固定資産税は固定資産の所有者が支払う必要のある税金です。


主に家や土地が対象になります。固定資産税は郵送されてくる納税通知書に基づいて支払いを行なうため、計算方法や納税義務者など詳細についてはあまりよく知らないという方も多いでしょう。
この記事では固定資産の評価額の計算方法や節税できる優遇措置について解説していきます。

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通
固定資産税とは?

固定資産税は地方税です。対象となる固定資産の所有者が課税対象者となり、納税を行う必要があります。ここでいう所有者とは、固定資産課税台帳に登記(登録)している人物のことです。固定資産税が必要な資産の中では土地や家が一般的です。
固定資産税は地方税
固定資産税は地方税の一種です。地方税とは地方における行政府に対して納める税金のこと。主に自分が住んでいる自治体に対して納税を行ないます。地方税には住民税や自動車税、事業税などがあります。
一方、国に対して納める税金のことを国税といいます。国税には消費税や所得税、法人税などがあります。
固定資産税は、該当する固定資産の所在地の市町村(東京23区の場合は都)に納税する税金です。
固定資産とは?
固定資産とは一般的に土地や建物、パソコンや自動車など長期間にわたって使用できる資産のことをいいます。固定資産には固定資産税が必要になりますが、すべての固定資産に対して固定資産税が必要になるわけではありません。
固定資産税が必要ではない固定資産には自動車やソフトウェアなどが該当します。また、取得価額が10万円以下のものも申告・納税の対象外です。この他にも対象外となるものがありますので、固定資産税を知りたいときにはまず「該当の固定資産は固定資産税の対象かどうか」を調べる必要があります。
一方、固定資産税が必要になる固定資産は大きく分けると「土地」「家屋」「償却資産」の3つに分類されます。
固定資産とは、土地、家屋、償却資産を総称したもので、次のものをいいます。
〔土地〕
田、畑、宅地、塩田、鉱泉地、池沼、山林、牧場、原野、その他の土地(雑種地)
〔家屋〕
住家、店舗・工場(発電所・変電所含む)、倉庫、その他の建物
〔償却資産〕
構築物、機械・装置、工具・器具及び備品、船舶、航空機などの事業用資産で、法人税法又は所得税法上、減価償却の対象となるべき資産。ただし、自動車税種別割、軽自動車税種別割の課税対象となるものは除く。
引用:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
固定資産税を納税する義務がある人
固定資産税を納税する義務がある人(納税義務者)とは、その固定資産の所有者になります。具体的にいうと、その固定資産の所有者として固定資産課税台帳に登記(登録)している人が対象者です。
固定資産税は毎年納税する必要があり、毎年1月1日時点の所有者が納税義務者となります。
固定資産の納税額はどのように決まるの?

「自宅の固定資産税の額を知りたい」「一戸建ての固定資産税がどうやって計算されるのかわからない」そのような方は下記を参考にしてください。一戸建ての自宅の固定資産税を算出するには「土地」と「家屋」の固定資産税の計算方法について知る必要があります。
固定資産評価額とは?
固定資産評価額とは総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて、路線価などを用い各市区町村が計算して個別に決定する評価額のことです。目安として公示価格や時価(実勢価格)の70%になります。
- 自宅の固定資産評価額を知りたい場合は、以下の方法にて調べることができます。
- 自宅に届いた固定資産税の納税通知書を確認する
- 固定資産課税台帳を閲覧する
- 固定資産評価証明書の交付を受ける
- 不動産会社の担当に確認する
また、固定資産評価額は3年に一度見直しが行なわれ、令和3年度は固定資産評価額の見直しの年になっています。しかし、令和3年度は通常とは異なり特例措置が適用となっていますので注意が必要です。
令和3年度分の固定資産税については、令和2年度分の固定資産税の税額以下に抑えられるよう特例が適用されています。固定資産評価額が前年度より上がった場合は前年度の金額を、また前年度より下がった場合は新しい下がった金額を令和3年度の固定資産評価額として利用し、納税額の算出が可能です。
固定資産税は基本的に
固定資産税=課税標準額(固定資産税評価額 × 軽減税率)×標準税率(1.4%)
の計算式で算出されます。これは土地も家屋も同様です。
課税標準額とは?
固定資産税の計算式に含まれている「課税標準額」についてみていきましょう。課税標準額は「固定資産税評価額 × 軽減税率」で求められます。
軽減税率の適用がない場合「課税標準額=固定資産税評価額」となります。
しかし、特例措置や負担調整措置などの課税標準の特例が適用できる場合、軽減税率が適用となり「課税標準額=固定資産税評価額」にはなりません。軽減税率ついては記事後半の「固定資産税の優遇措置」を参考にしてください。
固定資産税の計算方法

