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減資とは?意味や目的、メリットや手続きの流れをわかりやすく解説

最終更新日: 2022年05月02日

会社は経営の立て直しや節税のために、資本金を減らす減資を行なうことがあります。減資は目的によって3種類に分けられ、それぞれにメリットとデメリットがあります。減資とはどのような手続きなのか、それぞれわかりやすく解説します。

この記事を監修した税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

 

減資とは資本金を減らす手続き

オフィス街に並び立つビルの風景

減資とは会社の資本金を減少させる手続きのことです。「欠損の補填による経営立て直し」「株主への財産の払い戻し」「節税」を目的に行ないます。これらの目的を達成するため「無償減資」「有償減資」「100%減資」の3つの方法で減資が行なわれます。

無償減資

無償減資は、会社の資金を使わずに資本金の額を減少させる方法です。経営の立て直しや節税を目的とした減資に用いられます。

有償減資

有償減資は、会社の資金を使って資本金の額を減少させる方法です。株主に会社の財産を払い戻す配当を行なうために利用されます。

100%減資

100%減資は、経営の立て直しの中でも特に経営状態の厳しい会社に対して、株主の入れ替えを目的として行なわれるものです。

無償減資とはお金の動かない減資のこと

無償減資の仕組み

無償減資は会社の資産を減らさずに資本金を減らす減資です。そのため無償減資を行なっても貸借対照表上の資産総額などの財務内容は変わりません。

過去の赤字分である繰越欠損金を資本金と相殺して決算書の見た目を良くしお金を借りやすくするほか、税金の優遇も受けられます。

無償減資は会社が苦しいから行なうというよりかは、会社にメリットをもたらすために行なわれることが多い減資です。

無償減資のメリット1:経営の立て直しができる

繰越欠損金の額が消滅すると会社の決算書の見栄えが良くなり、融資を受けたり取引を開始しやすくなります

会社の経営に行き詰って赤字が発生すると、会社に多額の欠損金が発生する場合があります。多額の繰越欠損金があると、金融機関からの融資を受ける際や、新たな取引先と取引を開始しようとする際に大きな障害となるのです。

無償減資を行なうと資本金を取り崩し、その額を欠損金に填補して欠損金を減少させられます。繰越欠損金を消去して悪化した経営状態を立て直すきっかけになります。

無償減資のメリット2:節税につながる

法人税の課税上、資本金の額が1億円を超える大法人と1億円以下の中小法人では大きな違いがあります。中小法人の方が大法人より税額が少なくなる優遇を受けられるので、減資すると法人税が少なくなるケースがあるのです。

中小法人が受けられる優遇税制の1つに、法人税の税率があります。法人税の税率は、原則23.2%です。しかし、資本金の額が1億円以下の中小法人で一部の適用除外事業者以外は、年間800万円までの所得に対して15%の税率が適用されます。そのため資本金額を減資するだけで、法人税を節税できるのです。

無償減資のデメリット:会社の信用が低下するおそれがある

一般的に中小企業の財務状況や経営の安定性を見る際に、資本金の額が大きいほど良いとされるので減資によって会社の信用力が低下する恐れがあります。

無償減資を行なった場合、会社の財産はまったく変化しません。しかし資本金額の減少によって、信用が低下するおそれがあるため注意が必要です。

有償減資とはお金が出ていく減資のこと

有償減資の仕組み

有償減資とは十分な利益が出ていない場合に自己資本を切り崩して配当に充てる減資です。

減資を行ない資本金を準備金に振り替え、準備金から株主へ配当を行ないます。配当した金額は会社から流出するので、有償減資となります。

有償減資は利益が出ていない会社が大きな配当をする目的で行なわれることが多いため、どちらかと言えばネガティブな減資といえるでしょう。

有償減資のメリット:利益がなくても株主に配当を行なえる

有償減資を行なえば利益が出ていない企業でも、取り崩した資本金からの配当が可能です。

会社に投資を行なった株主は、会社が利益を計上した場合にその利益から配当金を受け取ります。ただ会社が順調に利益を計上できるケースばかりでなく、会社が損失を計上してしまうケースもあります。損失の額が大きくなった結果、配当できなくなってしまうのです。

しかし利益が出なければ配当できないのであれば、会社に株主となって投資してくれる人がいなくなってしまうかもしれません。いつまでたっても利益が出ないのでは、会社に投資した株主との関係も悪化してしまいます。そこで減資して資本金を取り崩した金額の中から株主に配当を行います。

有償減資のデメリット:会社の財産は減少する

有償減資を行なうと、株主に対して会社の財産が払い出されるため、財産が減少します。会社の財産が減少すれば、経済活動を行なう資金が減少し、運転資金を支払うのも苦しい状況となってしまいます。

また会社が利益を獲得するためには、仕入や設備投資が必要です。しかし財産を払い出した結果、仕入や設備投資を行なう資金が枯渇してしまい、事業拡大のペースは鈍化してしまいます。有償減資を行なった結果、利益を確保しにくくなることもあります。

100%減資とは株式の全てを消滅させること

100%減資とは株式の全てを消滅させること

100%減資とは既存の株主が保有する株式の価値をゼロにする減資です。

通常の減資を行なう際には、100%減資が行なわれることはまずありません。100%減資は、会社の存続が危ぶまれる状況の中で、新しいスポンサーの支援を受けるために行なわれるのが一般的です。

