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遮熱塗料の効果とは?仕組みやメリット・デメリット、おすすめできる住宅環境など徹底解説

最終更新日: 2023年03月31日

遮熱塗料を屋根や屋上、外壁に塗装すると、日光などの熱をはねのけてくれます。夏場には日射から受ける熱の吸収を抑え、室内温度を低下させることができます。

遮熱塗料の基本的な仕組みや効果をおさえつつ、メリット・デメリット、おすすめの商品まで紹介していきます!

遮熱塗料の効果とは?節電効果などが期待できる

まずは遮熱塗料の基本的な効果を紹介します。どのくらい室温に影響があるのか、また電気料金はどのくらい変わるのかを把握しておきましょう。

遮熱塗料の効果

遮熱塗料の効果

「遮熱塗料」の正式名称は「高日射反射率塗料」といい、JIS規格によって品質が規定されています。

屋根や屋上、外壁などに遮熱塗料を塗装すると、赤外線を反射することができます。その結果、夏場など日射が多い日には熱を跳ね返し、室内の温度上昇をおさえることが可能です。

屋根の表面温度は夏場で最大15~20℃ほど低下、室内温度は1~3℃低下するという効果があります。エアコンの温度設定が1℃下がると消費電力が10~13%抑えられるので、省エネ効果も期待できるのです。

都心部を中心に問題となっている「ヒートアイランド現象」を防ぐ効果が期待できます。国や自治体からも、省エネ対策として遮熱塗料の塗装が推進されていて、助成金や補助金が出るケースもあります。

関連記事:【2021年7月更新】外壁塗装の助成金・補助金は誰でも貰える? | ミツモア

電気料金はどのくらい変わる?

電気代のイメージ

2019年に調査された「電気・ガス料金調査」(日本生活協同組合連合会)によると、戸建ての電気料金は平均8,546円、集合住宅は平均6,477円です。(2019年9月発表)

また世帯人数別での電気料金は、「家計調査」(総務省)によると、単身世帯で平均6,641円、2人世帯では平均11,491円、3人以上の世帯ではおよそ13,000円前後です。(2021年1~3月期)

遮熱塗料の効果によってエアコンの温度設定を1℃下げることができ、消費電力を10%削減できるとすると、単純計算で700~1,300円ほどの節約になります。

「夏季の節電メニュー」(経済産業省)によれば、7~9月の電気使用量は全体の5~6割を占めます。年間では1割程度なので、かなり差が生まれることに。そのため実際には、1,000~2,000円ほどの削減につながるケースが多いようです。

ただし逆に冬には室温が上がりにくくなるため、暖房を使う時期のほうが長い寒冷地域ではむしろ、冷房で節約した分を超える電気料金が、冬に発生する可能性も。遮熱塗料が自宅に適しているかどうかは、塗装の専門業者と相談しながら決める必要があります。

【参考】

電気・ガス料金調査 | 日本生活協同組合連合会

家計調査 2021年1~3月期 | 総務省

夏季の節電メニュー(2015年発表) | 経済産業省

遮熱塗料と断熱塗料との違いは?

塗料

遮熱と断熱という言葉は似ているので、同じような意味として混同されがちです。しかし遮熱塗料と断熱塗料には、はっきりとした違いがあります。

熱を防ぐ仕組みの違い

遮熱塗料は、太陽光に含まれる赤外線の反射率を高めることで、屋根に熱が吸収されるのを防ぎます。その結果として屋根裏の気温が下がり、さらに室内温度も下げることができるのです。

一方で断熱塗料は、塗膜(塗装表面の塗料の膜)のなかに熱をため込み、屋根材や外壁材まで熱が伝導しないようにする仕組み。その結果として室内温度を保つ効果があり、冬の寒い外気を防ぐ効果があります。

室内温度の「上昇」を防ぐ遮熱塗料、室内温度の「変化」を防ぐ断熱塗料というふうに覚えておきましょう。

費用、耐用年数などの違い

遮熱塗料 断熱塗料
耐用年数 8~12年 15~20年
費用相場 2,500~3,000円 3,500~4,500円
特徴
  • 夏の暑さを軽減
  • 冬も遮熱してしまう
  • 夏の暑さを軽減
  • 冬の寒さも軽減

遮熱塗料と断熱塗料の違いについて、費用や耐用年数に着目すると、上記の表のようになります。

遮熱塗料の場合には、赤外線・日射の反射率を高めるという仕組みによって、冬も熱の吸収を防いでしまいます。そのため、寒冷地などの場合は断熱塗料のほうがオススメです。

遮熱塗料の種類、色による効果の違い

様々な塗料

多くのメーカーが遮熱塗料を製造・販売しています。遮熱効果は一般的に、価格の高い塗料ほど性能が高く、安いものほど性能は低いと言わざるを得ません。

ただし企業努力によって価格を押さえようとしているので、費用だけでは判断できないのが実情です。ではどういったポイントが、遮熱塗料の効果などを測る基準になるのでしょうか。

