給与計算をアウトソーシングする際、税理士と社労士、どちらに依頼すべきか悩むところです。
税理士に給与計算を依頼した場合と社労士に依頼した場合では費用にも差があります。
この記事では、給与計算の作業内容を確認して、アウトソーシングする際にどちらにすべきか、また税理士に依頼するメリットについて徹底解説いたします。
税理士に給与計算を依頼した場合の費用相場
税理士に給与計算の依頼をした場合の費用は「基本料金+単価×従業員数」で決まります。相場は基本料金が1万円程度、人数単価が500円~1,000円です。このほかに初期設定費用は1人あたり1,000円~2,000円程度かかる場合があります。
また確定申告や年末調整、賞与の計算などオプションを増やすと費用が加算されていきます。オプションにはさまざまな種類がありますが、賞与計算の相場は1人あたり800円~1,200円です。
税理士に依頼した際の従業員数ごとの費用相場表
税理士の月額相場表
従業員数 | 費用相場(月額) |
10人以下 | 10,000円~20,000円 |
11人~30人 | 20,000円~35,000円 |
30人~50人 | 35,000円~55,000円 |
50人以上 | 55,000円~ |
税理士の年間相場表
従業員数 | 費用相場(年額) |
10人以下 | 12万円~20万円 |
11人~30人 | 20万円~50万円 |
30人~50人 | 50万円~75万円 |
50人以上 | 75万円~ |
社労士に給与計算を依頼した場合の費用相場
社労士に給与計算を依頼する場合の費用も、税理士と同じく「基本料金+単価×従業員数」で計算するのが一般的です。相場は基本料金が1万円~2万円、人数単価が500円~1,500円です。
このほかに就業規則の作成や届出、従業員の入退社手続き、社会保険料変更手続きなどを依頼範囲に含めると、その分の費用が加算されます。
安くても給与明細書の作成はオプションになっている場合もあります。どこまでの範囲が料金に含まれているか事前に確認しておきましょう。
社労士に依頼した際の従業員ごとの費用相場表
社労士の月額相場表
従業員数 | 費用相場(月額) |
10人以下 | 10,000円~25,000円 |
11人~30人 | 25,000円~35,000円 |
30人~50人 | 35,000円~50,000円 |
50人以上 | 50,000円~ |
社労士の年間相場表
従業員数 | 費用相場(年額) |
10人以下 | 12万円~25万円 |
11人~30人 | 25万円~55万円 |
30人~50人 | 55万円~80万円 |
50人以上 | 80万円~ |
給与計算を税理士に任せるメリット
税理士に給与計算を依頼するメリットは「年末調整」「節税対策の相談」「経営アドバイス」をまとめて依頼できることです。
給与計算~年末調整までワンストップで依頼できる
税理士に給与計算を依頼する最も大きなメリットは、年末調整までワンストップで依頼できる点です。
年末調整に必要な給与額や控除額などの数字が税理士のところにあるので、新たにデータを作る必要もありません。
さらに自治体への申請に必要な従業員毎の支払総括表や、支払報告書の電子申請も依頼できます。
節税対策ができる
税理士の独占業務のひとつが税に対する相談へのアドバイスです。利益をできるだけ残し、企業として成長するためにも、法人税や消費税の節税は重要なポイントです。
日々の業務の中で、どのように会計処理をしたら節税につながるのかなど、節税対策について相談できる相手がいるのは、心強いでしょう。
経営のアドバイスをしてもらえる
税理士の中には、税金や売上など数字という視点からのコンサルティングを得意としている人もいます。金融機関等とのパイプもあり、事業計画書作成など融資申請が通りやすい方法などもアドバイスしてもらえます。
給与計算を社労士に任せるメリット
社労士に給与計算を依頼すれば、従業員の入退社手続きや、毎年の社会保険の更新、変更手続きなどを一緒にやってもらえます。
給与が関係する社会保険・労働保険手続きも依頼できる
社労士に給与計算を任せると、給与額に関する届出である「算定基礎届」や「月額変更届」の作成や提出、労働保険の「年度更新」もまとめて依頼できます。
「算定基礎届」の作成・提出や「年度更新」は、毎年行わなければならない手間のかかる手続きです。これらをアウトソーシングすることで、業務負担を減らすことが可能です。
なおこれらの手続きも依頼すると、一般的には給与計算は別に費用が発生します。しかし社労士によっては、給与計算とこれらの手続きをあわせて費用を設定していることもあります。
これらの手続きをまとめて依頼する場合は、顧問契約を締結したほうが割安になる場合もあるので確認しておきましょう
労務相談をすることができる
身近に社労士がいると、働き方改革のような法改正をした場合や、従業員との間にトラブルが発生した場合などには相談できます。担当者が時間をかけて調べたり、各所に問い合わせをすることも少なくなります。
なお労務相談は顧問契約を締結している顧客へのサービスであることが多いです。しかし給与計算だけを依頼している場合でも、ある程度は相談に乗ってくれます。
就業規則の見直しや助成金の申請も依頼できる
就業規則の見直しや助成金の申請についても、自社で対応しようと思えば、かなりの手間と時間がかかります。これらの手続きも社労士に依頼できます。
なおこれらの手続きも依頼すると、給与計算とは別に費用が発生します。
税理士と社労士、どちらに依頼する?
