見た目がよく似ているカナブンとコガネムシ。実はそれぞれの生態を詳しく知ると、全く違う昆虫だということが分かります。
結論からお伝えすると、コガネムシは草花を荒らす害虫。カナブンは土壌の改善をしてくれる益虫です。さらにもう1種類、ハナムグリというよく似た益虫も存在します。
もしコガネムシが庭の植物や野菜についていたら、早急な対策が必要です。
そこでこの記事では、カナブン・コガネムシ・ハナムグリの見分け方や生態を解説していきます。万が一害虫であるコガネムシだった場合の対処法も合わせて紹介するので、ぜひ参考にしてください。
カナブン・コガネムシ・ハナムグリの見分け方
カナブンとコガネムシ、ハナムグリの見分け方について見ていきましょう。難しそうに思うかもしれませんが、慣れれば簡単に見分けることが可能です。以下の5つの項目から見分けてみましょう。
カナブン | コガネムシ(害虫) | ハナムグリ | |
体の形 | 四角い | 丸みを帯びている | 四角い |
羽の付け根の形 | 綺麗な逆三角形 | 半円(楕円の半分) | 綺麗な三角形 |
体の色 | 主に茶色や青、緑色 | 主に緑色 | 白い斑点模様あり |
飛び方 | 上の羽を閉じて飛ぶ | 上の羽を広げて飛ぶ | 上の羽を閉じて飛ぶ |
活動する場所 | 木の近く | 葉の近く | 花の近く |
特に「体の形」「羽の付け根の形」で見分けるのがおすすめです。実際に3種の画像を見てみましょう。
カナブンは体が角ばっていて、羽の付け根が逆三角形
カナブンは全体的に角ばったスリムな形状をしているのが特徴で、体の色合いも落ち着いた印象です。羽の付け根の形がハッキリと分かる逆三角形状なので、体の形と羽の付け根に注目して見分けてみてください。
コガネムシ(害虫)は丸っこく、羽の付け根が半楕円形
コガネムシは全体的に丸々とした体つき。羽の付け根の形もカナブンとは違いますよね。さらによく見ると分かりますが、コガネムシは体全体に産毛が生えています。
ハナムグリは白い斑点がある
最後はハナムグリ。ハナムグリとカナブンは体の形がよく似ていますが、決定的に違うのが体にある白い斑点模様です。綺麗な斑点模様があったらハナムグリと覚えておいてくださいね。
害虫であるコガネムシの生態
カナブンとコガネムシ、そしてハナムグリの見分け方は意外と簡単でしたね。この3種類は、植物に与える影響が大きく異なります。
カナブン | コガネムシ | ハナムグリ | |
成虫の食べ物 | 樹液・腐った果物 | 葉 | 花粉・花の蜜 |
幼虫の食べ物 | 腐葉土やたい肥 | 植物の根 | 腐葉土やたい肥 |
卵を産む場所 | 土の中 | 土の中 | 土の中 |
このように、植物の葉や根を食べるのはコガネムシのみ。他の2種は樹液や花の蜜を好みます。放っておいても食害はないので、コガネムシにだけ気を付けておけば大丈夫です。
そんな食害をもたらすコガネムシはどんな悪さをするのか、特徴や生態を詳しく見ていきましょう。
コガネムシの特徴や生態
コガネムシの種類はじつにたくさんいますが、私たちが普段よく見かけるのは以下の4つの種類です。
- アオドウガネ・・・緑色にメタリックな色合い
- ドウガネブイブイ・・・体色のベースが茶色
- ヒメコガネ・・・他の種類よりやや小型で夜行性
- マメコガネ・・・他の種類よりやや小型で昼行性
【アオドウガネ】
【ドウガネブイブイ】
【ヒメコガネ】
【マメコガネ】
ちなみに「マメコガネ」は、アメリカで大繁殖して農業に深刻なダメージを与えています。そのことから「ジャパニーズ・ビートル」とも呼ばれているのです。
コガネムシの被害
コガネムシの成虫は葉っぱを主に食べます。葉脈だけを残すように食べるので、見た目も凄く悪くなってしまうんです。丹精込めて育てた草花を喰い荒らされるため、ガーデナーにとってはとてもショックですよね。種類によっては穀物や野菜の葉を狙うコガネムシもいるので、農家の大敵となっています。
