引っ越しにあたって、「生活保護を受けていても引っ越しできるの?」「引っ越しの費用を用意できなかったらどうしよう」と思っている方もいるのではないでしょうか。今回は生活保護受給者が引っ越しをする際の条件や費用、詳しい手順、注意すべきポイントについて説明します。
生活保護を受けていても引っ越しはできるが許可が必要
生活保護受給者の引っ越しは基本的には自由です。ただし以下2つの注意点があります。
- ケースワーカーの許可が必要
- 自己都合の引っ越しは全額負担
引っ越し費用の支給を受けるには許可が必要
引っ越しのための補助金を受け取るためには、生活保護法で定められている以下の16の条件のうち、どれか1つに当てはまる必要があります。引っ越し理由が「ペットを飼いたい」「もっと広い部屋に住みたい」等の場合は許可が下りず、自費で負担する必要があるため注意が必要です。
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生活保護受給者の引っ越し費用は条件付きで支給
生活保護受給者は条件付きではありますが、福祉事務所から「引っ越し費用」「住居に関わる費用」が支給されます。
【引っ越し業者に家財の運搬を依頼する費用】
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【住居に関わる費用】
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必ず全てを支給してもらえるわけではありませんが、申請をすることで一定額の支給してくれる場合があります。なお家主に担保として預けておく「敷金」は福祉事務所から支給されますが、物件を退去する際の「礼金」については負担してもらえないので注意してください。
行政から支給される項目と支給額
行政から支給される項目とその支給額は、以下のとおりです。
項目 | 支給の可否 | 支給額 |
引っ越し業者への代金 | 〇 | 全額支給 |
敷金 | 〇 | 以下①を参照 |
礼金 | 自治体によりけり | 以下①を参照 |
前家賃 | 〇 | 以下①を参照 |
仲介費 | 自治体によりけり | 以下①を参照 |
保証金 | 〇 | 以下①を参照 |
火災保険料 | 〇 | 以下①を参照 |
管理費・共益費 | × | ー |
前の部屋のクリーニング代 | × | ー |
新居の鍵交換代 | 自治体による | 以下①を参照 |
家具什器 | 〇 | 以下②を参照 |
①他の費用と合算し、住宅扶助上限額×3.9まで負担
②器具によって上限額が決まっており、その範囲内なら負担
※炊事用具は29,100円、暖房器具は20,000円、冷房器具は50,000円
生活保護を受給している状態で引っ越す場合は、管理費や共益費も考慮した物件探しや、管理費・共益費が家賃に含まれている物件を選ぶ工夫も必要です。
ただし最低限の家具・家電は「家具什器費」として受給可能な場合があります。
同じ都道府県、かつ同人数世帯でも市区町村により異なる金額になる場合があります。なお、4人世帯では20~40歳の成人と12~17歳の子どもが2人ずついる4人家族を想定しています。
また、7人世帯では75歳以上の高齢者と20~40歳の成人が2人ずつ、12~17歳の子どもが3人いる7人家族を想定しています。
退去費用は負担してもらえない
生活保護受給者の引っ越し費用は、行政から支給されますが、退去費用は支給対象外です。そのため現在住んでいる物件を退去する際は、原状回復費用(ハウスクリーニング代や修繕費)が発生しても実費負担になります。退去費用の負担は、個人的な責任だと認識しておきましょう。
また物件を退去する際の礼金も実費負担です。引っ越しする前に、ハウスクリーニング代が発生しないよう、自分で部屋を掃除することをおすすめします。
費用が足りない場合の対処方法
行政からの支給費用で足りる場合は問題ありませんが、引っ越し費用が足りないことも考えられます。もし支給額の上限を、引っ越し費用が越えてしまった場合に、取れる手段は以下の3つです。
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どうしても必要な場合を除き、消費者金融や友人、知人から借りることはおすすめしません。なぜなら借りたお金であっても収入に含まれるため、福祉事務所への報告義務が生じるからです。金額によっては、後の生活保護受給額が減る可能性があります。
