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顧問税理士は会社や個人事業主と年間契約をし、税務サービスを提供する税理士です。経営者の相談相手としてアドバイスをしたり、税務処理や税務署の対応を行ったりします。
顧問税理士が担う役割は主に下記の3つ
上記の3業務は税理士の独占業務のため、有償・無償に関わらず、税理士会に登録している税理士しか行うことができません。
顧問税理士には、どこまでの業務を依頼することができるのでしょうか。依頼する業務分野は各種あるので、項目別に紹介していきましょう。
税務代理とは、税金に関する申告や申請手続きを本人の代理人として行う業務です。確定申告も税務代理として顧問税理士に任せることができます。
税務署類の作成業務は、税務代理をする申告書や申請書の書類を作成する業務です。通常、税務署類を作成した税理士が税務代理を行います。
税務相談は税務に関わる様々な相談に回答する業務です。会社経営をしていく中で発生した税務上の疑問に電話やメールで受け答えをしてもらえます。
記帳代行は、毎月の伝票や領収書をすべて税理士に渡すことで、会計ソフトの入力や試算表の作成をする業務です。
ただし記帳代行は税理士の独占業務ではないので「非税理士」である報酬量の安い業者に依頼することもできます。また税理士自身もこうした業者を下請けにして業務をこなすこともあります。
社員の給与計算も税理士に依頼することができます。毎月の勤怠データを税理士に渡すと、給与所得の計算から源泉徴収する所得税、社会保険料の計算まで行ってくれます。
給与支払報告書とは、地方自治体が住民税などを課税するために、会社から受け取っている給与や賞与を把握するための資料です。
このため会社は給与支払い報告書を作成する必要があります。こうした給与支払い報告書の作成やいったん納付すべき住民税の計算を税理士に依頼することができます。
個人事業主が税理士と顧問契約を締結している場合、生前贈与を活用するなどの事業主の相続税対策もアドバイスを受けることができます。
税務調査が入った際は立ち合いを依頼できます。税務署員からの質問などにも適宜返答をしてくれる心強い味方です。
税理士や公認会計士のみが「計算書類及びその附属明細書等を作成することができる」会計参与の職に就くことができます。会計参与を設けることで、金融機関などからの信用が高くなります。
セカンドオピニオンとは、本来の顧問税理士以外の税理士からアドバイスを求める手法です。
「先代からの顧問税理士が最新の税務情報に明るくない」「相続税対策をしたいが、その分野は詳しくなさそうだ」といった税理士に対する不満や不安が生じた際に依頼します。
年末近くになると必ず行う必要があるとても面倒な業務があります。それが年末調整です。源泉徴収票、給与支払報告書、支払調書などの作成が必要となります。複雑な書式や色々な書類などベテランの経理担当者でも苦労する業務です。
税理士の中に、月々の給与計算も請け負っているところもあり、年末調整など給与計算に係る業務全部をお願いするとミスの無い正確な書類を作成することが可能です。
起業準備段階の人や起業して間もない人の支援を行っている税理士も数多くいます。
設立手続き、許認可、届出や創業融資に向けた創業計画の作成支援などがその例です。司法書士など他の士業と連携して創業者の色々なお悩みをトータルでサポートしているケースもあります。
税理士の中には経営革新等認定支援機関の資格を活用して、事業者の経営面のアドバイスを行っている人も少なくありません。補助金申請や銀行融資に向けた事業計画作成支援や会計・税務の専門家としての分析・改善提案などを行っています。
また事業再生や事業承継、M&Aなど経営環境に大きな変化がある時にも、税務を中心として数値面からのアドバイスを受けることができるでしょう。
※税理士はすべての分野に精通しているわけではなく、得手不得手があります。
日ごろの本業に加えて複雑な作業を伴う税務業務を1人ですべてやろうとすると、かなり時間がかかってしまいます。税務・経理業務を専門とする顧問税理士に任せることで、多くの時間を本業に充てることが可能になります。
申告書の作成において、税務調査の対象にならないような正確な申告をすることは大切です。顧問税理士に申告書の作成を依頼することで、ミスのない正確な申告ができます。また「書面添付制度」を利用することで、より信憑性の高い申告書の作成も可能ですよ。
支払わなければいけない税金の種類は多く、適切な節税対策を行わないと多額の税金を負担する必要が出てきます。顧問税理士として契約することで、依頼者にとって最適な節税方法の提案を期待できます。事前に節税対策を講じることで、税の負担を極力抑えられるのは嬉しいポイントですね。
資金調達にはいくつかの方法がありますが、いずれも顧問税理士を雇うことで有利に進めることが可能です。例えば金融機関から融資を受ける場合、説得力のある事業計画書の作成が不可欠です。また、補助金や助成金を利用する際の的確なアドバイスも期待できるでしょう。上記のような手厚いサポートを受けたい方は、顧問税理士を雇うのがおすすめです。
会社を経営していると、税務上の判断で迷うことがあります。決算期に単発で依頼する税理士だと、日常的な感覚で質問をすることはできませんが、顧問税理士がいると電話やメールで気軽に相談ができ、貴重なアドバイスをもらうことができます。
※個人事業主が顧問税理士に依頼することのメリットとは
個人事業主が顧問税理士と契約するメリットは、上記の4つに加えて、「①税金の計算と帳簿付けを任せられる」「②確定申告が間近に迫っていても焦らずに済む」「③融資や補助金など経営に関するアドバイスをもらえる」「④経理担当の従業員を雇うより低コスト」などが挙げられます。そのため、大きな会社や法人の方だけでなく、個人事業主の方にも顧問税理士を雇うメリットがあるといえるでしょう。
顧問税理士を選ぶにあたり、「どうやって自分にピッタリな税理士を選べばよいかわからない」という悩みを抱えている方も多いのではないでしょうか。そうした疑問・悩みを解決できるよう、以下に顧問税理士を選ぶためのチェックポイントをまとめたので、税理士選びの参考にしてください!
経理・財務業務のような経営の深い部分まで任せるにあたり「気兼ねなく相談できる税理士」であることは最重要といえます。
業務の依頼や緊急で相談をしたいときの対応の早さは、頼れる税理士か判断するのに重要です。
一般的な「顧問料」とは別に、追加料金が発生することも多くあります。事前にいくら費用がかかるか把握できると良いでしょう。
資金繰りや補助金・助成金の申請といった、申告業務以外のアドバイスも積極的にもらえるかどうかも確認したい点です。
節税対策や融資の支援を行う際に、リスクについてもしっかり説明してくれるかどうかは「信用」という面で大切です。
クラウド会計ソフトを導入することで、タイムリーなアドバイスやミスの修正もすべて任せられます。
役員報酬の金額設定は節税対策に直結します。上記に関する具体的な提案をしてくれる税理士を選ぶことが大切です。
税制の改正は頻繁に行われることが多いので、常に最新の情報に精通しているかを確かめると良いでしょう。
税理士によって得意とする分野は様々です。自社の業種・業界に精通した税理士に依頼することで、より具体的な支援や提案を期待できます。
顧問税理士の報酬の相場は次のとおりです。個人事業主と法人では金額が異なり、法人の方が少し高めの設定になっています。月額顧問料の他に会計記帳を依頼する場合は、別途報酬が加わります。
月額顧問料(個人)
年間売り上げ | 月額顧問料 |
〜1,000万円 | 15,000円〜 |
1,000万〜3,000万円 | 20,000円〜 |
3,000万〜5,000万円 | 25,000円〜 |
5,000万〜1億円 | 30,000円〜 |
1億円〜 | 要相談 |
月額顧問料(法人)
年間売り上げ | 月額顧問料 |
〜1,000万円 | 20,000円〜 |
1,000万〜3,000万円 | 25,000円〜 |
3,000万〜5,000万円 | 30,000円〜 |
5,000万〜1億円 | 35,000円〜 |
1億〜5億円 | 40,000円〜 |
5億円〜 | 要相談 |
税理士に支払った報酬は、源泉徴収の対象になるため、報酬の支払いに際しては、税金分を差し引いて支払います。源泉徴収した所得税等は原則として支払った付きの翌月の10日までに納める必要があります。
源泉徴収すべき所得税額及び復興特別所得税の額は次のとおりです。
支払金額(=A) | 税額 |
100万円以下 | A×10.21% |
100万円超 | (A-100万円)×20.42%+102,100円 |
税理士との顧問契約するタイミングは創業から数年を経過し、自分の時間を本業に集中したいと感じ始める時がベストです。具体的には、売上が1,000万円を超えた時、法人成りをした時及び創業して一定年数経過した時に顧問契約を検討する必要があります。
事業が成長して年間の売上高が1,000万円を超えると翌々期に消費税の「課税事業者」となります。
所得税の申告に加えて消費税の申告も始まると、経理や税務申告が複雑になって経営者自身で申告を行うのがより大変になります。特に軽減税率の影響で、税率ごとの仕訳など経理業務がとても面倒なものになりました。
課税、非課税など専門的な知識も必要になりますので、消費税の課税事業者になるタイミングで税理士と顧問契約を結ぶことを検討すると良いとされています。
個人事業から法人に変える時(法人成り)も顧問税理士を頼むと良いタイミングです。
個人であろうが法人であろうが経理は基本的に同じです。しかし法人になると決算書の作成や税務申告が一気に難しくなります。やっと個人事業の税務申告に慣れたのに、より難しい法人税などの法人に関する税務の勉強をするのは大変でしょう。
また社会保険に関する事務処理も忙しくなってしまいます。法人になると「社会保険の加入対象事業所」となり、社会保険への加入や脱退の手続き、社会保険料の計算や保険料の徴収など人件費に関する事務処理が大幅に増加してしまうのです。
