「受け取る年金の額が少ない気がする……」
「もしかして年金にも税金がかかっているの?」
皆さんは受け取った年金にも所得税がかかっていること、ご存知でしたか?
複雑でわかりづらい年金制度ですが、所得税の控除を受けることで税金を減らすことができます。
この記事を監修した税理士
多田紘大税理士事務所 – 兵庫県
公的年金について
公的年金は、国民全員が加入しなければなりません。毎月の支払いが負担に感じる人もいると思いますが、法で定められており、日本国民である以上支払わなければなりません。
年金を支払っているのだから、税金が引かれるわけがないと思う人も多いと思いますが、実は年金には税金がかかっているのです。
公的年金とは
公的年金とは、国が運営している年金を指しています。20歳以上60歳未満の方は、この公的年金に加入する義務があります。現在の制度では年金は「三階建て」となっています。
一階が国民年金、二階が厚生年金、三階が確定拠出企業年金であり、共済組合から支払われる老齢年金や普通恩給なども公的年金に含まれます。
いくらから年金に所得税はかかる?
前述してきたように、年金から所得税は引かれてしまいます。では、実際にどのような条件で所得税が引かれるのでしょうか。
年金は、65歳未満の方は年金の受給額が108万円、65歳以上の方は受給額が158万円を超えているような時には税金を支払わなければなりません。
年金に対する税金に関して、基礎控除と公的年金等控除という所得税の控除があります。65歳未満の方は、年金の受給額が108万円、65歳以上の方は受給額が158万円を超えているような時には、この二つの合計の控除額を超えてしまっているため、税金を支払う必要があります。このように年金は、所得税がかかってしまう場合があります。
年金にかかる所得税の計算方法
公的年金は源泉徴収された上で支給されます。そのため、所得税が引かれた上で年金を受けとります。しかし、源泉徴収されているのでどのくらいの額の税金を自分で支払っているのかわからないという人も多いでしょう。そこで、どのくらい税金を支払っているのか計算する方法を解説していきます。
源泉徴収の過程
前述したように、年金の受給額が65歳未満で108万円、65歳以上で158万円を超えた場合に、その超えた分に所得税がかかります。この税金は源泉徴収によって支払うことになります。
そのため、年金が支払われる際に税金の額が計算され、税金が引かれた残りの金額を私たちは年金として受け取っています。
この時、注意しなければならないことがあります。それは、「公的年金等の受給者の扶養親族等申告書」という書類を忘れずに提出するということです。これは、年金による所得税の支払いの義務が生じた時に、日本年金機構から送られてくる書類で、とても重要な書類です。
令和2年分以降については、書類の提出の有無によって税率に差はなくなりますが、配偶者控除等の各種控除を受ける方については従前同様に提出が必要です。
余計に所得税を支払ってしまうことのないよう、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書は、必ず提出するようにしましょう。
公的年金等の控除額
公的年金等の所得税の控除額は年齢や、いつ受け取るか、またどのくらいの額を受け取るかということによって異なります。そこで、控除額を以下の表にまとめたので参考にしてみてください。
平成17年から令和元年までの控除額
公的年金等の収入額 | 控除額 | |
65歳未満 | 130万円未満まで | 70万円 |
130万円から410万円未満まで | 37万5千円 | |
410万円から770万円未満まで | 78万5千円 | |
770万円以上 | 155万5千円 | |
65歳以上 | 330万円未満まで | 120万円 |
330万円から410万円未満まで | 37万円5千円 | |
410万円から770万円未満まで | 78万5千円 | |
770万円以上 | 155万5千円 |
令和2年以降で公的年金等以外の所得が1000万円以下の場合
公的年金等の収入額 | 控除額 | |
65歳未満 | 130万円未満まで | 60万円 |
130万円から410万円未満まで | 27万5千円 | |
410万円から770万円未満まで | 68万5千円 | |
770万円以上1,000万円未満まで | 145万5千円 | |
1,000万円以上 | 195万5千円 | |
65歳以上 | 330万円未満まで | 110万円 |
330万円から410万円未満まで | 27万5千円 | |
410万円から770万円未満まで | 68万5千円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 145万5千円 | |
1,000万円以上 | 195万5千円 |
令和2年以降で公的年金等以外の所得が1000万円超2000万円以下の場合
公的年金等の収入額 | 控除額 | |
65歳未満 | 130万円未満まで | 50万円 |
130万円から410万円未満まで | 17万5千円 | |
410万円から770万円未満まで | 58万5千円 | |
770万円以上1,000万円未満まで | 135万5千円 | |
1,000万円以上 | 185万5千円 | |
65歳以上 | 330万円未満まで | 100万円 |
330万円から410万円未満まで | 17万5千円 | |
410万円から770万円未満まで | 58万5千円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 135万5千円 | |
1,000万円以上 | 185万5千円 |
令和2年以降で公的年金等以外の所得が2000万円超の場合