JIS規格

遮熱性能の効果を示す判断基準として、JIS規格の基準レベルが挙げられます。たとえば以下のようなものがあります。

  1. JIS K 5675「屋根用高日射反射率塗料」
  2. JIS K 5603「塗膜の熱性能-熱流計測法による日射吸収率の求め方」

「JIS K 5675」は、それまで基準がなかった日射反射率について、基準を設けたものです。後述する「色(明度)による反射率の違い」も考慮されています。

また「JIS K 5603」は2017年に作られた規格で、日射反射、放射、熱伝導など遮熱性に関するあらゆる要素を加味した基準です。

これらの基準で1級や2級を取得しているなら、一定以上の効果の高さが期待できるでしょう。

色による効果の違い

遮熱塗料の色によって、日射反射率は変わります。白系の色の方が反射しやすく、黒系の色の方が反射率は低いのです。

塗料のカタログを見てみると、「日射反射率」と「明度」という記載が、色ごとに明示されていることがあります。明度は1~100までの数値があり、100に近いほど白っぽい色合いです。

たとえば明度が80のときには「JIS K 5675」の基準にのっとれば、反射率80%以上でなくては「遮熱塗料」とは言えません。

しかし明度が40までの暗い色であれば、40%以上の反射率で同じ規格の基準をクリアできます。

黒系の遮熱塗料でも、もちろん反射率が高い製品もあるのですが、「実感として涼しくなったと感じられない」との声も多いそう。

シックな雰囲気も出したいけど遮熱効果もばっちりほしい、という方には明度が高いグレー系の遮熱塗料がオススメです。

遮熱塗料のメリット

夏 家

室温を下げる効果や、電気料金を抑え省エネになる効果については前述しました。他には、どんなメリットがあるのでしょうか。

屋根や外壁の寿命を長くする

遮熱塗料を使用することで、熱損傷と呼ばれる現象を防ぐことができます。

屋根や外壁は熱が当たり続けると、劣化が早く進みひび割れや塗膜の割れが起こります。とくに金属製の材料は熱膨張などが起こるので、非常に効果的です。

熱を吸収しやすい黒色にも遮熱効果を発揮

黒系の色は熱を吸収しやすく、白系の色の方が熱を反射する力を持ちます。

黒系の建材でも高い遮熱効果が期待できるため、建材が受ける熱や、熱によるダメージを抑えることにつながるのです。

黒系の色で遮熱効果をより高めるためには、黒と白の中間色であるグレーの遮熱塗料がおすすめです。

ヒートアイランド現象の抑制

ヒートアイランド現象とは、郊外にくらべて都市の気温のほうが高くなることを言い、都市温暖化という意味を持ちます。

原因のひとつとなるのは、建物に蓄えられる熱です。

また室内の温度が上昇することで、冷房の使用量とエネルギー消費量が増え、更にヒートアイランド現象が悪化します。

屋根や外壁を遮熱塗料に替えることで建物周辺の温度をさげることができ、また冷房の使用量が減らすことにつながります。

遮熱塗料のデメリット

悩む人

どんな塗料でも一長一短です。遮熱塗料にも、もちろんデメリットはあります。遮熱塗料による塗装を検討している方は、デメリットも踏まえたうえで、施工に踏み切りましょう。

塗料の価格が高い

遮熱塗料は一般の塗料より機能性がある分、価格が高くなっています。

遮熱塗料の種類やメーカーにもよりますが、普通の塗料が2,000円/㎡ほどであるのに対して、遮熱塗料は4,000円/㎡以上かかることが多いです。

汚れると性能が低下する

遮熱塗料は、綺麗な状態でこそ赤外線の反射力を高めることが可能です。塗装から時間が経ち、塗膜が劣化してくるにつれて、十分に熱を反射することができなくなります。

遮熱効果を保つためには、メンテナンスをしっかりと行いましょう。定期的な洗浄を見据えて、水に強い塗料を選ぶことで対策できます。

材料が扱いにくい

遮熱塗料は塗りにくくムラができやすいため、プロの間でも扱いづらい材料と言われています。

DIYに向かないのはもちろんですが、業者選びも慎重に。遮熱塗料の専門的な知識を持ち、取り扱い経験が豊富な業者を探しましょう。

冬場には寒くなる可能性

遮熱塗料を使用した屋根や外壁は、冬場でも遮熱効果を発揮します。

住んでいる地域にもよりますが、冬の寒さが厳しい地域では、室内に熱が入ってこないためにかえって寒さを感じてしまいます。

冬場だけ塗料を変えるというわけにもいかないので、地域柄をふまえて相談に乗ってくれる塗装業者を選ぶようにしましょう。

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遮熱塗料をおすすめできる環境は?

