フッ素樹脂を主成分としている「フッ素塗料」とは、高い耐久性・防汚性を持っているのが特徴で、外壁・屋根塗装に適している塗料です。高価ですが寿命が長いので、長期的にみればコストパフォーマンスに優れている可能性があります。
この記事ではフッ素塗料の特徴、メリット・デメリット、単価相場などを紹介。シリコン塗料などと比較しながら解説していきます。
フッ素塗料とは?高機能な外壁・屋根塗装
フッ素は高機能な成分です。耐熱性が強く、フライパンなどの調理器にも使われます。「テフロン」という代名詞的な呼び名でも知られていますね。
またフッ素配合の歯磨き粉は、虫歯を防ぐ効果が高いことでも有名です。
塗料として使われるときには、どんな特徴があるのか紹介します。
フッ素樹脂の特徴
フッ素塗料とは「フッ素樹脂」を主成分としている塗料です。ちなみにフッ素の原料になるのは、蛍石(ほたるいし/けいせき)という鉱物。製鉄などにも用いられます。
フッ素塗料の特徴をまとめます。
- 高価で、シリコン塗料の倍くらいが相場
- 紫外線や温度変化などへの耐候性が高い
- 撥水性が高い
- 藻やカビ、汚れが付着しにくい
- 耐薬品性があり、酸性雨に強い
- 塗膜の寿命が長い(15~20年)
- 光沢の保持率も高い
このように、外壁や屋根にとって大敵となる「紫外線」「酸性雨」「汚れ」「カビや藻」「日射の熱」など、あらゆる外部要因に強いのが特徴です。
ただし価格は、かなり効果。一般住宅の主流であるシリコン塗料と比較して、およそ2倍前後の単価。額にして約4,000円/㎡ほどです。
そのため基本的にフッ素塗料で塗装されるのは、公共施設や橋、タワービルなどの「頻繁にメンテナンスできない場所」。
いまだに一般住宅で採用されることは少なめですが、長期的なメンテナンスコストを考えれば、フッ素樹脂はかなり優れている塗料です。詳しくはシリコン塗料との比較をしながら解説します。
フッ素樹脂の種類
フッ素樹脂のなかにも、グレードの違いがあります。
カンタンに分けると「2フッ化」「3フッ化」「4フッ化」というふうに樹脂が呼び分けられ、「4フッ化」のフッ素樹脂が最もハイグレードです。
ちなみに4フッ化樹脂のなかにも種類があり、一般的に「フッ素樹脂」や「テフロン」というときには「4フッ化エチレン樹脂(PTFE)」を指しています。
また「油性と水性」「1液型と2液型」があります。簡単に結論だけ言えば、最も耐久性が高いのは「油性(溶剤)の2液型、4フッ化」の塗料です。
費用相場、寿命でシリコン塗料と比較してみよう
単価相場(㎡) | 耐用年数 | |
---|---|---|
シリコン | 約2,500~2,800円/㎡ | 10~15年 |
フッ素 | 約4,000~5,000円/㎡ | 15~20年 |
シリコン塗料とフッ素塗料とで、単価・耐用年数を比べると、上記のようになります。
実際施工するとなったとき、費用総額やメンテナンスコストをどのように考えるべきか、もう少し詳しく紹介していきます。
塗装工事全体の費用相場を比較
塗装工事全体の費用は、足場仮設や養生、下地補修などの分も含まれます。一般的な30坪2階建ての外壁(120㎡と仮定)だとすると、塗装作業を除いて60万円前後の費用に。
塗装にかかる費用総額を、フッ素塗料とシリコン塗料とで比べてみましょう。フッ素塗料の単価を4,000円/㎡、シリコン塗料の単価を2,500円/㎡で計算します。
- シリコン塗料の塗装代:30万円
- フッ素塗料の塗装代:48万円
これに60万円程度の付帯工事を加えると、「シリコン塗料で塗装した場合は90万円」「フッ素塗料で塗装した場合は108万円」となります。
寿命を踏まえ、メンテナンスコストを比較
外壁・屋根を塗装するときの費用は、できるだけ長期的な目線で考えることが大切です。
たとえば樹脂のなかで最も安い「アクリル」の塗装代は約15万円、「シリコン」は約30万円です。しかし30年スパンで考えると、耐用年数が短いアクリル塗料のほうが、1~2回多く塗り替えなくてはいけません。その分、シリコン塗料で塗装してょうが安くなるのです。
ではフッ素塗料とシリコン塗料とではどうでしょうか。以下にまとめます。