経営者として時間対効果を考えると、顧問税理士に経理をお願いした方が良いでしょう。
法人として創業し、ある程度の年数が経過した時も税理士に依頼すべきとされるタイミングです。理由はある程度年数が経過すると税務調査に入られる可能性があるからです。税務調査は根本的には追徴を目的として行われます。そのため税務調査のダメージを少しでも少なくするために顧問税理士が必要となります。
顧問税理士にお願いすると、会計処理や申告処理を正しく行ってくれるので調査を迎えても安心感が大きいでしょう。また税務調査の時は税理士に立ち会ってもらい、会社に代わって調査官と交渉してもらうことも可能です。
顧問税理士を利用された方の口コミの平均点と累計数を表示しています。
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プロからの返信
この度は口コミをご投稿いただき、誠にありがとうございます。 ご期待に沿えるよう、精一杯努めさせていただきます。
プロからの返信
口コミありがとうございます。税務以外でも様々な問題が出てくるかと思います。どんな問題でもぜひ、一緒に考えさせてください。お力になれるよう、スタッフ一同努力してまいります。
項目別評価
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プロからの返信
坂本様 ご丁寧な口コミありがとうございます! ご期待に添えるよう全力でサポートいたします。 これからもよろしくどうぞお願いします。
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業界全体で統一した報酬額を設定すると独占禁止法に抵触する可能性があることから、現在税理士の報酬は、それぞれで自由に設定をしています。このため報酬の算出根拠もまちまちですが、基本的には次のような考え方に基づき設定されています。
最も一般的なのが、会社の売上高を基に報酬を算出する方法です。売り上げが大きいほど業務量が多いという考え方から、一定理にかなっているといえます。しかし反面業務内容によっては、必ずしも売上高と作業量が一致しないという考え方も会社側と税理士の双方から出されています。
実際の作業量に応じて報酬を算出する方法があります。実際の作業量を細かく見積書に記載して契約をするので、後々のトラブルが軽減できます。その一方で想定外の業務が発生した際に追加発注となることから、追加報酬が高額になってしまうことも。
売上高の基準に加えて訪問頻度の要素を加えることで、会社側と税理士の双方が納得のできる報酬を設定することができます。
決算期間近で処理日数が限られているような場合は、待ったなしの特別な状況であるために、通常の報酬の考えとは異なった料金設定となります。また医療関連や海外取引が絡む特殊なケースでは、外部の専門家の力を借りる必要があることから、別枠の報酬が設定されます。
税理士を変更している人はどのような理由やタイミングで変更しているのでしょうか?人柄や仕事内容などを理由として変更しているケースが多いですが、自社の経営方針や税理士の死亡など、やむを得ない理由で変更することもあります。どんな理由やタイミングで税理士を変更することが多いのか、まずは詳しく見ていきましょう。
税理士の対応や人に不満がある、自分とは感覚が合わないなどの理由で変更することがあります。態度が悪い・レスポンスが遅い・契約したのに何もしてくれないといった理由です。
税理士とクライアントとの関係は、やはり信頼関係で成り立っています。法律的にセーフかアウトかといった判断など、人間的に信頼しているからこそ会社の相談することができるのです。
人柄を信頼できないのであれば、それは税理士変更の大きな理由となるでしょう。
税理士の報酬は基本的に顧問契約かスポット契約か、どんな仕事を依頼したのか、訪問回数はどのくらいか、会社の売上規模はどの程度なのかなどの要素によって決定します。また、訪問回数が明らかに減っているにも関わらず料金が変わらないというケースもあるでしょう。
業務の単価はそれぞれ税理士事務所や税理士法人によって様々です。「少ししか頼んでないのになぜ報酬がこんなに高額なの?」と疑問や不満に感じている人もいます。
このような場合に、仕事の質や内容に見合った料金設定を行う税理士へ変更する人も多いようです。
税理士の作業内容に不満があるため、税理士を変更するケースもあります。現在契約している税理士が以下に該当するようなことはないでしょうか?
このように税理士の業務内容に問題があり、しっかりと対応してくれる税理士へ変えたいと考えている人も多いようです。
税理士や担当者個人ではなく、事務所の運営方針に不満があって税理士を変更したいと考えている人も多いようです。
税理士事務所の方針で不満を持つ人の多くが、税理士と担当者との連携が取れていないことを理由にしています。大きな事務所ほど担当者任せになっており、クライアントが本来必要としている税理士としてのプロの知識を得ることができずに不満を感じているというケースも多いようです。
このようなケースでは、税理士本人とコンタクトをとることができる規模の小さな税理士事務所へと変更するケースが多くなります。
税理士が亡くなってしまって、やむなく税理士を変更することもあります。先代の経営者から付き合いのあった税理士が亡くなり、後継もいないので他の税理士を探すということは、老舗企業であればよく見られるケースです。
自社の経営方針の変更によって、税理士を変えることもあります。例えば、これまではスポット契約で決算事務だけを税理士へ依頼していたが、今後は顧問契約に切り替えて、恒常的にプロから会計を見てもらいたい場合などは、規模の大きな税理士法人へと税理士を変更することが多いようです。
経営者が変わると会社の経営方針も変更になるので、会社の経営方針にマッチすることができる税理士へ変更になることもあります。
顧問税理を変更する時にはいくつかの注意点があります。準備をしてから断らないと契約違反になったり、スムーズに新しい税理士への引き継ぎが進まなかったりといったこともあります。
しっかりと準備して最もカドが立たないタイミングで契約の解約を申し出るようにしましょう。顧問税理士を変更する際に注意すべきことについて詳しく解説していきます。
契約を解除する前に、まずは現在の顧問税理士との契約内容を確認しておきましょう。税理士との契約によっては「解約の3ヶ月前には申し出る」などの条件がついていることもあります。このような場合には、突然解約しようと思っても解約することはできませんので、まずは税理士との契約書を確認しましょう。
そして税理士を解約するのであれば、次の税理士候補を見つけておくことも重要です。これまで全てを税理士任せにしていた企業は、次の税理士が見つからないままの状態で税務署から連絡がくると、慌ててしまう恐れもあります。
税理士を変更しても会社に業務が円滑に回るように、先に次の税理士候補を見つけておくようにしましょう。
契約している税理士を解約する時には、税理士に預けている書類を返却してもらうことも忘れないようにしましょう。会社は顧問税理士に対して経営に関する重要な書類を預けていることが多いためです。
解約を申し出れば税理士の方から返してくれることも多いですが、そのような親切な税理士ばかりとは限りません。顧問契約を解約した後に「重要な書類がない」ことに気づき、企業経営が円滑に回らないこともあります。
解約する前に税理士に預けている書類がないか確認し、あるのであれば返却を依頼しておきましょう。
決算期や確定申告などの3月くらいというのは税理士にとって非常に多忙な時期です。このような忙しい時期に解約を申し出るのは避けましょう。もしかしたら自社の決算事務をしている最中かもしれないためです。このような時期に解約を申し出ても、次の税理士へ引き継いでくれるわけではありませんし、税理士からの心象も非常に悪くなります。
顧問契約を解除するのであれば、決算・確定申告の時期に申し出るのを避け、閑散期を選んで申し出るようにしてください。
さて税理士はどのような理由で断るべきでしょうか?「仕事内容に不満があるから」などと言って断ってしまったらカドが立ってしまいます。税理士は地域の経済界にも一定の影響力とコネクションを持っているケースが多いので、できるカドが立つ断り方はしない方が無難です。
カドが立たない税理士の断り方には以下のようなものをあげることができます。
などの「親戚や知人の関係でどうしても税理士を変えなければならない」という理由をつける方法が断り方の常套句です。また「ずっと前から頼まれていたけど、いよいよ断ることができなくなった」などの断り方がよいでしょう。「ずっと前から」をつけることによって、さらに「仕方なく税理士を変えることになった」というニュアンスになり、よりカドが立ちにくくなるでしょう。
顧問税理士の探し方について詳しく見ていきましょう。顧問税理士の探し方は主に4つです。
それぞれの探し方にはメリットとデメリットがあり、税理士と顧問契約を結ぶ前に事前に確認すべきこともあります。税理士の探し方とメリットデメリットについて詳しく見ていきましょう。
顧問税理士の4つの探し方には以下のようなメリットとデメリットがあります。
探し方 | メリット | デメリット |
自力で探す |
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知人に紹介してもらう |
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税理士紹介会社に依頼する |
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インターネットで探す |
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探し方は様々ですが、それぞれ一長一短です。まずは自社が「税理士に何を求めるのか」ということを明確化して、自社に合った探し方で税理士を探すようにしましょう。
