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消費税の免税事業者の条件とは?特に3期目の条件に注意しよう

最終更新日: 2024年06月28日

資本金が1,000万円以下の会社の1期目は、消費税の納税義務が免除されます。続けて2期目以降も消費税の免税を受けるためにはどのような条件があるのでしょう。

本記事では、免税事業者になるための条件や免税事業者の注意点について詳しく解説します。会社を設立する予定のある方や、会社設立1年目の方は、ぜひ参考にしてみてください。

この記事を監修した税理士

EMZ国際投資税理士法人 - 東京都港区六本木

 

消費税の免税事業者とは?

「消費税」とは、ほとんどの商品やサービスに対して課税される間接税。商品やサービスの流通の各段階で課税され、最終的に最終消費者が負担するものです。

しかし、一定の条件に当てはまる場合は消費税が免税される「免税事業者」となります。

この段落で、まずは消費税の免税事業者について概要を確認しましょう。

また、1期目に免税事業者になるための条件と、2期目以降も免税事業者になるための条件をそれぞれ見ていきます。

免税事業者とは

消費税の納税義務が免除される事業者のことを「免税事業者」と言い、その対象かどうかは、基準期間における課税売上高によって判断されます。

対象事業者は以下の条件を満たします。

  • 基準期間における課税売上高が1,000万円以下の場合、免税事業者となる
  • 基準期間は個人事業者であれば前々年、法人であれば前々事業年度のこと
参考:納税義務の免除 | 国税庁

1期目に免税事業者になる条件

会社を設立した事業年度を1期目と言いますが、1期目に免税事業者になる条件は「資本金を1,000万円未満に抑える」ということです。

先ほど「免税事業となるかどうかの判定基準は、基準期間における課税売上高によって判断される」と説明しましたが、1期目を迎える会社にはまだ基準売上高が存在しません。そのため原則として設立1期目と2期目は免税事業者となります。

しかし「事業開始年度の資本金の額が1,000万以上である法人や特定新規設立法人については納税義務を免除しない」とする特例が設けられているのです。

したがって1期目に免税事業者になるには、資本金を1,000万円未満に抑えることが必要となるわけです。

参考:基準期間がない法人の納税義務の免除の特例 | 国税庁

2期目も免税事業者になるために

2期目も免税事業者になるために必要な条件は、2期目の期首時点での資本金が1,000万円以下であることに加え、以下のいずれかに該当していることです。

  1. 事業開始後1期目の上半期における課税売上高が1,000万円以下であること
  2. 事業開始後1期目の上半期における給与等の支払総額が1,000万円以下であること

課税売上高を1,000万円以下に収めることができなければ、1期目のうち前半の6ヶ月間に支払う給与及び賞与の合計額を1,000万円以下で調整します。

免税措置が取られていても消費税を請求できる

消費税の納税義務が免除されている免税事業者が、顧客に対して消費税を上乗せ請求することは可能なのでしょうか?以下で解説していきます。

免税事業者も消費税の請求が可能!

結論から言いますと「免税事業者が顧客に対して消費税を上乗せ請求することは可能」です。

そもそも消費税は、流通の各段階において順次課税され、最終的な税金分はすべて消費者が負担するというものです。

そのため、免税事業者であっても消費税を上乗せ請求しなければ、仕入れ時に払った消費税を自己負担しなければならない、ということになってしまいます。

インボイス制度によって、免税事業者による消費税徴収が廃止になる!?

複数税率(軽減税率)に対応した消費税の仕入税額控除の方式として、2023年10月1日から適格請求書等保存方式(インボイス制度)が導入されます。

「適格請求書」とは、「売手が、買手に対し正確な適用税率や消費税額等を伝えるための手段」であり、一定の事項が記載された請求書や納品書その他これらに類する書類のことです

この「適格請求書」を交付できるのは、事前に税務署に登録申請書を提出し、登録を受けた事業者(適格請求書発行事業者)に限定されます。

参考:消費税の仕入税額控除の方式として適格請求書等保存方式が導入されます | 国税庁

免税事業者からの仕入れは、仕入税額控除ができなくなる

「仕入額控除」とは、課税売上に係る消費税額から、課税仕入れ等に係る消費税額を控除する控除制度のことです。

インボイス方式では適格請求書に記載された消費税でなければ、仕入税額控除ができません。

加えて、前の段落で説明したように、適格請求書を発行できるのは、事前に税務署の登録を受けた「課税事業者」のみです。

したがって、「免税事業者」が発行した請求書は適格請求書に該当せず、仕入税額控除の対象外となってしまうのです。

  • インボイス方式では、適格請求書に記載された消費税でなければ仕入控除ができない
  • 適格請求書を発行できるのは、税務署の登録を受けた「課税事業者」のみ
  • 税務署の登録を受けられない「免税事業者」が発行した請求書では仕入税額控除ができない

2029年10月以降に消費税徴収が廃止になる!?

