防犯カメラを設置する主たる目的の1つが『犯人の特定』です。しかしその一方で、防犯カメラ映像をもって犯人を特定するのは困難ともいわれています。防犯カメラの映像で犯人を特定するのは本当に難しいのか、データを基に解説します。
防犯カメラによる犯人特定・検挙は年々増えている
写っている犯人に前科がある場合を除き、防犯カメラの映像をきっかけに犯人を特定するのは難しいのが現状です。防犯カメラの威力に過度な期待をしていると、いざというときにがっかりする可能性が高いでしょう。しかしそれでも、防犯カメラの映像から犯人を特定できたケースはゼロではありません。
防犯カメラの映像を手掛かりに犯人検挙に至るケースは、年々増加傾向にあります。近年の重要犯罪検挙件数において、犯人特定のきっかけに防犯カメラなどの画像が用いられた件数は以下のようになっています。
- 2019年:935件
- 2020年:1,298件
- 2021年:1,308件
- 2022年:1,371件
防犯カメラの設置台数が着実に増える中、犯人特定における防犯カメラの重要性は上昇傾向にあるといえるでしょう。
防犯カメラから得られる情報
防犯カメラから得られる情報の代表例が犯人の容姿です。どのような顔つきをしているか、身長や肉の付き方はどれくらいかなどの情報が読み取れます。
犯人の服装も防犯カメラから得られる情報の1つです。犯人が特徴的な服装をしていた場合、服装から得られる情報を基に、身元が判明する可能性があります。
その他にも、犯人が乗っている車が写った車の車種やナンバー、コンビニや駅に設置されている防犯カメラを活用すれば、犯人の逃走経路などが分かります。
公共スペースの防犯カメラ映像の保存期間
防犯カメラの映像は、一定期間を経過したところで削除するのが一般的です。映像の保存期間は設置されている施設によって異なります。保存期間の目安は下記の通りです。
- コンビニやスーパーなどの店舗:1週間~1カ月程度
- 銀行や信用金庫などの金融機関:1週間~1年程度
- 学校や病院:2週間~1カ月程度
- 電車や地下鉄などの公共交通機関:1カ月程度
- 市役所や警察署:1カ月程度
防犯カメラ映像の保存期間は法律で決まっている項目ではないため、施設によってばらつきがあります。周辺地域の防犯カメラ映像を犯人特定に活用したいなら、早めに行動を起こすのが大切です。
防犯カメラの情報を使った犯人特定技術
防犯カメラの映像から犯人を特定するとき、活用される鑑定手法を紹介します。紹介する2つの方法を駆使すれば、今まででは証拠能力に乏しかった防犯カメラ映像でも、犯人特定の有力な証拠となる可能性があります。
- 三次元顔画像識別システム
- 歩容解析
三次元顔画像識別システム
三次元顔画像識別システムとは、顔を立体物と捉えて識別する鑑定手法です。犯人の顔画像と別の場所で撮影した容疑者の顔画像を照合し、同一人物かを判定します。映像を同じ角度・同じ大きさに調整して照合するため、撮影条件が異なる映像からでも個人の識別が可能です。
三次元顔画像識別システムは、顔の輪郭を基に個人を識別していた二次元の顔画像識別システムよりも、高確率で人物を識別できます。そのため、顔の一部がマスクやサングラスで隠れていても個人を特定可能です。
歩容解析
歩容解析とは、人の歩き方の癖を認識して個人を判定する鑑定手法です。わずか数歩分の歩行映像さえあれば、かなりの確率で個人を識別できます。歩容解析で用いる要素には以下のようなものがあります。
- 歩き方のリズム
- 歩幅
- 腕の振り方
- 重心の位置
服装や持ち物が違っていてもこれらの要素は変わらないので、歩容解析は犯人特定の重要な証拠となるのです。
歩容解析のメリットは、顔が写っている映像がなくても、歩いている映像さえあれば個人を識別できる点にあります。防犯カメラ活用の可能性を広げてくれる技術といえるでしょう。
防犯カメラでは特定が難しい犯罪事例
防犯カメラを設置してどれだけ穴のないセキュリティを実現しようとも、犯罪の種類によっては、犯人の特定がほぼ不可能なケースもあります。防犯カメラを設置しても犯人の特定が難しい犯罪の例を紹介します。
- 敷地外からの投石などのイタズラ
- 常習性のない単発の嫌がらせ
敷地外からの投石などのイタズラ
防犯カメラが役に立たないケースとしてまず挙げられるのが、犯人が防犯カメラの画角に収まっていないパターンです。犯人の姿が写っていなければ、顔や服装など個人を識別する要素を映像から拾えません。
犯人の姿が防犯カメラに写らない犯罪として『投石』が挙げられます。投げ入れられた石によって車のフロントガラスや自宅の窓ガラスが割られても、敷地外からの犯行であれば、犯人の姿を捉えることはできません。
敷地外から行われるイタズラの現場を撮影したいからといって、敷地外の様子を積極的にカメラで写そうとするのは避けましょう。近隣の住宅を撮影してしまったことで、ご近所トラブルに発展する危険性があります。
常習性のない単発の嫌がらせ
防犯カメラ映像の証拠力は、常習的なイタズラや嫌がらせに対して効力を発揮するため、場当たり的な犯行に対しては防犯カメラの効果が薄くなります。
何度も繰り返されるイタズラや嫌がらせは、犯行が行われるたびに証拠映像が記録されていき、個人を特定する材料が集まっていくタイプの犯罪です。異なる角度の顔を映した映像がたまっていくだけでも、犯人を特定できる確率は上がっていきます。
しかし、単発で行われるイタズラや嫌がらせの場合、たとえ犯行現場を撮影できたとしても、証拠となる映像が圧倒的に少なくなります。そのため、個人を特定するのも格段に難しくなってしまうのです。
防犯カメラで犯人特定の可能性を上げよう
防犯カメラで撮影した犯人の映像だけをもって犯人の特定に至るケースは、ほんの一握りといわれています。防犯カメラを信頼しすぎるのは危険といえるでしょう。
しかし、防犯カメラ映像から犯人特定が実現したケースは皆無ではありません。自宅の防犯カメラの映像と、商業施設や公共施設の防犯カメラの映像を組み合わせれば、犯人特定の確率を引き上げられます。
また、防犯カメラ映像から犯人を特定する技術も刻一刻と進歩しているので、防犯カメラの映像から犯人を割り出せる確率は今後も上がっていくでしょう。カメラと併せて、防犯対策を続けることが大切です。