはジャガイモから他のナス科・ウリ科に移動してくることが多いです。そのため近くでジャガイモを栽培しているなら、ネットは必須の予防策と言えるでしょう。
予防方法2:風通しを良くする
栽培環境の風通しを良くすることが予防につながります。他の害虫にも言えることですが、風通しが悪いと隠れる場所が増えるため、気づきにくくなってしまうのです。また葉が重なり合っていると、薬剤が十分行き渡らないなんてことも。
そのため株間を広くとったり、こまめに葉かきをしたりすることで風通しを良くすることがおすすめです。
さらに風通しを良くすると、害虫が天敵に見つかりやすくなり、天敵による防除効果も期待できます。例えば以下のような生き物が、テントウムシダマシの天敵として有名です。
- ヒメコバチ
- 捕食性のカメムシ
- ジョロウグモ
予防方法3:卵がないかこまめにチェック
作物の葉の裏に卵がないか、こまめにチェックするようにしましょう。孵化する前の段階でテントウムシダマシを見つけられれば、少ない被害に抑えられます。
特にナスやジャガイモなどの、ナス科野菜は要チェックです。見つけ次第つぶすか、葉っぱごと切り落として捨てるのがおすすめです。