生活保護の受給額の範囲ではなかなか難しいですが、足りない分は自己負担で補うのが最適な方法と言えるでしょう。
生活保護受給者が引っ越しをするときの手順
生活保護受給者が、引っ越しをする際の手順を説明します。生活保護受給者が引っ越しの手続きをする際の流れは、大きく分けて4つあります。
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各手順の詳細や費用、それぞれの注意点を解説します。
手順1:ケースワーカーに相談し、役所の許可を得る
引っ越しを検討し始めたら、まずは福祉事務所のケースワーカーに相談します。自己都合による引っ越しの場合にも、必ず事前にケースワーカーに相談しましょう。福祉事務所から引っ越しが可能であると判断されたら、役所の生活福祉課に出向き、役所からの許可を得ましょう。役所の許可が下りれば、引っ越し費用の一部を負担してもらえます。
自治体によって受け取れる負担額に差があります。そのため自分が住んでいる自治体が、どのくらい引っ越し費用を負担してくれるのか確認しましょう。なお他の市町村に引っ越す場合は、転居先の市町村で生活保護の再申請が必要です。
手順2:物件を探す
許可が下りれば、次は物件選びです。物件を選ぶ際は、家賃を住宅扶助で支給される範囲内に収めることが必須。
物件選びはインターネットで調べ、電話で問い合わせてから
生活保護受給者は、物件選びにも注意が必要です。なぜなら不動産会社によっては退去時の費用回収の不安から、取り合ってもらえない可能性があるからです。
物件を探す際は、まずインターネットで物件を調べ、電話で問い合わせをしてから不動産会社に出向くのが良いでしょう。また「生活保護者OK」「生活保護者相談可」の不動産会社を見つけてから、物件を探すのもおすすめです。
具体的な上限金額は、都道府県や世帯人数によって異なります。下記の表を参考にしてください。
都道府県 | 支給上限額(単身世帯) | 支給上限額(2~6人世帯) | 支給上限額(7以上の世帯) |
北海道 | 25,000~29,000円 | 30,000~41,000円 | 39,000~45,000円 |
宮城県 | 35,000円 | 42,000~49,000円 | 55,000円 |
東京都 | 40,900~53,700円 | 49,000~75,000円 | 63,800~83,800円 |
神奈川県 | 41,000円 | 49,000~57,000円 | 64,000円 |
愛知県 | 36,000~37,000円 | 43,000~52,000円 | 56,000~58,000円 |
大阪府 | 29,000~39,000円 | 35,000~55,000円 | 45,000~61,000円 |
福岡県 | 32,000円 | 38,000~45,000円 | 49,300~50,000円 |
沖縄県 | 32,000円 | 38,000~45,000円 | 49,000円 |
支給される金額以下の物件でないと、役所からの許可は下りないため、物件選びは慎重におこなってください。
手順3:物件を契約する
引っ越し先の物件を選んだら、あらためてケースワーカーに報告し、役所からの許可を得ましょう。引っ越しの許可が下りたら、物件の契約をすることができます。
物件を契約する際には、不動産会社へ生活保護受給者であること事前に伝えてください。契約書を交わすときに、収入や職業を記載します。そのため生活保護受給者であることを隠しておくことはできません。正直に最初から伝えておきましょう。
契約時にもらう書類はケースワーカーに提出しなくてはいけないので、大切に保管しておくようにしてください。具体的には以下の書類です。
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手順4:引っ越し業者に依頼する
物件契約が済んだら、引っ越し準備を開始できます。まずは引っ越し業者を選びましょう。
引っ越し業者を選ぶ際は、複数の業者から見積もりを取りましょう。それぞれの業者の見積もりを比較できるため、相場観を掴むことができリーズナブルな業者に依頼しやすくなります。その際、ミツモアの一括無料見積もりを利用するのがおすすめ。簡単な質問に1度答えるだけで、最大5つの業者から見積もりが届きます。それぞれの業者に何度も同じ条件を説明する必要がないため便利ですよ。
引っ越し費用を補助額内におさえるためのポイント