フッ素塗料 | シリコン塗料 | |
---|---|---|
10年後 | 90万円 | |
15年後 | 108万円 | |
20年後 | 90万円 | |
30年後 | 108万円 | 90万円 |
合計 | 216万円 | 270万円 |
シリコンの寿命を10年、フッ素の寿命を15年として計算すると、上記のように差が生まれます。
やはり30年以上にわたって住み続ける住宅なら、1回あたりの塗装費よりも耐用年数を優先する方がお得と言えるでしょう。
しかも実際には、フッ素塗料の場合は「施工から20年経っても光沢を90%以上保持する」と言われています。
フッ素塗料のメリット
ここからは、もう少し詳しくフッ素塗料のメリットを紹介します。おもに以下のようなメリットがあります。
- 高い耐久性、耐候性で劣化しにくい
- 親水性により汚れが落ちやすい
- 防藻性、防カビ性がある
- 耐摩耗性により光沢を持続する
それぞれ解説していきます。
高い耐久性、耐候性で劣化しにくい
フッ素塗料の耐久性が高い理由は、以下のような劣化要因に強いからです。
- 太陽の紫外線
- 雨水、酸性雨
- 温度変化
耐候性の高さによって、紫外線や温度変化による影響を受けにくいので、外壁・屋根が剥がれたり色あせたりといった劣化症状を防ぐことができます。
すこし専門的な用語を使うと、「炭素原子とフッ素原子との結合はとても強いため、紫外線や熱で分解されにくい」のです。
また親水性や防カビ性などのはたらきで、汚れがつきにくく、多少の汚れなら雨水で流れる、という自浄サイクルも期待できます。
耐用年数が20年以上ある製品も多く、メンテナンスフリーな外壁にすることが可能です。
親水性により汚れが落ちやすい
フッ素は親水性が高いので、外壁・屋根と汚れの間に水が入り込み、雨が降るだけでほとんどの汚れが流れ落ちます。
このように自然に外観を維持できるので、清掃する手間を抑えられるのもメリット。他の塗料では雨染みが付いてしまう場合がありますが、フッ素塗料ならきちんと撥水してくれるので、その心配もありません。
黄砂や泥などから汚れを守りたい人には、フッ素塗料がおすすめできます。
防藻性、防カビ性がある
フッ素塗料は、カビや藻が発生しにくいという特徴があります。もし発生しても、カンタンに除去できます。
外壁・屋根にカビが発生してしまうと、そこから外壁の劣化がはじまり、防水性などの機能が落ちてしまうことに。
カビの発生しやすさは、地域や気候の要因が大きいものです。気候をコントロールすることはできないので、塗装によってリスクを減らせるのはメリットと言えるでしょう。
たとえば湿度が高い湿地帯の住宅や、日射時間が少ない北側・東側には、フッ素塗料を施工するのがオススメです。
光沢を持続する耐摩耗性
外壁・屋根用の塗料は、ある程度の光沢を発揮します。しかし月日が経つにつれ光沢は落ちていくものです。
フッ素塗料なら耐摩耗性が高いため、光沢を長く維持できます。
例えばシリコン塗料は、「10年で20%の光沢が減少する」と言われています。フッ素塗料の場合は、「20年で10%しか光沢が減少しない」と言われています。
フッ素塗料のデメリット
一般住宅にフッ素塗料を使うとき、デメリットとなる要因は以下のようなものがあります。
- 価格が高い
- 塗り替えに手間がかかる場合がある
- 塗膜が硬い
- 艶消しができない
それぞれ、メリットで挙げた機能と表裏一体の内容です。以下で詳しく紹介します。
価格が高い
フッ素樹脂をつかった塗料は、他の樹脂塗料と比べても価格が高くなります。
外壁・屋根塗料として代表的な樹脂の種類と、単価相場を比較してみましょう。
単価相場(㎡) | |
---|---|
アクリル | 約1,200円~1,500円/㎡ |
ウレタン | 約1,600円~2,200円/㎡ |
シリコン | 約2,500~2,800円/㎡ |
フッ素 | 約4,000~5,000円/㎡ |
このようにメジャーな樹脂塗料のなかでは、フッ素塗料が1番高級です。シリコン塗料の1.5~2倍が相場になります。