また、葉を食べるのは成虫だけではありません。むしろ本当に恐ろしいのはコガネムシの幼虫の方です。幼虫は根っこを食べるので、植物の発育が悪くなったり最悪の場合枯れてしまったりすることも…。
もしプランターや畑などにコガネムシの幼虫が大量発生したら、その場所の植物は全滅する可能性があります。特に根が育つイモのような根菜類は、コガネムシの被害をダイレクトに受けやすいので要注意です。
地上にいる成虫と違い、土の中にいる幼虫は実際にいるかどうか見極めるのが難しいですよね。そんな時は、植物の様子を注意深くチェックしてみてください。
水やりの後に水の引きが遅かったり、植物がグラグラと動いたりするようであれば危険信号。幼虫によって根がボロボロにされて、植物が弱っている可能性があります。また近くで成虫や成虫の死骸を見かけたら、既に卵が土の中にあるのかもしれません。
コガネムシの一生・発生時期
コガネムシの一生はカブトムシとよく似ています。成虫が夏ごろに交尾をして産卵し、幼虫は土の中で冬を越します。成虫の寿命は30日ほど。
幼虫は暖かくなるとサナギを作り、初夏に成虫になって次世代の卵を産むサイクルとなっています。幼虫は1年を通して土の中にいるので、幼虫による被害は年中気をつけなくてはなりません。
コガネムシが発生しやすい環境
コガネムシは種類によって、好んで食べる植物がそれぞれ違います。なのでどの植物も被害に遭いやすいのですが、特にコガネムシが好むのがバラの葉や芝生です。ガーデニングの王道であるバラは、多くのガーデナーが育てていることでしょう。バラはコガネムシにとって格好の餌場なので、バラを育てている方はコガネムシにより一層注意してくださいね。
その他には次のような植物を好みます。
- 広葉樹
- 針葉樹
- マメ科植物
- 果物の葉っぱ
また、土に堆肥や腐葉土などが混ざっていると、そこがコガネムシの産卵場所になることも。幼虫を予防したいのであれば、土の状態にも気を付ける必要があります。
発生しているのがコガネムシだった場合の対処法
庭や畑に発生しているのがカナブンやハナムグリだったら問題ありませんが、コガネムシだった場合は一大事。早急に対処をしないと、手塩に掛けた草花たちが荒らされてしまうかもしれません。
ご家庭でも出来るコガネムシ対策を集めてみましたので、ぜひ参考に対処してみてください。
- 薬剤
- 地道に捕まえる
- 業者に頼む
1:薬剤
コガネムシは成虫よりも幼虫の方が被害が深刻。幼虫を駆除するには「オルトランDX粒剤」などの薬剤がおすすめです。「オルトランDX粒剤」は土に粒材剤を撒いて水をかけるだけ。植物の根に吸収された薬剤が、根を食べた幼虫を駆除してくれます。
続いては葉っぱを食べにくる成虫に使える薬剤のご紹介です。先ほどご紹介した「オルトランDX粒剤」は根から薬剤を吸収するタイプなので、葉を守るには効果がいまいち…。「ベニカ水溶剤」は葉に直接吹き替けるタイプで、殺虫効果も一ヶ月ほど持続します。成虫対策にはこちらがおすすめです。
薬剤は手軽に駆除できますが、植物の種類によっては薬害を引き起こすこともあるので注意が必要です。事前に自分の育てている植物に、その薬剤が使えるかどうかを調べてから使用してくださいね。
また「薬剤はちょっと怖い」「薬剤に頼りたくない」と思う方は、水攻めや植え替えを行うのも良いでしょう。鉢に植えている植物であれば、鉢よりも大きな水入れに入れて、幼虫を溺死させることが可能です。
2:地道に捕まえる
成虫が1匹2匹いる程度なら、手や網で地道に捕まえるのも良いでしょう。手で捕まえるのは薬害による心配がいらず、お金がかからないというメリットがあります。