実際に税理士と顧問契約を締結する前に以下の5つのポイントだけはしっかりと確認しておくようにしましょう。
税理士の得意不得意分野を把握しておかないと、自社が相談したいことの相談に乗ってくれない場合もあります。また税理士が自社の側に立って、決算対策や経営相談に乗ってくれる人かどうかを確認することも大切です。
連絡手段はメールや事務所の固定電話ではなく、税理士個人といつでも連絡がつくような方法に対応している人を選択した方がよいでしょう。そして税務調査に入られた時のために、税務調査の経験がある税理士を選択しておけば安心です。
税理士の料金体系も非常に重要になります。税理士によって料金は異なるので、契約前に複数の税理士と比較検討して、その税理士が安いのか高いのかということを確認するようにしてください。
税務調査とは、法人が正しく納税しているかを税務署がチェックしにくることです。もちろん正しく納税されていなければ、ペナルティーが待っています。
もし税務調査に不安を抱えている人は、税務調査の詳しい概要をご紹介するので、ぜひ読んでみてください。
税務調査には「強制捜査」と「任意調査」の2種類があります。
まずは「強制調査」です。ドラマでよく見聞きするのがこの「強制調査」でしょう。
突然捜査令状を突きつけられてダンボールを持った捜査員が押し寄せてくる…。というような光景をイメージされる方もいるかもしれませんが、それがおおよその正しいイメージです。「強制調査」は脱税など悪質な場合に執行される調査で、裁判を見越した押収や差し押さえを含んでいます。
次に「任意調査」です。
「任意調査」が全体の8割を占めます。税務署から事前に連絡が来た後に執行される税務調査です。悪質なことをしている自覚がなければ、ほぼ100%「任意調査」になるでしょう。
「任意調査」は大きく分けて準備調査と実地調査の2種類に分類されており、それぞれの概要は下記の通りです。
・準備調査
提出された申告書などをもとに情報を照合して分析し調査ポイントを絞る、実地調査に向けた予備調査のようなものです。
・実地調査
下記の4種類に分類されています。
一般調査 | 事前連絡による日程調整の上で行われる最も一般的な調査。主要簿や補助簿での調査が中心で、必要に応じて現地での調査も実施されます。 |
現況調査 | 事前連絡のない抜き打ち調査。掛取引が少ない現金商売の会社を対象としていて、顧問税理士到着まで調査を止めておけるなど強制調査としての側面はありません。 |
特別調査 | 一般調査によって問題や多額の不正が発覚した場合に行う追加調査。細部まで調査されるため、調査期間も長くなります。 |
反面調査 | 税務調査が入った企業と関係する取引先まで広げて行われる調査。相手方と照らし合わせて不正の有無を調査します。 |
これらの説明でお分かりの通り、任意調査だからといって必ず事前連絡があるわけではなく、関連企業や取引先から芋づる式に調査の手が及ぶこともありますので、注意しておきましょう。
税務調査は毎年必ず行われるわけではありません。以下で時期や頻度をご紹介しますが、国税庁や税務署から明言はされていませんので、傾向として覚えておくのをオススメします。
会社の規模や業種によって異なりますが、5年〜10年の間に1回という頻度で過去3年分に対して行われます。いきなり大きな収益を上げるなど、良くも悪くも目立つと短いスパンで調査が入る可能性もあるようです。
5月末期限の法人税申告書をチェックしてから税務調査に入るため、9月〜12月の間に行われやすいということを覚えておきましょう。一方、税務署が確定申告の関係で忙しくなる1月〜3月は税務調査に入らない傾向にあるようです。
税務署があなたの会社に入り、税務調査に費やす期間は2日程です。なお規模の大きな会社だと、数週間入ることもあります。
一般的な調査の流れは、下記の通りです。
(※1)顧問税理士に連絡が入ります。調査日程は会社都合を優先することができるため、ある程度の融通が利きます。
(※2)当日提出を求められるものを準備して、税理士と当日の流れを打ち合わせしておきましょう。当日必要なものは後述します。
(※3)問題があった場合は顧問弁護士が税務署との折衝を繰り返し、説明によって解決すれば申告しなくてもOK。解決しなければ修正申告書の作成へと移行します。
(※4)修正申告書の作成の詳細も顧問税理士が調整を行います。もし結果に納得できない場合は裁判での審議へと持ち込むこともできるので、よく考えてご判断ください。ちなみに、調査の結果、発生する修正申告の内容は、翌年の法人税申告時に加味して申告する必要が出てくるので注意が必要です。
(※5)追徴課税は一括納付が基本ですが、高額になることが多いため税務署と相談の上で分割納付にする事も可能です。もし未納になれば、銀行からの融資が受けられないなど法人として致命的な影響が出てしまうのでご注意ください。
税務調査で税務署がチェックするポイントがわかっていれば、普段からそのポイントを特に気をつけて帳簿をつけるなどの対策が取れます。いったいどのような項目をチェックしているのでしょうか。
1.売上の計上
現金取引に絡む売上の計上漏れをチェックしています。
廃棄品や事業所に設置している自販機の売上などがその対象になりやすいので、締め日や決算日を意識して計上するようにしましょう。
2.在庫の計上
在庫は粗利に直結するため、利益に大きく影響します。
不自然な増減は調査官の目に留まりやすいです。適正な在庫を計上するために棚卸は念入りにして説明できるようにしておきましょう。一部誤った箇所があると、その他の申告内容の信ぴょう性をも低下させてしまうので正しい財務諸表の作成と申告を心がけましょう。
3.不必要な個人支出の計上
特に個人事業者の方の場合、社長のプライベートと事業経費の支出が明確に分けられていないケースは少なくありません。
領収書などの保管はもとより、取引内容や相手の詳細が説明できる状態でなければ修正対象となる場合があります。
4.源泉所得税の処理
雇用している従業員の給与から天引き徴収するのが一般的な所得税です。もし天引きをしていない場合、納付漏れとして追徴課税される可能性があります。
また外注業者への外注費は源泉所得税納付の対象外ですが、外注業者が個人で確定申告をしていない場合などに給与と見なされる可能性があるので注意しましょう。
5.消費税の計算
売上や経費はもとより海外出張費や外注業者への支払いなどに対する消費税の課税区分が正しく処理されているかもチェックポイントです。輸出が絡む場合は免税になるため、特に注意しましょう。
法人でも個人事業主でも、税務調査は平等に行われるものです。その中でも、調査対象になる確率が高い法人や業種・業界は存在しています。特にマークされやすい法人の特徴と合わせてご紹介していきます。
税務調査が入る確率(割合)は「実調率」と呼ばれ「税務調査(実地調査)件数 ÷ 調査対象の法人・個人の数」で計算されます。
平成27年では、法人の実調率は3.1%、個人事業主は1.1%であることからもわかるように決して多いとは言えません。裏を返して言えば、税務署は特に不正を起こしやすく追徴課税対象になりやすい法人を選定して、確実に追徴課税を実施しているということです。
では、どのような法人が税務調査対象に選定されているのでしょうか。
税務署は納税者の情報を「国税統合管理システム(KSKシステム)」で一括管理し、調査対象をピックアップしています。
マークされやすいとされる特徴を箇条書きでご紹介します。
不正発見の多い業種・業界については国税庁が公開しております。
順位 | 職種 | 不正発見割合(%) | 不正1件当たりの不正所得金額(千円) |
1 | バー・クラブ | 66.4 | 13,199 |
2 | 外国料理 | 48.1 | 4,479 |
3 | 大衆酒場・小料理 | 41.8 | 5,128 |
4 | その他の飲食 | 36.2 | 8,228 |
5 | 土木工事 | 30.0 | 14,006 |
6 | その他の道路貨物運送 | 29.3 | 11,947 |
7 | パチンコ | 29.2 | 49,290 |
8 | 職別土木建築工事 | 27.9 | 13,221 |
9 | 自動車修理 | 27.8 | 4,331 |
10 | 一般土木建築工事 | 27.2 | 14,052 |
(引用元:国税庁|平成29事務年度法人税等調査事績の概要)
これらの業種の特徴をまとめると下記のようになります。
商売の形態から申告漏れや不正が発生しやすい傾向にあるため、税務調査の頻度が高くなります。ご自身の業種・業界がこのどれかに属している場合、必要以上に正確な申告を意識して行うようにしましょう。
収支が赤字続きなら調査が入らないというわけではありません。税務署では「本当に赤字ですよね?」ということを調査証明するために、税務調査に入ってくることがあります。
赤字申告で脱税したり、翌年への赤字繰越金額を偽って申告したりすることを税務署は見逃しません。赤字で申告したからといって安心しないようにしましょう。
ここまで税務調査についてご説明してきました。では実際に調査になった時、税務署はどこまで深くまで調べてくるのでしょうか。
また、調査官とどのような交渉が必要になってくるのでしょうか。
それらを理解しておけば、実地調査でも焦ることなく対応することができますね。では具体的にご説明していきましょう。
調査官に提示する必要書類と、それぞれの内訳は下記のとおりです。
1.会社の基本書類
など
2.売上関連の書類
など
3.仕入れ・経費関連の書類
など
4.その他の書類
など
これらの必要書類を、過去3年〜5年分準備しておきましょう。
調査官は黙って作業をしているわけではありません。様々な会話の内容を材料にして指摘してくるため、言いくるめられて不必要な追徴課税を支払ってしまうことも十分に考えられるのです。
そうならないための注意点を5つご紹介します。
1.結論だけを簡潔に回答する
質問には端的に答えて、余計なことは言わないようにしましょう。不必要な発言について疑わしいと思われればあらぬ疑いを掛けられかねません。
2.毅然とした態度で応対する
