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アクリル塗料で塗装するメリットとデメリットとは?内装やDIYにオススメ

最終更新日: 2023年03月31日

アクリル板や照明器具などに使われる「アクリル樹脂」。様々な製品に用いられていますが、塗料としては、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。この記事では、アクリル塗料の基礎知識を紹介します。

アクリル塗料とは?

塗装用の筆

塗料に使われる樹脂は、「アクリル」「ウレタン」「シリコン」「フッ素」の4種類が代表的です。

そもそもアクリル樹脂ってどんな成分?

アクリル塗料の主成分は、「アクリル樹脂」というものです。

塗料以外にもプラスチックやコップ、照明器具など様々な製品に使われています。温度・湿度の変化に強く、耐候性に優れているのが特徴です。

普及が始まった1950年代には、安価でありながら発色も良いため、画期的な製品でした。塗料としては、プラモデルや車用のスプレーとしても幅広く使われています。

ただし外壁・屋根の塗装には、現在あまりアクリル塗料が使われることはありません。後から登場したシリコン塗料やウレタン塗料のほうが、耐久性に優れていて建材の塗装に向いているうえ、価格とのバランスも良いためです。

アクリル塗料とほかの塗料を比較

現在は、外壁・屋根塗装の主流とは言えないアクリル塗料。実際、ほかの樹脂塗料と比べてどのように違いがあるのでしょうか。単価相場と耐用年数を比べてみましょう。

単価相場 耐用年数
アクリル 約1,200円~1,500円/㎡ 5~7年
ウレタン 約1,600円~2,200円/㎡ 8~10年
シリコン 約2,500~2,800円/㎡ 10~15年
フッ素 約4,000~5,000円/㎡ 15~20年

このように、アクリル塗料は4つの樹脂のなかで、もっとも安価です。耐用年数も、1番短い傾向があります。

現状、外壁・屋根の塗装において主流なのはシリコン塗料です。耐用年数が長く、それでいて価格もそこまで高くないので、コストパフォーマンスに優れています。

フッ素塗料は高価ですが、そのぶん寿命がとても長いのが特徴。耐汚性も強いので、長く住む予定の住居であれば、長期的なメンテナンスコストは抑えられます。

関連記事:外壁塗装の費用相場は?単価&坪数でカンタンに計算してみよう | ミツモア

アクリルウレタン、アクリルシリコンとは別物?

外壁塗装や塗料の種類を調べていると、いろいろな言葉が出てきて混乱してしまいますよね。

アクリル塗料に似ているものとして、「アクリルウレタン」や「アクリルシリコン」という種類の樹脂塗料があります。

ですがどちらも、「アクリル塗料」のうちには含まれません。

  • アクリルウレタン=ウレタン塗料
  • アクリルシリコン=シリコン塗料

上記のように、略されて認知されているだけです。たとえばシリコン塗料はほとんどの場合「アクリルシリコン樹脂の塗料」を指しています。

アクリル塗料は、単体で外壁・屋根に使用されることは少ないですが、シリコンやウレタンのベースとして使うと、塗料が扱いやすくなるのです。

関連記事:シリコン塗料が人気の理由は圧倒的コスパ!メリット・デメリットや塗料の選び方を解説 | ミツモア

アクリル塗料のメリット

様々な色の塗料

アクリル塗料を外壁・屋根塗装に使用するとしたら、どんなところがメリットになるのでしょうか。おもに以下のような点が挙げられます。

  • 費用が安い
  • カラーバリエーションが豊富
  • 透湿性、通気性が高い
  • 1液型が多く、扱いやすい

それぞれのメリットがどんな場面で活きるのか、詳細を見ていきましょう。

費用が安い

アクリル塗料の最大のメリットは、ほかの樹脂塗料と比べて安価なことでしょう。頻繁に再塗料が必要なケースでは、大いに活躍します。

たとえば「もうあと2~3年だけ住んだら、売却する予定の住居」などで、外壁の補修や塗装を済ませておきたいときには、費用面で大きなメリットになります。

カラーバリエーションが豊富

アクリル塗料は「ツヤがあり発色が鮮やか」いう特徴があるので、製品のカラーバリエーションが豊かです。

外壁・屋根の色にトコトンこだわりたい方は、検討してもいいかもしれません。その場合、5年前後で頻繁に塗り替えられるかどうかは、しっかり考えておきましょう。

住宅ではなく、塗装面積の少ない東屋(あずまや)や小さめの倉庫を塗装したいなら、塗り替えのコストも小さいのでアクリル塗料をオススメできます。

透湿性、通気性が高い

湿気を逃がす透湿性・通気性が高いのも、アクリル塗料のメリットです。

たとえば左官仕上げという上塗り方法だと、職人が塗料を手塗りしていきます。このときアクリル塗料を使うことで透湿性の高さが活かされ、分厚く重なった部分の湿気も逃がしてくれます。