次に引っ越し費用を補助額内におさえるためのポイントを紹介します。
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引越し業者の繁忙期は避ける
住宅扶助として役所から支給される引越し費用には上限があります。 それほど多い金額ではないため、超過しやすく超過分については自腹で支払わなくてはいけません。そのため、引越し料金はなるべく安い方が良いです。
引越し需要が高くなるハイシーズンはどの引越し業者も費用が割高になるため、引越しする時期は3月~4月を避けましょう。
繁忙期以外であっても引越し料金が高くなるタイミングがあります。 たとえば、土日祝日・月末・大安などの縁起の良い日・午前中などは割高になりやすいので、できる限り避けるようにしましょう。
不要な荷物は処分する
引越し料金は運び出す荷物量によって大きく左右されます。
荷物量が多ければ多いほど作業量も増えて人件費がかかり、運搬用の車両も大型にしなければならないため料金が高くなります。 そういった理由から、不用品についてはできる限り処分してしまいましょう。
生活保護受給者が引っ越しをする際に注意すべきポイント
生活保護受給者の引っ越し手順を解説しました。次に引っ越しをする際の注意点を紹介します。
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経済状況に変化があれば、ケースワーカーに報告しよう
引っ越し費用が足りないとき、消費者金融や知人からお金を借りる方法もあると前述しました。おすすめはしませんが、消費者金融や知人からお金を借りる手段しかない場合は、必ずケースワーカーへ報告してください。
借金も経済状況の変化になるため、報告義務が生じるからです。また生活保護受給者は、借金が収入と見なされるため、生活保護費が減給される可能性があります。報告をしないと、生活保護費の支給が打ち切られることがあります。必ずケースワーカーに報告してから、お金を借りましょう。
賃貸契約には保証人や保証会社の利用が必要になる場合がある
保証人の有無も、生活保護受給者が入居をする際は注意しなければなりません。なぜなら賃貸契約には保証人が必要なケースが多いからです。保証人がいない場合は、保証会社を利用するようにしましょう。
退去時の不安点から不動産会社に敬遠されがちな生活保護受給者ですが、保証会社がついていれば物件を借りることが可能です。生活保護受給者であっても、過去に「賃貸関係」「クレジット」「各種支払いの遅延」がなければ保証会社の審査は通るため、心配いりませんよ。
なお保証会社の利用には別途料金が必要です。難しい場合は物件が限られてしまいますが、保証人不要の物件の中から選んでみてくださいね。
病気の悪化を理由にした引っ越しには医師の診断書が必要になる
行政から引っ越しの許可を得られる条件に、病気や障害を理由とした場合があります。病気を理由に引っ越しするには、医師の診断書が必要です。
特に2回目の引っ越しでは、診断書と行政が納得する理由が必須です。再度引っ越しが必要になった理由を、明確にしなければなりません。症状がどのように変化したのかを詳細に記してもらう必要があります。診断書を行政が確認し、引っ越しの必要があると判断されれば、2回目の引っ越しも可能です。
他府県へ引っ越す場合は、生活保護の再申請が必要
生活保護受給者であっても、引っ越し先は自由に選べます。ケースワーカーに相談し、許可を下りれば他府県へ引っ越すことも可能。しかし県外へ引っ越しをする場合は、生活保護の再申請が必要です。
その際に現在住んでいる地域の自治体と、引っ越し先の地域の自治体の間で、移管手続きが行われます。市レベルは市、町村は都道府県の管轄(正確には福祉事務所の管轄エリアによる)となります。
この手続きで支援内容を引き継ぎ、引っ越し先の自治体でも問題なく支援を受けることが可能です。
手続きには2~3ヶ月ほどかかりますが、完了するまではこれまでの生活保護が継続されるため、一時的に生活保護が支給されなくなる心配はありません。
また万が一引っ越し先の地域では生活保護の申請が認められなかった場合でも、自らが直接福祉事務所を訪ね、現状の報告をすることにより、申請が認められるケースも少なくありません。一度断られても諦めずに再申請を行いましょう。
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