発言や態度は常に毅然とした態度で行うようにしましょう。自信なさげに応対していると、調査官に付け入る隙を与えてしまいます。
3.あいまいな発言を避ける
不明確な回答はしないようにしましょう。あいまいな回答は大きな問題に繋がります。今すぐに回答できない場合は「後日調べてから回答する」として一旦回答を保留してください。
4.結論を急がない
何も悪いことはしていなくても「緊張するし税務調査は一刻も早く終わって欲しい」と願う人もいるでしょう。そんな思いから「これくらいならいいか」などと安易に問題を認めてはいけません。これも「後日調べてから回答する」として切り抜けてください。
5.書面での主張を大切にする
交渉は口頭で行われるものですが、可能な限り書面で反論しましょう。反論材料が目に見える形で提示されれば、あいまいに言いくるめられることもなくなります。
これらの交渉を税務調査に慣れていない一般人が行うのは困難なため、顧問税理士と事前に契約しておくのがおすすめです。
個人事業主と法人には様々な違いがあります。法律上の扱いが異なりますし、税金や経費の仕組みも全て異なるためです。
これまでは個人事業主として所得税を納めていた人が、法人になったことによって税金が安くなるというメリットも考えられます。まずは個人事業主と法人がどのように異なるのかを理解しておきましょう。
個人事業主とはその名の通り「事業を営む個人」のことを指します。個人事業主は個人が銀行口座の作成や契約行為を行うことができるのと同じように、すぐに事業用の口座作成や事業の契約行為を行うことが可能です。
個人事業主は個人名で事業活動を行うことができますが、一般的には「〇〇ラーメン」「〇〇設計事務所」などの屋号を持って営業活動をしています。
一方で法人とは「組織活動を営む権利能力を有する法人格」のことを指します。法人は法律上の人格があるため、法人名義で口座作成などの各種契約行為を行うことが可能です。
ただし法人は個人事業主のように簡単にスタートすることができません。法人になるためには法人設立の登記などを行う必要があり、時間もお金もかかります。
個人事業主と法人の違いはいくつもあります。違いの比較は以下の通りです。
個人事業主 | 法人 | |
登記 | 不要 | 必要 |
設立費用 | 不要 | 最低25万円 |
資本金 | 不要 | 1円以上 |
対外的な信用度 | 法人より低くなる | 個人事業主より高い |
融資審査 | 個人ローンの審査も事業資金の審査も難易度が高くなる | 業況がよければ通過は難しくない |
税金 | 経費の範囲が狭い | 経費の範囲が広い |
人材 | 集まりにくい | 集まりやすい |
福利厚生 | 悪い | 良い(社会保険に加入可能) |
赤字繰越年数 | 3年 | 10年 |
このように個人事業主と法人では、設立時以外は様々な場面で法人の方がメリットが大きいことが分かります。
税金面で法人の方が優遇されていることは言うまでもありませんが、福利厚生面でも法人の方がメリットがあるので優秀な人材も個人事業主よりも法人の方が集まりやすくなるのです。事業を拡大していきたいのであれば法人化すべきでしょう。
個人事業主は設立するための手間やコストはほぼかかりません。税務署に開業届を提出するだけです。(ただし飲食業など営業許可が必要な業種もあります)
一方で法人化するためには時間もお金も必要になります。定款を作成して認証手続きを経てから、法務局に設立登記を行わなければなりません。このため設立までに1か月以上かかるケースが一般的です。
また定款認証の費用で5万円、法人登記の登録免許税と収入印紙代で約19万円と、最低でも25万円弱の費用が必要です。これは自分で手続きをした場合の費用で、司法書士等に設立を依頼した場合にはこれらの費用に加え、司法書士に支払う報酬が必要になるため、これ以上の費用がかかってきます。
また設立自体は資本金1円から行うこともできますが、実際に資本金1円で事業を始めるのは難しいため、事業活動スタートに必要なお金は手元に資本金として用意してから事業を始める必要があります。
すぐに事業を始めたい場合や、手元にお金がない場合には個人事業主としてスタートした方が簡易に事業を始めることができると言えるでしょう。
個人事業主が支払うべき税金は以下の通りです。
このうち法人と最も異なるのが所得税で、個人事業主(個人)の所得税は所得が大きくなればなるほど税率が大きくなる累進課税制であり、税率は以下のようになっています。
課税所得金額 | 税率 |
195万円以下 | 5% |
195万円〜330万円 | 10% |
330万円〜695万円 | 20% |
695万円〜900万円 | 23% |
900万円〜1,800万円 | 33% |
1,800万円〜4,000万円 | 40% |
4,000万円〜 | 45% |
一方で法人が支払うべき税金には以下のようなものがあります。
そして個人事業主の所得税に該当する、法人税の税率は以下のようになります。
課税所得金額 | 税率 |
800万円以下 | 19%(15%) |
800万円超 | 23.2% |
法人税の税率は上記のように800万円を境にした2パターンの額の税金しか発生しません。
つまり課税所得金額がどれだけ大きくなっても税率の上限は23.2%になるので、所得が大きくなれば税率が最大45%にもなってしまう個人事業主より税率は低いと言えます。また経費の範囲も法人の方が広いので課税所得を少なくすることができる傾向にあるのです。
いずれにせよ所得が一定以上あるのであれば個人事業主よりも法人の方が節税に繋げることができます。
個人事業主と法人では経費として認められる範囲に大きな違いがあります。個人事業主が認められる経費の種類は以下の通りです。
経費の種類 | 内容 |
消耗品費 | 事業で必要な文房具などの消耗品で10万円未満のもの |
旅費交通費 | 事業で必要な旅費や交通費など |
接待交際費 | 事業で必要な打ち合わせに使った飲食代や取引先の冠婚葬祭の慶弔費 |
水道光熱費 | 事務所の水道光熱費(自宅兼事務所であれば自宅の水道光熱費の一部も可) |
その他 | 事務所の引っ越しや、事業に必要なセミナー参加などのその他に事業で必要な経費 |
法人が経費として認められるものは個人事業主より幅広く、以下のようになります。
経費の種類 | 内容 |
消耗品費 | 事業で必要な文房具などの消耗品で10万円未満のもの |
旅費交通費 | 事業で必要な旅費や交通費など |
接待交際費 | 事業で必要な打ち合わせに使った飲食代や取引先の冠婚葬祭の慶弔費 |
水道光熱費 | 事務所の水道光熱費(自宅兼事務所であれば自宅の水道光熱費の一部も可) |
人件費 | 自分や家族従業員や従業員への給料 |
保険料 | 生命保険も含む保険料等 |
家賃 | 法人名義で借りて経営者等に貸し出す家賃の8割程度(厳密な計算が必要) |
福利厚生費 | 従業員全ての福利厚生のために支出した経費 |
日当 | 通常業務を超える業務を従業員がした場合に、その労を労うために支出される経費 |
その他 | 事務所の引っ越しや、事業に必要なセミナー参加などのその他に事業で必要な経費 |
このように法人は個人事業主が経費として算入可能な経費全てを経費にすることができる上に、様々な支出を経費計上することができます。
最も大きいのが経営者や家族の給料まで経費計上ができるという点でしょう。
また個人事業主では認められない福利厚生費や保険料や家賃も経費にすることができます。同じ規模で同じように事業を営んでいる個人事業主と法人であれば、経費の幅が広い法人の方が課税所得額は少なくなるでしょう。
個人事業主と法人では法人の方が社会的信用は上になります。開業届1枚を提出すれば誰でも開業できる個人事業主とは異なり、法人は資本金や取締役を用意して国に登記を行うことで初めて設立することができる社会的に認められた存在です。
そのため一般的に考えて個人よりも法人の方が社会的信用は上になります。また社会保険などの福利厚生も充実しているので、優秀な人材は個人よりも法人の方が集まりやすいです。
融資に関しても個人事業主よりも社会的信頼が厚い法人の方が審査に通過しやすいと言えるでしょう。
個人事業主も法人も赤字を出すと、その赤字を翌年以降に繰り越すことが可能です。
ただし赤字を繰り越せる年数も個人事業主より法人の方が優遇されています。個人事業主は3年までしか赤字の繰り越しが認められていないことに対して、法人は10年まで赤字の繰り越しが認められているためです。
個人事業主が大きな赤字を出した場合、繰り越せる年数が3年しかないので赤字を使い切ることができないケースも考えられます。したがって大きな赤字を出した場合は個人事業主よりも法人の方がメリットが大きくなると言えるでしょう。
税金の仕組みが個人事業主と法人では違うため、法人化をするには適切なタイミングあります。例えば以下のようなタイミングが法人化を検討すべき時でしょう。
このようなタイミングで法人化を検討した方が良い理由について詳しく見ていきましょう。
個人事業主が法人化するタイミングの1つとして売り上げが1,000万円を超えた時が良いと言われています。その理由は売上が1,000万円を超えると消費税の納税義務が発生するからです。
消費税は【前々年の課税売上高が1,000万円を超えた場合(その他一定の要件あり)】に納税の義務が生じます。
法人化する前の個人事業主時代に課税売上高が1,000万円を超えていたとしても、法人化した後は個人事業主時代の売上高は前事業年度には含まれません。つまり法人化してしまえば個人事業主の時に1,000万円を超えたとしても、2事業年度は納税義務がないことになります。
このため売り上げが1,000万円を超えるタイミングが法人化の1つのタイミングと言えるのです。売上をシミュレーションして1,000万円を超える予測であれば、法人化を検討した方が良いかもしれません。
法人化(法人成り)と消費税の関係についてもっと詳しく知りたい方がこちらをご参照ください。
【関連記事】法人成りすると消費税が免除される?気になる仕組みを解説します!
