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持ち家の固定資産税はいくら?一戸建てとマンションの平均額や計算方法を解説

最終更新日: 2024年02月15日

固定資産税は主に家や土地を対象にした固定資産の所有者が支払う地方税の一種です。

「結婚や出産も落ち着いてきたので、そろそろ家を買いたい」
「でも固定資産税はいくらかかるのか気になる」
「一戸建てとマンション、どちらが安いのかな」

そのような疑問をお持ちのあなたに、固定資産税は平均どれぐらいかかるのか、評価額の計算方法や節税ポイントまで解説します。

この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・1級FP技能士)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。

固定資産税の平均はいくら?

固定資産税の納税額

固定資産税の平均額は、一戸建ては10万円~15万円マンションは新築で10万円~30万円、中古で10万円~20万円程度といわれています。ただし立地や構造、広さ、築年数など、複数の条件に基づき、「土地」と「建物」それぞれの価値を評価して決めるため、一概にはいえません。

ちなみにお住まいの自治体で「市街化区域」内に土地や建物を持っている人は、別途「都市計画税」も納付する必要があります。

「固定資産税評価額」とは?

固定資産税評価額とは総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて、路線価などを用い各市区町村が計算して個別に決定する評価額のことです。目安として公示価格や時価(実勢価格)の70%になり、3年に一度見直しを行います。自宅の固定資産税評価額を知りたい場合は、以下の方法で調べましょう。

  • 自宅に届いた固定資産税の納税通知書を確認する
  • 固定資産課税台帳を閲覧する
  • 固定資産評価証明書の交付を受ける
  • 不動産会社の担当に確認する

新築住宅における固定資産税評価額の決め方

新築住宅は固定資産評価基準をもとに各市区町村が家屋調査を行い、再建築費を基準に正確な固定資産税評価額を算出します。調査は家を建ててから1か月~3か月以内に行われますが、立会を断ると書類のみで判断するため、評価額が高く査定されるかもしれません。

算出のときは、資材や設備といった再建築費評点数をはじめ、経過年数ごとの減価率などを考慮するため、家屋調査に立ち会うことをおすすめします。

なお評価額に不服がある場合、固定資産評価審査委員会に再審査を申請できます。納税通知書を受け取った日から3か月以内に依頼しましょう。

固定資産税の計算方法

固定資産税は基本的に自治体で調査を行い、評価された土地や建物それぞれの固定資産税評価額に基づいて算出します。個別に計算した後、合算したうえで固定資産税の金額を算出しましょう。計算式は下記のとおりです。

固定資産税=固定資産税評価額 × 標準税率1.4%(課税標準額)

なお計算式に含まれている「課税標準額」は、地方自治体ごとの基準で評価した「固定資産税評価額」をもとに算出する値です。税率は基本的に「標準税率の1.4%」ですが、市区町村は必要に応じて異なる税率を条例で定められます。

土地部分の固定資産税

課税標準額は国税庁が公表する「路線価などに基づいて算出します。目安は土地を購入した価格の70%といわれており、税率もほとんどの自治体で1.4%ですが、1.5%または1.6%の地域もあるため、事前に確認しましょう。

たとえば、固定資産税評価額が3,500万円で標準税率1.4%の地域に住宅用の土地を持った場合、土地にかかる固定資産税は下記のとおりです。

土地の固定資産税評価額(課税標準額)3,500万円×標準税率1.4%=49万円

建物部分の固定資産税

課税標準額は建築費用の約70%が目安で、税率は土地と同じ税率です。たとえば、建物の課税標準額が3,000万円、標準税率1.4%が適用される場合、建物にかかる固定資産税は下記のとおりです。

建物の固定資産税評価額(課税標準額)3,000万円×標準税率1.4%=42万円

築年数によって税額が変わる

建物は一般的に年数が経つにつれて劣化が進み、その分評価額が下がります。それに伴って建物の固定資産税も金額が変わり、それを指数化したものが「経年減価補正率表(法務局)」です。たとえば、木造一戸建てで建物の固定資産税評価額が700万円の場合、固定資産税額は下記のとおりです。

経過年数 建物の固定資産税
5年 700万円×0.64×1.4%=62,720円
10年 700万円×0.5×1.4%=49,000円
15年 700万円×0.37×1.4%=36,260円
20年 700万円×0.25×1.4%=24,500円

固定資産税のシミュレーション(木造一戸建て)

木造一戸建てを購入した際、固定資産税はいくらかかるのでしょうか。

シミュレーションにあたって、以下の条件を設定しました。

  • 土地の固定資産税評価額:1,500万円
  • 建物の固定資産税評価額:2,000万円
  • 標準税率:1.4%
  • 土地面積:150平米(住宅用土地の特例措置:固定資産税評価額×1/6として算出)
  • 建物面積:90平米(新築住宅の特例措置:固定資産税評価額×1/2として算出)
  • 計算は新築と築5年、築10年、築20年で算出
  • 建物の経年減価補正率は東京法務局「経年減価補正率表」を参照

