遺産相続の一環で生命保険金を受け取ることになっても、相続税との関係や実際にかかる税額がわかりづらくて困っていませんか?
当記事では生命保険の基礎知識や相続税との関係、そして実際にかかる相続税の計算実例などをご紹介します。ぜひご覧になり、生命保険の相続税に関する不安を解消してください。
この記事を監修した税理士
阿部税理士事務所 - 東京都千代田区神田神保町
生命保険金についての基本的な知識
「生命保険金」と一口に言っても、状況によってかかる税金の種類が違っていたり非課税の給付金があったりなど、さまざまなタイプが存在します。たとえば、生命保険金にカテゴライズされるのは以下のものです。
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この章では、生命保険金が課税対象になる理由や非課税になる部分など、生命保険に関する基礎知識について解説します。
生命保険として受け取れるお金には必ず税金がかかるの?
生命保険で受け取れる保険金・給付金には、必ず税金がかかるわけではありません。
保険の商品にかかわらず、「身体の傷害に基因して支払を受けるもの並びに心身に加えられた損害につき支払を受ける慰謝料その他の損害賠償金(所得税法施行令第30条)」は非課税と定められています。予想外の事故や災害が原因のケガ、もしくは病気の治療にかかる費用などが対象です。
つまり、入院給付金・手術給付金・通院給付金・がん診断給付金(一時金)・就業不能給付金などには税金がかかりません。相続税・所得税・贈与税のいずれかの課税対象になるのは、「死亡保険金」「解約返戻金」「満期保険金」です。
今回は、この3つの中で最も相続税と関係してくる「死亡保険金」について解説します。
生命保険金は「みなし相続財産」
「そもそもなんで生命保険金に対して税金を払うのか」「被保険者から直接受け取るわけじゃないのにおかしい」という疑問の答えは、生命保険金が「みなし相続財産」に分類されることにあります。
みなし相続財産とは、被相続人から直接相続・遺贈されずとも、被相続人の死亡をきっかけに得た経済効果のある相続財産を指します。つまり、みなし相続財産となるのは「被相続人が生きている間に所持していた財産」ではなく主に「亡くなった後に発生する財産」です。
したがって、被保険者が死んだあとに発生する生命保険金関係は、課税対象に分類されます。(死亡退職金などもみなし相続財産)
保険料負担者が誰かでかかる税金が変わる
生命保険金にどの種類の税金がかかるかは、「保険がかけられている人の保険料を誰が負担しているか」で決まります。以下の表を参考に、パターンごとの課税ルールを見ていきましょう。
保険の対象者
(被保険者) |
保険料を支払っている者 | 保険金を受け取る者 | かかる税金の種類 |
父親 | 父親 | 母親もしくは子ども | 相続税 |
母親 | 父親 | 父親 | 所得税・住民税 |
母親 | 父親 | 息子 | 贈与税 |
相続税になるパターン
「被保険者の父親が自分で保険料を支払い、母親か子どもが保険金を受け取る」場合です。死亡保険金の役割は「残された家族の生活維持を補償するため」ですので、法定相続人にあたる母親や息子が保険金を受け取るケースは、相続税の課税対象となります。
所得税・住民税になるパターン
「被保険者の母親の保険料を父親が支払い、保険金の受取人も父親である」場合です。これは保険料を支払っている本人が受け取る保険金は、必ず所得税の対象になるためです。つまり、自分で受け取る保険金の保険料を自分で払っているときは、所得税・住民税の課税対象となります。
贈与税になるパターン
「被保険者の母親の保険料を父親が支払い、保険金は子どもが受け取る」場合です。これは保険料を支払っていた父親が受け取る財産を、子どもに贈与する形になるためです。
つまり、父親が支払い子供が受け取るケースは贈与税の課税対象となります。
死亡保険金に適用される非課税枠について
死亡保険金の受取人先が被保険者の配偶者や子供などの法定相続人の場合、税の負担が軽くなるように非課税枠が設定されています。金額は「500万円×法定相続人の数」です。
たとえば、以下の計算式は「父親が亡くなったことで4,000万円の保険金が発生するとき、法定相続人が妻と子供3人の計4人がだった」場合です
4,000万円-500万円×(妻1人+子供3人)=2,000万円 |
よって、4,000万円に対して2,000万円だけが相続税の課税対象になります。さらに相続税には、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」だけ課税額から控除できる「相続税の基礎控除額」が存在します。そしてこのケースだと3,000万円+600万円×4=5,400万円が控除され、税の負担が軽くなります。
つまり上記のケースでは、相続税の課税の対象となる資産の総額が基礎控除額5,400万円+非課税枠2,000万円=7,400万円以上にならない限り、相続税は一切かからないということです。
ただし、相続税の申告が必要なケースがあります。申告義務については、注意が必要です。相続税額が0円でも申告要件になります。
孫は法定相続人になれない?