所得利益が500万円を超えた時も個人事業主から法人化を検討するタイミングと言われています。これは所得利益が500万円を超えたら法人化した方が節税することができるためです。
個人事業主として所得利益500万円を出した場合と、法人が所得利益500万円を経営者の給料とした場合の税額をシミュレーションしていきましょう。
個人事業主が500万円所得利益を出した場合(青色申告をしている事業者)の所得税 | 所得税:(事業所得500万円-青色申告特別控除65万円-基礎控除38万円)×所得税率20%-控除額427,500円=366,500円 |
法人が500万円の所得利益を全て社長個人の給料とした場合の給与所得の所得税 | 所得税:(給与所得500万円-給与所得控除額154万円(500万円×20%+54万円=154万円)–基礎控除38万円)×所得税率10%-控除額97,500円=210,500円 |
このように法人から給料を受け取った方が給与所得控除の金額が大きいので、個人事業主として申告するよりも所得税を節税することが可能です。
また個人事業主には業種によって個人事業税という税金が発生します。この金額も所得が500万円を超えると法人住民税よりも多くなりますので、やはり所得が500万円を超えた場合は法人化した方が税金面で有利になると言えるでしょう。
法人化するためには法的に様々な手続きが必要になります。法人は「法人格」という法律上の人格を与えられるために登記をしなければなりません。また個人事業主から法人に変わることによって、税金や社会保険などの各種手続きや財産の移転も必要です。
しかし面倒な手続きを終えれば法人として様々なメリットを得ることができるようになります。法人化するための必要な手続きを詳しく見ていきましょう。
法人化に必要な手続きは以下のようになります。
法人化に必要な手続き | 提出先 | 期限 |
定款作成と認証 | 公証人役場 | 定款作成後 |
資本金の払込 | 銀行 | 定款作成後すぐ |
法人設立の登記 | 法務局 | 期限はないができる限りすぐ |
財産の移行 | 銀行や法務局 | 期限はないができる限りすぐ |
法人設立届出書や青色申告承認申請書 | 税務署 | 設立後2ヶ月以内(青色申請は3ヶ月) |
給与支払い事務所等の開設届出書や源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書 | 税務署 | 開設日から1ヶ月以内 |
法人設立届出書 | 都道府県・市区町村役場 | 設立後1ヶ月以内 |
健康保険・厚生年金の新規適用届や被保険者資格取得届 | 年金事務所 | 設立後5日以内 |
法人の設立時には期限が決まっている手続きはそれほどありませんが、設立後には税務署や市区町村役場や年金事務所に届出が必要な書類の提出期限が決まっている手続きがあります。
うっかり漏らしてしまわないように各種手続きを行うようにしてください。
法人の設立は以下の順番に沿って行っていきます。
定款の作成は発起人となる個人事業主が設立目的や会社の基本事項を定めて作成するのが一般的です。ネット上にはフォーマットも多数ありますので、事業計画や基本事項を定めた後は埋めていくだけで作成できるでしょう。
定款作成後は定款を公証人役場で認証してもらう必要があります。定款の認証と同時か認証後に銀行に資本金を払い込み、その後に法務局で法人の設立登記を行う流れになりますので覚えておきましょう。
定款認証から法人設立登記までに必要になる費用は以下の通りです。
法人設立登記に必要な書類は以下の通りです。
会社設立後には市区町村役場や税務署や年金事務所などに以下の書類を提出しなければなりません。
これらの手続きに費用はかかりませんが、提出期限が決まっているので注意してください。
個人事業主としての財産を法人に移行する場合には、一般的に事業に関わるすべての財産などを設立した法人に移します。ここで言う財産とは自動車や備品、不動産などです。手続き方法としては以下の3つが挙げられます。
また個人事業主として事業資金の借入がある状態で法人化する場合には、場合によっては個人事業主名義の借入金を法人名義に移すことも可能となります。
財産の名義を移す場合には預金であれば銀行へ、不動産であれば法務局へ、自動車であれば陸運局へなどそれぞれ手続きをする場所が異なるので、しっかり確認しなければなりません。
また借入金を法人へ移す場合には銀行の承諾が必要になるので、財産の移行は税理士などの専門家に依頼した方が良いでしょう。
個人事業主が法人化した後は、個人事業主としての事業は廃業手続きを行わなければなりません。個人事業の廃業手続きは以下の通りです。
また青色申告をしていた個人事業主は青色申告の取りやめ届出書も税務署へ提出し、従業員を雇っていた場合には給与支払事務所等の廃止届出書も提出が必要になります。
このように個人事業主から法人化する手続きは複雑ですので、不安がある場合は税理士へ依頼した方が確実で不備がないでしょう。
会社を運営していくうえで、決算書の作成と管理は欠かせません。決算書とはその名の通り「決算」について書かれた書類です。決算とは企業の収益や費用についてまとめることを指しますので、決算書を読めば会社の利益や損失が分かります。決算書とは具体的にはどの書類を指すのか、また、何のために作成するのかについて見ていきます。
決算書とは経営状態を分かりやすく示すために作成する書類のことです。とはいえ決算書という法律用語はなく、会社法においては「計算書類」、金融商品取引法では「財務諸表」と呼ばれる書類のことを指します。さらに言うと、計算書類や財務諸表という書類も実際には存在せず、具体的には「貸借対照表(B/S)」や「損益計算書(P/L)」、「キャッシュフロー計算書(C/F)」、「株式資本等変動計算書」などの書類を指すことが一般的です。とりわけ貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つが重要になります。
貸借対照表とは、読み方は「たいしゃくたいしょうひょう」で、会社の財政状態を「資産」と「負債」「資本」に分けて記録する書類です。また、損益計算書では、会社の経営成績を「収益」と「費用」に分けて記録します。
キャッシュフロー計算書は、その名の通りキャッシュフロー(お金の流れ)を詳細に記録する書類です。営業活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローに分けてお金の流れを明確にします。
これらの決算書を見ることで、会社が儲けているのか、業績が伸びているのか、あるいは経営が難しくなっているのかなど経営状態を分析することが可能です。書類の見方を後述しますので、経理以外の方も覚えておきましょう。
決算書は会社の経営状態を明確にする目的で作成する書類です。また決算書を見ることで今後の指針を立てることができるため、経営方針を立てるためにも作成されます。
しかし経営状態を知る必要がないと考えている場合や経営方針がすでに立っている場合でも、決算書は作成しなくてはなりません。会社で利益が生じると「法人税」を納税する義務が発生しますが、法人税を正確に計算するために決算書が必要となるからです。
また株主や投資家に会社の経営状態を報告するためにも、決算書は必要となるでしょう。決算書を見れば、利益や損失といった「結果」だけでなく、資金調達手段や投資の対象などの「過程」が分かるので、投資に値する会社なのかをより深く知ることができます。
会社の経営状態を把握し、また対外的に報告するためにも、貸借対照表と損益計算書、キャッシュフロー計算書の3つの決算書の読み方を知っておく必要があります。まずは企業の財務体質を判断するうえで欠かせない「貸借対照表」から、全般的な書類の読み方と、どこに注目すれば分かりやすいのかについて見ていきましょう。
貸借対照表とは、会社が保有する「資産」と、近い将来支払う必要がある「負債」、資産から負債を差し引いて求める「純資産(資本)」の3つを示す決算書類です。「バランスシート」とも呼ばれるので、省略してB/Sと表記することもあります。
貸借対照表では、左側に資産となる細目について記し、右側に負債と純資産となる細目をまとめて表記することが基本です。資産の部は流動資産・固定資産・繰延資産に分けられ、負債の部は流動負債・固定負債に分けられます。
なお、純資産は資産から負債を差し引いて求めるため、資産合計は負債合計と純資産合計を合算した金額と同一です。