給与計算は税理士、社労士のどちらにでも依頼できます。どちらに依頼するかは、会社の規模やそれぞれの専門性を考慮して決定しましょう。
税理士に給与計算を依頼した方がいい場合
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従業員数の少ない会社では、給与計算以外に社労士に依頼すべき手続きも少ないです。この場合、給与計算は新たに社労士に依頼するよりも、税理士に依頼した方が費用的にも抑えられることがあります。
ただし税理士が給与計算に対応してくれない場合もあるので、注意が必要です。
社労士に給与計算を依頼した方がいい場合
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従業員が数十人以上の会社ともなれば、入退社手続きをはじめ、社会保険や労働保険の手続きが増えてきます。この場合は、社会保険や労働保険の手続きと合わせての依頼を視野に入れておきましょう。
また従業員数の多い会社では、給与計算を誤ると(特に誤った額を支給してしまった場合など)かなり面倒なことになります。給与計算における誤りは、社会保険料の控除や残業代の計算などで生じやすいです。そのため専門家である社労士に依頼すると安心です。
なお給与計算に対応してくれない社労士もいるので注意が必要です。
関連記事:給与計算の社労士を探そう|ミツモア |
税理士に給与計算業務をアウトソーシングするときの準備
給与計算業務に慣れた税理士でも、間違いのない給与計算をしてもらうには、依頼する側にも準備が必要です。
【税理士に給与計算を依頼する際にそろえておくべき情報や資料】
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タイムカード・出勤簿(勤務時間がわかるもの)
従業員の労働時間を計算するための資料です。時間外労働や出退勤時間などを元に、給与額を計算します。出来高払いなど、変動する手当がある場合は、人事に関するデータや業績のデータも提出します。
固定手当控除情報
給与の総支給額と差引支給額(手取り額)を計算するには、従業員1人ひとりの手当額と控除額の情報が必要です。
固定手当とは勤務時間などによって変動しない手当のことです。基本給や通勤手当、家族手当などがこれにあたります。
固定控除は、毎月一定額で差し引かれる金額のことです。社宅の使用料や社員旅行の積立、財形貯蓄などがあります。
変動手当控除情報
変動手当とは、毎月の勤務状況や成果によって変わる給与です。時間外勤務手当や営業手当などがあります。
変動控除は、毎月の給与総支給額などによって変わる差引額のことです。所得税などのほか、企業によっては、社員食堂利用費などがあります。遅刻や欠勤など、不就労時間分の計算も変動控除にあたります。
採用・退職情報
その月に採用された人、退職した人の情報です。最新の従業員名簿を提供するようにしましょう。
給与が支払われていない人がいる、支払う必要のない人に振込されたなどの間違いがないよう注意が必要です。
税理士と業務連携できる、おすすめの給与計算ソフト
税理士に給与計算を依頼すれば、時間をかけず、正確な計算が可能になります。しかし費用がかかり、給与計算に関するノウハウが社内に残らないのは大きなデメリットと感じるかもしれません。そんなとき活用したいのが、税理士と業務連携できる給与計算ソフトです。
会計ソフトをお探しなら、以下の記事もご覧ください。ミツモアでは複数の会計ソフトを比較して、あなたにぴったりの製品を探せます。
給料奉行
給料奉行は500名までの登録が可能な、中規模企業向けのソフトです。インストール型の給与ソフトの中で、シェアナンバー1のシリーズになります。
人気のポイントはサポートの厚さです。ホームページ上のQ&Aやオンラインサポートだけでなく、電話での問い合わせにも対応しているので、初めてのソフト導入も安心です。価格は買い切りで220,000円~です。
やよいの給与計算
税理士からすすめられることも多い「弥生」シリーズのうち、20名までの小規模事業所向けに作られたのが「やよいの給与計算」です。
給与計算と給与明細書作成に特化しており、パソコンに慣れていない人でも、操作がわかりやすいのがポイントです。導入作業も、動画と音声で手順を解説してくれるので簡単です。保守やサポートは別途契約が必要になります。価格は27,000円~です。
人事労務freee
人事労務書類作成から給与計算、年末調整までサポートしてくれる人気のソフトです。
給与明細が電子化されているので、従業員の明細確認もオンラインで行なえます。メールやチャットでのサポートも充実しています。料金は月額1,980円(4人目からは月額300円/月)です。
マネーフォワードクラウド給与
規模の大きな企業での導入実績も多い給与計算ソフトです。シリーズの会計ソフトや経費ソフトなども合わせて利用できるので、給与計算から帳簿入力までを一括して処理できるというメリットもあります。
法人の料金は月額3,980円~(6人目からは月額300円/月)です。
フリーウェイ給与計算
5人までなら無料で使える給与計算ソフトです。6人以上でも低価格で利用できます。また初心者にも使いやすいシンプルな操作性も人気です。操作に迷っても、マニュアルや動画などでわかりやすくサポートしてくれます。
料金は5人までは無料、6人以上は月額1,980円です。
給与計算に強い税理士の選び方【6項目】
給与計算を税理士に依頼するときは以下の6項目を抑えておきましょう。
仕事の実績を確認しよう
税理士はそれぞれに得意分野を持っています。すべての人が給与計算の知識と実績に長けているわけではありません。また企業規模の違いで、スムーズに給与計算業務をやってもらえないこともあります。
気になる税理士を見つけたら、ホームページなどで実績を確認してみるとよいでしょう。どんな業務を手掛けてきたのかがわかると、その税理士の得意分野が見えてきます。
税務コンサルタントではなく会計業務専門の税理士がおすすめ!