これまでは消費税免税をメリットととらえて免税事業者を選ぶケースがありましたが、今後は課税売上高1,000万円以下であっても課税事業者になった方がメリットになるケースが増えます。

というのも、免税事業者の発行した請求書は仕入れ控除の対象とならないため、顧客や取引先、親会社かから「取引しない」と言われることが増えてくる可能性があるためです。

このような場合、税務署に課税事業者選択届けを出し、課税事業者として商売を続けることになるでしょう。

インボイス方式は2023年10月から段階的に導入され、2029年10月以降は免税事業者からの仕入れに係る仕入税額控除が一切出来なくなってしまいます。

3期目のトラップに注意しよう

3期目も免税事業者となる条件は?
3期目も免税事業者となる条件は?(画像提供:PIXTA)

会社設立1期目と2期目に免税事業者となる条件が分かったところで、3期目についても見ていきましょう。

課税売上高と給与等支払額の合計額の関係

3期目は前々年の課税売上高が1,000万円以下であることに加え、前事業年度開始から6か月間の売上・給与の支払額のどちらかが1,000万円以下であれば、免税事業者になれます。

「売上・給与の支払額のどちらかが1,000万円以下」ということを、より具体的に見ていきますと、下記のとおりです。なお、いずれも期間は「前事業年度開始から6ヶ月」です。

  • 売上高、給与支払額どちらも1,000万円を超えている場合 → 課税事業者
  • 売上高、給与支払額どちらも1,000万円以下の場合 → 免税事業者
  • 売上高と給与どちらか片方が1,000万円以下の場合 → 免税事業者を選択できる

特に注意したいのが3つ目の「売上高と給与どちらか片方が1,000万円を超えている場合」です。

「売上高を1,000万円を超えてしまったら課税事業者にならなければならない」と考えている人もいますが、実際はそうではありません。

売上と給与支払いのどちらかが1,000万円以下であればいいのですから、給与(給与・賞与等)の支払いが1,000万以下であれば、免税事業者の条件に該当することとなり、3期目以降も免税事業者を選択できるというわけです。

【図解】3期目以降も消費税を免税する条件

先ほどの説明を図にまとめたものが以下です。

課税事業者の申告ミスは、取り消しできない!

免税事業者を選択できるにもかかわらず「売上が1,000万円を超えてしまったから課税事業者にならないと!」と勘違いして消費税を支払ってしまっても、後から取り消しはできません。

そのようなことにならないように、免税事業者に該当する条件を上の図などでしっかり確認しましょう。

大切なことですので繰り返しますが、前事業年度の開始から6ヶ月間の「課税売上高」もしくは「給料の支払い」のどちらかが1,000万円以下であれば免税事業者を選択できます。売上高が1,000万円を超えたからと言って、すぐに課税事業者になるというわけではない点は注意しましょう。

消費税転嫁対策特別措置法

画像出典:消費税の転嫁拒否に関する主な違反事例 | 公正取引委員会

消費税増税時に注意しておきたいのが、取引先による消費税の転嫁拒否です。

たとえば免税事業者であることを理由として、消費税を上乗せせず対価を定めることは「買いたたき」に該当し違反となるため注意しましょう。

不当行為を迅速に是正するために設けられた法律が「消費税転嫁対策特別措置法」で、正式名称は「消費税の円滑かつ適正な転嫁の確保のための消費税の転嫁を阻害する行為の是正等に関する特別措置法」といい、平成25年10月1日から令和3年3月31日までの特別措置です。

主な禁止行為

消費税転嫁対策特別措置法で禁止されている行為には、以下5つのタイプがあります。

  1. 買いたたき
  2. 減額
  3. 商品購入、役務利用、利益提供の要請
  4. 本体価格での交渉の拒否
  5. 報復行為

それぞれの具体例をいくつか見ていきましょう。

禁止行為 具体例
①買いたたき
  • 消費税率引き上げ後も引き上げ前の価格を据え置きする行為
  • 消費税率引き上げを見越した値下げを要請する行為
  • 消費税の免税事業者であることを利用して消費税率引き上げ分を上乗せしない行為
②減額
  • 消費税率引き上げ分の一部を差し引いて支払う行為
  • 請求金額の端数を一方的に切り捨てて支払う行為
③商品購入、役務利用、利益提供の要請 値札の付け替え作業を無償で要請する行為
④本体価格での交渉の拒否
  • 税抜価格での交渉に応じない
  • 税込価格しか期待できない見積書を使用させる
⑤報復行為  「消費税の転嫁拒否などの行為がある」として公正取引委員会などに事実を知らせたことを理由に、取引数量を減らしたり取引を停止したりするなど不利益な取扱を行う行為
参考:消費税の転嫁拒否に関する主な違反事例 | 公正取引委員会

違反するとどうなるのか

消費税の転嫁拒否等の行為は法律違反です。違反した場合は、公正取引委員会、主務大臣、中小企業庁長官などによる調査が実施され、必要な指導が行われます

また、重大な違反行為を行った場合は、公正取引委員会による勧告が行われ、事業者名が公表されます。

課税事業者に変更する場合は?

課税事業者変更の手続きは?
課税事業者変更の手続きは?(画像提供:PIXTA)

ここまで免税事業者になる条件を確認してきましたが、この段落では課税事業者に変更する場合の手続きなどを見ていきます。

課税事業者に変更した方が良い場合

消費税を納めない免税事業者は、消費税の還付を受けることができません。そのため経常的に消費税が還付される輸出業者などは、あえて課税事業者となることを選択した方がメリットになります。

消費税課税事業者選択届出書を提出しよう

免税事業者から課税事業者に変更する場合は、所轄の税務署に「消費税課税事業者選択届出書」を提出します。

提出期限は「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」で、手数料はかかりません。

参考:消費税課税事業者選択届出手続 | 国税庁

監修税理士のコメント

EMZ国際投資税理士法人 - 東京都港区六本木

現在では、免税メリットを最大限取るため=いわゆる益税に、節税対策として2期分を有効活用するように言われていますが、インボイス方式が大変重要になってきます。但し、実務的な処理の煩雑さをどのように解消できるかが、ポイントです。また、益税メリットを取れなくなる小規模零細企業者が、納税するか否かも気になるところです。

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