一つひとつの細目を見ることで、現金資産や売掛金の額、保有する不動産の金額などを理解することができるでしょう。しかし企業としての財政状況を端的に知りたい場合は、右下の純資産の部に注目します。純資産は資産と負債の差でもあるため、企業の基礎体力を判断する基準になるでしょう。
また純資産を総資産で割り、100をかけて「自己資本比率」を求めれば、財務における企業体質を知ることもできます。業種や業界にもよりますが、自己資本比率が50%を超えている場合は比較的安定した財政状況を判断することができるでしょう。
次は損益計算書の読み方について見ていきましょう。「プロフィット&ロス ステートメント」とも呼ばれるので、P/Lと略されます。損益計算書は、会社の経営成績を表した計算書類です。どのように読めるのか、また、どの部分に注目できるのかについて解説します。
損益計算書とは、一定期間にあげた「収益」と収益を得るためにかかった「費用」、収益から費用を差し引いた「利益」について記した計算書です。損益計算書を見れば、利益がいくらで、利益を得るためにどの程度のコストがかかっているのかを端的に知ることができます。
損益計算書では、収益と費用を示す細目に分けて表記します。「売上総利益」は売上高から売上原価を差し引いて求めた金額です。売上総利益から販売費などのコストを差し引くと「営業利益」を求めることができます。
営業利益に受け取った利息や手数料などの「営業外利益」を加え、支払った利息や手数料などの「営業外費用」を差し引くと「経常利益」を求めることが可能です。一定期間内に固定資産を売却して利益や損失が生じた場合は、経常利益に売却益を足して売却損を差し引き「税引前当期純利益」を求めます。固定資産の売却がなかった場合は、経常利益と税引前当期純利益は同一です。
税引前当期純利益から法人税や住民税、事業税などの税金を差し引くと「当期純利益」を求めることができます。当期純利益は実際に企業が得た純粋な利益と言えるため、企業が一定期間内にどの程度の利益を得たのかを知るてがかりになるでしょう。
売上高総利益率で分析
売上総利益を売上高で割り、100をかけると「売上高総利益率」を求めることができます。売上高総利益率は売上高の中にどの程度の利益が含まれているかを示すもので、高ければ高いほどローコストで利益を得られている、つまり利益効率が高いと判断できるでしょう。
最後にキャッシュフロー計算書の読み方を見ていきましょう。キャッシュフロー ステートメントとも呼ばれるので、C/Fと略して表記することもあります。キャッシュフロー計算書は一定期間内のお金の流れをいくつかの項目に分けて記載する計算書類です。キャッシュフロー計算書の見方や、何に注目すれば分かりやすいのかについて解説します。
キャッシュフロー計算書は、一定期間内のお金の流れを示します。例えば貸借対照表においては売掛金は「資産」として分類するため、売掛金が大きいことは会社にとってプラスです。しかし、実際には売掛金が回収されていないなら、売掛金は会社にとってプラスどころか、頭を悩ませる原因となるでしょう。そのため、貸借対照表だけを見ていては会社の現時点での体力、つまり資金力を詳細に把握することは困難です。
一方、キャッシュフロー計算書では一定期間内に会社に入ってきたお金や出ていくお金をプラス・マイナスで表示します。売掛金のように一見プラスに見えている細目は、キャッシュフロー計算書ではマイナスで表示されるため、会社の本当の資金力を把握しやすくなるでしょう。
キャッシュフロー計算書では、営業活動によるキャッシュフローと投資活動によるキャッシュフロー、財務活動によるキャッシュフローに分けて記載することが一般的です。営業活動によるキャッシュフローでは、純利益や売上などの営業活動によって得られた現金・支払った現金を表示します。
また、投資活動によるキャッシュフローは余剰資金の運用や固定資産から得られる本業外による現金の増減、財務活動によるキャッシュフローは金融機関からの資金調達や株式発行などによる現金の増減を記載する項目です。これらの3種類のキャッシュフローを合計した結果を下部に記します。増加・減少額の合計部分を見れば、特定期間内の全体的な資金力を簡単に把握することができるでしょう。
なお、キャッシュフロー計算書には「直接法」と「間接法」の2つの書式があります。どちらを用いても最終的な金額は同じですが、直接法は取引ごとの現金の収支を総額で記載するのに対し、間接法は損益とキャッシュフローの範囲の違いを修正して現金の増減を記載します。
決算書は「仕訳を集め」「試算表を作り」「当期純利益を確定させ」「試算表を貸借対照表と損益計算書に切り分ける」という順番で作成されていきます。ここでは具体的なタイムスケジュールを確認しながら何をすべきかを見てみましょう。また、計算書として必要な書類とその保存期間などについてまとめてみます。
では具体的にどんな手順で決算書がつくられるのかを3月決算の会社を例に見てみましょう。決算書の作成は4月から準備が始まり、5月末までかかります。
4月(記帳)
5月上旬(決算整理事項を確認する)
5月中旬(決算の作成)
5月下旬(申告書の作成)
5月末(申告書の作成と税金の納付)
決算書には、作成が義務づけられている書類があります。最終的には表紙をつけて全てを1まとめにして提出するものですが、それぞれの書類について見てみたいと思います。
会社は決算日から2ヶ月以内に法人税申告書を提出し、納税を行わなければなりません。例えば3月決算である会社は5月31日がその提出期限となります。
また決算書は税務上の保存期間と法律上の保存期間があります。下記にまとめてみました。
税金の時効が7年間であるために、税金関連の書類は税務上7年間保存しなければなりません。ただし、赤字を繰り越す場合がある会社では9年間保存する必要があります。これらの保存期間はあくまで税務上や法律上のものです。基本的には会社の決算書というものは永久的に保存するべき書類だと言えるでしょう。
会社が確定申告を行う際には決算書が必要になります。確定申告の方法は「青色確定申告」か「白色確定申告」のどちらかです。多くの会社では複式簿記を行っているために青色確定申告をしていると思いますが、個人が青色申告を行う際のメリットである最大65万円の特別控除が、法人の場合は適用されない点は改めて認識しておきましょう。
青色申告決算書は毎日帳簿付けを行い、その結果を決算書の形式で記入する書類です。書類としては損益計算書(P/L)1枚、損益の内訳の記入書2枚、貸借対照表(B/S)1枚の合計4枚で、青色申告を行う全ての人や会社が申告時に提出するものです。
白色申告で確定申告をする場合には、収支内訳書が決算書の役割を果たします。収支内訳書には「一般用」「農業所得用」「不動産所得用」の3種類があります。青色確定申告に比べて記帳が簡単で申告手続きがシンプルであることが特徴ですが、赤字の繰り越しができないデメリットもあります。
「税務署に勤めていた」「税理士資格を持っている」など、税について詳しい知識がなければ税務処理を適切に行うことは困難です。そのため会社を設立し経営する以上、税理士との契約は欠かせません。
税理士と契約する場合、決算申告のみを依頼するケースと顧問契約の2パターンがあります。詳しくみていきましょう。
決算申告とは、決算申告書の作成や法人税・消費税などの税金の計算、支払いなどの手続きのこと。作成する書類が多く専門的な知識がなければ難しいため、税理士に依頼するのが一般的です。決算業務を税理士に依頼する場合、決算申告のみを依頼するスポット契約と決算申告を含めた顧問契約のいずれかを選択します。
税理士との業務契約はスポット契約と顧問契約の2種類に分かれます。スポット契約とは、決算申告の書類作成や税金の計算など、決算に関する処理のみを行ってもらうなど、単発で依頼することです。したがって、決算申告のほか日常的な税に関する相談もできる顧問契約とは異なり、スポット契約では税務相談ができません。
決算申告のみのスポット契約で税務相談したい場合は別途相談料や顧問料を支払うか、顧問契約に切り替える必要があるのです。
税理士と顧問契約を結ぶ際は継続契約となり、月々の顧問料を支払わなければなりません。一方でスポット契約である決算申告の場合は、決算処理を依頼したときのみ料金が発生します。では、税理士に決算申告のみを依頼した場合の料金相場はどのくらいなのでしょうか?