また軒天(軒裏)の塗装にも、アクリル塗料は向いています。軒天は雨などの影響を受けやすいので、湿気に強い「ケイカル板」という建材が使われていることが多いです。そこに通気性のよいアクリル塗料で塗装することで、軒天の役割を十分に発揮することができます。

関連記事:ケイカル板の塗装方法は?DIYのコツや注意点、費用などを徹底解説 | ミツモア

1液型が多く、扱いやすい

アクリル塗料は1液型の製品が多く、素人でも扱いやすい塗料だとされています。

2液型の場合は、硬化剤を均一に攪拌する(混ぜる)必要があるぶん手間がかかり、すぐに硬化するので日持ちしません。

1液型は硬化剤を混ぜる必要がなく、水かシンナーで希釈するだけで使用できます。また硬化しないので、保存可能なのが特徴です。

そのためとくに室内塗装をDIYするときには、向いている塗料と言えます。内壁をはじめ、木部や金属部に塗装可能です。

もし室内で塗装を行うなら、油性か水性か、という点にも注意しましょう。油性塗料の場合には、シンナーなど毒性のある有機溶剤を使用するため、注意が必要です。

関連記事:油性塗料と水性塗料どっちがいいの?それぞれのメリット・デメリット | ミツモア

アクリル塗料のデメリット

塗料を比較する女性

アクリル塗料を外壁・屋根塗装に使うデメリットを、以下にまとめます。

  • 耐用年数が短く、5年に1回の塗り替えが必要
  • ひび割れなどの劣化が早い
  • 塗り替えに手間がかかる場合がある
  • 長期的にみて、コストパフォーマンスが低い

それぞれ詳しく紹介していきます。

耐用年数が短く、5年に1回の塗り替えが必要

アクリル塗料の耐用年数は、一般的に5~7年です。およそ5年前後に1回ほどは、塗り替えが必要になります。

外壁・屋根塗装のシリコン塗料なら10〜15年は持つので、アクリル塗料はこの2~3倍のペースで塗り替える計算に。

頻繁に塗り替えできる場所かどうか、慎重に見極めたうえで塗装しましょう。

ひび割れなどの劣化が早い

アクリル樹脂は、常温で硬くなる性質を持っています。塗料には柔軟性を出すための「可塑剤」が入っていますが、可塑剤が抜けてくると硬くなり、塗膜のひび割れにつながるのです。

アクリル塗料は紫外線にさらされると、ラジカルという物質が発生しやすくなります。これはチョーキング(粉をふく)などの劣化につながり、塗膜の光沢や色があせてしまうのです。

そのため外壁よりも、室内の塗装に適しているのです。

関連記事:外壁のひび割れ(クラック)の原因と補修/塗装方法 | ミツモア

塗り替えに手間がかかる場合がある

外壁や屋根などを塗装する際には、下地補修をしなくてはいけません。既存の外壁の上から塗るだけでは、下地が劣化している影響を受けてしまい、またすぐに劣化するのです。

前述したように、外部にさらされたアクリル塗料は、劣化しやすいという特徴があります。

そのため塗り替えのときには、丁寧な補修作業が必要になるのです。当然ですが、劣化部分が多いほど下地補修には手間がかかります。

長期的にみて、コストパフォーマンスが低い

たとえば30坪2階建ての一般的な住宅に、外壁塗装するケースを考えてみましょう。

アクリル塗料を使うとおとそ60万円~の費用相場です。一方で、近年の主流であるシリコン塗料を使うと、85万円~ほどの費用相場になります。

もちろん1回限りの塗装では、アクリル塗料のほうがかなり安いのですが、15年スパンで見てみましょう。

  • アクリル塗料:60万円×3回=180万円
  • シリコン塗料:85万円×1、2回=85~170万円

15年のあいだに、アクリル塗料の場合は3回の塗装が必要です。シリコン塗料の場合だと1、2回ほどで済むので、トータルで見るとコストパフォーマンスが良いのはシリコン塗料のほうになります。