土地と建物(新築、築5年、築10年、築20年)で計算すると、下記のようになります。

土地の固定資産税 建物の固定資産税 合計額
新築 1,500万円×1/6×1.4%=35,000円 2,000万円×1/2×1.4%=140,000 35,000円+140,000円=175,000円
築5年 1,500万円×1/6×1.4%=35,000円 2,000万円×0.64×1.4%=179,200円 35,000円+179,200円=214,200円
築10年 1,500万円×1/6×1.4%=35,000円 2,000万円×0.5×1.4%=140,000 35,000円+140,000円=175,000円
築20年 1,500万円×1/6×1.4%=35,000円 2,000万円×0.25×1.4%=70,000 35,000円+70,000円=105,000円

上記のように築年数が経過するほど、安くなるわけではないので、注意しましょう。

固定資産税のシミュレーション(マンション)

一方でマンションを1部屋購入した際の固定資産税は、いくらかかるのでしょうか。

シミュレーションにあたって、以下の条件を設定しました。

  • 土地の固定資産税評価額:1,000万円
  • 建物の固定資産税評価額:3,000万円
  • 標準税率:1.4%
  • 土地面積:70平米(住宅用土地の特例措置:固定資産税評価額×1/6として算出)
  • 建物面積:70平米(新築住宅の特例措置:固定資産税評価額×1/2として算出)
  • 計算は新築と築5年、築10年、築20年で算出
  • 建物の経年減価補正率は東京法務局「経年減価補正率表」を参照

土地と建物(新築、築5年、築10年、築20年)で計算すると、下記のようになります。

土地の固定資産税 建物の固定資産税 合計額
新築 1,000万円×1/6×1.4%=23,000円 3,000万円×1.4%×1/2=210,000円 23,000円+210,000円=233,000円
築5年 1,000万円×1/6×1.4%=23,000円 3,000万円×0.8569×1.4%=360,000円 23,000円+360,000円=383,000円
築10年 1,000万円×1/6×1.4%=23,000円 3,000万円×0.7397×1.4%=310,000円 23,000円+310,000円=333,000円
築20年 1,000万円×1/6×1.4%=23,000円 3,000万円×0.5054×1.4%=212,000円 23,000円+212,000円=232,000円

一戸建てとマンション、どの物件を購入するか考えている人にとって、どちらが固定資産税の負担が大きくなるのか気になると思います。

あくまでも一例ですが、鉄筋コンクリートのマンションは建物の評価額の減少スピードが遅いため、同じ価格の木造一戸建てよりも固定資産税の負担額が大きい傾向です。

また一戸建ての場合、課税される土地と建物の範囲が明確なのが特徴です。一方でマンションはエレベーターや廊下などの共用部分があるため、課税される建物と土地の範囲が異なります。

マンションの建物の課税対象は「住んでいる部屋(専有部分)全体と共用部分から専有部分面積の割合で按分した面積分」です。マンションの土地の課税対象は「マンション全体の土地から専有部分面積の割合で按分した面積」が所有分とみなされます。

固定資産税の特例措置

固定資産税 優遇措置

固定資産税にはいくつかの特例措置が用意されています。中でも「住宅用地の特例措置」と「新築住宅の減額」は該当する方の多い特例措置です。ただし自動的に特例措置が適用されるわけではないので、しっかり確認しておきましょう。住宅の購入を検討している方は参考にしてみてください。

住宅用地に対する特例措置

住宅用の土地には固定資産税を大幅に軽減する特例措置が設けられています。特例措置は敷地面積によっては変わり、土地の固定資産税評価額に対して、下記の特例率が適用されます。

土地の広さ 住宅用地の特例率
200平米以下の部分(小規模住宅用地) 固定資産税評価額×1/6
200平米を超える部分(一般住宅用地) 固定資産税評価額×1/3

ただし、建物の床面積×10倍が上限面積になります。

減額後のシミュレーション

では住宅用地の特例措置の有無によって、土地に対する固定資産税の税額は変わるのでしょうか。特例措置がまったくない場合とある場合と比べると、下記のようになります。

(例)新築の一戸建てを取得した際の土地の固定資産税評価額は550万円

 

【特例措置なし】固定資産税評価額550万円×標準税率1.4%=7万7,000円

  ↓

【特例措置あり】固定資産税評価額550万円×特例措置1/6×標準税率1.4%=1万2,800円

新築住宅に対する特例措置

新築の住宅を取得した際に適用される特例措置があります。2024年3月31日までに床面積が50平米以上、280平米以下の新築住宅を建てた場合一戸建てとマンションそれぞれで下記の特例措置を受けられます。

建物の種類 特例措置
一戸建て 固定資産税評価額に対して1/2減額(3年間
マンション 固定資産税評価額に対して1/2減額(5年間

減額後のシミュレーション

新築住宅を対象にした特例措置を受けた場合、建物に対する固定資産税の税額は変わるのでしょうか。特例措置の有無を比較すると、下記のようになります。

(例)新築の一戸建てを取得した際の建物の固定資産税評価額は800万円

 