決算申告のみを税理士に依頼する場合の料金は、15~25万円が相場です。平成14年までは税理士法で報酬規定が定められていましたが、現在では撤廃されて自由に税理士報酬を設定できるようになっています。料金は売上の規模によって異なり「年商1,000万円未満」「5,000万円未満」など、売上高によって設定されている場合が一般的です。
また、決算申告を税理士に依頼する場合、日々の取引を記録した元帳などを提出する必要がありますが「提出書類に不備がある」「仕訳の間違いが多すぎる」などのケースでは、追加料金を請求されることもあるため注意してください。
では、税理士に決算申告のみを依頼した場合、どんなメリットがあるのでしょうか?デメリットと合わせて確認しておきましょう。
決算申告のみのスポット契約での料金は、継続的に費用が発生する顧問契約より安いのが特徴です。たとえば、月々3万円の料金が発生する顧問契約では年間36万円に経費がかかります。決算申告のみの料金が15万円だとすれば、倍以上も多く支払うことになるわけです。
とくに、会社を立ち上げたばかりはさまざまな費用が必要になります。料金の安い決算申告のみのスポット契約は、経費の負担を少なくできる効果があるのです。
決算書には作成した税理士の名前を記入する欄があり、署名の有無は決算書の信頼性に関わってきます。税理士が作成した決算書は自社で作成するよりも信頼性が高く、金融機関から融資を受けるケースで役立つなど融資対策になるのです。金融機関は融資を実行するのかを決算書で判断するため、自社で作成した決算書では疑念を持たれたり、時間がかかったりもするでしょう。
決算書の正確性が評価されるためには、税理士が作成しているかどうかが重要なポイントとなるのです。
決算申告のみの業務契約では、会社を円滑に運営するための節税対策を十分に行えません。税理士資格を持っているなど税金に関する豊富な知識がなければ、効果的な節税対策は難しいでしょう。余計な税金を支払ってばかりでは会社の運営もうまくいきませんし、銀行から融資を受けたい場合に「あえて節税せず黒字化したほうがよい」などのアドバイスも、決算申告のみのスポット契約では受けられないでしょう。
決算処理のみを行う決算申告では、税理士とのやり取りは1年に1回の決算時のみとなります。顧問契約と異なり日常的に税務相談をしたりアドバイスを求めたりなど、節税対策ができないわけです。
消費税は、国内でモノやサービスを購入したときに支払う税金です。消費者であれば店舗などに支払うだけですが、事業者の場合は、課税事業者に該当するかどうかによって消費税の取り扱い方が異なります。
まずは、消費税の概要や課税事業者と免税事業者の違いについて解説します。
消費税とは「商品・製品の販売やサービスの提供などに対して課される税金」で、負担するのは消費者です。事業者は、消費者から代金と一緒に消費税分の金額も合わせて受け取り、預かった分を国と都道府県に納付しなければなりません。
先述したように、すべての事業者は消費者から消費税を預かることとなりますが、一定の要件を満たす中小事業者については「消費税の納税義務が免除」されます。消費税の納税義務がある事業者を「課税事業者」、納税義務が免除される事業者を「免税事業者」と言います。
課税事業者となった場合には、忘れずに消費税を納付しなければならないため、どのような基準で課税事業者となるのかを理解しておきましょう。
一方免税事業者は、受け取った消費税を納付する必要はなく、それらを利益として計上できます。これだけを見ると「免税事業者の方が絶対に得だ」と感じるかもしれませんが、事業内容によっては課税事業者を選択した方がよい場合もあります。
課税事業者となるか免税事業者となるかの判定基準を確認していきます。判定基準は4つあります。やや複雑な部分もありますが、しっかりと理解しておきましょう。
基準期間の課税売上高が1,000万円を超える事業者は、課税事業者となります。
基準期間とは、法人の場合は「前々事業年度」、個人事業者の場合は「前々年(1月~12月)」で、開業から2期の間は基準期間が存在しないため、原則として免税事業者となります。
課税売上高とは、「消費税を除いた売上高」です。3期目(3年目)以降は、2期前(2年前)の課税売上高で課税事業者となるかを判定します。つまり、1期目(1年目)の課税売上高が1,000万円を超えていれば3期目(3年目)は課税事業者、1,000万円以下であれば3期目(3年目)も免税事業者となります。
ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下の場合でも、下記の基準に該当する場合は課税事業者と判定されます。
上記の基準期間において課税売上高が1,000万円以下だった場合、次に特定期間での課税売上高での判定をします。
特定期間とは、法人の場合は「前事業年度開始日から6か月」で、個人事業者の場合は「前年の1月から6月」です。この期間の課税売上高が1,000万円を超えている場合、基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも課税事業者となります。
なお特定期間での判定は、「課税売上高が1,000万円超かどうか」の代わりに「給与等支払額の合計額が1,000万円超かどうか」で判定することも可能です。売上高よりも給与等の金額の方が低いことが多いでしょうから、免税事業者となりたい場合は「給与等支払額」での判定した方が有利と言えます。
基準期間がない(設立1・2期目の)法人については、新設法人の特例があります。具体的には、「事業年度開始日における資本金または出資金額が1,000万円以上の法人は課税事業者とする」というものです。つまり、資本金が1,000万円以上の新設株式会社は、初年度から課税事業者とされるのです。
これは「新設法人」の特例であるため、3期目以降は基準期間の課税売上高で判定されます。初年度の課税売上高が1,000万円を超えず、特定期間の課税売上高と給与等支払額のどちらも1,000万円を超えていない場合、3期目は免税事業者になります。
特定新規設立法人に該当する場合は、課税事業者となります。特定新規設立法人とは、事業年度開始日における資本金または出資金額が1,000万円未満の法人で、次の2点のいずれにも該当する法人です。
この制度は、法人の設立後に免税事業者となることを利用して、子会社を設立して消費税の納付義務を逃れようとすることを防ぐための制度です。自己資金で独立するのであれば、この項目に該当することはありません。
課税事業者となる基準を満たした場合、各種届出書を税務署に提出しなければなりません。ここではそれぞれの届出書について解説していきます。
消費税の課税事業者に該当した場合に提出する届出書です。どの判定基準で課税事業者に該当したかで様式が異なるので注意しましょう。
基準期間の課税売上高が1,000万円超となった場合は「基準期間用(第3-(1)号様式)」、特定期間の課税売上高が1,000万円超となった場合は「特定期間用(第3-(2)号様式)」を提出します。
提出期限は「速やかに」とされており、明確な期限は定められていません。提出しなかった場合でも課税事業者であることには変わりはなく、消費税の納付義務が発生します。
なお基準期間や特定期間以外の基準を満たして課税事業者となった場合は、他の届出書(「消費税の新設法人に該当する旨の届出書」など)を提出します。
消費税課税事業者選択届出書とは、判定基準では免税事業者となる事業者が、「あえて課税事業者を選択する場合」に提出する届出書です。
詳細は後述しますが、免税事業者でも課税事業者を選択した方がよい場合があり、そのようなときに提出します。提出期限は、「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」とされています。つまり、法人の場合は「課税事業者になろうとする決算期が始まる前日まで」、個人事業者の場合は「課税事業者になろうとする年の前年の末日まで」です。
消費税課税事業者選択届出書を提出して課税事業者になった場合、それから2年間は免税事業者に戻ることはできません。免税事業者から課税事業者に切りかえる場合は、この点を踏まえて慎重に判断しましょう。
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消費税の課税事業者となる場合、一定の要件を満たす中小事業者は「簡易課税制度」を選択し、消費税納付の事務負担を軽減することができます。その際に提出するのが「消費税簡易課税制度選択届出書」です。
提出期限は、「適用を受けようとする課税期間の初日の前日まで」です。
簡易課税制度の課税事業者となった場合、それから2年間は原則課税に変更することはできません。もちろん、免税事業者に変更することも2年間できません。
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次に、消費税の課税事業者となった場合の、納付すべき消費税額を計算する方法を見てみましょう。消費税の計算方法には、通常の「原則課税方式(一般課税)」と一定の要件を満たす中小事業者が選択できる「簡易課税方式」があります。それぞれの計算方法について解説します。
消費税は、消費者から受け取るときは取引ごとに計算しますが、納付税額を計算するときは売上額や仕入額の総額から下記のように計算します。
消費税の納付税額=売上税額-仕入税額
売上税額:課税期間中の課税売上にかかる消費税額(預かり消費税)
仕入税額:課税期間中の課税仕入や経費等にかかる消費税額(支払い消費税)
現在の消費税率は2種類あり、通常は10%で、軽減税率の対象となるものは8%です。軽減税率の対象となる売上・仕入・経費等がある場合は、10%のものと8%のものを分けて、それぞれの売上税額と仕入税額を計算します。
なお消費税は「国に納める消費税」と「都道府県に納める地方消費税」に分けられていますが、納付はまとめて国に行ないます。
前述したように、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者は、「消費税簡易課税制度選択届出書」を提出することで簡易課税制度による消費税の計算方法を選択することができます。
簡易課税制度とは、仕入税額を課税売上高に対する一定割合とすることができるもので
仕入税額=課税売上高×みなし仕入率
で計算します。
簡易課税制度で用いられるみなし仕入率は、事業内容によって6つに分類されています。
業種 | 種別 | みなし仕入率 |
卸売業 | 第一種事業 | 90% |
小売業、農林漁業(※1) | 第二種事業 | 80% |
製造業等、農林漁業(※2) | 第三種事業 | 70% |
その他の事業 | 第四種事業 | 60% |
サービス業等 | 第五種事業 | 50% |
不動産業 | 第六種事業 | 40% |
(※1)飲食料品の譲渡にかかる事業の農林漁業
(※2)飲食料品の譲渡にかかる事業を除く農林漁業
消費税は、「国内で事業者が対価を得て行なう譲渡・貸付・役務の提供」に対して課税されます。ほとんどの取引が課税対象となるのですが、一部、取引の特性や社会政策的配慮で課税対象とならないものがあります。
課税対象とならないものには「免税取引」「非課税取引」「不課税取引」の3種類があり、それぞれ次のようなものです。