アクリル塗料の効果的な使い道

塗装 diy

ここまでの内容をまとめると、外壁や屋根など外部には、アクリル塗料を使うのはオススメできません。しかし透湿性が高く、ツヤや発色が鮮やかなので、内装や家具の塗装にはオススメです。

内装やDIYを楽しむ

内装ならアクリル塗装の耐久性の低さも、そこまで問題になりません。紫外線が届きにくく、建材の変形も小さいので、アクリル塗料のデメリットを感じにくいのです。

たとえば子どもたちが落書きしてしまったり、落書きしたりした家具などを塗装して、好みの色に塗り替えられます。

1液型のアクリル塗料なら扱いやすいので、DIYに慣れていない人でも十分に塗料が可能です。

DIYにおすすめなアクリルスプレー

アクリルスプレーならば、刷毛(はけ)やローラーを使う必要がなく、とても簡単に塗装することが可能です。

スプレーというとプラモデル用のイメージがありますが、家の壁用の製品も販売されています。

木材や鉄などの幅広い素材に対応できるので、さまざまな部分に噴射して塗布できます。

代表的な塗料メーカーとアクリル塗料

ローラー塗装 外壁塗装

日本では「日本ペイント」「関西ペイント」「エスケー化研」などが塗料メーカーとして代表的です。各メーカーとも、アクリル塗料を扱っています。

日本ペイント

日本ペイントのアクリル塗料は、以下のような製品があります。

  • ニッペDANフレッシュ
  • ニッペ水性ケンエースグロス

どちらも水性の塗料で、内装・外壁ともに施工可能。また防カビ性や防藻性を備えていますが、いずれにしても耐用年数は5年ほど。

関西ペイント

関西ペイントから販売されているのは、以下のようなアクリル塗料です。

  • アスカⅡ
  • アレスアクアグロス

どちらも「水性反応硬化樹脂」という樹脂が含まれています。これは水の蒸発によって硬化する性質があり、光沢が長持ちするのが特徴です。

エスケー化研

エスケー化研のアクリル塗料は、以下のような製品があります。

  • 水性コンポアクリル
  • SK水性ELコート

どちらも1液型で扱いやすく、水性なので環境にも優しい塗料。耐水、耐アルカリ性に優れているのも特徴で、カビやホコリを寄せ付けにくい設計です。

「ピュアアクリル」とは?

青い塗料

「ピュアアクリル」とは、オーストラリアの「アステックペイント」という会社が開発した塗料です。

通常のアクリル塗料に含まれる不純物を、可能なかぎり取り除いています。その結果、アクリル樹脂が本来持っている性能を、最大限まで発揮させることができます。

ピュアアクリルの耐用年数はなんと、フッ素塗料と同レベルの15年ほど。つまりピュアアクリルは、普通のアクリル塗料とは全くの別物です。

関連記事:外壁塗装に使われるフッ素塗料とは | ミツモア

ピュアアクリルの特徴・メリット

ピュアアクリルの特徴は以下。

  • 耐用年数の長さ
  • 弾性・防水性の高さ

前述したように、フッ素塗料に張り合うほどの、15年という耐久性を発揮します。

もうひとつの大きな特徴としては、「弾性の高さ」「防水性の高さ」が挙げられます。

普通の塗料であれば塗膜が硬化することで、大なり小なりひび割れしやすくなるものです。しかしピュアアクリルは、まるでゴムのように長く伸び、ひび割れをおおってくれます。

また一般的なアクリル樹脂に比べて、50~100倍ちかくも紫外線に強いと言われるほど、耐候性にも優れています。

デメリット

ピュアアクリルのデメリットと言える特徴は、以下のような点が挙げられます。

  • 汚れやすい
  • 価格が高い

ピュアアクリルは弾性の高さから、ひび割れをおおって防水性を保ってくれますが、それが裏目に出ることも。伸びたゴムを想像するとイメージできると思いますが、粘着性があり、汚れが付着しやすいのです。

またコストの高さもデメリット。だいたいフッ素塗料と同じくらいの単価相場で、1㎡あたり4,000円前後はかかります。

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アクリル塗料について、基礎知識やオススメの使用場所などを紹介しました。

基本的には外壁・屋根には向いていない塗料です。内装や家具に塗布する分には、透湿性や発色の良さなどのメリットを活かすことができるので、そちらの方向で検討してみてはいかがでしょうか。

またどうしてもアクリル系の塗料で外壁・屋根塗装をしたいという方は「ピュアアクリル」も検討してみましょう。耐用年数の短さが解決され、高い防水性を実現しています。

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