固定資産税は基本的に課税標準額(固定資産税評価額 × 軽減税率)×標準税率(1.4%)で計算できます。場合によっては、優遇措置の適用を受けられることがあります。そのため固定資産税を計算するときには、適用を受けられる優遇措置がないかどうかあらかじめ確認するようにしましょう。
税率と計算式
シミュレーションにあたり、改めて固定資産税の計算式をみてみましょう。
標準税率は多くの自治体で1.4%が採用されています。しかし、自治体によっては1.4%以外を適用していることもあるため、実際に固定資産税を計算する際には固定資産のある自治体のホームページなどを参考にして調べるようにしてください。シミュレーションでは平均的な1.4%を適用します。
新築一戸建ての固定資産税 計算シミュレーション
敷地面積180平方メートルの新築一戸建てを購入した場合の固定資産税のシミュレーションです。住宅用地(住宅用の家屋が立つ土地)には軽減税率(1/3または1/6)が適用されます。また、家屋部分には新築住宅の軽減税率(1/2)の適用が可能です。上記2つの優遇措置については記事後半の「固定資産税の優遇措置」にて解説します。
【固定資産評価額】土地:1,500万円 家屋:2,000万円
【シミュレーション】
土地:1,500万円×1/6(軽減税率)×1.4%=35,000円
家屋:2,000万円×1/2(軽減税率)×1.4%=140,000円
固定資産税総額=35,000円+140,000円=175,000円
中古マンションの場合 計算シミュレーション
敷地面積70平方メートルの中古マンションを購入した場合の固定資産税のシミュレーションです。なお、家屋の固定資産税評価額は経年劣化による損耗を考慮する経年減価補正率を考慮した金額とします。
【固定資産評価額】土地:2,000万円 家屋:3,000万円
【シミュレーション】
土地:2,400万円×1/6(軽減税率)×1.4%=56,000円
家屋:3,000万円×1.4%=420,000円
固定資産税総額=56,000円+420,000円=476,000円
固定資産税の納税方法

固定資産税には口座引き落としやクレジットカード払いなどさまざまな納税方法があります。どの納税方法を選んでも問題ありません。自分にとって都合のよい納税方法を選択しましょう。
納税義務者に納税通知書が届く
固定資産税の納税通知書は毎年4~6月頃に納税義務者の元に郵送されます。固定資産税は自ら申告や税金の計算を行なう必要がありません。毎年時期が来れば自動的に納税通知書が発送されます。
納税方法はクレジットカード、PayPayでも可能
固定資産税の納付方法は自治体によって選べる方法が変わってきます。一般的には下記4つの方法があります。
- 銀行の窓口やコンビニで現金払い
- クレジットカード払い
- 口座引き落とし
- Pay-easy払い
自治体によっては電子マネーによる支払いにも対応しています。PayPayやnanaco、WAON、d払いなどで納税できる自治体もありますので、納税通知書が届いたら何を利用できるのか一度確認してみるようにしましょう。
固定資産税はいつまでに支払うのか?
納付は基本的に3か月に1回ごとの年4回に分けて行います。東京23区の場合、令和3年度の納付期限は下記の通りとなります。
1回目:令和3年6月1日から6月30日まで(納期限 6月30日)
2回目:令和3年9月1日から9月30日まで(納期限 9月30日)
3回目:令和3年12月1日から12月27日まで(納期限 12月27日)
4回目:令和4年2月1日から2月28日まで(納期限 2月28日)
参考:東京都主税局|固定資産税・都市計画税(土地・家屋)
納付期間や期限は自治体によって異なっていますので、受け取った納税通知書を確認するようにしましょう。自治体によっては一括払いを選択できる場合もあります。
固定資産税の優遇措置

固定資産税にはいくつかの優遇措置が用意されています。中でも「住宅用地の特例措置」と「新築住宅の減額」は該当する方の多い優遇措置です。住宅の購入を検討している方は参考にしてみてください。
住宅用地の特例措置について
住宅用の土地には特例措置が設けられています。簡単にいうと、人が住むための建物が建っている土地は固定資産税が軽減されるというもの。一戸建てだけでなく、マンションやアパートでも適用になります。
敷地面積によって、どのくらい固定資産税が軽減されるのかが変わってきます。
- 200平方メートル以下の部分(小規模住宅用地):固定資産評価額×1/6として課税標準額の計算が可能
- 200平方メートルを超える部分(一般住宅用地):固定資産評価額×1/3として課税標準額の計算が可能
ただし、建物の床面積×10倍が上限面積になります。
新築住宅の減額について
新築の住宅を取得した場合に適用される優遇措置があります。この措置は2022年3月31日までに建てられた居住部分の床面積が50平方メートル以上280平方メートル以下の新築住宅が対象です。
一戸建て・マンション共に固定資産評価額×1/2として課税標準額の計算が可能になります。しかし、適用される期間は一戸建てかマンションかで変わってきます。
- 一戸建て:3年
- マンション:5年
ただし、長期優良住宅に認定された場合は一戸建て5年、マンション7年に期間が延長されます。
家屋を滅失(取壊)した場合について
家屋を滅失した場合でも、1月1日時点で家屋がまだ存在していたときにはその家屋分の固定資産税を支払う必要があります。翌年度からは家屋分の固定資産税は不要となり、土地分のみの納税となります。
また、建て替えのため家屋を取り壊した場合、1月1日時点で土地の上に家屋が立っていなかったとしても1年間のみ引き続き住宅用地として取り扱うことができます。なお、この特例を適用させるためには複数の要件を満たす必要があります。建て替え前にしっかりと調べておくようにしましょう。
固定資産税を納税する際に知っておきたいこと