また市販のコガネムシ用トラップもあるので、成虫が多いようならばそちらも検討してみてはいかがでしょうか。しかし成虫がいるということは、既に卵を産んでいる可能性があることを危惧しておいてくださいね。
3:業者に頼む
「ガーデニングの規模が大きい」「コガネムシが大量発生している」などの理由で駆除に手が回らない方は、専門業者に依頼するのも1つの手です。相場はおおよそ10,000~20,000円程で決して安くはありませんが、安心できるプロに任せるのも良いでしょう。
来年コガネムシが発生するのを予防する方法
今いるコガネムシを駆除できても、コガネムシは次の年もやってきます。新たに被害に遭わないために、予防にも取り組んでみてください。
予防方法1:マルチング
そもそもコガネムシが土の中に産卵できないようにすればいいですよね。草花の株の周りに不織布などを被せて、物理的に土へと入れないようにする方法がマルチングです。畑でのマルチングには、大きなビニールがよく使われます。「黒マルチ」という製品を使うのもおすすめですよ。
予防方法2:コンパニオンプランツ
コンパニオンプランツという言葉を聞いたことがあるでしょうか。特定の植物の近くに植えると、成長を促したり病害を抑制したりする植物のことです。例えば殺虫作用のあるハーブ類を野菜と一緒に育てると、病害を防止してくれるのです。
虫除け効果のあるコンパニオンプランツである「マリーゴールド」が特に有名です。他にも、日本人に馴染み深い「水仙」。虫除けが終ったら食べても美味しい「にんにく」もいいかもしれませんね。
バラを育てている方は「チャイブ」はいかかでしょうか。「チャイブ」にはバラの成長促進作用があるので、きっと美しいバラを咲かせる手助けとなってくれるはずですよ。
カナブンの特徴や生態
コガネムシと何かと混同されやすいカナブンですが、先述した通りカナブンは無害な虫です。むしろ土壌の改善をしてくれる益虫なのです。しかしコガネムシと間違われて駆除をされてしまうこともしばしば…。
虫が苦手な人にとっては不快かもしれませんが、もし発生しているのがカナブンだったら、そっと見守ってあげてはいかがでしょうか。
カナブンが好む植物
カナブンの成虫が主食とするのは、クヌギのような広葉樹の樹液。カブトムシを取りに行った際に、カブトムシやクワガタと一緒に樹液に集まっている光景を、見たことがある人も多いのではないでしょうか。
根っこを食べるコガネムシと違い、カナブンの幼虫が食べるものは腐葉土やたい肥など。地中の有機物を分解してくれるので、土壌の改善に繋がっています。
家の中に入ってくるカナブンの対策
カナブンは植物には無害ですが、たまに人間の家の中に入ってきたり、洗濯物に飛んできたりします。
カナブンは光に向かって飛んで行く習性があることを覚えておきましょう。「何かのライトを使って外に誘導する」「虫取り網で捕まえて逃がす」というのが一般的な対策です。
ハナムグリの特徴や生態
カナブンとよく似た生態を持っているハナムグリ。それもそのはず、実はハナムグリの仲間の1つがカナブンです。カナブンの方がメジャーな種類なので有名ですが、大元はハナムグリなのです。
ハナムグリはカナブンと同じく、植物には無害。後述しますが花の蜜を食べる際に花粉を運ぶので、ミツバチのように草花の受粉を助ける役割があります。立派な益虫と呼べるでしょう。
また、カナブンと違って家に入ってくるようなことも少ないため、お利口な生き物と言えます。
ハナムグリが好む植物
花の中に潜り込む姿から名づけられたハナムグリの名前のとおり、ハナムグリの主食は花の蜜や花粉です。お庭の花にハナムグリがやってきたら、それは美味しい蜜のある素晴らしい花を育てられた証拠だと言えるかもしれませんね。またハナムグリは花の蜜だけでなく、カナブンのように樹液も好みます。