消費税は「国内取引」に課せられるものです。そのため輸出取引にあたる取引は「免税取引」とされ、消費税が免除されます。例として商品の輸出や国際電話、国際郵便などが挙げられます。免税を受けるためには、輸出取引であることを証明するものが必要です。輸出の許可を受けるものであれば「輸出許可書」が、それ以外のサービスの提供などであれば「一定の事項を記載した契約書等」が証明書類として有効です。
輸出取引では消費税が免税されますが、その取引に関する仕入や経費等には消費税が含まれています。この消費税は、申告の際に仕入税額に含めることができます。
消費税は「消費に対して負担を求める税金」であるため、消費行為でないものなどについては課税対象から除外し、「非課税取引」としています。非課税取引にあたるものには、土地や有価証券、商品券などの譲渡、預貯金と貸付金の利子、健康保険の対象となる医療費などがあります。
非課税取引のために行なった仕入や経費等に消費税が含まれている場合、納付税額を計算する際に、それらの消費税を仕入税額として控除することはできません。
消費税は「国内で事業として対価を行なう取引にかかる税金」であるため、これにあたらないものは「不課税取引」とされます。不課税取引には、国外取引や寄附、贈与、株式の配当金などがあります。
ここまで消費税の課税と納税の仕組みについて説明してきました。ここでは、消費税課税事業者選択届出書を提出することで、免税事業者が課税事業者になることによるメリットを見ていきましょう。
「免税事業者の方が利益が多くなるはずだ」と考えるべきではないケースもあるのです。
原則課税方式を採用している課税事業者で、消費税の納付税額を計算する際に売上税額よりも仕入税額の方が多くなった場合は、消費税の還付が受けられます。
例えば、輸出メインの事業を行なっている場合や、設備投資など多額の課税仕入れをした場合です。
輸出事業のみの場合(単位:万円)
|
多額の設備投資をした場合(単位:万円)
1年目 | 2年目 | 合計 | |
課税売上高 | 500 | 500 | - |
売上税額 | 50 | 50 | - |
課税仕入高 | 2,300 | 300 | - |
うち、通常仕入 | 300 | 300 | - |
うち、設備投資 | 2,000 | 0 | - |
仕入税額 | 230 | 30 | - |
課税事業者の納付・還付税額 | +180 | -20 | +160 |
免税事業者の受取消費税額 | +50 | +50 | +100 |
このように免税事業者よりも課税事業者を選択した方が、消費税の還付によって手元に残るお金が増える場合もあるのです。
もう1つは、免税事業者であることがビジネスそのものにマイナスになるかもしれないお話です。
消費税納税の透明性を確保するために、2023年10月1日から「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」が導入されます。適格請求書(インボイス)とは、「売り手が買い手に正確な消費税額を伝えるもの」で、具体的には「登録番号・適用税率・消費税額」を記載した請求書のことです。買い手は消費税の納付税額の計算に際して仕入税額を差し引くために、このインボイスを保存しておく必要があります。
しかし免税事業者はインボイス制度への登録ができないため、インボイスの発行ができません。そのため課税事業者が免税事業者から仕入れを行なった場合、免税事業者に支払った分の消費税を売上税額から差し引くことができず、支払った消費税額と同額をさらに納付しなければなりません。
つまりインボイス制度が導入されると、免税事業者は課税事業者と取引する際に、消費税分の値引きを要求されたり、最悪の場合は取引を見送られたりする可能性もあります。免税事業者の要件を満たしている場合でも、取引相手に課税事業者が多いのであれば、自らも課税事業者になっておくほうが望ましいでしょう。
免税事業者から課税事業者になるときだけでなく、課税事業者から免税事業者になるときにも手続きが必要です。また、新型コロナウイルスの影響を受けている課税事業者に向けた特例もあります。
ここではそれぞれに必要な届出書について説明していきます。
課税事業者が免税事業者になるケースは2通りあります。
一つ目は、免税事業者になる基準を満たしていたものの課税事業者を選択していた事業者が、課税事業者をやめる場合で、この場合には「消費税課税事業者選択不適用届出書」を提出します。提出期限は、「選択をやめようとする課税期間の初日の前日まで」で、法人の場合は「選択をやめようとする事業年度が始まる前日まで」、個人事業者の場合は「選択をやめようとする年の前年の末日まで」です。ただし、免税事業者になることを選択してから2年間は、課税事業者に戻すことができません。
二つ目は、基準期間の課税売上高が1,000万円以下になった場合で、この場合には「消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書」を提出します。課税売上高が1,000万円以下になったことが分かり次第、速やかに提出しましょう。
[手続名]消費税の納税義務者でなくなった旨の届出手続|国税庁
前述の通り、あえて課税事業者になる場合や免税事業者に戻す場合は、前年度までに届出書を出さなければなりません。しかし、新型コロナウイルス問題で経営状態が急変する事業者を救済するための特例が設けられています。
2020年2月1日から2021年1月31日までの「連続した1か月以上の期間」において、収入金額が前年比で半分以下になっている事業者が対象です。対象となる事業所は、特例として「連続した1か月以上の期間」を含む事業年度について、提出期限後であっても課税事業者を選択する、または選択をやめることができます。課税事業者を選択する場合の期限は「その事業年度の終了後2か月以内」、課税事業者の選択をやめる場合は「その事業年度の確定申告書提出期限まで」とされています。
なおこの特例は、課税事業者を選択、または選択をやめてから2年以内であっても適用可能です。
ここまで消費税の課税事業者について解説してきました。課税事業者の判定基準と、課税事業者になる場合の届出書について、最後にもう一度確認しておきましょう。
課税事業者となるかの判定基準は、下記の4つです。
課税事業者に該当した場合は、「消費税課税事業者届出書」を提出しましょう。
また免税事業者があえて課税事業者になる方がよい場合もあります。輸出事業がメインの場合や、機械設備などの高額な出費が生じる場合です。課税事業者を選択したい場合は、「消費税課税事業者選択届出書」を提出しましょう。簡易課税での納税を希望する場合に提出するのは、「消費税簡易課税制度選択届出書」です。
ただし課税事業者となることを選択した場合、2年間は免税事業者に戻すことはできません。近い将来の経営状況を予想して、課税事業者になるメリットの方が大きいのかを確認してから選択しましょう。
大まかな制度内容は理解してもらえたと思いますが、自身は課税事業者にあたるか、消費税の納付税額がどれくらいになるか、課税事業者を選択するべきかなどを判断するのは簡単ではないかもしれません。困ったときは専門家の知識を借りるべきです。税理士に相談して、消費税の課税事業者についてどのような判断をすべきか、アドバイスを受けることをおすすめします。
可能な限り古い年度からCSV等のデータで引き継ぐのがベストです。以前のデータを引き継ぐことにより、事業年度ごとの損益比較が可能となります。 申告をするという観点からは、前期の申告書と減価償却資産の明細があれば可能です。
決算書、総勘定元帳につきましては、直近の会計期間以前の5期分(5年分) 各種届出書の控すべてと、法人の場合は定款及び謄本 上記の資料は紙ベースでの引継ぎが好ましいと考えます。
各会計システムで引継ぎ方法が異なります。 弥生会計のような高シェアの製品からだと、だいたいどのソフトにも簡単に引き継ぐことが出来ます。 低シェアのソフトでも、Excel形式で試算表をダウンロードすることが出来れば、少しの加工で引継ぎ可能です。 新しい税理士に聞いてみてください。
税理士と会ってみて、相性が良いこと。変に威張っている税理士は付き合い難いものです。専門家とは、ごく限られた分野のみ詳しい人です。そんなに威張れることではありません。あと、料金と依頼する内容が見合っていることでしょう。
顧問税理士を探す際の一番のポイントは、税理士との相性だと思います。 社長と税理士の関係は、長くお付き合いしていく経営のパートナーとなるため、事業に関する考え方などに共感してご契約されることが一番の基準となります。
税務知識だけでなく労務・法務知識など経営に関する様々な相談に対応できるかどうかです。 また、緊急の資金調達に対応できるか=金融機関にどれだけのパイプがあるか。 もしくは借入に頼らない策がどれだけ提案できるかです。
今後顧問税理士と長い付き合いになると思いますので、実際に会って話をして、顧問税理士との相性が合うかな確認と、実際の担当になる人との相性の確認も必要です。
月次の経営数字をしっかり経営者として見るということになります。粗利の割合、営業利益の数字や割合、大きくかかっている経費や通常より多くかかった経費、などについて、その原因や、将来に向けてどう考えるのか、という判断をすることですね。年間の月次の計画を立てていれば、目標達成できたかどうか、原因はなにか、次月への課題と取組方法、こうしたものを見極めたいですね。
御社が今何に向き合っているか、どこに問題意識があるかという点でその数字は変わると思われます。例えば、売上をとにかく伸ばしたいというのであれば、売上高、これにかかる原価、周知するための広告宣伝費など、売上を伸ばすために費やした費用と結果である売上に重きを置いて前月との比較をするとよいでしょう。
まずは、事業計画を立てて、それが月次決算の結果としてどうなっているかを確認しましょう。 確認の結果のズレがある場合はその原因確認とそこに課題が存在するなら対応が必要です。 個別の数字でいうと、売上高と売上原価の数字が、ご自身で想定されている金額と異なる場合はその原因を確認したください。 また費用項目でイレギュラーな支出が発生している場合は、事業者様と顧問税理士とで、双方てま内容理解ができているか、確認が必要です。 また、将来的なキャッシュフローがどうなるか、毎月顧問税理士と確認しましょう。
売上と営業利益、経常利益でしょう。特に、事前確定届出給与の支給をする場合などタイムリーな利益情報が必要になります。
「税理士を変更すると税務調査がある」との都市伝説もありますが、そんなことはありません。他方、税理士が変わることによって、同一の支払いでも使用する勘定科目が異なったり、会計処理が変更されたりすることがあります。変更後の税理士に、必ず従来の会計資料を提示して、従来の会計処理がどのようであった理解してもらうことが大切です。
既に税務署等へ提出している届出書で永遠に有効なもの(例えば消費税の簡易課税の選択など)や電子申告を開始した場合のパスワード管理を前税理士に任せていた場合等につきましては引継ぎが必要です。
可能であれば、決算が終わったタイミングで変更されるのが良いかと思います。 いつから新しい税理士にお願いするか、逆にいつまで前の税理士にお願いするのか、事前にはっきりとさせておくことが大切です。