青空 白い家

遮熱塗料を選ぶにはまず塗装する箇所とその建材に注意が必要です。

たとえばコンクリート製の建材は、もともと熱抵抗が高いという特徴があります。また屋根裏に断熱材が十分に使用されている場合も、遮熱塗料による効果は感じにくいかもしれません。

外壁に遮熱塗料を塗装する場合、東西南北どの向きに面しているのかを考慮する必要があります。

たとえば西日を受けて暑くなりやすい西面、冬には温度上昇の恩恵を受けることが多い南面、など面ごとに特徴が分かれているのです。

遮熱塗料を選ぶときには、立地条件や目的を考慮に入れる必要があります。素人には判断が難しいところですので、まずは業者に相談することをおすすめします。

金属屋根や薄型スレート等の屋根

スレート屋根

遮熱塗料は、金属屋根や薄型スレートなどにおすすめです。

金属屋根は熱伝導率が高く、太陽光の影響を大きく受けます。そのため劣化しやすかったり、室内に熱がこもりやすい状態に。

そんな金属屋根には、遮熱塗料でしっかりと熱の吸収を防ぐ必要があるでしょう。

関連記事:スレート屋根を選ぶメリット・デメリットは?耐用年数やメンテナンス、施工費用など | ミツモア

建物が3階建て以上、上階にリビングや吹き抜けがある

吹き抜け エアコン

2階にリビングがある場合は、日当たりは最高ですが、熱くなりやすいので遮熱対策が有効です。

また吹き抜けがある家は、広い空間から熱が差し込みやすいので、できる限り太陽光を反射させる遮熱塗料が向いています。

基本的に建物が高くなるほど、太陽光が当たりやすく室内の温度も上がってきます。平家よりも2階建・3階建と、高さがあるお家ほど遮熱塗料に適した環境です。

年間日射量が多い地域

年間日射量が多い地域なら、遮熱塗料の効果を最大限に活かせるはずです。

日差しが長時間差し込んでいる地域の建物は、室温が高くなるだけでなく、熱によって建材がダメージを受ける「熱損傷」の危険性も高まります。

年間の気温の変化が大きい地域に住んでいる

気温の変化が大きい地域にも、遮熱塗料がおすすめです。

建材は暑さで膨張したり、寒さで収縮したりするので、気温の変化が激しいと建物へのダメージが大きくなってしまいます。

なるべく気温差の影響を少なくするために、熱を跳ね返す遮熱塗料での対策が有効なのです。

1年ずっと空調を稼働する倉庫や工場、商店など

遮熱塗料によって室内温度が下がることで、冷房の節電につながります。そのため1年を通してずっと空調を使う必要がある倉庫・工場・商店などは、節電効果が大きくなるでしょう。

長期的なコストを考えて検討してみましょう。

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代表的な遮熱塗料

塗料

遮熱塗料のなかでも、とくに代表的なメーカーと製品は以下。

  • 日進産業「ガイナ」
  • 日本ペイント「サーモアイ」
  • エスケー化研「クールタイト」

それぞれ㎡あたりの施工単価は、4,000円前後ほどです。

日進産業「ガイナ」

ガイナは、平成29年度の省エネ大賞を受賞しています。

遮熱性だけでなく断熱性をあわせ持ち、厳密に言えば「断熱塗料」ですが、業者によっては遮熱塗料として扱われるのです。

宇宙開発で有名なJAXAの技術を応用し、ロケットに使用される断熱技術を使った遮熱塗料です。

耐用年数も15年以上と長く、「防カビ抗菌タイプ」の製品もあります。

参考:ガイナ | 日進産業

日本ペイント「サーモアイ」

日本ペイントもまた、国内の外壁・屋根塗装において高いシェアを誇る会社。遮熱塗料は「サーモアイ Si」をはじめとするサーモアイシリーズが代表的です。

色の種類が豊富で、樹脂も5種類から選ぶことができます。また何と言っても、遮熱性能が抜群に高く、90%以上の日射反射率が特徴です。

参考:サーモアイ Si | 日本ペイント

エスケー化研「クールタイト」

こちらも塗料メーカーとして有名なエスケー化研。「クールタイト」という遮熱塗料を販売しています。

樹脂は5種類から選ぶことができ、防錆や防音の効果が高まる「クールタイトEL工法」も可能です。

カラーバリエーションは、類似製品のなかで最多となる41種類。自宅のデザインをこだわりたい方、金属屋根の方にとくにオススメです。

参考:クールタイト | エスケー化研

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遮熱塗料の基本的な仕組みや効果、メリットとデメリットなどについて解説してきました。

夏の暑さを防いだりといった目的にはベストである一方で、「自宅の屋根にはどの塗料が合っているのか」「外壁全面に塗るべきか」など素人には判断がつきません。

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