ただしフッ素の他にも、「光触媒コーティング」や「ラジカル制御型」など、高機能な塗料を採用する住宅は増えつつあります。
やはり「住宅を長く維持する」という観点から見ると、フッ素塗料などの高機能な塗料は、長期的な費用対効果が高いと認知されてきているのでしょう。
関連記事:光触媒コーティングとは? | ミツモア |
塗り替えに手間がかかる場合がある
フッ素塗料の塗り替えに手間がかかる可能性があるのは、「性能が十分に機能している」ときです。
フッ素塗料は撥水性や防汚性に優れています。塗り替えのときまでこの機能を十分に維持していると、塗料が密着しにくいのです。
ただし近年は「エポキシシリコン系シーラー」など、フッ素塗料に対しても高い密着性を発揮できる下塗り剤もあります。そのため現状は、あまり問題になりません。
塗膜が硬い
フッ素塗料は塗膜が硬く、「ひび割れしやすい」と言われています。しかし実際には、以下のような対策を打てるので、あまり問題ないのです。
- 弾性がある下塗り剤を塗る
- 弾性があるフッ素塗料を塗る
- (サイディング外壁の場合)シーリングを後打ちする
このように、フッ素塗料の塗膜が硬い分、下塗り剤で補強するということが可能です。また近年は、フッ素塗料自体が弾性を発揮する製品も。
サイディング外壁の場合は、サイディングボードのつなぎ目に「シーリング」があります。この上からフッ素塗料を塗るとひび割れ原因になるので、塗装の後からシーリングを施工するのが有効です。
艶消しができない
マットな仕上がりを期待する人には、フッ素塗料は向いていないでしよう。
水性フッ素塗料ならある程度まで艶は抑えられますが、それでも3分艶までが限界で、完全な艶消しにはなりません。市販されている商品数は少なくツヤが出るものが一般的です。
そのためフッ素塗料の特徴を理解した上で選択することをおすすめします。
フッ素塗料で塗装を依頼するときの注意点
外壁・屋根塗装を依頼するときには、信頼できる業者を選べるかどうかが重要です。フッ素塗料の塗装を依頼する際の注意点を紹介します。
技術を持った業者に依頼する
業者の中でもフッ素塗料の知識や経験がない場合があります。フッ素樹脂に対しネガティブな言葉を使ったり敬遠したりする業者は注意が必要です。
ひび割れが多いのでおすすめできないと言われた場合は、弾性のあるフッ素塗料を尋ねてみましょう。
また下地の調整や塗り方が雑である業者も出来栄えにはあまり期待が持てないでしょう。技術は見てみないと分かりませんが、工事前の折衝態度や言葉遣いが荒い場合、信頼が持てない可能性があります。
信頼できるメーカーの塗料を選ぶ
フッ素塗料の成分比率には、明確な定義がありません。そのため少しでもフッ素が含まれていれば、フッ素塗料とうたう業者もいます。
業者を選ぶ際は国内大手メーカーが販売しているフッ素塗料を使用しているかを確認しましょう。
信頼できる商品としては日本ペイント社の『ファイン4セラミック』や、『スーパーオデフレッシュF』などが挙げられます。またエスケー化研の『クリーンマイルドフッ素』なども優良商品です。
これらの大手メーカーが扱う商品以外であれば、詳しく調べた方が無難でしょう。
【まとめ】フッ素塗料で長期間、外壁を守れる
フッ素塗料について、基本的な特徴やメリット・デメリット、他の塗料と違いなどを紹介してきました。以下に要点をまとめます。
- フッ素塗料は汚れにくく、15~20年後もツヤがある
- 紫外線や温度変化に強く、外壁・屋根が劣化しにくい
- 価格は高いが、30年スパンで見るとお得かも
- 塗膜の硬さなどデメリットはあるが、対策法もある
- 業者に依頼するときは、フッ素塗料の施工実績を確認しよう
かなり高機能で、ほとんど「メンテナンスフリー」と言っても過言ではないフッ素塗料。そのぶん高額ですが、30年以上のスパンで考えると塗り替え回数が少ないので、かえってお得になる可能性があります。
塗装業者に依頼するときは、フッ素樹脂にたいする専門知識が豊富だとベターです。業者のホームページなどを確認し、フッ素塗料を使った施工事例を確認してみましょう。
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