【特例措置なし】固定資産税評価額800万円×標準税率1.4%=112,000円

  ↓

【特例措置あり】固定資産税評価額800万円×特例措置1/2×標準税率1.4%=56,000円

 

さらに土地と建物に対する固定資産税の合計を比較した場合、下記のように税額が大きく異なります。

 

【特例措置なし】住宅用地の固定資産税77,000円+建物の固定資産税112,000円=189,000円

  ↓

【特例措置あり】住宅用地の固定資産税12,800円+建物の固定資産税56,000円68,800円

 

特例措置があることで、約12万円も税額が少なくなりました。とくに新築住宅なら対象期間中に平均よりも税額を抑えられる可能性があります。

建物を滅失・取り壊しした場合の軽減措置

建物を滅失した場合でも、1月1日時点で建物がまだ存在していたときにはその建物分の固定資産税を支払わないといけません。ただし翌年度からは家屋分の固定資産税は不要となり、土地分のみの納税となります。

また、建て替えのため建物を取り壊したときは、1月1日時点で建物が建っていなかったとしても一定の要件を満たせば、一年間(翌年度)のみ引き続き住宅用地の特例が適用されます。要件については建て替える前にしっかりと調べておきましょう。

長期優良住宅に認定されたときの軽減措置

耐震性や劣化対策、省エネなど、9項目で国から長期優良住宅として認められた場合、軽減措置が受けられます。一戸建ては5年間マンションは7年間で2024年3月31日までに新築で建てた住宅が対象です。長期優良住宅の軽減措置を受けるには、固定資産税減額申請書長期優良住宅の認定通知書の写しを必ず提出しましょう。

固定資産税の支払時期と納税方法

固定資産税 課税明細書

ここまで固定資産税の平均税額と計算方法、特例措置について紹介しました。では具体的にいつまでに支払わないといけないのでしょうか。納税方法を含めて解説します。

通常は年4回に分けて納付

毎年4月~6月頃に市区町村から「納税通知書」と振込用紙が自宅に届きます。納税通知書には、1月1日時点の固定資産税評価額に基づいて算出された固定資産税額が記載されているので確認しましょう。納付期日は自治体によって異なりますが、通常は6月と9月、12月、翌年の2月と年4回に分けて支払います。なお第1期に一括払いもできますが、減税といった優遇制度はありません。

納付方法

固定資産税を納付する際、自治体によって異なりますが、下記のような納税方法があります。

  • 銀行の窓口やコンビニで現金払い
  • クレジットカード払い
  • 口座引き落とし
  • Pay-easy払い

自治体によっては電子マネーによる支払にも対応しています。PayPayやnanaco、WAON、d払いなどで納税できる自治体もありますので、納税通知書が届いたら何を利用できるのか一度確認してみるようにしましょう。

固定資産税を滞納したらどうなる?

固定資産税を滞納した場合、市区町村から督促状が郵送され、延滞金を支払う必要があります。督促状を受け取って納税を行わないと自分の土地や建物が差し押さえられてしまい、公売にかけられる可能性があるので、早めに納税するようにしましょう。

固定資産税の督促状と延滞金

督促状は支払期限から20日以内に発行されます。あわせて納付期限の翌日から延滞金も発生し、1か月以内で年率2.4%、1か月を超える年率8.7%の割合で加算されてしまいますので、納付期限内に固定資産税を納めるようにしましょう。

「財産の差し押さえ」や「物件の公売」にかけられる可能性も

督促状が届いた後、10日以内に固定資産税を納めないと税務署の徴収職員による「財産調査」が行われます。滞納者がどんな財産を保有しているのかを把握するために行い、調査で滞納者に給与や預貯金といった財産があると、その財産が差し押さえられてしまうので注意してください。

さらにそれでも納めきれなかった場合は、自分の土地や建物も差し押さえられます。地方自治体がその土地や建物に対して差押の登記を行い、強制的に公売にかけられ、その売却代金を滞納した税金に充てられてしまうでしょう。

固定資産税を払えないときは自治体に相談を

もし現状のままでは納税が難しい場合は、すぐに住んでいる自治体の窓口に相談しましょう。固定資産税を4回から12回と複数回にわけて支払えるほか、滞納の理由によっては納税の猶予・免除・減免などの適用を受けられます。

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固定資産税を算出するには課税標準額や優遇措置など確認すべき事項が多数あります。特に法律に関わる部分は改定されることもあり、個人でそのすべてを把握することは難しいでしょう。

そのため、固定資産の納税について何か知りたい・困っているときには税理士への相談をおすすめします。税理士は税金のプロです。法律の最新情報から基本的な事項まで固定資産税に関わるさまざまなことを相談できます。

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監修税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

長期優良住宅の軽減措置を受けそびれている方が稀にいらっしゃいます。市町村に書類を提出する必要がありますので忘れずに提出しましょう。