100%減資のメリット:財務内容を抜本的に改善できる

100%減資は、会社の財務状況を大きく改善するために行なわれます。会社の経営状況が非常に苦しい状況になると、そのままでは存続できなくなってしまいます。スポンサーとして名乗り出る者がいなければ、そのまま解散・清算を迎えてしまいますが、会社を存続させるスポンサーが見つかれば、資金援助を受けて事業を継続できるのです。

この時、既存の株主が保有する株式を無償ですべて減資し、同時にスポンサーからの資金を受け入れ資本金とします。結果的に、既存の株主が保有していた株式の価値はゼロとなりますが、財務内容は改善され、会社として存続できるのです。

100%減資のデメリット:既存株主は不利益を受ける

100%減資を行なうと、既存の株主が保有していた株式の価値はゼロとなります。これは株主には投資した資金の額については回収できなくなるリスクがあり、会社の経営状況が悪化した責任を株主が取った結果です。そのまま株主を継続しても会社の財務内容が改善する見込みがないため、既存株主は不利益を受ける結果となりますが、会社を継続するには仕方ありません。

減資の手続きの流れ

減資の手続きの流れ

減資をするには、株主総会や登記など様々な手続きが必要になり、1か月以上の時間がかかります。ある日突然「減資をしよう」と思い立って、突然に減資できるわけではありません。

減資をするための手続きは以下の3つのステップに分けられます。

  1. 株主総会の特別決議
  2. 債権者保護手続き
  3. 登記申請

1.株主総会の特別決議

減資をするには株主総会の特別決議が必要になります。減資は株主への影響が大きいためです。

会社法第447条では減資を決議する株主総会では以下の決議をしなければならないとされています。

  • 減少する資本金の額
  • 減少する資本金の額の全部又は一部を準備金とするときは、その旨及び準備金とする額
  • 資本金の額の減少がその効力を生ずる日(効力発生日)

引用:会社法第447条

減資をしたい場合には、まずは株主総会を招集し、上記の事項の特別決議を行いましょう。

2.債権者保護手続き

減資は債務者の資本金が減少してしまい、債権の返済が危うくなってしまうので債権者にとっても影響が大きな行為です。このため、以下の2つの方法で債権者の保護手続きを行なう必要があります。

  • 官報での公告
  • 債権者への個別催告

また官報以外の日刊紙や電子広告での公告方法を定めている会社は、日刊紙や電子公告への公告によって債権者への個別催告を省略できます。

いずれにせよ、減資を行なう場合には上記のような方法で、債権者に対して減資を行うことを知らせる必要があります。債権者に黙って減資は行なえません。

また債権者が減資に対して「おかしい」などと異議を申し立てる期間が必要になるので、公告期間は1か月以上と決められています。

つまり株主総会特別決議で決まった減資を、債権者に対して1か月以上公告する必要があるため、登記申請を行なうことができるまで1か月以上の時間がかかってしまうのです。

なお資本金が減少する効力が発生するのは、原則的に株主総会特別決議で決めた効力発生日です。しかし株主総会特別決議で決めた効力発生日が債権者保護手続きが終了(公告から1か月以上)していない場合には、債権者保護手続きが終了した日が効力発生日になります。

3.登記申請

減資の効力発生日から2週間以内に、法務局へ減資の登記申請を行なう必要があります。

なお、変更登記申請を行なう際には3万円の登録免許税が必要になります。

減資の仕訳方法

減資の仕訳方法

実際に減資を行なうと資本金を減少させ、他の勘定科目に振り替える仕訳が必要です。「何のために減資を行なうのか」「有償減資か」「無償減資か」によって資本金を振り替える勘定科目は異なります。

無償減資で赤字の補填をした時の仕訳の方法

株主総会特別決議によって資本金10,000,000円を減資して、累積赤字と相殺することを決議した場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
(資本金)10,000,000円 (繰越利益剰余金)10,000,000円

資本金を取り崩した「その他資本剰余金」と繰越欠損金を相殺する場合の仕訳は以下の通りです。

借方 貸方
(その他資本剰余金)10,000,000円 (その他資本剰余金)10,000,000円

無償減資で資本金を振り替えた場合の仕訳の方法

節税目的などで単純に、資本金を資本準備金へ振り替えて無償減資する場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
(資本金)10,000,000円 (資本準備金)10,000,000円

有償減資をした時の仕訳の方法

株主総会特別決議によって資本金10,000,000円を減資して、株主に払い戻すことを決議した場合の仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
(資本金)10,000,000円 (その他資本剰余金)10,000,000円

同時にその他資本剰余金を、配当のために未払金に振り替える仕訳をしなければなりません。仕訳は以下のようになります。

借方 貸方
(その他資本剰余金)10,000,000円 (未払金)10,000,000円

なお仕訳を行なう日は株主総会特別決議の日ではなく、債権者保護の手続きが終了した日になります。

債権者保護手続きが終了していないのに、減資の仕訳を行なうことがないようにしてください。

監修税理士からのコメント

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

最近では、大企業でも無償減資をして税法上の中小法人になろうとするケースが多いです。税務上のメリットが大きいので、資本金が1億円を超えている会社は検討してみましょう。

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この記事の監修税理士

安田亮公認会計士・税理士事務所 - 兵庫県神戸市中央区元町通

安田亮(公認会計士・税理士・CFP🄬)1987年香川県生まれ、2008年公認会計士試験合格、2010年京都大学経済学部経営学科卒業。大学在学中に公認会計士試験に合格。大手監査法人に勤務し、その後、東証一部上場企業に転職。連結決算・連結納税・税務調査対応等を経験し、2018年に神戸市中央区で独立開業。所得税・法人税だけでなく相続税申告もこなす。