公的年金等の収入額 | 控除額 | |
65歳未満 | 130万円未満まで | 40万円 |
130万円から410万円未満まで | 7万5千円 | |
410万円から770万円未満まで | 48万5千円 | |
770万円以上1,000万円未満まで | 125万5千円 | |
1,000万円以上 | 175万5千円 | |
65歳以上 | 330万円未満まで | 90万円 |
330万円から410万円未満まで | 7万5千円 | |
410万円から770万円未満まで | 48万5千円 | |
770万円以上1,000万円未満 | 125万5千円 | |
1,000万円以上 | 175万5千円 |
このように年齢、時期、収入額によっても控除額が変わってくるので、この表を参考に自分はどこに当てはまるのか考えてみてください。
各種控除の一覧
公的年金等の収入の所得税に関する控除は様々なものがあります。そこで、公的年金等に関する控除を以下の表にまとめたので参考にしてみてください。
控除の種類 | 控除の対象 | 一か月あたりの控除額 |
配偶者控除 | 控除対象配偶者がいる場合 | 32,500円 |
老人控除対象配偶者相当 | 40,000円 | |
扶養控除 | 控除対象扶養親族がいる場合(16歳以上) | 32,500円×人数 |
特別扶養親族控除 | 52,500円×人数 | |
老人扶養親族控除 | 40,0000円×人数 | |
普通障害者控除 | 受給者本人、同一生計配偶者、扶養親族が障害者の場合 | 22,500円×人数 |
特別障害者控除 | 35,000円×人数 | |
同居特別障害者控除 | 62,500円×人数 | |
寡婦控除 | 受給者本人が、寡婦、特別寡婦、寡夫の場合 | 22,500円 |
特別寡婦控除 | 30,000円 | |
寡夫控除 | 22,500円 |
具体的な計算方法
計算方法は、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書を提出した場合、以下のようになります。
- まず、年金支給額から国民健康保険料、後期高齢者医療保険料、介護保険料などの社会保険料を引きます。
- 次に、所得税の基礎控除、公的年金等控除、その他の控除を引きます。
- 最後に、所得税率5.105%をかけます。ちなみに所得税率は5%ですが、復興特別所得税率が0.105%加えられています。
源泉徴収税額 ={年金支給額-社会保険料-各種控除額(基礎控除+配偶者控除等各種控除)}×合計税率 5.105% |
公的年金等の受給者の扶養親族等申告書を提出しなかった場合は、以下の通りです。
源泉徴収税額 =(年金支給額-社会保険料-基礎控除)×合計税率 5.105% |
上記の計算式があるということは、覚えておきましょう。
確定申告は必要?
公的年金等に関する税金は源泉徴収により支払うため、確定申告は必要がないと考える人も多いでしょう。しかし、確定申告をしなければならない場合もあり、注意が必要です。
また、確定申告をする必要がなくても、確定申告することにより所得税が戻ってくるという場合もあるので、是非知っておきましょう。
確定申告不要の条件
確定申告不要のためには以下の二つの条件を満たしている必要があります。
- 公的年金等の収入金額が400万円以下
- 公的年金等に係る雑所得以外の所得の金額が20万円以下
この二つの条件を満たしていれば、確定申告は必要ありません。
公的年金等に係わる雑所得以外の所得とはどのようなものがあるのでしょうか。給与所得や、生命保険の満期返済金、共済や生命保険などの契約による個人年金などが該当します。
これらの収入が20万円以下で、公的年金等の収入が400万円以下の場合は確定申告をしなくてよいです。
しかし、確定申告をすることで、所得税が戻ってくるという場合があります。確定申告をした方がよい場合は、主に4つあります。
- 高額な医療費を支払った場合
- 住宅ローンを利用し家を購入した場合
- 災害や盗難により被害を被った場合
- 社会保険料控除を受けることが可能な場合
これらの場合は所得税が戻ってくることもあるので、確定申告をするようにしましょう。
給与所得があれば確定申告が必要
公的年金等に係る雑所得以外の所得が年間20万円を越える場合、または年金が400万円超を越えて受け取っている場合、確定申告が必要となります。給与所得などを受け取っている方は、ほとんど確定申告が必要となるでしょう。
給与をそれなりに受け取っている方は、計算方法が前述したものと異なるので、注意しましょう。給与を受け取っている方は以下のような計算方法になります。
- 年金所得から控除額と社会保険料を引いたもの
- 公的年金等以外の雑所得
- 給与所得
上記3つを合計し、納める税金を計算する必要があります。
給与所得がある程度ある場合は、確定申告が必要で、税金の計算方法も異なるので注意しましょう。
公的年金等の所得税についてのまとめ
公的年金等も所得であるため、税金を納める必要がある場合があります。源泉徴収により、税金を納めますが、その際、公的年金等の受給者の扶養親族等申告書を提出しましょう。提出することで、各控除を受けることができ、所得税額を減らすことができます。
また、年金を納める上で、確定申告をする必要がある場合もあります。公的年金等の収入金額が400万円超を越える場合や、公的年金等以外の収入が20万円を越えてしまった場合は確定申告をしなければなりません。また、税金の計算方法も異なるので注意しましょう。
確定申告をする必要がなくても、医療費を支払った場合には確定申告をすることでお金が戻ってくる場合があるので覚えておきましょう。
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