税理士は企業と顧問契約を結び、税金の計算や税務相談などを受けています。中には税務コンサルティング業務を主にしており、給与計算はやっていないという税理士も少なくありません。
その点、会計業務を専門にしている税理士であれば、給与計算は得意分野です。毎月の給与計算に加えて、月々の経理業務、確定申告も一括して顧問契約を結べば、給与計算業務の費用を抑えてくれる税理士もいます。
会計ソフト(給与計算ソフト)に詳しい税理士を選ぼう
最近では、給与計算に専門の会計ソフトを使う企業が多くなってきました。また税理士と業務連携できるソフトも多くなってきています。業務提携できるソフトを使うと、給与計算を依頼する税理士へスムーズに情報提供可能です。
最新のソフト事情に詳しい税理士であれば、依頼費用が削減できる可能性もあります。業態や従業員数などに合ったソフトの選び方などを教えてくれる税理士かどうか、事前に質問をしてみるのもおすすめです。
税理士報酬の安さで選ぶのは危険!
給与計算の報酬額はなにを、どこまでやってもらうか、という業務範囲で決められています。安いところに依頼したら、実はお願いしたい内容が入っていなかった、という話も少なくありません。
さらに「対応が遅い」「聞いたことに答えてくれない」などのトラブルに発展することもあります。報酬の安さではなく、求めるサービスを適正な費用で提供してくれる税理士かどうかで選びましょう。
担当者が税理士資格を保有しているか確認しよう
国税庁のホームページに「にせ税理士に注意」という注意喚起ページが度々掲載されるほど、税理士資格を持たない人による税理士業務代行は増えています。税理士資格を持たない人に給与計算や確定申告を依頼してしまったら、その人が作成した税務書類はすべて無効になってしまいます。
税理士資格の保有を確認するために、契約前に税理士証票を提示してもらいましょう。税理士証票は日本税理士連合会が発行している、税理士登録の証。顔写真と登録番号などが記載されています。
日本税理士連合会のホームページでも、登録されているかどうかを検索できます。税理士事務所に所属しているからと安心せず、担当してくれる人が、間違いなく税理士資格を持っているか、必ず確認しておきましょう。
コミュニケーションがしっかりと取れる、信頼できる人を選ぼう
従業員や取引先を選ぶ際、みなさんはどんな点に注意しているでしょうか。「ちゃんと話を聞いてくれるか」「聞いたことに的確に答えてくれるか」など、コミュニケーションがしっかりと取れる相手かどうかを、重要なポイントと感じている人は多いのではないでしょうか。
会社や従業員のお金に関する業務を任せる税理士選びのポイントも同じです。必ず実際に面会し話してみて、信頼できる相手かどうかを確認しましょう。
知識や経験に裏付けられたアドバイスで、事業主と一緒に会社のことを考えてくれる強い味方が税理士です。信頼できる税理士選びは、そんな仲間を探すことだと心得て、馬が合う人、信頼できる言葉で話してくれる人を選びましょう。
給与計算の業務内容
税理士などに給与計算を外注した場合、以下の流れで業務を行ってもらえます。
1.総支給額の計算
最初に行なうのは、総支給額の計算です。タイムカードなどを元に、従業員1人ひとりについて、基本給や残業手当、通勤手当などを算出し、その月の総支給額を計算します。
2.税金、社会保険料などを計算する
多くの企業では、住民税が事業所からまとめて支払うよう手続きされています。市町村から事業主に、1人ひとりの住民税額が通知されており、それにあわせた税金を納めます。
さらに、その月の総支給額等に応じて変動する所得税や雇用保険料、年に1度見直される健康保険料や厚生年金保険料などを計算します。
このほかに、会社と取り決めている積立額や社員食堂の利用料、財形貯蓄額などを計算し総支給額から控除される額を確定します。
3.手取り額を計算する
総支給額から、税金、社会保険料、その他の控除額を差し引いて、手取り額を計算します。
4.台帳を作成する
全従業員の支給額と控除額の明細を記載したものが賃金台帳です。事業主には作成が義務付けられています。
給与明細でよいのでは?と思いがちですが、賃金台帳には、給与計算の根拠となる賃金計算期間、労働日数なども記載されているのが大きな違いです。
5.従業員への支払い&税金や保険料の支払いをする
賃金台帳が作成されたら、それを元に給与明細の作成や封入、給与振込や税金、保険料の支払いを行ないます。
これらの業務は、給与計算の外注業務として、税理士などに依頼することも可能です。
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