固定資産税は基本的に納税通知書通りに納税を行えば問題ありません。しかし、これからご紹介する4つの事項を知っていた方が、固定資産税に対する理解がより高まるでしょう。
固定資産税と同時に納税する都市計画税について
「市街化区域内」に土地や家屋がある場合、都市計画税も納税の対象となります。都市計画税とは、都市計画事業又は土地区画整理事業に必要となる費用に充てるための税金です。「市街化区域内」に該当しているかどうかは市区町村のホームページにて確認できます。
計算方法は下記の通りとなります。
都市計画税=課税標準額×制限税率(0.3%)
納税額は固定資産税と同じ納税通知書に記載されており、固定資産税と同時に納税が可能です。
評価額は再審査の申請ができる
固定資産評価額は各市区町村が計算して個別に決定します。この評価額に不服がある場合、固定資産評価審査委員会に再審査の申請ができます。不服がある場合、納税通知書を受け取った日から3か月以内に再審査を申請しましょう。
納税額をお得にする方法
固定資産税にはたくさんの支払方法がありますが、中でもお得な支払方法は電子マネーでの支払いまたはクレジットカード払いです。
電子マネーでの支払いの場合、納税額に応じてポイントやマイルを獲得できます。電子マネー自体のチャージをクレジットカードで行なえば、納税で電子マネーのポイントを獲得した上、チャージでクレジットカードのポイントも獲得できる二重取りができるケースもあります。
クレジットカードでの支払いの場合も、電子マネーと同じく納税額に応じてポイントやマイルを獲得できます。
どのくらいポイントやマイルを獲得できるのかはそれぞれの支払方法によって異なっていますので、納税前にどの支払方法が自分にとって一番お得なのか確認した上で納税するようにしましょう。
固定資産税を滞納したらどうなる?
固定資産税を滞納した場合、延滞金が発生します。滞納をするとまず督促状が郵送されてきます。督促状を受け取っても納税を行わなければ、最悪の場合土地や家屋を差し押さえられることになります。できるだけ早めに納税するようにしましょう。
もし現状のままでは納税が難しい場合、納税を複数回にわけ分納で支払うことも可能です。また、滞納の理由によっては納税の猶予・免除・減免などの適用を受けることもできます。固定資産税の支払いが難しいと感じたときには早めに納税先に相談をするようにしましょう。
固定資産の償却資産とは?

ここまでは土地と家屋に対する固定資産税を中心に解説してきました。最後に「償却資産」に対する固定資産税について簡単に解説していきます。
償却資産に対する固定資産税について詳しく知りたい方は、こちらの記事を参考にしてください。
法人が所有する固定資産について
法人は土地や家屋といった固定資産の他に「償却資産」と呼ばれる固定資産を保有しています。償却資産に該当する固定資産には下記ようなものがあります。
- パソコン
- テレビ
- 冷蔵庫
- 陳列棚
- 厨房設備
- 看板
- 事務机
- 電気設備
- 貨物船
- フォークリフト
償却資産には原則的に減価償却資産が該当します。減価償却資産とは、減価償却が必要になる資産のこと。資産の取得にかかった費用を一括で費用化せず、減価償却費を使って年々費用化していく必要のある資産が対象です。
償却資産の固定資産税
償却資産にかかる固定資産税も、土地や家屋と同じく固定資産税額=課税標準額×1.4%の計算式で算出します。
課税標準額は下記の計算式にて求めます。
前年中に取得した資産の評価額=取得価額×減価残存率
前年以前に取得した資産の評価額=前年度評価額×減価残存率
減価残存率は納税地となる自治体のホームページにて確認が可能です。
固定資産税は必要経費
固定資産税は経費として計上が可能です。経費とは、会社の事業に必要な出費のことです。会社の事業に必要な固定資産にかかる固定資産税は、必要経費として取り扱うことができます。
一方、会社の事業に関係のない固定資産にかかる固定資産税は経費にすることはできません。所得税や住民税といった個人で負担すべき税金も経費にはなりませんので注意するようにしましょう。
固定資産の納税について税理士に相談してみよう!
固定資産税を算出するには課税標準額や優遇措置など確認すべき事項が多数あります。特に法律に関わる部分は改定されることもあり、個人でそのすべてを把握することは難しいでしょう。
そのため、固定資産の納税について何か知りたい・困っているときには税理士への相談をおすすめします。税理士は税金のプロ。法律の最新情報から基本的な事項まで固定資産税に関わるさまざまなことを相談できます。

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