生命保険の被保険者の配偶者や子供は法定相続人として認められますが、孫は対象の範囲外です。孫を保険金の受取人にしていると非課税枠が使えず、ダイレクトに課税されてしまいます。実は法定相続人になれる血族の範囲が決まっており、原則として孫は範囲内に入っていないのです。
法定相続人になれるのは配偶者と血縁で、血縁内でも優先順位が設けられています。優先順位が高い血族が存命の場合、その順位の全員が法定相続人になれますが、後順位の血族は原則不可です。
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このように子供の子供、つまり孫は法定相続人の範囲外の血族なのです。しかし、以下の条件を満たすことで孫を法定相続人にでき、非課税枠を使うことが可能です。
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※1孫を養子縁組にする場合は相続税の2割加算(配偶者・子供・親以外の人が財産を相続する場合に発生)の対象となります。また、相続税法上、養子縁組の法定相続人の数は実子がいる場合は1人、いない場合は2人までと決まっています。
生命保険金の相続税額の計算方法
ここからは実際に例を交えながら、「生命保険金の相続税額の計算方法」をご説明します。今回は以下のケースをモデルに解説します。
<相続税額計算のモデルケース>
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では以下より、生命保険金を受け取るときの相続税額の計算を見ていきます。
STEP1:課税価格を計算する
まずは相続する全財産の内、税金がかかる部分となる「課税価格」を計算します。計算式は以下のとおりです。
「遺産総額(死亡保険金+その他の遺産)-債務控除-葬式費用-死亡保険金の非課税枠(2人)」
⇒(3,500万円+8,000万円)-300万円-200万円-500万円×2人=1億円 |
このケースでは、課税価格が1億円となります。
債務控除とは、被相続人に返済しなければならない債務があった場合、遺産の総額からその金額分を差し引ける制度です。葬式費用は遺産相続人が負担した通夜・告別式などの費用を、同じく総遺産から控除できる制度です。
STEP2:相続税の基礎控除額を差し引く
続いて、さきほど計算した課税価格から「相続税の基礎控除額」を差し引き、実際に課税される金額を算出します。計算式は以下のとおりです。
「課税価格-相続税の基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)」
⇒1億円-(3,000万円+600万円×2人)=5,800万円 |
よって、基礎控除を考慮した課税価格は5,800万円となります。
STEP3:相続税の総額を計算する
次に、課税遺産総額(1億1,500万円)を法定相続分どおりに相続したケースの、相続税の総額を計算します。この計算では「相続税の税額早算表」を用い、税率と適用される控除額を当てはめて相続税額を算出します。
法定相続分に応ずる取得金額 | 税率 | 控除額 |
1,000万円以下 | 10% | 0円 |
3,000万円以下 | 15% | 50万円 |
5,000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1,700万円 |
3億円以下 | 45% | 2,700万円 |
6億円以下 | 50% | 4,200万円 |
6億円超 | 55% | 7,200万円 |
(参考|国税庁‐相続税の税率‐)
上記の早算表をもとにした、妻の相続税総額の計算は以下のとおりです。
妻が受け取った財産にかかる課税価格=5,800万円÷2=2,900万円 2,900万円の税率は15%、控除額が50万円なので、2,900万円×15%-50万円=385万円 |
子の課税価格も妻と同額の385万円のため、相続税の総額は385万円×2=770万円になります。
STEP4:実際に相続した割合で按分する
今回のケースでは妻が7,000万円、子が3,000万円相続しているので、その分を考慮した割合で按分します。
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STEP5:各種控除・加算制度を適用する
最後に各種控除や加算制度を適用した、最終的に納める相続税額を割り出します。妻の相続税額には「配偶者の税額の軽減」が適用されるため、妻の相続税がすべて非課税になります。よって、最終的に法定相続人の2人が納める相続税は、子の相続税分の231万円のみです。
配偶者の税額の軽減とは、被相続人(このケースでは夫)の配偶者が取得した相続財産の額が、「1億6,000万円」もしくは「配偶者の法定相続分」のうちいずれか大きい金額分まで配偶者の課税価格から控除される制度です。
税務調査に不安を感じたら税理士にご相談を!
相続税は人生で何度も関わる税金ではないため、申告漏れや税額計算の間違いなどいろいろな部分で不安がありますよね。もし税務調査などに不安を感じた場合は、信頼できる税理士にご相談することをおすすめします。
相続税は申告漏れが非常に多い
相続税は計算が複雑になることも多く、非常に申告漏れが起きやすい税金です。実際に国税庁の「平成29年事務年度における相続税の調査の状況について」のデータを見ていきましょう。
実地調査件数 | 12,576件 |
申告漏れなどの非違件数 | 10,521件 |
実地調査件数に対する申告漏れなどの割合 | 83.7% |
追徴税額の総額 | 783億円 |
1件あたりの追徴税額 | 623万円 |
このように、なんと実地調査の約8割以上が申告漏れなどの非違があり、1件あたり追加で623万円も追加で税金を納めているのです。このような事態を避けるためにも、税の専門家に一度相談した方が安心して相続手続きを行えますよ。
税理士に依頼するメリット
税理士に相続税に関する依頼をするメリットには、以下の点が挙げられます。
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納付税額が高額になりがちな相続関係の手続きは、税務調査に入られる可能性や計算方法の違いにより、課税価格が過大になる危険性などのリスクを孕んでいます。しかし、税理士に依頼すれば適正な依頼書の作成や節税のノウハウによって、税務調査の対象から外されたり、支払う税金を抑えられたりとさまざまな恩恵が受けられます。
また、相続税等の申告手続きもスムーズに進められ、申告漏れによる延滞税の発生や申告手続きに必要な時間の削減にもつながるでしょう。さらに、もう1人の親が亡くなった際に発生するなどの2次相続も見越した相談も可能です。
依頼には費用がかかるのはデメリットですが、事前に見積りを依頼しておくことでかかる金額を予想できたり余計な費用を抑えられたりと対策できます。相続税の申告漏れなどのリスクを考えると、安全かつ円滑に進められるよう税理士に依頼することをおすすめします。
監修税理士のコメント
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